事業承継で発生する費用の目安。税金や手数料負担を抑えるには
タグ: #M&A事業承継には多額の費用がかかり、後継者や企業などにとって大きな負担になることがあります。
また、親族に事業を引き継ぐケースや親族以外の従業員に承継するケース、M&Aにより第三者に承継するケースで、かかる費用の種類や金額が異なります。相続税や贈与税、登録免許税などの税金がかかるケースもあるため、事業承継の計画を立てる際はいくらの費用がかかるのかをよく確認することが大切です。
この記事では、事業承継の方法ごとの費用や税金、費用を抑える方法を、事業承継に詳しい税理士が解説します。
目次 [閉じる]
1.事業承継に必要な費用
専門的な知識が必要な事業承継は、自社内のみでは難しい手続きです。そのため、仲介業者や専門家へ依頼する費用がかかります。加えて多額の税負担も必要です。費用面が問題となり事業承継が進まない場合に活用できる、公的な支援も紹介します。
1-1.多額の資金が必要とされる
経営者から後継者へ事業を引き継ぐ際には、さまざまな費用の負担が発生します。株式の譲渡によって事業承継を行うなら、買い手は『買収費用』を、売り手は『所得税』といった税金を負担しなければいけません。
また株式を贈与するなら『贈与税』が、相続するなら『相続税』が後継者に課されます。十分な用意をしていなければ、税金を納められない可能性もあるでしょう。
加えて専門家のサポートを受けながら事業承継を進めるには、報酬も必要です。多額の費用がかかるために、事業承継が進まないケースもあります。
1-2.公的な支援をうまく活用しよう
多額の費用を自己資金だけでまかなうのは難しいため、公的な支援が用意されています。たとえば『事業承継・引継ぎ支援センター』なら、事業承継の無料相談が可能です。
事業承継の取り組み方について解説している『事業承継マニュアル』で、まずは全体像を把握するのも役立ちます。自社の事業承継に関する課題を明確にできる『事業承継診断』を活用するのもよいでしょう。
『日本政策金融公庫』では、事業承継に必要な資金調達が可能です。また同公庫による『中小企業事業』は融資に加え、情報面でのサポートも実施しています。
参考:事業承継の資金調達に利用できる融資制度や補助金は?ファンド活用も|税理士が教える相続税の知識
2.事業承継の種類と費用
事業承継の方法には次の3種類があり、それぞれかかる費用が異なります。
- 親族内承継
- 従業員承継
- M&A
それぞれの承継方法やかかる費用の種類をみていきましょう。
2-1.親族内承継
親族内承継とは、子どもや配偶者、兄弟姉妹など親族から後継者を選ぶ承継方法のことです。日本ではもっとも一般的な事業承継の方法といえます。
親族内承継の主なメリットは、経営理念や企業文化の継承がしやすく、従業員や取引先からの理解を得やすいことです。
一方で、後継者となる親族の経営能力や意欲が不十分な場合があるため、経営に関する勉強や実務経験を積むなどの修行が必要になることがあります。
親族内承継にかかる主な費用は、以下のとおりです。
- 税理士に税額の算出を依頼する費用
- 弁護士にトラブルの解決などを依頼する費用
親族内承継をする際は、相続税や贈与税がかかることがあります。これらの税金の額を算出する際は、報酬を支払って税理士に依頼をするのが一般的です。
また、事業承継の際に発生したトラブルを解決するために、弁護士にサポートを依頼すると別途費用がかかります。
2-2.従業員承継
従業員承継とは、親族ではない従業員や役員などに事業を承継する方法のことです。
従業員承継の主なメリットは、経営能力や意欲のある人材を後継者に選びやすいことです。後継者には、すでに社内での勤務経験があるため、スムーズな引き継ぎが可能です。
ただし、従業員承継では後継者が会社の株式や資産を購入することになるため、多額の資金が必要となります。資金を準備するために、金融機関から融資を受けるケースも少なくありません。
従業員承継でかかる費用は、以下のとおりです。
- 税理士に税額の算出を依頼する費用
- 弁護士にトラブルの解決などを依頼する費用
- M&A仲介会社に依頼する費用
