事業承継が進まない理由とは?5つの原因と対処法を解説

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中小企業の経営者の高齢化が進み、事業承継が問題となっています。

事業承継が進まない理由は会社によって様々ですが、どのような原因があり、どのように解決を目指せば良いのでしょうか。

この記事では、事業承継が進まない5つの理由についてまとめました。

事業承継が失敗に終わらないよう、対処法もご紹介しますのでぜひ参考にしてください。

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1.事業承継の現状と問題点

事業承継とは、現経営者が後継者に会社の経営を引き継ぐことです。

事業承継は主に3種類あり、誰を後継者にするのかで形態が区分されます。

事業承継の三種類

現代の事業承継における問題点は、中小企業の経営者の高齢化が進んでいるにも関わらず、大多数が事業承継を終えていないことです。

この章で、中小企業庁のデータを元に、事業承継の現状や問題点について確認していきましょう。

事業承継について、詳しくは「事業承継を中小企業が行う方法は?スムーズに進めるための準備も確認」をご覧ください。

1-1.経営者の高齢化が進んでいる

中小企業庁「事業承継ガイドライン」によると、70代以上の経営者の割合が高まっているとされており、経営者の高齢化が進んでいることが伺えます。

中小企業の経営者年齢の分布【出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」】

令和5年3月30日に中小企業庁が公表した「令和4年中小企業実態基本調査速報(要旨)」でも、中小企業の社長の年齢別構成比は「70代(27.0%)」が最も高く、全体の61.2%は年齢が60代以上とされています。

1-2.事業承継を終えていない企業大多数を占める

中小企業庁「事業承継ガイドライン」によると、経営者が60代以上の企業において「すでに事業承継を終えている」と回答したのは、わずか4.3%~5.3%です。

事業承継に関する計画の有無【出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」】

同調査によると、中小企業の経営者の高齢化が進んでいる中、約半数は事業承継計画を策定しているものの、事業承継を終えていないことが分かります。

どうして計画を策定しているにも関わらず、事業承継を終えていない経営者が多いのでしょうか?

2.事業承継が進まない理由とは

事業承継が進まない理由として考えられるのは、以下の5つが代表的です。

2-1.【理由①】後継者が不在である

事業承継が進まない1つ目の理由は、後継者が不在であることです。

信頼して仕事を任せられる後継者が都合よく現れるとは限らず、適切な人材がいなければ事業承継は当然進みません。

もしも親族内で適切な後継者がいないなら、親族以外への事業承継も視野に入れた判断が必要かもしれません。

2-1-1.原因:後継者不在による廃業が目立つ

中小企業庁「事業承継ガイドライン」によると、経営者の年齢別にみた後継者不在率は、直近の10年で減少傾向にあるものの、改善しきれているとは言えない状況です。

経営者の年齢別にみた後継者不在率【出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」】

同調査によると、廃業予定企業のうち「後継者不在による廃業」が全体の28.4%に達しているとされています。

この後継者不在による廃業とは、子どもがいない・子どもに引き継ぐ意思がない・適当な後継者が見つからないなどが該当します。

後継者不在による廃業を検討している企業の中には、他社よりも良い業績を挙げている企業や、少なくとも今後10年以内は現状維持が可能としている企業も含まれます。

つまり、必ずしも業績悪化や将来性の問題から、廃業を選択しているわけではないということです。

2-1-2.解決策:親族以外への承継も考える

子どもや親族に後継者になってほしくても、本人は事業承継を希望していないかもしれません。

親族内で後継者を探そうとしても、後継者が務まる人物がいないこともあるでしょう。

中小企業庁「事業承継ガイドライン」によると、直近では親族内承継の割合が全体の約35%に減少し、親族外承継が65%以上に達しているとされています。

先代経営者との関係性【出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」】

親族内承継が難しいなら、親族以外への承継を検討すると事業承継が進みやすくなるはずです。

事業に関する専門知識や実務経験のある後継者を親族以外から見つけ出せれば、速やかな事業承継が叶うかもしれません。

2-2.【理由②】事業の経営状況や将来性への懸念

事業承継が進まない2つ目の理由は、事業の経営状況や将来性への懸念です。

後継者が事業承継したいと考えていたとしても、経営状況が悪い企業や将来性がない企業は、事業承継が難しいはずです。

2-2-1.原因:廃業予定企業の半数以上は将来性のなさと業績悪

中小企業庁「事業承継ガイドライン」によると、廃業予定企業の廃業理由のうち、全体の24.4%が「事業に将来性がない」と回答しています。また、廃業予定企業の半数以上が、業績が「やや悪い」や「悪い」と回答しています。

