相続手続きに必要な書類を死亡届から相続税申告まで種類別に解説
タグ: #相続手続き家族や身近な人が亡くなることは悲しくつらいことです。しかし、そのような状況でも死亡届の提出から遺産相続や相続税申告に至るまで、遺族はさまざまな手続きをしなければなりません。
手続きは期限のあるものが大半で、定められた期間でさまざまな書類を集めて手続きをします。相続手続きに必要な書類は普段目にすることがないものばかりで、そもそも何を用意すればよいのか理解できない場合も少なくありません。
この記事では、死亡届の提出から相続税の申告まで、家族や身近な人が亡くなったときのさまざまな手続きで必要な書類とその取り寄せ方法をご紹介します。
この記事を読んでいただくと、相続手続きで何を用意すればよいかが理解できて、手続きをスムーズに進めることができるでしょう。
目次 [閉じる]
1.亡くなってからすぐに行う手続きと年金・社会保険の手続き
この章では、家族や身近な人が亡くなってからすぐに行う必要がある手続きや、年金・社会保険の手続きとして以下の8つの手続きに必要な書類をご紹介します。
- 死亡届の提出
- 火葬許可の申請
- お墓への納骨
- 健康保険の資格喪失手続き
- 葬祭費・埋葬料などの請求
- 高額療養費の請求
- 年金の資格喪失手続き・未支給年金の請求
- 遺族年金の請求
1-1.死亡届の提出
手続きが必要な人 | 全員必要 |
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手続きの期限 | 死亡の事実を知った日から7日以内 (国外で死亡した場合は3か月以内) |
必要な書類 | 死亡診断書 (事故で死亡した場合は死体検案書) |
提出先 | 亡くなった人の死亡地または本籍地の市区町村役場 (または提出する人の住所の市区町村役場) (国外で死亡した場合は滞在国の大使館や総領事館または本籍地の市区町村役場) |
家族や身近な人が亡くなった場合は、原則として7日以内に市区町村役場に死亡届を提出します。提出できる人は、亡くなった人の親族、同居者、家主、地主、後見人などです。死亡届の届出人と実際に窓口に提出する人は異なっていてもよいため、葬祭業者が代行して提出することが一般的です。
死亡届の提出には医師による死亡診断書(または死体検案書)が必要です。実際には下の図のように死亡診断書と死亡届は1枚の用紙になっています。医師から死亡診断書をもらったら、死亡届に必要事項を記入します。
死亡診断書はコピーを忘れずに
死亡診断書は、死亡保険金や遺族年金の請求などさまざまな手続きで必要になります。死亡届を提出すると死亡診断書も一緒に提出することになるため、手元には残りません。死亡診断書はあらかじめ複数枚発行してもらうか、コピーを取っておくようにしましょう。
1-2.火葬許可の申請
手続きが必要な人 | 全員必要 |
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手続きの期限 | 通常は死亡届の提出と同時に申請 (国外で死亡した場合は3か月以内) |
必要な書類 | 火葬許可申請書 死亡届 |
提出先 | 死亡届と同じ |
遺体を火葬するときは火葬許可証が必要です。
通常は、死亡届の提出と同時に火葬許可の申請を行います。市区町村によっては、死亡届を提出するだけで火葬許可証が発行される場合もあります。死亡届の提出と同様に、葬祭業者が手続きを代行することが一般的です。
火葬が終わると埋葬許可証が発行されます。納骨のときに必要になるので、遺骨と一緒に大切に保管しましょう。
1-3.お墓への納骨
手続きが必要な人 | 全員必要 |
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手続きの期限 | 納骨をするとき |
必要な書類 | 埋葬許可証(または火葬証明書) |
提出先 | 墓地や納骨堂の管理者 |
遺骨をお墓や納骨堂に納めるときは、火葬のときに発行された埋葬許可証が必要です。
納骨までの間に埋葬許可証を紛失した場合は、火葬許可を申請した市区町村役場で再発行を受けるか、火葬をした斎場で火葬証明書を申請することができます。
1-4.健康保険の資格喪失手続き
手続きが必要な人 | 全員必要 |
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手続きの期限 | 国民健康保険・後期高齢者医療制度:14日以内 健康保険(被用者保険):5日以内 |
必要な書類 | 資格喪失届 健康保険被保険者証 |
提出先 | 国民健康保険・後期高齢者医療制度:亡くなった人の住所の市区町村役場 健康保険(被用者保険):勤務先または加入している健康保険組合 |
国民健康保険・後期高齢者医療制度については、死亡届を提出すると自動的に健康保険の資格喪失手続きがされる自治体もあります。ただし、資格喪失手続きが不要でも保険証は返さなければなりません。
会社員や公務員などで健康保険(被用者保険)に加入していた場合は、勤務先が手続きを行います。
