居酒屋・飲食業界の動向とM&Aのメリット。スタッフの扱いは慎重に

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居酒屋をM&Aで売却すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?効果的に売却できるよう、買い手の目的や知っておきたい考えられるリスクも確認しておきましょう。株式譲渡や事業譲渡など、手法ごとの特徴も解説します。

この記事の目次

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1.居酒屋M&Aの動向

1.居酒屋M&Aの動向

居酒屋は、人々のアルコール離れやコロナ禍の影響を大きく受けている業態です。そのような中で実施されるM&Aでは、大手や中堅の飲食企業による買収や、多角化戦略を目的とした異業種からの参入が見られます。

1-1.アルコール離れ・感染症拡大の影響が大きい

飲酒を習慣的に行っている人は、かつてと比べて減少しています。加えて、コロナ禍による休業要請により、居酒屋の売り上げは大幅に落ち込みました。

持ち直してきてはいますが、法人需要や夜の客足はコロナ禍以前の水準には到達していません。夜間営業の実施に向けて従業員を確保したけれど、思ったほど成果につながっていないケースが多いようです。

売り上げは依然として低い状態が続いており、市場は縮小しています

1-2.同業者同士の居酒屋M&Aが目立つ

居酒屋のM&Aは、同業者によるものが多い傾向です。飲食店を経営する大手や中堅の企業が、複数の業態を展開するために居酒屋を買収しています。また地域内での差別化を目的として、自社が展開するエリア内にある居酒屋を買収するケースもあるでしょう。

飲食店で売り上げが伸びているのは、テイクアウトやデリバリーです。そのため今後は、居酒屋でもテイクアウトやデリバリーを取り入れる戦略が実施されるでしょう

1-2-1.居酒屋M&Aの事例

熊本でカフェや焼肉店など多業態の飲食店を展開しているジョー・スマイルは、磯丸水産や鳥良商店など、200店舗以上の居酒屋をチェーン展開しているSFPホールディングスの連結子会社となりました。

首都圏を中心に出店しているSFPホールディングスのブランドを、熊本や九州一円で広めることを目指して行われたM&Aです。

1-3.異業種からの飲食事業参入、個人M&Aも

始めるときのハードルが比較的低い飲食事業は、事業の多角化を目的として異業種から参入する企業も多いのが特徴です。その際M&Aによって参入すると、設備や人材・ノウハウなど必要なものをすぐにそろえられ、リスクを抑えられます。

飲食店は全体的に希望売却金額が安く、500万円以下がほとんどです。100万円前後の案件もあり、個人が買い手となるケースも少なくありません。

2.居酒屋M&Aを行うメリット

2.居酒屋M&Aを行うメリット

M&Aによって居酒屋を売却すると、売り手は買い手の傘下に入り資金やブランドを生かした展開ができます。また対価を目的としている売却であれば、居抜き譲渡より高額になりやすいでしょう。

2-1.買い手の資金力・ブランド力を生かせる

資金力のある買い手に売却し傘下に入れば、経営の安定化を図れます。採算が取れず事業を継続するのが難しいと判断したなら、M&Aを検討するとよいでしょう。

買い手のブランドを生かせるのも魅力です。多くの人が知っている人気のブランドを掲げられれば、より多くの集客を見込める可能性があります

2-2.設備のほか無形財産にも価値が

ノウハウ・レシピ・顧客・取引先・従業員など、無形財産の価値が増す点もM&Aのメリットです。居酒屋を売却する際、設備を売却する居抜き譲渡では無形財産は考慮されません。

一方M&Aであれば、内装・厨房器具・エアコン・トイレ・家具などの設備の価格に、無形財産の価格が上乗せされ、受け取れる対価が高くなります。

ただし設備が古く改修が必要な場合には、かかるコストを割り引いて価格を設定するケースもあるでしょう。

3.居酒屋のM&A価格は?

3.居酒屋のM&A価格は?

