角地・準角地の相続税評価について税理士が解説
タグ: #相続税評価交差点の角にある角地や曲がり角にある準角地は、宅地の2方面が道路に接しているため利便性が高くなります。そのため、相続税評価額の計算では利便性の向上に見合う金額を加算します。
ただし、2方面の道路のうちどちらを正面にするかを正しく判定しなければ、評価額の計算を間違えてしまいます。角地と準角地では加算の割合が異なることにも注意が必要です。
この記事では、角地と準角地の相続税評価額の計算方法について、相続税専門の税理士が詳しく解説します。
目次 [閉じる]
1.角地と準角地の違い
相続税評価額の計算方法を解説する前に、まず角地と準角地の違いを確認します。
角地は2本の道路が関わるのに対し、準角地は1本の道路が曲がっているだけという違いがあります。
- 角地:交差点の角にあって、正面と側面が道路に接している宅地
- 準角地:道路が交差しない曲がり角の内側にあって、正面と側面が道路に接している宅地
道路の交差が十字路でなくT字路になっている場合も角地として評価します。
2.角地・準角地の相続税評価額の計算方法
宅地の相続税評価額は、1㎡あたりの価額に面積をかけて計算します。
角地・準角地は宅地の2方面が道路に接していて利便性がよくなるため、1㎡あたりの価額を増額します。
2-1.正面路線の判定
角地・準角地の相続税評価額の計算では、まず、2方面の道路のうちどちらを基準にするかを判定します。基準となる道路を正面路線と呼び、もう一方の道路を側方路線と呼びます。
どちらの道路が正面路線になるかの判定は、それぞれの道路の路線価に基づきます。
実際にどちらを正面として宅地を使っているかは考慮しません。
路線価は単純に比較するのではなく、奥行価格補正率で補正した後の価額で比較し、その価額が高い方の道路を正面路線とします。
正面路線の判定は慎重に行わなければなりません。
判定を間違えると宅地の相続税評価額が正しく計算されず、最終的には相続税の税額も間違えることになります。
下記の例のようにそれぞれの道路の路線価の値が近い場合は、判定を間違えやすいので十分な注意が必要です。
それぞれの道路の路線価
- A路線:100千円
- B路線:102千円
奥行価格補正率で補正
- A路線:路線価100千円×奥行価格補正率1.00=100千円
- B路線:路線価102千円×奥行価格補正率0.98=99.96千円
100千円>99.96千円であるため、価額が高い方のA路線を正面路線とし、B路線を側方路線とします。
路線価を単純に比較しただけではB路線を正面路線と判定してしまうため、注意が必要です。
2-2.側方路線影響加算率で評価額を加算
角地・準角地の相続税評価額の計算では、利便性の向上を評価額に反映させるため側方路線影響加算率による加算を行います。
具体的には、正面路線の路線価による1㎡あたりの価額に、側方路線の路線価による1㎡あたりの加算額を加えます。
- 角地・準角地の1㎡あたりの価額=正面路線価による1㎡あたりの価額+側方路線価による1㎡あたりの加算額
- 正面路線価による1㎡あたりの価額=正面路線の路線価×奥行価格補正率
- 側方路線価による1㎡あたりの加算額=側方路線の路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率
側方路線影響加算率は、「普通住宅地区」、「普通商業・併用住宅地区」などの地区区分に応じて次の表のように定められています。
角地と準角地では側方路線影響加算率が異なります。
角地では2本の道路が交差するのに対し、準角地では1本の道路が曲がっているにすぎないため、加算率に差がつけられています。
側方路線の一部しか道路に接していない場合や、側方路線の路線価が途中で変わっている場合など特殊な評価の事例は、下記の記事を参照してください。
側方路線影響加算率は正面路線の判定で決まる! 判定から計算方法まで専門家がステップ別に徹底解説
2-3.準角地の曲がり角の角度は150度までが目安
準角地には、曲がり角の角度が直角より大きい鈍角になっているところもあります。
曲がり角の角度が大きく直線に近くなると、宅地の2方面が道路に接する効果はなくなります。
このような場合は、側方路線影響加算率による加算は行いません。
準角地として側方路線影響加算率による加算を行うのは、曲がり角の角度が 150度までの場合が目安となります。
3.角地・準角地の相続税評価額の計算例
ここまでの解説を踏まえて、角地(準角地)の相続税評価額の計算例をご紹介します。
路線価を使用した土地評価について基本的な事項は、「相続税路線価とは?調べ方・見方・土地評価額の計算方法を解説」を参照してください。
角地(準角地)の相続税評価額は次の順序で計算します。
- 正面路線の判定
- 1㎡あたりの評価額を計算する
- 1㎡あたりの評価額に面積をかける
(1)正面路線の判定
奥行価格補正率で補正した後の価額で正面路線を判定します。
- A路線:路線価100千円×奥行価格補正率1.00=100,000円
- B路線:路線価102千円×奥行価格補正率0.98=99,960円
価額が高い方のA路線を正面路線とし、B路線を側方路線とします。
(2)1㎡あたりの評価額を計算する
正面路線価による1㎡あたりの価額を計算します。
- 正面路線価による1㎡あたりの価額:
A路線の路線価100千円×奥行価格補正率1.00=100,000円…①
次に、側方路線価による1㎡あたりの加算額を求めます。
この宅地は「普通住宅地区」の「角地」であることから、側方路線影響加算率は0.03となります。(仮にこの宅地が「準角地」であれば、側方路線影響加算率は0.02となります。)
- 側方路線価による1㎡あたりの加算額(円未満切り捨て):
B路線の路線価102千円×奥行価格補正率0.98×側方路線影響加算率0.03=2,998円…②
正面路線価による1㎡あたりの価額に側方路線価による1㎡あたりの加算額を加えたものが、この宅地の1㎡あたりの評価額となります。
- 1㎡あたりの評価額:100,000円(①)+2,998円(②)=102,998円…③
(3)1㎡あたりの評価額に面積をかける
1㎡あたりの評価額に面積をかけて宅地の評価額を求めます。
- 宅地の評価額:102,998円(③)×面積600㎡=61,798,800円
以上の結果、この宅地の相続税評価額は61,798,800円となります。
4.土地の評価から税理士に依頼するなら
角地・準角地の相続税評価額の計算でわからないことがあれば、相続税に強い税理士に相談することをおすすめします。
通常、相続税の申告を依頼すると、土地の評価も併せてその税理士が行います。また、自分で申告ができるかどうかを検討されている方も、まずは、相続税申告を専門にしている税理士法人の無料の初回面談で土地の評価を含めいろいろ相続してみると良いかもしれません。
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