後継者不足を理由に廃業はもったいない。M&A検討で可能性は広がる
タグ: #M&A後継者不足を理由に廃業する小規模事業者が増えています。後継者がいないという問題の帰結は、廃業だけなのでしょうか?そのほかの代表的な解決策について解説します。あわせてM&Aの可能性についても見ていきましょう。
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1.中小企業や小規模事業者の問題点
中小企業や小規模事業者の多くが後継者に関する問題を抱えているのが現状です。後継者不足の解決策を知るためにも、まずは問題点を確認します。
1-1.後継者が不足している
2020年に総務省が行った調査によると、後継者がいない企業は全体の79.7%にのぼります。さらに経営者の年齢が70歳以上の企業に絞ると、70.8%は後継者がいない状態です。
経営者の高齢化は今後も進行していく見込みです。多くの中小企業や小規模事業で後継者が不足している状態が続けば、黒字なのに廃業せざるを得ない事業者が増えてしまうでしょう。
参考:2020 年(令和2年)個人企業経済調査 P.6|総務省
1-2.事業承継を諦め廃業を選ぶ事業者の増加
廃業する理由の『28.6%』は、後継者がいないことによるものです。後継者がいるなら事業承継したいと考えている場合でも、いないのであれば誰にも引き継いでもらえず、廃業せざるを得ません。
後継者がいない中小企業の多くで、事業承継の準備が後回しになっています。経営をしていると、忙しさから日々の仕事を優先してしまいがちです。
その結果、必要なときに後継者が育っていない状況に陥ってしまいます。また後継者候補がいたとしても、経営を任せたいというタイミングで了承を得られない場合もあるでしょう。
事業者が後継者問題に取り組むにあたっては、さまざまな事態を想定した準備が必要です。
参考:最近の中小企業・小規模事業者政策について P.15|中小企業庁
1-3.事業承継について考えていないケースも
中には事業承継を最初から考えていない事業者も存在します。日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、廃業予定企業の43.2%は『そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない』と回答しているのです。
取り組んでいる事業に感性や個性が必要で、属人的な性質が強いほど、自分の代限りでの廃業を決めている事業者が多い傾向があります。職人技を要する仕事は、教えたからといってすぐに誰でもできるものではありません。
また個人の資格が必要な事業も、簡単には引き継げない可能性があります。
参考:中小企業のうち後継者が決定している企業は12.5%、廃業を予定している企業は52.6% P.11|日本政策金融公庫総合研究所
2.後継者不足の会社が増えた原因
後継者不足から廃業を選ぶ事業者が増えていると分かりました。では後継者がいない・見つからない原因は、どこにあるのでしょうか?
2-1.止まらない少子化
中小企業や小規模事業者の後継者不足は『少子化』の影響が大きいといわれています。小規模な会社では、経営者の子どもが事業を引き継ぐケースも多いものです。
しかし子どもがいない経営者もいます。また実子が1人しかおらず、その子どもが継がない場合には、ほかの子どもに継がせるといった選択もできません。
そのため親族内承継に頼っていると、後継者不足はどんどん深刻化していくでしょう。優秀な人材を後継者にしたいと考えていても、少子化で子どもの数が減っている現状では、人材の確保が難しいかもしれません。
2-2.「実家を継ぐ」が当たり前ではなくなった