同業他社と比べた業績【出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」】

現時点で赤字や債務超過の会社では、事業承継しても後継者に大きな負担がかかります。

現経営者から後継者へ事業を引き継ぐときには、金融機関の借入金に対して付けている個人保証を外さなければいけません。

個人保証は後継者が引き継ぐため、後継者は借入金の返済を負います。

後継者によっては個人保証を引き受けるだけの資力がなく、そもそも事業承継できないケースもあるでしょう。

2-2-2.解決策:経営状況や課題を把握して磨き上げ

スムーズに事業承継できる会社は、業績が好調なケースがほとんどです。

仮に赤字であっても、理由がはっきりしていて改善しやすい状態や一過性のものであれば、同様に事業承継を進めやすいはずです。

自社の経営状況や将来性を正しく把握するには、現状把握が欠かせません。課題や強みを客観的に捉え、現状が分かったら磨き上げに取り掛かりましょう。

磨き上げでは、税務・労務・法務など把握した現状の課題を改善します。事業リスクが少ない会社ほど将来性があると考えられ、事業承継が進みやすくなります。

2-3.【理由③】後継者の育成に問題がある

事業承継が進まない3つ目の理由は、後継者の育成に問題があることです。

経営者として育成するために時間がかかるのはもちろん、後継者の右腕となる幹部がいないのも、事業承継が進みにくい理由です。

また、後継者と古参の従業員との関係性も育成に影響を与えます。

創業期から働く従業員の理解を得られなければ、後継者の方針に反発するといった事態も起こりかねません。

2-3-1.原因:後継者の育成がうまくいかない

事業の経験がない後継者に、初めから経営者の仕事を任せるのはリスクが高い方法です。

まずは実務を十分経験させた上で、経営者としての能力や心得を伝えます。

限られた時間で多くを学ぶ必要があるため、事業の継続や成長に意欲的に取り組める人を選ぶのもポイントです。

2-3-2.解決策:右腕となる人材の確保を

右腕がいないまま経営を続けると、後継者に万が一のことが起きたときに会社が危機に陥るかもしれません。

後継者本人の育成と同時に、右腕となる人物の育成も意識すると、事業承継もスムーズに進みやすいでしょう。

後継者と同世代の幹部がいないことも、後継者を支える人材が見つかりにくい理由の一つです。

なお、経営者本人には右腕と呼べる人がいたとしても、その人が後継者のサポートも買って出てくれるとは限りません。

後継者との相性が悪く、経営者が引退すると後継者にとって扱いの難しい人物になる可能性も考えられます。

2-4.【理由④】事業承継にかかる相続税・贈与税の問題

事業承継が進まない4つ目の理由は、事業承継にかかる相続税や贈与税の問題です。

仮に事業承継の意思があったとしても、納税資金を用意できない後継者候補もいるかもしれません。

2-4-1.原因:相続税や贈与税の課税や納税資金不足

親族に事業承継をする際には、経営者から後継者に事業用資産や自社株式を引き継がなければならず、後継者には贈与税や相続税の支払いが発生します。

後継者には贈与税や相続税の支払いが発生する

業績が良い成長企業や高収益企業ほど評価額が高くなるため、税金の負担は大きくなって事業承継が進みにくくなります。

贈与税や相続税は現金で一括払いしなければいけない税金のため、ある程度以上の資力が必要です。

2-4-2.解決策:事業承継税制適用の活用を

高額な税金が理由で事業承継がスムーズに進まない場合は、「事業承継税制」の活用を検討しましょう。

事業承継税制とは、円滑化法に基づく認定のもと、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予する制度のことです。