基本的には、親族内承継と費用は変わりませんが、金融機関と融資の交渉をするときなどにM&A仲介会社に依頼をするケースがあります。その場合は、親族内承継よりも費用がかかります。
2-3.M&A
M&Aとは、企業の買収・合併のことです。企業が他の企業を買うことを買収、2つ以上の会社が1つになることを合併といいます。
M&Aであれば、後継者が不在の場合でも事業を承継することができるようになります。また、株式や事業用資産を売却することで、売却益(キャピタルゲイン)を得ることも可能です。
ただし、必ず承継先が見つかるとは限らず、希望通りの条件で売却できないこともあります。また、承継先を慎重に選ばないと、顧客や取引先から反発を買い、契約を切られてしまうかもしれません。
M&Aで発生する主な費用は、次のとおりです。
- M&A仲介会社への依頼費用
- 税理士に税額の算出を依頼する費用
- 弁護士にトラブルの解決などを依頼する費用
M&Aでは、仲介会社などの専門家の承継先の候補となる企業の選定や交渉、クロージングなどを依頼するケースがほとんどです。そのため、相談料・着手金・中間金・成功報酬などの費用がかかります。
3. 事業承継にかかる税金
事業承継では、税理士や弁護士、M&A仲介会社に支払う費用の他にも、税金がかかることがあります。事業承継の際にかかる可能性がある税金は、以下のとおりです。
- 相続税
- 贈与税
- 消費税
- 法人税
- 登録免許税
- 不動産取得税
上記の税金がかかるケースや税率などをみていきましょう。
3-1.相続税
相続税とは、亡くなった人(被相続人)から相続や遺贈(遺言によって相続人ではない人に財産を贈ること)によって財産を取得した人に課税される税金です。亡くなった人が経営していた企業を、相続人である親族が承継する場合は、相続税が課せられることがあります。
相続税は累進課税制度を採用しているため、課税対象になる遺産の総額が多いほど税率が高くなります。税率は以下のとおりです。
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額 1,000万円以下 10% - 3,000万円以下 15% 50万円 5,000万円以下 20% 200万円 1億円以下 30% 700万円 2億円以下 40% 1,700万円 3億円以下 45% 2,700万円 6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円
親族が遺産を相続する場合、特例を利用すると相続税の負担を抑えられることがあります。
たとえば、亡くなった人の配偶者が会社を引き継ぐ場合は「配偶者の税額軽減」を適用することで、他の相続財産とあわせた遺産総額が1億6,000万円まで相続税がかかりません。
また、親族が事業を承継する場合「事業承継税制」を利用することで、後継者が取得した自社株式に対する相続税の納税が猶予されます。一定の要件を満たせば、相続税を免除してもらうことも可能です。
3-2.贈与税
贈与税とは、個人が財産を無償で譲り受けた場合に課税される税金のことです。オーナーが生前に会社を後継者に無償で譲渡する形で事業承継をした場合、後継者には贈与税がかかることがあります。
贈与税を計算する際は、贈与された財産を「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に分けて考えます。
特例贈与財産は、直系尊属(父母・祖父母など)から18歳※以上の直系卑属(子・孫など)へ贈与された財産です。一般贈与財産とは、特例贈与財産に該当しない贈与財産のことを指します。たとえば、夫婦間や兄弟間で贈与された財産は、一般贈与財産となります。
※令和4年3月31日以前の贈与については20歳
贈与税の税率は、相続税と同様に「超過累進課税」です。そのため、1年間で贈与された財産から基礎控除額110万円を差し引いた金額が高くなればなるほど、税率も高くなります。
贈与税を計算するときは「(贈与額−110万円)×税率−控除額」という速算式を用いるのが一般的です。一般贈与財産と特例贈与財産の速算式は、以下のとおりです。