子どもの意識も変化しています。かつては実家の事業を継ぐという選択肢は当たり前でした。しかし現在は価値観が多様化しており、子どもが自分のやりたい仕事を見つけて打ち込んでいるケースも増えています。
そういう場合には、事業承継を子どもに頼んでも断られるかもしれません。親である経営者も、跡継ぎになることを強制はしないでしょう。その結果、親族内承継が難しくなり、後継者問題を抱える事業者が増えるというわけです。
また、子どもや親せき内で『継ぎたい』という人が出てきたとしても、経営者として十分な資質がなければ事業承継はできません。能力不足によって後継者不足に陥る事業者もいます。
3.後継者不足の解決策
少子化や価値観の変化で加速している後継者不足には、どのような解決策があるのでしょうか?代表的な方法を見ていきましょう。
3-1.後継者となる人を育てる
親族内承継が難しいようであれば、社内で『後継者を育てる』とよいでしょう。従業員に優秀な人材がいるなら、後継者候補になってもらえないか打診し、事業承継の計画を立てます。
長年働いている従業員であれば、企業風土についてよく知っていますし、事業に対する理解度も高いはずです。これまで一緒に仕事をしてきた仲間でもあるため、後継者としても育てやすいでしょう。
ほかの社員や取引先など、利害関係がある相手からも納得してもらいやすいはずです。
3-2.3年程度はかかることを覚悟する
ただし後継者に任命したからといって、すぐに事業承継できるわけではありません。従業員から後継者を選んだとしても、そもそも了承してもらうまでに時間がかかる場合もあるでしょう。
さらにその後の教育にも、それなりの期間が必要です。調査によると事業承継に3年以上かかったと回答している事業者は『37.1%』もいます。
中には10年近くかけてじっくり事業承継を実施したケースもあり、長い期間が必要と分かります。経営者が元気なうちに引き継ぎをしっかり終えられるよう、事業承継に向けた速やかな行動がポイントです。
参考:最近の中小企業・小規模事業者政策について P.17|中小企業庁
4.後継者がいないという理由の廃業は避けたい
後継者がいない場合、選択肢は廃業しかないのでしょうか?廃業の前に検討すべき選択肢について解説します。
4-1.損失が考えられる廃業の前にM&Aがある
中小企業や小規模事業者の廃業は大きな社会的損失です。これまで企業が磨いてきた技術やノウハウがそこで失われてしまいます。社会全体に損失を与えるといっても過言ではありません。
また経営者本人が経済的な損失を負う可能性もあります。資産を売却して得た利益や清算配当には税金がかかりますし、負債があれば保証債務を廃業後も返済し続けなければいけません。
このような損失を出さないためには『M&A』の検討がおすすめです。例えばM&Aの手法の一つである『株式譲渡』を実施すると、対価として買い手から現金を受け取れます。
別の企業へ事業承継できるため、育んできた技術や人材などを守れる点もメリットです。
4-1-1.株式公開もあるがハードルは高い
M&Aを成功させるには『株式公開』をする方法もあります。株式公開とは株式を証券取引所へ新規上場させることです。
株式公開し上場企業となれば、多くの買い手企業を集めやすいでしょう。優秀な後継者を探すときにも、人材が集まりやすいはずです。また経営者は大きな利益を得られるかもしれません。
ただしその分ハードルが高い方法と心得ておきましょう。株式公開に至るまでには、数年かけての準備が必要です。さらに、上場するための基準をクリアしなければいけません。大変な労力が必要な方法といえます。
5.M&Aのメリットと活用方法
廃業による損失を避け、現金を手に入れられる可能性があるM&Aには、多くのメリットがあります。活用するためのポイントも押さえておきましょう。
5-1.買い手にはどんなメリットがあるのか?