世帯主が亡くなったときは、扶養されていた人についても手続きが必要です。詳しくは、資格喪失手続きのときに確認してください。
1-5.葬祭費・埋葬料などの請求
健康保険や後期高齢者医療制度からは、葬祭費や埋葬料などが支給されます。ただし、亡くなった人が加入していた制度によって、支給の条件や金額、請求に必要な書類が異なります。
ここでは制度ごとに手続きの方法をご紹介します。前項の健康保険の資格喪失手続きと同時に手続きをするとよいでしょう。
1-5-1.国民健康保険・後期高齢者医療制度の葬祭費
手続きが必要な人 | 葬儀を行った人 |
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手続きの期限 | 葬儀を行ってから2年以内 |
必要な書類(一例) | 申請書 死亡診断書のコピーや埋葬許可証など死亡の事実がわかるもの 葬儀費用の領収書 |
提出先 | 亡くなった人の住所の市区町村役場 |
(必要な書類は一例です。実際に必要な書類については提出先の窓口で確認してください)
亡くなった人が国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた場合は、葬儀を行った喪主などに葬祭費が支給されます。金額は自治体によって異なりますがおおむね3~5万円です。
1-5-2.健康保険(被用者保険)の埋葬料など
手続きが必要な人 | 埋葬を行った人 |
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手続きの期限 | 死亡から2年以内 (埋葬費は埋葬を行った日の翌日から起算) |
必要な書類(一例) | 申請書 事業主による死亡の証明 埋葬費用の領収書(埋葬費の場合) |
提出先 | 加入している健康保険組合(または勤務先) |
(必要な書類は一例です。実際に必要な書類については提出先の健康保険組合等に確認してください)
会社員や公務員など健康保険(被用者保険)に加入している人が死亡した場合は、健康保険組合から埋葬料または埋葬費が支給されます。退職した人でも、退職後3か月以内であれば在職中と同じように支給されます。
埋葬料は、亡くなった人に生計を維持されていて埋葬を行った人に5万円が支給されます。
埋葬費は、亡くなった人に生計を維持されていた人がいない場合に、実際に埋葬を行った人に5万円を限度として実費が支給されます。
被保険者の扶養家族が死亡した場合は、家族埋葬料として5万円が支給されます。
なお、業務上の理由により死亡した場合は労災保険から葬祭料が支給されます。手続きについては勤務先に確認してください。
1-6.高額療養費の請求
手続きが必要な人 | 一定額以上の医療費の負担があった人 |
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手続きの期限 | 診療月の翌月から2年以内 |
必要な書類(一例) | 高額療養費支給申請書 病院・薬局の領収書 亡くなった人と請求する人の関係がわかる戸籍謄本など |
提出先 | 国民健康保険・後期高齢者医療制度:亡くなった人の住所の市区町村役場 健康保険(被用者保険):加入している健康保険組合 |
(必要な書類は一例です。実際に必要な書類については提出先に確認してください)
医療費の負担を軽減するため、病院や薬局での支払いが一定の上限額を超えた人には、その超えた部分が払い戻されます。上限額は年齢や所得、受診の状況によって異なるため、厚生労働省や健康保険組合のホームページなどで事前に確認しておくとよいでしょう。
1-7.年金の資格喪失手続き・未支給年金の請求
手続きが必要な人 | 亡くなった人が年金をもらっていた場合 |
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手続きの期限 | できるだけ早く |
必要な書類 | 年金受給権者死亡届(報告書) (基礎年金番号とマイナンバーが結び付いている場合は提出不要) 亡くなった人の戸籍謄本または死亡診断書のコピーなど 未支給年金・未支払給付金請求書 亡くなった人の年金証書 亡くなった人と請求する人の関係がわかる戸籍謄本など 亡くなった人の住民票除票の写し 請求者の世帯全員の住民票の写しなど 受け取りを希望する預金口座の通帳など 生計同一についての別紙の様式(亡くなった人と請求する人の世帯が異なる場合) |
提出先 | 年金事務所または街角の年金相談センター |
年金をもらっている人が死亡した場合は、年金受給権者死亡届(報告書)を提出して年金の支給を止める必要があります。ただし、基礎年金番号とマイナンバーが結びついている場合は省略できます。
年金は亡くなった月の分までもらう権利がありますが、年金の支給は翌月以降になるため未支給の年金が必ず発生します。亡くなった人と同一生計であった遺族は、未支給年金・未支払給付金請求書を提出して未支給の年金をもらうことができます。
未支給年金・未支払給付金請求書の様式は、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