基礎控除後の課税価格 (贈与額から110万円を差し引いた金額) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
基礎控除後の課税価格 (贈与額から110万円を差し引いた金額) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
一般贈与財産よりも特例贈与財産の方が、全体的に税率は低くなります。
贈与税についても、事業承継の際に「事業承継税制」を利用することで、納税が猶予・免除されます。
3-3.消費税
消費税は、商品の販売やサービスの提供に対して課税される税金です。
事業承継では、基本的に消費税はかかりません。株式譲渡による事業承継では株式が売買されることになりますが、そもそも株式は消費税の課税対象外であるためです。ただし、所得税や住民税の課税対象となります。
消費税が課税されることがあるのは、事業譲渡や現物出資をしたときです。これらの方法では、事業に必要な個々の資産が移動するため、それぞれの資産は消費税の課税対象となります。
消費税の税率は、2019年(平成30年)10月から基本的に10%となりましたが、飲食料品などの軽減税率対象品目については8%となります。
3-4.法人税
法人税とは、会社の利益に対して課税される税金のことです。消費税と同様に、一般的な事業承継で法人税は課せられませんが、事業譲渡などで法人が売却益を得たときは課税の対象となります。
令和4年(2022年)4月1日以降の普通法人における法人税率は、以下のとおりです。
区分 | 税率 | |
---|---|---|
資本金1億円以下の法人 | 年800万年以下の部分 | 下記以外の法人:15% 適用除外事業者※1:19% |
年800万円超の部分 | 23.2% | |
上記以外の普通法人 |
※出典:国税庁「No.5759 法人税の税率」
※1.各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるものまたは資本もしくは出資を有しない法人(特定医療法人を除く)
法人税の税率は、基本的に法人の種類や規模などで決まります。また、普通法人の場合、資本金が1億円以下の法人は、年800万円以下の部分と年800万円超の部分で税率が2段階に分かれています。
3-5.登録免許税
登録免許税は、不動産の所有権移転登記や会社の商業登記などをする際に課税される税金です。事業承継の際に土地や建物などの所有権を移転するときは、所有権移転登記が必要となるため、登録免許税がかかります。
不動産の所有権移転登記をする際の登録免許税額は、固定資産税評価額に税率をかけて計算します。本則の税率は、合併の場合は0.4%、会社分割やその他の要因による資産移転の場合は2.0%です。
※その他の要因による資産移転の場合、令和8年(2026年)3月31日までに土地を売買すると1.5%に軽減
3-6.不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物などの不動産を取得したときに課税される地方税です。事業承継で不動産を取得する場合、不動産取得税が課税されます。税額は「課税標準額×税率」です。なお、相続によって不動産を取得した場合、不動産取得税はかかりません。
不動産取得税の標準税率は4%ですが、住宅や住宅用地を取得した場合は、所定の要件を満たすと3%に軽減されます。
※令和9年(2027年)3月31日までに土地や住宅を取得した場合
また、他社から事業承継を行うために事業を譲り受けるときに不動産を取得する場合、所定の要件を満たすと特例により税率が軽減されます。特例が適用される場合の税率は、以下のとおりです。
通常税率 | 計画認定時の税率 ※1.事業譲渡の場合 | |
---|---|---|
土地・住宅 | 3.0% | 2.5% (1/6減額相当) |
住宅以外の家屋 | 4.0% | 3.3% (1/6減額相当) |
※出典:中小企業庁「不動産取得税の特例」
※1.合併や一定の会社分割の場合は非課税
特例を受けるためには、事業を譲り受ける前に、引き継ぐ事業に関する経営力向上を行うことを目的とした経営力向上計画を策定し、都道府県を通じて主務大臣に申請して、認定を受ける必要があります。