居酒屋を売却するときの価格は、年買法やDCF法などの評価方法で算出した金額を元に、売り手・買い手の交渉によって決まります。年買法やDCF法による計算方法を見ていきましょう。

3-1.M&Aでよく用いられる計算方法

中小規模のM&Aでよく用いられるのが年買法です。『時価純資産+営業権(のれん)×2~5年分』というシンプルな計算式で算出できるため、直感的に理解しやすい計算方法といえます。

時価純資産は居酒屋の設備の価値です。帳簿上に記載されている設備の時価を足し合わせることで算出できます。

営業権(のれん)には年間利益を用いるのが一般的です。参入障壁が低く流行に左右されやすい飲食店は2~3年分で計算されるケースが多いでしょう。帳簿に記載されない無形財産の価値を評価額にプラスする部分です。

参考:6.直感的に価値を理解しやすい「年買法」

3-2.DCF法を用いるケースも

成長途上にある居酒屋の価値評価には、『DCF法』を用いる場合もあります。年買法で算出できるのは、居酒屋の現在の価値を元にした価格です。

DCF法を用いれば、事業計画書を元に、将来稼ぐキャッシュフローを現在の価値に割り引いて算出するため、居酒屋の今後の成長も考慮した上で価値評価を実施できます

キャッシュフローを計算するため、買い手に対し金額で具体的にメリットを伝えられるのが特徴です。また年買法とは基準が違うため、算出結果が異なる場合もあるでしょう。

参考:4.合理的な評価方法とされる「DCF法」

4.居酒屋M&Aの買い手の目的とは?

4.居酒屋M&Aの買い手の目的とは?

比較的参入障壁の低い居酒屋は、新規の出店も可能です。それにもかかわらずM&Aで買収する買い手が存在するのは、どのような理由からなのでしょうか?買い手の目的を確認します。

4-1.調理ノウハウ、仕入れ先を引き継ぐ

M&Aを行うと、調理ノウハウや仕入れ先を引き継げます。これから居酒屋の事業を新規に始める場合に、スムーズに参入しやすいでしょう。

飲食事業に取り組んでいる会社が、別業態で出店する場合にも役立ちます。例えばイタリアンの店舗を運営している会社が居酒屋を買収すれば、居酒屋に加えイタリアンのランチメニューやテイクアウトの業態も展開できるかもしれません。

また同じ居酒屋を経営する買い手であれば、M&Aによる事業規模の拡大を目指せます。

4-2.新店舗の物件探しや採用の手間を省く

居酒屋を買収すれば、店舗や人材は全てそろった状態です。新しく物件や人材を探すにはコストや手間がかかります。時間をかけて全てそろえたとしても、選んだ場所が悪ければ期待した収益を得られません。

一方M&Aで得た居酒屋であれば、既に顧客が付いているケースもあるため、初月から収益を上げられる可能性があります。物件探しや採用に関するコストを抑えられるため、コストシナジーを期待できる方法です。

参考:M&Aのメリットを細かく紹介。M&Aによる相乗効果や節税効果とは

5.買い手が気になるリスク

5.買い手が気になるリスク

M&Aで居酒屋を買収する方法には、リスクもあります。買い手はどのようなリスクを気にしているのでしょうか?買い手が着目する点を押さえておけば、あらかじめ対策が可能です。

5-1.法令遵守状況や訴訟に発展するトラブル

法令遵守できていない居酒屋を買収すると、保健所の営業指導を受ける可能性があります。例えば2021年6月から義務化された、HACCP(ハサップ)による一般衛生管理や重要管理ポイントを遵守できているかチェックします。

また居酒屋は、夜間に飲食物を提供するため『風営法』も確認しなければいけません。さらに従業員に適正な賃金が支払われているかという点や、外国人労働者のビザの有効期限も把握が必要です。

衛生管理や労務面で法令違反があると、訴訟に発展する可能性があります。リスクを回避するため、買い手は対象の居酒屋に対してデューデリジェンスを実施するでしょう

参考:M&Aにおけるデューデリジェンスの役割。調査項目や進め方を知る

5-2.M&A手法によっては債務も引き継ぐ

引き継ぐときに株式譲渡を使用すると、買い手は債務も引き継がなければいけません。そのため債務があるなら、資産や事業を選んで引き継げる事業譲渡によるM&Aを提案するのも一つの方法です。

帳簿上では債務がないように見えても、未払い残業代をはじめとする簿外債務がM&A成立後に発覚する可能性もあります。そこで買い手はデューデリジェンスで買収する居酒屋を調査し、簿外債務の有無を確認した上で最終的な契約内容を検討します。

このとき、デューデリジェンスを補完するために、表明した内容に偽りがないことを保証する『表明保証条項』を契約書に設けるのが一般的です。表明保証条項に違反すると損害賠償を請求される可能性があります。

参考:簿外債務の種類や見つけ方。買い手と売り手それぞれの対策は?

