LGBT同性カップルの相続トラブル-相続対策の実例と注意点

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LGBT相続トラブルに巻き込まれないための対策

LGBT、同性カップルは、パートナーが亡くなったとき、財産をだれが、どのように相続するかで親族とトラブルになることがあります。

現在の法律では、同性カップルはパートナーの財産を相続することはできません。現在ではパートナーシップ制度を導入している自治体も増えていますが、国が法律で認める結婚とは異なるため、パートナーは法定相続人とはなれず、パートナーシップ制度を利用していてもパートナーの財産は相続できません。

同性カップルの場合、2人の間に子どもがいないことが多く、その場合の法定相続人は親が存命なら親などの直系尊属となります。また、親が亡くなっていれば兄弟姉妹、兄弟姉妹に亡くなっている人がいる場合にはその子(甥や姪)となります。

親族がLGBT、同性カップルであることを知らなかったり、認めていなかったりした場合、相続が発生したときに不動産や預金などの財産をだれが、どのように受け取るのかで争いになることも少なくありません。

大切なパートナーに財産を遺すためには、事前に相続対策をしておくことが必要です。相続が親族との「争続」にならないために、自分の財産をだれにどのように遺したいのか、現在利用できる制度を使って意思表示をしておきましょう。

1. LGBT・同性カップルが相続トラブルを回避するためにすべきこと

LGBTの方や同性カップルが、パートナーに遺産を相続させるための手続きはさまざまです。今ある制度を活用して、将来に不安のない状態を実現しましょう。

1-1.遺言書を作成する

遺言書とは、亡くなった人の意志表明になる書類です。つまり、遺言書を正しく残しておけば、法定相続人ではない同性のパートナーにも遺産を残せます

遺言書の種類は3種類。自筆証書遺言と秘密証書遺言、および、公正証書遺言です。自筆証書は、財産目録以外の部分をすべて手書きで記載します。自宅か法務局で保管され、自宅で保管する場合は遺言を書いた方が亡くなったときに家庭裁判所において相続人の立ち合いのもと、「検認」という内容の確認作業が必須です。

なお、内容を知られたくない場合は秘密証書遺言という選択肢もあります。秘密証書遺言は内容の確認が不要です。2人以上の証人の立会いのもと、公証役場で提出できます。

一方、公正証書は公証役場で2人以上の証人の立ち合いのもと、記載するものです。遺言を公証人が記載し、原本は公証役場で保管されます。なお、家庭裁判所における検認は必要ありません。

いずれかの方法で遺言書を残せば、自分に法定相続人がいる場合でもパートナーに遺産を相続できます。

【注意点】遺言書の内容によっては遺留分を侵害するおそれがあります

法定相続人がいるLGBTの方で、同性パートナーにほとんどまたはすべてての遺産を相続させたいと考えている場合は注意が必要です。特定の相続人には「遺留分」という最低限の遺産を受け取る権利があります。

たとえば親が存命の状態で亡くなり、「パートナーに遺産すべてを相続させる」といった遺言を残すとしましょう。すると、それは亡くなった方の親の遺留分を侵害していることになります。その場合、亡くなった方の親には「遺留分侵害額請求権」という権利が発生し、遺産の3分の1の金額を請求できるのです。

1-2.養子縁組をする

同性のパートナーと養子縁組を組めば、法律上の親子となれます。これにより「親族」として2人の間に相続権が生まれるのです。また親族関係にあることで、2人で同じ姓を名乗ることもできるようになります。

また税金や年金、社会保険など親族を対象に適用される制度を活用できるというメリットも。ただし、養子縁組をするとパートナーではなく「親子」という関係になります。そのため、お互いの立場に違和感を覚えるかもしれません。

さらに養子縁組を組むと、パートナーシップ制度が利用できなくなります。なぜならパートナーシップ制度を適用する条件には、親族関係にないことが含まれているからです。こうしたデメリットも踏まえて、問題なければ養子縁組も相続対策としておすすめです。

【注意点】親族に養子縁組関係を説明していないと、トラブルになることも

同性パートナーと養子縁組を組む場合は、あらかじめ親族に話して了解を取れるとよいでしょう。なぜなら、親族は「養子縁組無効」の主張ができるからです。

当然、相続のときになってはじめて養子縁組のことを親族が知れば驚くでしょう。親族ではなく、養子縁組のパートナーに遺産が相続されるとなればなおさら、反感を買う可能性は高くなります。

残されたパートナーが親族から非難されないためにも、あらかじめ親族には話を通しておくと安心です。

1-3.同性パートナーを死亡保険金の受取人とする生命保険を契約する

生命保険会社の中には、同性パートナーを死亡保険金の受取人として設定できるところもあります。こうした保険会社で生命保険を契約しておけば、万が一のときにパートナーにお金を渡せるのです。

また、すでに生命保険を契約していて受取人をパートナーへ変更したい場合は、2010年4月以降の契約に限り以下の方法で変更できます。

  • 生命保険会社へ直接意思表示(内容証明郵便の送達など)
  • 遺言で意思表示

上記の方法による受取人の変更は、保険法第43・44条において定められています。

【注意点】相続人ではないパートナーが受取人となると、税制上の優遇は受けられない

同性パートナーが生命保険金の受取人となる場合、税制上の優遇制度が利用できません。たとえば一般的に法定相続人が死亡保険金を受け取るときは、「500万円×法定相続人の人数」の金額が非課税となります。

しかし、同性パートナーにはこの非課税控除を適用できません。つまり保険金全額が相続税の課税対象としてみなされます。さらに相続税は支払う人が一定の親族ではない場合、2割増しで納税しなければなりません。