死亡した方の未払い年金を受け取ることのできる遺族がいるとき|日本年金機構
1-8.遺族年金の請求
手続きが必要な人 | 亡くなった人に生計を維持されていた人(配偶者など) |
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手続きの期限 | 死亡から5年以内 |
必要な書類 | 年金請求書 年金手帳 戸籍謄本 世帯全員の住民票の写し 亡くなった人の住民票除票の写し(世帯全員の住民票の写しに含まれる場合は不要) 請求者の所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票など収入が確認できる書類 子の在学証明書または学生証など(高校生の子がいる場合) 死亡診断書(死体検案書)のコピー 受け取りを希望する預金口座の通帳など 他の公的年金で年金をもらっている場合は年金証書 |
提出先 | 遺族基礎年金のみ:亡くなった人の住所の市区町村役場 遺族厚生年金もある場合:年金事務所または街角の年金相談センター |
(死亡の原因が交通事故など第三者の行為による場合は別途書類が必要です)
亡くなった人に生計を維持されていた人は遺族年金をもらうことができます。ただし、請求の手続きをしなければもらうことはできません。
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。亡くなった人が加入していた年金制度や18歳未満の子供がいるかどうかによって、いずれかまたは両方の年金をもらうことができます。
- 遺族基礎年金
遺族に18歳になって年度末(3月31日)を経過するまでの子供(または障害のある20歳未満の子供)がいる場合に、配偶者または子供に支給されます。子供のいない配偶者は対象外です。 - 遺族厚生年金
亡くなった人が厚生年金に加入していた場合に支給されます。遺族基礎年金の支給対象ではない子供のいない配偶者や父母なども対象になります。
受給できる遺族年金の種類や金額については、最寄りの年金事務所・街角の年金相談センターで確認することをおすすめします。
年金請求書の様式は、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
2.遺産相続の手続きに必要な書類
続いて、遺産相続の手続きとして以下の8つの手続きに必要な書類をご紹介します。
- 相続人の調査
- 遺言書の検認
- 相続放棄の申述
- 預金の引き出し
- 保険金の請求
- 自動車の名義変更
- 不動産の相続登記
- 相続税の申告
遺産相続にはさまざまな手続きがあり、書類もそれだけ多くの種類が必要になります。しかし、共通して使えるものも多くあります。
この章では、まず相続手続きを始める前に準備しておきたい共通の書類をご紹介して、続いて手続きごとに必要な書類をご紹介します。
2-1.相続手続きを始める前に準備しておきたい共通の書類
相続手続きを始める前に以下の書類を準備しておくと、その後の手続きをスムーズに進めることができます。
亡くなった人の身元や相続人との関係を証明する戸籍関係書類 | 亡くなった人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本 相続人全員の戸籍謄本 住民票除票の写し・戸籍の附票の写し |
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遺言書があるときに必要な書類 | 遺言書(自筆証書遺言(法務局以外で保管していたもの)・秘密証書遺言は家庭裁判所の検認済証明書も必要) 遺言執行者の選任審判書謄本(裁判所で遺言執行者を選任した場合) |
遺言書がなく話し合いで遺産を分ける時に必要な書類 | 遺産分割協議書 相続人全員の印鑑証明書 |
2-1-1.亡くなった人の身元や相続人との関係を証明する戸籍関係書類
遺産相続の手続きでは、亡くなった人の身元や相続人との関係を証明する書類として、以下のものが必要です。
- 亡くなった人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 住民票除票の写し・戸籍の附票の写し
亡くなった人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場の戸籍担当の窓口で相続に使うことを伝えれば発行してもらえます。
ただし、本籍地の市区町村が途中で変わっている場合は、新旧両方の市区町村ごとに戸籍謄本を取り寄せる必要があります。遠隔地などでは取り寄せに時間がかかるため、早めに準備することをおすすめします。
相続人全員の戸籍謄本も本籍地の市区町村役場で発行してもらえます。亡くなった人と同じ戸籍に記載されている人の分は提出しなくてもよい場合があります。
戸籍謄本を取り寄せる方法については下記の記事を参照してください。郵送で取り寄せることもできます。
相続手続きに必要な戸籍謄本の種類と取得方法を徹底解説!どのような時に必要で有効期限はある?