事業承継税制とは

事業承継税制には、「個人版事業承継税制」と「法人版事業承継税制」の2種類があります。

法人版事業承継税制には「特例措置」と「一般措置」がありますが、特例措置の方が納税猶予や免除を受けやすくなるため、こちらの適用を検討しましょう。

詳しくは国税庁「事業承継税制特集」や、チェスター公式「【事業承継】驚くほど高額な相続税で経営危機に?大切な会社を次世代に残す方法とは」をご覧ください。

2-5.【理由⑤】後継者による株式や事業用資産の買取り問題

事業承継が進まない5つ目の理由は、後継者による株式や事業用資産の買取り問題です。

事業承継の意思があったとしても、株式や事業用資産を買取る資金を用意できず、事業承継できない後継者候補もいるかもしれません。

2-5-1.原因:株式買い取りの資金不足

親族以外の役員や第三者への事業承継では、後継者による株式や事業用資産の買い取り費用といったコストがかかります。

しかし、会社の役員や従業員を後継者にする場合、十分な資金を用意できるのは稀です。

経営者としての能力は十分でも、株式や事業用資産を取得できなければ事業承継できません。

2-5-2.解決策:事業承継補助金の活用を

株式や事業用資産の買取り資金不足が理由で事業承継が難しい場合は、「事業承継・引継ぎ補助金」の活用を検討しましょう。

事業承継・引継ぎ補助金とは、事業再編・事業統合を含む事業承継を契機として経営革新等を行う中小企業や小規模事業者に対して、その取組に必要な経費の一部を補助する制度のことです。

事業承継・引継ぎ補助金ホームページ【出典:事業承継・引継ぎ補助金ホームページ

経営者交代型・M&A型といったサポートを受けられます。

詳しくは「事業承継・引継ぎ補助金」や、チェスター「事業承継・引継ぎ補助金とは?種類や要件、活用方法、注意点など」をご覧ください。

3.事業承継がスムーズに進まないとどうなるか

事業承継がスムーズに進まない場合、以下のような影響が出る可能性があります。

  • 経営者の急病で事業承継が困難に
  • 親族内の相続トラブルに発展
  • 会社の業績が悪化する
  • 退職者が増える
  • 廃業せざるを得ない

事業承継が必要だと分かっていたとしても、なかなか準備に取りかかれない経営者もいるかもしれません。

しかしそのままにしておくと、いざ経営者が働けない状態になったときに、会社の意思決定が遅れてしまいます。

高齢になるほど病気のリスクは高まるものです。早めの準備が欠かせません。

3-1.経営者の急病で事業承継が困難に

まず考えられるのは、事業承継を進めている途中で経営者が急病で倒れ、事業承継したくてもできない状態に陥る可能性があります。

経営者が意思表示できなければ、法律行為や経営判断も難しいでしょう。

経営者が会社の株式を100%保有しているとすれば、他の株主が株主総会を開催し議決することもできません。会社としての意思決定が滞り、何もできなくなってしまいます。

仮に後継者が決まったとしても、一度社内外に広がった不安を払拭するのは難しいでしょう。

3-2.親族内の相続トラブルに発展

事業承継が進まないまま経営者が亡くなった場合、親族内の相続トラブルに発展する可能性もあります。

経営者が亡くなった場合、経営者の遺産(相続財産)には会社の株式などが含まれることが多いです。

遺言書がない場合は、経営者の遺産について法定相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が・何を・どれだけ取得するのかを決めることとなります。

仮に法定相続人が3人いて、その中の1人が後継者候補である場合、他の2人の法定相続人が会社の株式の取得を主張したらどうなるでしょうか?