また、特例を適用できるのは令和8年(2026年)3月31日までの予定です。
4.専門家に支援を依頼する場合の費用
事業承継を行う上では、専門的な知識が必要です。相談する分野に合わせ、弁護士や税理士などへサポートを依頼する場合には、どのくらいの費用が必要なのか確認します。
4-1.弁護士に依頼できる内容
M&Aについて幅広い相談をするなら、弁護士が向いています。たとえば、事業承継関連の法律相談はもちろん、契約書のチェックやリスク管理などを依頼可能です。
ほかにも事業承継の計画や、従業員への対応・書類作成・各種手続きの代行・相続に関する手続きなども任せられます。中でも、事業承継に詳しい弁護士に依頼するのがおすすめです。
4-1-1.相談料、着手金、報酬の目安
弁護士に支払う費用としては、『相談料』『着手金』『報酬』が挙げられます。依頼前の相談料は、30分で5,000円ほどが目安です。
依頼後に支払う着手金と報酬は、事業承継で得られる利益によって異なります。利益が1,000万円であれば、着手金約30万円・報酬約70万円の合計100万円ほどです。
事業承継は継続的なサポートが必要なため、月額制の顧問契約を結ぶケースもあります。
4-2.税理士に依頼できる内容
事業承継の税務に関する内容は、税理士へ相談するとよいでしょう。たとえば税務署や経済産業省へ提出する報告書や、事業承継計画・経営計画などの作成を依頼できます。
また、株式の売却や贈与・相続にあたり発生する税金についても相談が可能です。税金の負担を軽減するのに有効な手法はどれかといった点についても、アドバイスを受けられるでしょう。
4-2-1.相談料、報酬の目安
税理士に事業承継について依頼する際には、まず相談します。相談料を請求されるケースもありますが、初回1時間無料というように、まずは無料で相談できる税理士が多いでしょう。
報酬額は依頼内容によって異なります。たとえば事業承継税制についての依頼なら、1億円未満の会社で約20万円以上です。事業承継に関する税務をまとめて依頼するなら、約50万円以上かかると考えましょう。
4-3.M&A仲介会社に依頼できる内容
自社のみでM&Aによる事業承継を実施するのは困難です。そのため仲介業者やマッチングサイトを利用するケースが多いでしょう。これらのサービスを利用する場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?
4-3-1.M&A専門業者に依頼をした場合の目安
M&A仲介会社には、相手企業の選定や紹介、企業価値の算定、交渉の仲介や助言・調整など、さまざまな業務をサポートしてもらえます。
M&A仲介会社にこうしたサポートを依頼する場合、『相談料』『着手金』『成功報酬』といった手数料がかかります。このうち相談料は無料としている業者が多いでしょう。
着手金は中間コストの有無と関係しています。金融機関や専門家からの紹介をメインとしている仲介業者は、紹介料の支払いがあるため着手金を設定しているようです。中間コストがかからない場合、着手金を無料としている業者もあります。
また、M&A専門のアドバイザリー会社や仲介事業者のほとんどは、成功報酬体系に「レーマン方式」を採用しています。レーマン方式は、取引金額(移動した資産の価格など)に応じて報酬料率が逓減する方式です。
加えて、コンサルティングを受ける場合は別途費用がかかります。
参考:M&A会社への報酬はレーマン方式で計算が一般的。メリットは?|税理士が教える相続税の知識
4-3-2.M&Aマッチングサイトで成立した場合の目安
M&Aマッチングサイトを利用する場合、売り手は基本的に無料です。費用を負担するのは主に買い手で、M&Aの成立によって費用が発生する場合もあれば、交渉に進むタイミングで費用が発生する場合もあります。
譲渡対価に対して料率が以下のように設定されているケースで、7,000万円の会社を買収したケースの報酬を計算してみましょう。
譲渡対価 | 料率・最低金額 |
---|---|
3,000万円以下の部分 | 5% |
3,000万円超~1億円以下の部分 | 3% |
1億円超の部分 | 1.5% |
最低金額 | 20万円 |