住民票除票の写しは死亡により住民登録が抹消されたことを示すもので、居住地の市区町村役場で発行されます。
戸籍の附票の写しは戸籍に記載されている人の住所が記録されているもので、本籍地の市区町村役場で発行されます。
「法定相続情報一覧図の写し」で相続手続きを簡単に
遺産相続の手続きではこれまで、提出先ごとに戸籍関係書類を準備する必要がありました。手続きが終われば返してもらえることもありますが、あらかじめ何通も準備することが相続人の負担になっていました。
相続手続きを簡単にするため、戸籍関係書類に代わるものとして新たに法定相続情報一覧図の写しが発行されるようになりました。法務局に戸籍関係書類を提出すれば無料で何枚でも発行できます。
戸籍関係書類を何通も準備する必要がなくなるだけでなく、提出先の機関で亡くなった人の家族関係を容易に確認できるメリットもあります。
ただし、相続手続きで法定相続情報一覧図の写しが利用できるかどうかは、あらかじめ提出先に確認してください。
法定相続情報一覧図の写しの発行手続きについては、「法定相続情報証明制度で相続手続きが簡単に!利用方法を徹底解説」を参照してください。
2-1-2.遺言書があるときに必要な書類
亡くなった人が遺言書を残している場合は、原則として遺言書に書かれているとおりに遺産を相続します。遺言書の種類には、主に自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言があります。
- 自筆証書遺言:自筆で作成する遺言書
- 秘密証書遺言:内容は秘密にしたまま公証人に存在のみ証明してもらう遺言書
- 公正証書遺言:公証役場で公証人に作成してもらう遺言書
遺言書にしたがって遺産を分け合う場合は、さまざまな手続きで遺言書の提出が必要になります。
自筆証書遺言と秘密証書遺言はそのままでは相続手続きに使うことができません。開封する前に家庭裁判所での検認手続きが必要で、検認されたことを証明する検認済証明書があってはじめて相続手続きに使うことができます。遺言書の検認手続きについては「2-3.遺言書の検認」で詳しくお伝えします。
自筆証書遺言を法務局で保管していた場合は、遺言書の代わりに遺言書情報証明書を提出します。この場合は検認手続きを受ける必要はありません。
なお、家庭裁判所で遺言執行者を選任した場合は、遺言執行者の選任審判書謄本も必要になります。
2-1-3.遺言書がなく話し合いで遺産を分けるときに必要な書類
遺言書がない場合は、相続人どうしで遺産分割協議を行って遺産の分け方を決めます。民法の法定相続分に従うこともできますが、不動産のように分けられない財産があるほか生前贈与も考慮する必要があるため、実際には遺産分割協議で決めることがほとんどです。
遺言書がある場合でも、遺産分割協議で相続人の全員が合意すれば遺言書とは異なる方法で遺産を分けることができます。
遺産分割協議で遺産を分ける場合は、協議の結果を遺産分割協議書に書き残します。遺産分割協議書はさまざまな手続きで提出が求められます。
遺産分割協議書には、相続人の全員が合意したことの証明として実印を押印します。そのため、相続人全員の印鑑証明書もあわせて提出します。
遺産分割協議書の作成方法については、下記の記事を参照してください。
遺産分割協議書とは?作成までの流れや書き方を解説【ひな形付】
2-2.相続人の調査
調査が必要な人 | 全員必要 |
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調査の期限 | 遺産相続の手続きを始める前にできるだけ早く |
必要な書類 | 亡くなった人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本 |
提出先 | なし |
遺産相続の手続きを始める前に、まず、相続人が誰であるかを調査しなければなりません。
相続人が確定しなければ、誰がいくら遺産をもらうかを決めることもできません。相続人の調査はどこかに届け出をするものではありませんが、必ず行わなければなりません。
相続人は民法で次の順位が定められています。亡くなった人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本をもとに、誰が相続人になるかを確認します。
- 常に相続人:配偶者
- 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫)
- 第2順位:父母(父母が亡くなっている場合は祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)
第3順位の相続人が相続する場合は、亡くなった人の両親の出生から死亡まで連続した戸籍謄本も取り寄せて、他に兄弟姉妹がいないかを確認します。