後継者は経営に必要な株式を取得できず、株式を取得するための資金を捻出する必要があり、事業を継続させることが難しくなるかもしれません。

3-3.会社の業績が悪化する

事業承継が進まない場合、会社の業績が悪化する可能性も考えられます。

後継者が決まっていても、育成段階であれば会社の舵取りをする人はいなくなります。

業績が悪化すると金融機関からの融資を受けられなくなり、資金繰りがうまくいかず不渡りを出してしまう可能性も出てきます。

3-4.退職者が増える

事業承継が進まずに業績が悪化すると、退職者が増えることも考えられます。

事業承継を急いだ結果、新しい経営方針に賛同できずに退職を選択する従業員もいるでしょう。

また、事業承継の影響で会社の業績が悪化し、退職を選択することも考えられます。

従業員が退職し、人材不足の中で立て直しを図らなければならないという、困難な状況に直面することも考えられます。

3-5.廃業せざるを得ない

事業承継が進まずに失敗した場合、考えられるのは廃業・解散に至る未来です。

事業承継は後継者がいなければできません。親族内や従業員に後継者が見つからず、M&Aを行おうとしても思うような承継先がないケースもあるでしょう。

廃業すれば従業員は仕事を失い、従業員やその家族の暮らしにも影響する事態です。

加えて廃業するにも費用がかかり、最終的に手元に残る資金がなくなるかもしれません。

4.事業承継を失敗せずに進める方法

中小企業庁「事業承継ガイドライン」では、事業承継を成功させるために、準備から実行までの5ステップが紹介されています。

事業承継に向けたステップ【出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」】

事業承継の進め方について、詳しくは「事業継承したい場合、なにから始める?準備と活用必須の支援制度」や「企業オーナーの事業承継対策について専門の税理士が徹底解説」をご覧ください。

4-1.事業承継は早期の計画&準備が大切

中小企業庁「事業承継ガイドライン」によると、後継者への移行にかかる期間は、3年以上を要するという回答が半数を上回りました。

後継者への移行にかかる期間【出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」】

既に後継者が育っているケースでは、事務的な手続きのみで事業承継が完了するかもしれません。

しかし、「10年以上」という回答も全体の11.2%を占めているため、余裕を持って事業承継をするには、早い段階で計画・準備に取りかかることが重要です。

仮に70歳で引退を考えているなら、60歳には事業承継の計画・準備を始めるべきと言えます。

5.事業承継を進めるためには専門家に相談を

事業承継について、身近に相談できる相手がいる経営者は多くありません。

相談しても解決しないだろうと考え諦めている経営者や、最初から誰にも相談しないと決めている経営者もいるでしょう。

しかし事業承継の専門家に相談すれば、何かしらの打開策を見つけられるはずです。

5-1.専門家に事業承継の相談をする

専門家を活用することで、事業承継が進みやすくなる可能性があります。

この専門家とは事業承継に精通した士業のことで、相談内容によって相談先も異なります。

税理士や会計士納税資金の確保や相続問題について
社会保険労務士労務の状況
弁護士法務の状況

この他にも、取引がある金融機関に相談するという方法もあります。

ただし、「融資あり」が前提となる傾向があり、税理士などの専門家は外注となるといったデメリットもあります。

税務に関しては、資産税を専門とする税理士法人チェスターまでご相談ください。

>>相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】

5-2.公的な支援も活用しよう

経済産業省が商工会議所などへ委託し運営している、「事業承継・引継ぎ支援センター」を利用するのも一つの方法です。加えて自治体の「業引継ぎ相談窓口」も活用できます。

これらの窓口に相談すれば、後継者候補や専門家を紹介してもらえますし、事業承継計画策定等の支援も行ってもらえます。

無料で利用できるため、相談先に迷ったら気軽に連絡してみましょう。

6.大切な会社だから事業承継は計画的に

事業承継が進まない理由はいくつかあり、スムーズに進まなければ廃業しなければいけないケースや、事業承継が困難な状況になるケースがあると分かりました。

大切に育ててきた会社だからこそ、事業承継をするなら早めに計画を立てて実行しましょう。

事業承継やM&Aを検討されている場合は、事業承継専門のチェスターコンサルティングにご相談ください。

事業承継・M&Aを検討の企業オーナー様は

事業承継やM&Aを検討されている場合は事業承継専門のプロの税理士にご相談されることをお勧め致します。

【お勧めな理由①】
公平中立な立場でオーナー様にとって最良な方法をご提案致します。
特定の商品へ誘導するようなことが無いため、安心してご相談頂けます。

【お勧めな理由②】
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その実力が確かなのかご判断頂くためにも無料の初回面談でぜひ実感してください。
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詳しくは事業承継対策のサービスページをご覧頂き、お気軽にお問い合わせください。

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