資産税に強い税理士法人・税理士事務所の仕事内容とは
タグ: #税理士の選び方近年、相続税の申告件数の増加などから、税理士の間で資産税業務に対する関心が高まっています。一般的な税理士事務所は競争が激化していることから、資産税業務に活路を見出す人もいるでしょう。
これから、相続税に強い税理士法人の代表税理士が、資産税専門の税理士の仕事内容や求められる人物像についてご紹介します。資産税業務に興味のある人はぜひご覧ください。
目次 [閉じる]
1.資産税とは
資産税とは、財産の保有や取得、売却によって発生する利益に対して課される税金を総称したものです。
国税では相続税、贈与税、譲渡所得に係る所得税(譲渡所得税)があてはまり、地方税では固定資産税や都市計画税があてはまります(資産税の種類や特徴については「『資産税』とは固定資産税や相続税などの総称」で詳しく解説しています)。
国税(財産の取得や売却に対して課税) | |
---|---|
相続税 | 被相続人が死亡して財産を相続したときに課税 |
贈与税 | 財産の贈与があったときに課税(1年分をまとめて申告) |
譲渡所得税 | 財産の譲渡があったときに課税(他の所得とまとめて申告) |
地方税(財産の保有に対して課税) | |
固定資産税・都市計画税 | 毎年1月1日時点の所有者に課税(償却資産税も含む) |
国税の資産税は、納税者が自ら申告する申告納税方式がとられていますが、地方税の資産税は、市区町村によって賦課される賦課課税方式がとられています。
なお、相続税や贈与税は、申告時に納税者が自ら財産の価値を評価して申告する必要があります。相続・贈与したものが現金であれば額面通りに申告できますが、不動産のように価値のはっきりしないものは納税者が価格を評価することになります。
2.資産税専門の税理士法人・税理士事務所の仕事内容
税理士法人・税理士事務所の中には、相続税などの資産税を専門にしている事務所があります。
顧客から依頼を受けて税務申告を行い、事前の節税対策も手掛ける点では、所得税や法人税の申告を行う一般の事務所と共通しています。
しかし、税理士が資産税に関与する機会は、相続や贈与などによって突発的に発生するという特徴があります。所得税や法人税のように定期的・継続的に発生するわけではありません。
ここでは、資産税専門の税理士事務所の業務内容と一般の税理士事務所との違いをご紹介します。
2-1.実際の税務申告
相続税は遺産を相続したときに課税されることから、被相続人(故人)が死亡して実際に相続が起こってから税務申告に着手します。
申告と納税の期限は原則、死亡から10か月後です。顧客である相続人の協力を得ながら、限られた時間で法定相続人の確定や財産評価などさまざまな業務を行う必要があります。申告書を提出した後も、税務調査が実施されれば立ち会います。
贈与税についても同様で、贈与があってから申告期限(翌年3月15日)までに申告業務を終える必要があります。
2-2.事前の節税対策
資産税は税額が高額になることが多く、事前の節税対策に対するニーズもあります。相続税を節税するために、財産の組み替えや生前贈与を行うこともあります。
たとえば、相続税の節税対策として次のような取り組みが行われますが、実行するときには税務上のアドバイスをする必要があります。
- 現預金を活用して不動産投資を行う
- 一時払いで生命保険に加入する
- 生前に財産を贈与する
遺産の相続では、顧客の家族関係などを踏まえて、誰にいくら相続させたいかといった希望を聞いておくことも重要です。たとえ相続税を節税できたとしても、遺産の分け方が顧客の望む結果でなければ、信頼を失うことになりかねません。
2-3.一般の税理士事務所との違い
一般の税理士事務所と資産税専門の税理士事務所では、業務のサイクルに違いがあります。
所得税や法人税の申告業務を行う一般の税理士事務所は業務の流れがほぼ決まっています。たとえば、確定申告や法人の決算などは、毎年いつどのような仕事があるか予測ができます。
しかし、資産税専門の税理士事務所は、相続をきっかけに業務が始まるため突発的な業務が多くなりがちです。事前の節税対策も、いつ依頼があるか決まっているわけではありません。
業務サイクルのほかには、他の税理士の申告内容を再確認して更正を請求する機会が多いことがあげられます。
相続税では、財産、とりわけ不動産の評価方法によって税額が大きく異なります。資産税の申告に慣れていない事務所では、後に税務調査を受けることがないように財産評価を高めに見積もることもあります。
その結果、更正の請求で多額の還付を受けるケースが多くなっています。資産税専門の事務所の中には、相続税の還付を専門にしているところもあるほどです。
3.資産税専門の税理士法人が求める人物像
2015年に相続税の基礎控除が引き下げられたことで、相続税が課税される人の範囲が広くなりました。節税対策に関心を持つ人も増えています。これを背景に、資産税専門の税理士事務所の求人ニーズが高まっています。
資産税専門の税理士法人が求める人物像としては、まず税理士試験で「相続税法」に合格していることがあげられます。合格していなくても、受験予定であるとか、過去に勉強していたことがあれば大丈夫です。
また、富裕層には企業オーナーも多く、個人と会社の間で資産を貸し借りしているケースが多くみられます。会社の株式の贈与や相続では、株式の評価も必要になります。法人税や企業会計の知識があるとなお良いでしょう。
このほか、一般の事務所とは異なり個人の顧客が多いことから、より深いコミュニケーション能力が求められます。確定申告を含めて税務申告はまったく初めてという人や、独立独歩で事業を行ってきた経営者など顧客の属性は多岐に渡ります。
富裕層に応対するときは、節税だけでなく資産を守るという発想も大切です。先祖代々資産を受け継いできた人たちは、いかにして資産を次の代に引き継いでいくかを重視しています。仮に相続税を節税できても資産価値が低くなっては意味がないと考える傾向もあります。
4.まずは会社説明会などで実際の様子を見てみることも
ここまで、資産税専門の税理士事務所の仕事内容や求められる人物像についてご紹介してきました。
とはいえ、この記事だけではイメージが掴みにくいという方もいるでしょう。
税理士事務所は小・中規模の事務所が多く、一般企業の採用活動のように大きな就職活動イベントやセミナーに参加することはあまりありません。
ただ、事務所独自で会社説明会や職場見学を実施しているところも一部あるので、そういったところを探して参加してみるのが実際の職務等について詳しく知ることが出来る一番の近道かもしれません。
資産税専門の税理士法人チェスターでも、「興味はあるけどまずは詳しく業務内容を知りたい」という方に向けてオープン採用面談会を実施しています。採用とは関係ないため、気軽に現場で働く人間に業務や職場の雰囲気を質問することが可能です。
こういったところから具体的に資産税専門の税理士の業務を知っていくと良いでしょう。
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