相続人調査をした結果、隠し子など想定していない相続人が明らかになることもあります。想定外の相続人であっても、その人を除いて遺産相続の手続きを進めることはできません。
2-3.遺言書の検認
手続きが必要な人 | 自筆証書遺言(法務局以外で保管していたもの)、秘密証書遺言がある場合 |
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手続きの期限 | 遺産相続の手続きを始める前にできるだけ早く |
必要な書類 | 遺言書の検認の申立書 遺言書(自筆証書遺言、秘密証書遺言) 亡くなった人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本 相続人全員の戸籍謄本 |
必要な費用 | 1通につき800円(収入印紙を申立書に貼付) 連絡用の郵便切手 |
提出先 | 亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 (参考:裁判所|裁判所の管轄区域) |
自筆証書遺言(法務局以外で保管していたもの)と秘密証書遺言を相続手続きに使う場合は、家庭裁判所で遺言書の検認をする必要があります。
遺言書の検認とは、相続人に対して遺言書の存在とその内容を知らせ、遺言書の内容を明確にして偽造や変造を防ぐための手続きです。
検認が終わると遺言書に検認済証明書が添付され、相続手続きで使うことができるようになります。
手続きには遺言書の検認の申立書のほか戸籍謄本が必要です。ただし、亡くなった人と相続人の関係によって必要となる戸籍謄本の種類は異なります。詳しくは、裁判所のホームページ「遺言書の検認」を参照してください。
遺言書の検認の申立書の様式と記入例は、裁判所のホームページに掲載されています。
検認手続きの詳しい解説は「自宅で遺言書を見つけたら検認が必要!検認手続きについて解説します」を参照してください。検認には1か月以上かかるため、できるだけ早く家庭裁判所に申し立てる必要があります。
2-4.相続放棄の申述
手続きが必要な人 | 亡くなった人に借金があったなど相続放棄をしたい場合 |
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手続きの期限 | 相続があったことを知った日から3か月以内 |
必要な書類 | 相続放棄の申述書 亡くなった人の住民票除票の写しまたは戸籍の附票の写し 亡くなった人と相続放棄する人の戸籍謄本 |
必要な費用 | 申述人1人につき800円(収入印紙を申立書に貼付) 連絡用の郵便切手 |
提出先 | 亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 (参考:裁判所|裁判所の管轄区域) |
亡くなった人に借金があって相続人が負担したくない場合は相続放棄をします。通常は、死亡から3か月以内に家庭裁判所に申述します。
手続きには相続放棄の申述書のほか戸籍関係書類が必要です。ただし、亡くなった人と相続人の関係によって必要となる戸籍謄本の種類は異なります。「相続放棄するのはどんなとき? 手続き・必要書類・期限など徹底解説」では、亡くなった人と相続人の関係ごとに必要となる戸籍謄本を詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
相続放棄の申述書の様式と記入例は、裁判所のホームページに掲載されています。
相続の放棄の申述書(成人)
相続の放棄の申述書(未成年者)(相続放棄する人が未成年者で法定代理人・特別代理人が申請するとき)
2-5.預金の引き出し
手続きが必要な人 | 亡くなった人が預金口座を保有していた場合 |
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手続きの期限 | できるだけ早く |
必要な書類 | 金融機関所定の届出書 預金通帳・キャッシュカードなど 手続きをする人の身分証明書・印鑑証明書 |
【遺言書がある場合】 遺言書 検認済証明書 亡くなった人の死亡時の戸籍謄本 遺言執行者の選任審判書謄本(裁判所で遺言執行者を選任した場合) (戸籍謄本に代えて法定相続情報一覧図の写しでも可) | |
【遺産分割協議をした場合】 遺産分割協議書 亡くなった人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書 (戸籍謄本に代えて法定相続情報一覧図の写しでも可) | |
提出先 | 預け入れ先の金融機関 |
預金名義人の死亡が金融機関に知られると預金は凍結され、引き出しや口座引き落としができなくなります。預金の凍結は、ある相続人が勝手に預金を引き出すことで起こるトラブルを防ぐ目的で行われます。凍結された預金は原則として相続人全員が同意するまで引き出すことができません。