M&Aは売り手だけでなく買い手にもメリットがあります。代表的なメリットは、買い取った企業の経営資源をそのまま活用できる点です。
ノウハウ・技術・販路・顧客・従業員など、経営に必要なものは全てそろっています。そのため収益化するまでの期間を最小限にできるでしょう。
また、M&Aは事業承継の手段として注目され始め、手続きをサポートする企業やサービスも増えています。売り手側も買い手側もM&Aを活用しやすい環境が整ってきているといえるでしょう。
5-2.専門的なアドバイスを受けることが必須
法務や税務などさまざまな手続きが必要なM&Aは、専門家のサポートを受けながら進めるとよいでしょう。日頃から相談している弁護士や税理士がいるなら、まずは相談してみるのも一つの方法です。
相談した弁護士や税理士は、M&Aに対する知識や経験をあまり持っていないかもしれません。しかし横のつながりで、その分野に詳しい士業を紹介してもらえる可能性があります。
身近に相談できそうな人がいなければ『税理士法人チェスター』へ問い合わせてもよいでしょう。M&Aアドバイザーや仲介会社にも相談すると、役立つ情報を得られるはずです。
6.後継者を探す場はさまざま
M&Aを活用して後継者を探すなら、多くの情報が集まる場の活用がおすすめです。中小企業や小規模事業者が使いやすい場を紹介します。
6-1.マッチングプラットフォーム
売り手企業と買い手企業の出会いの場である『マッチングプラットフォーム』なら、両者にメリットがあるM&Aが成立しやすいでしょう。インターネット上で利用でき、コスト・手間・時間の節約につながります。
さまざまなマッチングプラットフォームの中からよいサービスを選ぶには、案件数に注目しましょう。たくさん登録されているプラットフォームには多くの買い手が集まるため、自社に合う企業とのマッチングが期待できます。
また実績のあるM&A仲介業者が運営しているサービスを選ぶと、安心して利用しやすいでしょう。売り手は無料で使えるサービスが多いため、気軽に利用しやすいのもポイントです。
6-2.事業承継・引継ぎ支援センター
『事業承継・引継ぎ支援センター』は、中小機構を中心とした公的な相談窓口です。国が設置しているため、安心して相談できます。手数料も無理な契約もありません。
同センターが運営している『後継者人材バンク』は、M&Aや事業承継のマッチングを行う事業です。税理士や中小企業診断士などの専門家が在籍しているため、さまざまな相談ができる点が魅力といえます。
まずは気軽に相談してみたいという人に向いているでしょう。
6-3.事業承継マッチング支援
日本政策金融公庫でも『事業承継マッチング支援』という、事業を譲りたい企業と譲り受けたい企業を結ぶサービスを展開しています。原則として日本政策金融公庫から事業資金を借りている事業者であれば、無料で利用可能です。
専門担当者が付き、希望を考慮しながらマッチングする企業を探します。単にマッチングして終わりではなく、その後のサポートも万全です。
日本政策金融公庫からの借入がない場合でも、商工会議所や商工会・生活衛生同業組合などに紹介してもらえれば利用できます。
7.廃業は最後の手段、事業承継は早めに準備を
後継者不足で会社を引き継ぐ人がいないとしても、すぐに廃業を考える必要はありません。廃業はいつでもできるため、まずは事業承継の道を探ってみましょう。
例えばM&Aを実施すれば、買い手企業へ引き継いでもらえるかもしれません。マッチングプラットフォームや事業承継・引継ぎ支援センター、事業承継マッチング支援などを利用するのがおすすめです。
事業承継には時間がかかります。M&Aが成立したとしても、すぐに完全に任せられるわけではありません。まずは早めの準備が大切です。
M&Aに関する税務の疑問や質問については『税理士法人チェスター』へ相談してみましょう。
事業承継・M&Aを検討の企業オーナー様は
事業承継やM&Aを検討されている場合は事業承継専門のプロの税理士にご相談されることをお勧め致します。
【お勧めな理由①】
公平中立な立場でオーナー様にとって最良な方法をご提案致します。
特定の商品へ誘導するようなことが無いため、安心してご相談頂けます。
【お勧めな理由②】
相続・事業承継専門のコンサルタントがオーナー様専用のフルオーダーメイドで事業対策プランをご提供します。税理士法人チェスターは創業より資産税専門の税理士事務所として活動をしており、資産税の知識や経験値、ノウハウは日本トップクラスと自負しております。
その実力が確かなのかご判断頂くためにも無料の初回面談でぜひ実感してください。
全国対応可能です。どのエリアの企業オーナー様も全力で最良なご提案をさせていただきます。
詳しくは事業承継対策のサービスページをご覧頂き、お気軽にお問い合わせください。
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