7,000万円を当てはめると『(3,000万円×5%)+(4,000万円×3%)=270万円』です。
参考:M&A仲介サイトで小規模な事業の売買も可能。六つのサイトを紹介|税理士が教える相続税の知識
5.費用負担を軽減する方法
相続や贈与によって負担する税金は、自社株式の評価額を下げる『自社株対策』で軽減できます。また事業承継税制を活用すれば、税金の猶予もしくは免除も可能です。
5-1.自社株式の評価方法を知る
自社株式の価格を算出するときには、一般的に『純資産価額』と『類似業種比準価額』が用いられます。
- 純資産価額:会社を解散したときに受け取れる金額から、負債や税金などを差し引いて計算する
- 類似業種比準価額:事業内容が似ている上場企業の株価をもとに計算する
2種類の価額を下げられれば、株式の評価額も下がります。『設備投資』による費用増や『生命保険』への加入、『退職金』による特別損失の計上などによって、純資産価額を下げる方法が代表的です。
これらの自社株対策によって、税金の負担を軽減できます。
参考:相続税の計算で株式はどのように評価する? 上場株式と非上場株式の評価方法を解説|税理士が教える相続税の知識
5-2.「事業承継税制」の活用
負担軽減につながる自社株対策を実施しても、多額の税金がかかるケースがあります。税金の支払いが多額であると、経営資金の枯渇を招きかねません。
そこで役立つのが『事業承継税制』です。この制度を適用できれば、後継者に課される贈与税や相続税の納付の猶予もしくは免除を受けられます。
事業承継税制には、法人版と個人版の2種類があります。
法人版事業承継税制では、経営者が特例承継計画を提出することで、後継者への自社株式の贈与税や相続税の納税がすべて猶予されます。一定の要件を満たせば、猶予税額が免除されるため、事業承継時の税負担をなくすことも可能です。
個人版事業承継税制では、個人事業主が個人事業承継計画を提出することで、特定事業用資産の贈与税や相続税の納税が全額猶予されます。
対象となる特定事業用資産は、先代事業者(被相続人)の事業に利用していた資産です。宅地(400㎡まで)や建物(床面積800㎡まで)、営業用の自動車などが該当します。
ただし制度を利用するには、会社・経営者・後継者がそれぞれ要件を満たした上で、経営承継円滑化法による都道府県知事の認定を受けなければいけません。活用するには計画的な手続きが必要です。
参考:事業承継税制とは何か。活用できる人や納税猶予を受けるまでの流れ|税理士が教える相続税の知識
5-3.「事業承継・引継ぎ補助金」の活用
専門業者への費用は、『事業承継・引継ぎ補助金』の活用で負担を軽減できます。M&Aにかかる費用をできるだけ抑えたいと考えているなら、利用を検討しましょう。
事業承継・引継ぎ補助金には『専門家活用』と『経営革新』があり、事業承継にかかる費用の一部に関して補助を受けられる制度です。対象は、事業承継をきっかけに新しい取り組みを行う中小企業などです。
2021年度は専門家活用に270件の申請があり、うち236件に交付されました。申請したからといって必ず受け取れるわけではありませんが、融資とは異なり返済しなくてよい点が魅力です。
申請は『jGrants』という電子申請システムを利用するため、申請するならあらかじめ準備しておきましょう。2022年度の専門家活用の申請は、4月22日から始まっています。
M&A仲介業者への報酬は、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の対象です。ただし全ての会社や仲介業者が対象になるわけではないため、条件をよく確認し申請しましょう。
まず、地域経済への影響力を持つ事業を展開しており、第三者による事業承継が行われる見込みの会社が利用可能です。さらに利用する仲介業者は、『M&A支援機関登録制度』に登録されていなければいけません。
参考:事業承継の補助金、助成金とは。国や地方自治体の支援を活用しよう|税理士が教える相続税の知識
6. 事業承継の費用や承継手続きでよくある質問
最後に、事業承継の費用に関してよくある疑問とそれに対する回答をご紹介します。
事業承継にかかる費用の相場はいくらですか?