預金の引き出しに必要な主な書類は戸籍謄本と遺言書または遺産分割協議書です。
下記の記事でご紹介するように、遺産分割協議書の代わりに相続同意書を提出すればよい場合もあります。詳細は預け入れ先の金融機関で確認してください。
「相続同意書」とは名義変更の際に他の相続人の同意を証明する書類
なお、遺産分割前の相続預金の払戻し制度では、遺産分割協議ができていなくても預金の一部を引き出すことができます。詳しい内容は、下記の記事を参照してください。
2-6.保険金の請求
手続きが必要な人 | 亡くなった人が死亡保険の被保険者になっていた場合 |
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手続きの期限 | 死亡から3年以内 |
必要な書類(一例) | 保険会社指定の請求書 保険証券 死亡診断書(死体検案書)のコピー 保険金受取人の本人確認書類 |
提出先 | 契約先の保険会社 |
(必要な書類は一例です。実際に必要な書類については保険会社の担当者に確認してください)
亡くなった人が死亡保険の被保険者になっていた場合は、契約上の保険金受取人が死亡保険金を受け取ります。
死亡保険金は受取人固有の財産であるため、遺産相続で分け合う対象ではありません。保険金の請求手続きに他の相続人の合意は必要なく単独でできます。
保険金請求の期限は死亡から3年以内ですが、できるだけ早く手続きをしましょう。
2-7.自動車の名義変更
手続きが必要な人 | 亡くなった人が自動車を保有していた場合 |
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手続きの期限 | できるだけ早く |
必要な書類 (普通車) | 所定の申請書 新しい所有者の印鑑証明書 車検証 車庫証明書(使用の本拠が変わる場合) 新しい使用者の住民票の写しなど(所有者と使用者が異なる場合) |
【遺言書がある場合】 遺言書 検認済証明書 亡くなった人の死亡時の戸籍謄本 | |
【遺産分割協議をした場合】 遺産分割協議書 亡くなった人の死亡の事実と相続人全員がわかる戸籍謄本 | |
必要な書類 (軽自動車) | 所定の申請書 車検証 亡くなった人の死亡の事実と相続人全員がわかる戸籍謄本 新しい使用者の住民票の写しなど |
提出先 | 普通車:新しい所有者の住所を管轄する運輸支局または自動車検査登録事務所 軽自動車:新しい所有者の住所を管轄する軽自動車検査協会の事務所・支所 |
亡くなった人が所有していた自動車は、誰かが引き継ぐ場合だけでなく処分する場合でも相続の手続きをする必要があります。
遺産分割協議書は、相続人が作成したもののほか、国土交通省ホームページに掲載されている様式を使うこともできます。遺産分割協議書には相続人の全員が実印を押印する必要があります。
遺産分割協議書(国土交通省ホームページ 自動車:登録手続き)
自動車の価格が100万円以下であることが証明できる場合は、遺産分割協議書のかわりに簡便な書式の遺産分割協議成立申立書を提出することができます。遺産分割協議成立申立書には、自動車を引き継ぐ人だけが押印すればよいことになっています。
相続手続きをしてナンバープレートが変わる場合はその場で付け替えをするため、相続する自動車で手続きに行く必要があります。
なお、亡くなった人の自動車であっても、所有者の名義は自動車販売会社やファイナンス会社などになっている場合があります。このようなときは、車検証に記載されている所有者に連絡して手続きを依頼します。
2-8.不動産の相続登記
手続きが必要な人 | 亡くなった人が不動産を保有していた場合 |
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手続きの期限 | 相続したことを知った日から3年以内(2024年4月1日施行) (施行日前に相続した不動産については2027年3月31日まで) |
必要な書類 | 登記申請書 亡くなった人の最後の戸籍謄本(死亡の記載があるもの) 亡くなった人の住民票除票の写しまたは戸籍の附票の写し 不動産を取得する人の戸籍謄本・住民票の写し 相続関係説明図 固定資産評価証明書 (戸籍謄本に代えて法定相続情報一覧図の写しでも可) |
【遺言書がある場合】 遺言書 検認済証明書 | |
【遺産分割協議をした場合】 遺産分割協議書 亡くなった人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書 (戸籍謄本に代えて法定相続情報一覧図の写しでも可) | |
必要な費用 | 登録免許税(相続登記では固定資産税評価額の0.4%) (参考:「不動産を相続した方へ!相続登記をするときにかかる費用」 |
提出先 | 不動産の所在地を管轄する法務局 (参考:法務局|管轄のご案内) |
