別荘地の相続税評価の具体的方法を解説
タグ: #相続税評価亡くなった人の遺産に別荘地があった場合、その別荘地も相続税の課税対象になります。
別荘地は自宅から離れているだけでなく、購入したときよりも価値が下がっていて、どちらかといえば相続したくない財産になっていることもあります。しかし、価値が下がった別荘地であっても相続税の課税対象であり、相続税を計算するときには評価をしなければなりません。
この記事では、別荘地の相続税評価の具体的方法を解説します。
目次 [閉じる]
1.別荘地も当然に相続税の対象になる
バブル期を中心に数多くの別荘地が開発・販売されました。週末や長期休暇を過ごすために購入する人がいた一方、将来の値上がりを見込んで購入する人もいました。
しかし、バブル経済の崩壊とその後の長い不景気から、別荘地の価格は急落しました。利用価値も下がっていて、建物が建っていればまだよい方で、建物も建てられずに荒れ地になっている別荘地もあります。
このように、別荘地の大半は購入したときよりも価値が下がっていますが、所有者が亡くなれば当然に相続税の対象になります。買ったときからの価値の増減は関係ありません。
2.別荘の所在地が「路線価地域」か「倍率地域」かを判断することがスタート
別荘地の土地部分の相続税評価をするときは、まず「地目」を確認します。
地目とは「宅地」、「山林」、「原野」、「雑種地」などの区分をさします。相続税評価では、登記事項証明書の地目や固定資産税評価の地目にかかわらず、所有者が亡くなった時点の現況で判断します。
2-1.地目が宅地である場合
地目が宅地である場合は、別荘の所在地が「路線価地域」と「倍率地域」のどちらにあてはまるかを確認します。
大まかにいえば、市街地は「路線価地域」、郊外は「倍率地域」という分け方ができますが、詳細は国税庁ホームページに掲載されている「路線価図」または「評価倍率表」から確認する必要があります。
下記の記事の前半部分では「路線価地域」か「倍率地域」を判断する方法を図解つきで解説しています。調べたい土地が路線価図に掲載されていて路線価がつけられていれば「路線価地域」、それ以外の場合は「倍率地域」と判断できます。
倍率地域の評価方法を一から解説! 評価のための3STEPと注意したい5つのこと
2-2.地目が宅地以外の場合
別荘地の地目が山林、原野の場合は、宅地に準じて評価します。具体的には宅地の「倍率地域」に準じた方法で評価します。
別荘地の地目が雑種地の場合は、近隣の標準的な宅地の固定資産税評価額を調べて、所定の宅地の評価倍率をかけた金額をもとに評価します。
3.評価の方法は通常の土地や建物の相続税評価と同じ
別荘地の土地や建物の相続税評価は、一般の土地や建物と同じ方法で評価します。「路線価地域にある土地」、「倍率地域にある土地」、「建物」のそれぞれについて、評価の方法をお伝えします。
なお、通常の土地の相続税評価については、「相続税の土地評価の方法を、税理士が初心者にも分かりやすく教えます」で詳しく解説しています。
3-1.路線価地域にある別荘地の相続税評価
路線価地域にある土地の相続税評価額は、土地に面する道路につけられている路線価に土地の面積をかけて求めます。厳密には土地の形状や道路に接する条件に応じた補正や加算が必要ですが、ここでの説明は省略します。
路線価は、国税庁ホームページに掲載されている「路線価図」から調べることができます(路線価図では、路線価は千円単位で記載されています)。
路線価図の例
路線価地域にある土地の相続税評価についての詳しい説明は、次の記事を参考にしてください。路線価図の検索方法についても詳しく解説しています。
3-2.倍率地域にある別荘地の相続税評価
倍率地域にある土地の相続税評価額は、固定資産税評価額に評価倍率をかけて計算します。
仮に、固定資産税評価額が1,000万円、評価倍率が1.1倍の土地であれば、相続税評価額は次の算式のとおり1,100万円となります。
倍率地域の土地の相続税評価額:1,000万円×1.1=1,100万円
固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書に記載されています。評価倍率は、土地がある町名(丁目、大字)と地目(宅地、田、畑など)に応じて定められています。国税庁ホームページに掲載されている「評価倍率表」から調べることができます。
固定資産税の課税明細書の例
評価倍率表の例
倍率地域にある土地の相続税評価についての詳しい説明は、次の記事を参考にしてください。評価倍率表の検索方法や評価するときの注意点について詳しく解説しています。
倍率地域の評価方法を一から解説! 評価のための3STEPと注意したい5つのこと
3-3.別荘の建物の相続税評価
建物の相続税評価額は土地に比べると低いことが多いですが、別荘地に建物がある場合は建物の評価も忘れてはいけません。
建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同額です。固定資産税の課税明細書が確認できれば、特に計算する必要はありません。
固定資産税の課税明細書の例
建物の相続税評価について詳しいことは、次の記事を参考にしてください。
4.相続税評価額が時価よりも高い場合には不動産鑑定評価も視野に
バブル経済の崩壊で別荘地の価格は急落し、今ではいくら安くしても買い手がつかない別荘地が多数あります。このような別荘地では、前記の方法で計算した相続税評価額が時価より高いこともあります。
相続税を計算する上での評価額は、前記のように路線価または固定資産税評価額から計算することが原則です。しかし、相続税評価額が時価より大きくかけ離れているような場合では、不動産鑑定評価をしてその評価額をもとに相続税を申告することもできます。
不動産鑑定評価には数十万円の費用がかかりますが、相続税が大幅に節税できそうな場合は不動産鑑定評価に基づく申告も一つの方法です。ただし、不動産鑑定評価に基づく申告は税務署に否認される場合もあります。まずは、相続税の実務に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
5.別荘地の相続税評価は「減額要素を適用できるか」がポイント
普段使っていない別荘地であっても、被相続人の財産である以上、相続した人には相続税が課税されます。
別荘地の相続税評価は、通常の土地や建物の評価方法と同じですが、別荘地の価格は大きく値下がりしているところが多いため、相続税評価額が時価より高くなることもあります。一方、別荘地は、がけ地になっていたり道路に接していなかったり、減額要素が多数ある場合もあるので、別荘地の相続税評価をなるべく抑えるためには「いかに減額要素を押さえていてそれを正しく適用できるか」がポイントになってくると言えるでしょう。
この作業は、土地の相続税評価に詳しくないとかなり困難になります。土地の相続税評価を出来るだけ抑えつつ税務署に指摘されないように申告したいという場合は土地の相続税評価に強い税理士にお任せすることをオススメします。
年間2,373件以上の相続税申告実績がある税理士法人チェスターでは、そのほとんどの申告で土地の評価を行っており、土地の減額要素に精通しています。
また、近年では相続した別荘地をすぐに手放したいというご要望も多いですが、グループ会社に相続不動産を専門に取り扱う株式会社チェスターがありますので、相続税申告のご相談だけでなく相続した土地の処分についても一緒にご相談頂けます。
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