事業承継の費用は、事業承継の手段や承継する資産の額などで変わるために、相場が一概にいくらというのは困難です。100万円程度で済むケースもあれば、数百万円、あるいは1,000万円以上かかることもあります。
税理士や弁護士、M&A仲介会社など相談・依頼する先が増えるほど、承継にかかる費用は高額になるでしょう。一方で、事業承継税制や特例、補助金制度などを活用することで、負担を軽減することができます。
また、相談先によって料金体系が異なります。事業承継をする際は、各専門家に見積もりを依頼し、いくらの費用がかかるのかをよく確認しておくことが大切です。
事業承継で後継者にはどのような費用・税金がかかりますか?
後継者が相続で事業を承継した場合は相続税、贈与により承継をした場合は贈与税がかかります。
また、後継者が先代から株式を譲り受ける場合は、譲受代金を支払います。株式の取得には高額な資金が必要になることが多いため、金融機関の融資を利用するケースも少なくありません。
事業承継にはどれくらいの期間がかかりますか?
事業承継には、一般的に3〜10年ほどの期間が必要といわれています。
中小企業庁が作成する事業承継ガイドラインによると、事業承継をした企業が後継者への移行にかかった期間は、3〜5年程度が26.9%、6〜9年程度が13.8%、10年以上が11.2%でした。よって、アンケートに回答した企業の51.9%が、後継者への移行に3年以上の期間を要しています。
※出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」
事業承継にある程度の期間がかかる主な理由としては、後継者に経営者として十分な能力を身につけるための育成に時間がかかることが挙げられます。また、後継者が従業員や取引先との充分な信頼関係を築くために時間がかかるケースも少なくありません。
M&Aで事業承継をする場合は、仲介会社などに依頼をして買い手の候補を探し、条件を交渉する時間も必要となるため、完了までの期間が長引く可能性があります。
事業承継税制などの制度には期限が設けられているため「まだ早い」と考えずに、できるだけ早期に準備と計画を進めることが重要です。
7.スムーズな事業承継を行うために
事業承継を実施するには、多額の費用が必要です。株式を売却し事業承継するなら、譲渡益に所得税等がかかります。贈与や相続の場合は、後継者が贈与税や相続税を負担しなければいけません。
M&Aによって第三者へ事業承継する場合には、仲介業者やマッチングサイトの費用が必要です。また弁護士・税理士などの専門家への費用もかかります。
これらの費用の中には、補助金で負担を軽減できるものもあるため、利用を検討しましょう。税理士法人チェスターでは、相続事業承継コンサルティング部の実務経験豊富な専任税理士が、お客様にとって最適な方法をご提案いたします。
事業承継で活用できる補助金については、以下でも解説しています。ぜひご覧ください。
事業承継M&Aのメリット・デメリットと活用できる補助金を解説 – 相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】
事業承継・M&Aを検討の企業オーナー様は
事業承継やM&Aを検討されている場合は事業承継専門のプロの税理士にご相談されることをお勧め致します。
【お勧めな理由①】
公平中立な立場でオーナー様にとって最良な方法をご提案致します。
特定の商品へ誘導するようなことが無いため、安心してご相談頂けます。
【お勧めな理由②】
相続・事業承継専門のコンサルタントがオーナー様専用のフルオーダーメイドで事業対策プランをご提供します。税理士法人チェスターは創業より資産税専門の税理士事務所として活動をしており、資産税の知識や経験値、ノウハウは日本トップクラスと自負しております。
その実力が確かなのかご判断頂くためにも無料の初回面談でぜひ実感してください。
全国対応可能です。どのエリアの企業オーナー様も全力で最良なご提案をさせていただきます。
詳しくは事業承継対策のサービスページをご覧頂き、お気軽にお問い合わせください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。