また、受取人が親族でなければ、生前の所得税の生命保険料控除といった優遇も適用できないのです。

同性カップルでペアローンを組める銀行も存在

ちなみに、同性カップルで家を購入してお互いの財産とする場合、ペアローンを組める銀行もあります。ペアローンとは、2人がそれぞれ持分を決めて契約者となり、お互いの連帯保証人となる契約です。近年では同性カップルでペアローンを組める銀行も増えています。

また、ペアローンだけでなく連帯債務型借入も同様。連帯債務型借入とは、1つの契約で2人がそれぞれの持分を決める契約形式です。ペアローンとは異なり、2人同時に住宅ローン控除を適用できるのがポイント。住宅を売却したときの控除も、2人がそれぞれ受けられます。

1-4.信託契約を結ぶ

信託契約を結べば同性パートナーへ自分の財産を引き継げる ▲信託契約を結べば、同性パートナーへ自分の財産を引き継げる

信託契約とは、契約者が信託銀行などに対して財産を預けて運用管理を任せ、最終的に利益を得る契約です。

信託契約には、以下の2種類があります。

  • 商事信託
  • 民事信託

商事信託は信託会社や銀行に財産を預け、運用管理を任せるというものです。一方、民事信託は家族や親族など身の回りの人に財産を預けて、運用管理を任せる契約を指します。

信託した財産や利益を得る人は、本人でもパートナーでも構いません。ただし、パートナーを受益者とした場合、信託の設定時に贈与税が課税される場合があるので注意しましょう。

また、信託期間中には受益者に所得税などの諸税が発生します。

信託契約を結ぶ際の注意

信託契約を結ぶ際は、場合にもよりますが数十万円の初期費用がかかります。また親族に無断で財産を信託契約でパートナーに渡してしまうと、親族から反感を買う場合も。後のトラブルを避けるためにも、親族へあらかじめ了解を取っておいた方がよい場合もあるでしょう。

1-5.死因贈与契約を結ぶ

死因贈与契約とは、亡くなったことを条件に贈与を約束する契約です。死因贈与契約は遺言書と異なり、贈与する方とされる方の双方の意志があって成立するのが特徴。贈与される人は必ずしも親族である必要がないため、同性パートナーにも遺産を残せます。

死因贈与契約において贈与された遺産も、相続税の対象です。なお、契約は書面で取り交わしても口約束でも問題ないとされています。

【注意点】口約束だけだとトラブルのもとに、税金面でもデメリットあり

死因贈与契約は口約束でも結べますが、「言った言わない」のトラブルの原因になるためおすすめしません。また、親族に契約を証明するためにも書面で確実に残しておく方が良いでしょう。

なお、死因贈与契約による遺産の贈与は、遺言書にもとづく相続に比べて負担する税金が高くなるというデメリットもあります。たとえば遺言書による相続に不動産取得税はかかりませんが、死因贈与税の場合は不動産価格の3~4%が不動産取得税としてかかります。

2.ふたりが元気なうちにこんなこともしておいた方が安心

相続対策をする以外にも、万が一のためにあらかじめ取っておきたい手続きはあります。たとえば「認知症になったとき」や「死後の手続きが必要になったとき」などに、親族でなくパートナーに動いてもらいたい方は多いでしょう。

お互いが元気なうちにできる手続きをしておくことで、より将来に安心が持てます。

2-1.任意後見契約

任意後見契約とは、認知症などで判断能力が低下したときに自分の後見人になってもらうための契約です。カップルでお互いを後見人として設定することも可能。任意後見契約で認められるのは財産管理や、生活にかかる契約や手続きの代行などです。

とくに介護保険に関する手続きや介護認定などの手続きは、一般的に親族がいるなら親族の手続きを求められることが多数。しかし任意後見契約を結んでおけば、任意のパートナーに自分の一切を任せられるのです。

また、パートナーシップ制度を利用する際に任意後見契約をしていることが条件となる自治体も。任意後見契約は遺言書と同様、公証役場で作成できます。

2-2.死後事務委任契約

不慮の事故などで万が一亡くなってしまうことがあっても、死後事務委任契約を結んでおけばパートナーに死後の手続きを任せられます。たとえば、葬儀の手続きや遺品整理など。

遺言書ではあくまで財産に関することしか記載できません。一方、死後事務委任契約は遺産の相続以外に関して自由に取り決めておけるのが特徴です。どのようなお葬式にしたいか、パートナーにどうしてほしいか、といった希望を書き記せます。

死後事務委任契約もまた、公証役場で作成が可能です。また、公正証書の作成代行を請け負っている法人もありますので、活用を考えてみてはいかがでしょうか。

3-3.財産管理・療養看護についての委任契約

事故や病気、ケガで寝たきり状態になってしまったときのために、財産管理や療養看護についての委任契約を結んでおくのもよいでしょう。一般的に介護や看護を行い、身の回りの管理をするのは親族にあたる方です。

しかしパートナーに委任契約を結んでおけば、親族でなくパートナーに財産管理や看護をお願いできます。こうした委任契約を1回結んでおけば、入退院や介護施設への申し込みなどことあるごとに委任状を書く必要もありません。

制度の活用方法を考える必要がある

同性のパートナーは、現在のところ法定相続人として認められていません。しかし、それを補うための制度にはさまざまなものがあります。自分が寝たきりになったときや認知症になったとき、ひいては亡くなったときに一番そばにいてほしいのはパートナーでしょう。

親族と同等の権利をパートナーに与えるためにも、元気なうちかできる対策することをおすすめします。

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