不動産を相続する場合は、相続登記(不動産の名義変更)をします。
これまで、相続登記は義務ではなく期限も定められていませんでした。しかし、相続登記をしなければ世代が進むごとに関係する相続人の数が増えて手続きが複雑になります。相続登記がされずに長期間放置された不動産の中には所有者がわからなくなっているケースもあります。
相続登記がされないことによる不利益が目立ってきたことから、2024年4月1日から相続登記が義務づけられることになりました。子や孫の代で無用の混乱を起こさないためにも、相続登記はできるだけ早く行うようにしましょう。
相続登記にはさまざまな種類の書類が必要です。詳しい内容は下記の記事を参照してください。
自分でできる!相続登記の必要書類とケース別追加資料完全ガイド
2-9.相続税の申告
手続きが必要な人 | 課税対象の遺産の総額が基礎控除額を超える場合 |
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手続きの期限 | 死亡から10か月以内 |
必要な書類 | 相続税の申告書 亡くなった人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本 相続人全員の戸籍謄本 (戸籍謄本に代えて法定相続情報一覧図の写しでも可) 相続財産についての添付書類 申告者の本人確認書類(マイナンバーも含む) |
【遺言書がある場合】 遺言書 検認済証明書 | |
【遺産分割協議をした場合】 遺産分割協議書の写し 相続人全員の印鑑証明書 | |
提出先 | 亡くなった人の最後の住所地を管轄する税務署 (参考:管轄税務署を検索) |
遺産の総額が基礎控除額と呼ばれる一定の金額を超える場合は相続税の申告をしなければなりません。基礎控除額は、以下のとおり3,000万円を基礎として法定相続人の数に応じて増えていきます。
相続税の申告書は自分で作成することもできますが、相続税の申告が必要な人の9割は税理士に依頼しているとも言われています。
遺産の価値の評価方法やさまざまな税制上の特例に関する知識が求められるため、相続税申告書の作成は税理士に依頼することをおすすめします。そのうえで、戸籍謄本や遺言書、遺産分割協議書などの必要書類を自身で用意して税理士に提出するとよいでしょう。
戸籍謄本については死亡から10日以上経ってから発行されたものが必要です。戸籍謄本のかわりに法定相続情報一覧図の写しを提出することもできますが、相続税の申告では実子と養子が区別されていて図形式で示されているものに限られます。
相続財産についての添付書類は、主に金融機関の残高証明書や不動産の固定資産評価証明書などがあげられます。その他必要なものについては「税務署へ相続税申告する際の必要書類と添付書類【チェックリスト付】」も参照してください。
>>【相続税専門】相続税申告のご相談なら税理士法人チェスター
3.相続手続きに必要な書類を知るための参考書籍2選
いざ相続が起こったら、インターネットで調べるよりも本があったほうが安心できるという方もいらっしゃるでしょう。そのような方のために、相続手続きに必要な書類を知るための参考書籍を2冊ご紹介します。
- 「身近な人が亡くなった後の手続のすべて」(Amazonの書籍ページにジャンプします)
亡くなった直後の手続きから遺産相続・相続税申告までさまざまな手続きを網羅しています。届け出書類のサンプルが充実していて、どこに何を書けばよいかが一目でわかります。生前対策についての解説もあり、身近な人が亡くなる前でも役立つ一冊です。
- 「これ一冊で安心 相続の諸手続き・届出・税金のすべて」(Amazonの書籍ページにジャンプします)
相続に関する手続きや届け出について、届け出書類のサンプルを示して詳しく解説しています。誰が相続人になるか、相続税が課税されるかどうかが簡単に判定でき、遺産相続に関する疑問や心配が解決できるように構成されています。遺言や節税対策に関する解説も役に立ちます。
4.書類の収集や手続きは専門家に任せることもできる
ここまで、家族や身近な人が亡くなったときのさまざまな手続きで必要な書類とその取り寄せ方法をご紹介しました。
遺産相続では複数の手続きを同時に行うこともあります。身近な人が亡くなったことで精神的な余裕がない中、「あれもこれも」と混乱しがちになります。
精神的・肉体的に余裕がなく各種相続手続きや書類収集が難しい場合には、司法書士などの専門家に代行を依頼することもできます。
相続手続き専門の司法書士法人チェスターはご予算やお客様のご希望に応じて丸ごとお任せ頂いたり一部のみお任せ頂いたり柔軟な対応が可能ですので、相続手続きにお困りならご相談ください。
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