6.株式譲渡や会社分割による居酒屋M&A

6.株式譲渡や会社分割による居酒屋M&A

大手や中堅の飲食企業の傘下に入るなら、『株式譲渡』や『会社分割』の手法が向いています。手続きを行えば営業許可を引き継げる手法ですが、店舗の賃貸借契約にCOC条項が設けられている場合には要注意です。

6-1.会社ごと譲渡し、グループの傘下に入る

株式譲渡や会社分割を用いると、居酒屋を経営する会社ごと買い手グループの傘下に入れます。買い手の資金やブランドを活用しながら、居酒屋を続けられる方法です。

売り手の持つ自社株を買い手に売却することで、居酒屋を会社ごと買い手へ移転し子会社化します。株式を1/2超取得すると経営権を、2/3以上取得すると支配権を得られます。そのため100%を目標に、過半数を売却しなければいけません。

手掛けている事業が複数あり居酒屋のみを売却するには、居酒屋を分割し子会社化した上で買い手に株式譲渡を行う『分社型分割』を行います。

参考:会社分割とは何かわかりやすく解説。メリット、デメリットは?

6-2.地位承継届で営業許可を承継できるケース

会社を丸ごと引き継ぐ株式譲渡や分社型分割によるM&Aなら、『地位承継届』の手続きによって、居酒屋の営業許可や営業届の引き継ぎが可能です。手続きには以下の書類を用意します。

  • 地位承継届
  • 承継の事実を証明する書類(法人なら登記事項証明書)
  • 営業許可書

許認可の手続きを一から全て行う必要がないため、手間を省略しながらスピーディーに居酒屋の出店が可能です

参考:M&Aで株式譲渡が選ばれる理由は?株式譲渡契約の内容などを解説

6-3.賃貸借契約のCOC条項に注意

店舗の賃貸借契約も、株式譲渡や分社型分割であればそのまま引き継げます。ただし『COC(チェンジオブコントロール)条項』が設けられている場合には注意が必要です。

COC条項が設けられていると、M&Aで経営権が移動した場合に契約を解除できるよう定められている可能性があります。条項がどのように規定されているかをまずは確認しましょう。

M&Aを実施するとCOC条項に抵触する場合、買い手は店舗の貸主と交渉しなければいけません。抵触しないなら交渉は不要ですが、買い手との関係性作りのために、M&Aによって体制が変わることは報告した方がよいでしょう。

参考:チェンジオブコントロール条項の内容とは?M&Aにおける注意点

7.事業譲渡による居酒屋M&A

7.事業譲渡による居酒屋M&A

居酒屋の事業のみを売却したい場合や、個人事業主として居酒屋を経営している場合には、事業譲渡によって売却します。事業譲渡の場合、どのような特徴があるのでしょうか?

7-1.店舗・従業員のみまたは店名も引き継ぐ

事業譲渡は、買い手へ引き継ぐ範囲を選択して売却する手法です。資産や権利義務を移転することで、買い手に居酒屋の事業を移転します

複数の事業を展開している会社や、株式を発行できない個人事業主が居酒屋を売却する際に利用可能です。譲渡する権利義務は、個別に移転の手続きを行います。

従業員の雇用契約は従業員と話し合い、買い手は契約を結び直さなければいけません。店舗が自社物件で不動産も譲渡するなら、登記の手続きも必要です。店名の引き継ぎの有無も検討し、引き継ぐ権利義務は全て契約書へ盛り込みます。

株式譲渡と比べ手続きが煩雑になりやすいため、小規模なM&Aで用いるケースの多い手法といえます。

7-2.営業認可を再取得する必要がある

営業許可を買い手が取り直さなければいけないのも、事業譲渡の特徴です。ただし居酒屋の営業許可を取得するのは、それほどハードルの高いことではありません。

例えば東京都であれば、検査までに設備をはじめとする内装工事が終わるようスケジュールを組んでおけば、検査翌日からの営業開始も可能です。段取りを考えて進めることで、スムーズに営業を始められるでしょう。

7-3.賃貸借契約の引き継ぎは賃貸人の同意が必要

事業譲渡では、買い手への権利義務の移転を個別に行います。店舗の賃貸借契約により発生する賃借権の移転は、賃貸人の許可を得た上で実施しなければいけません

そのため事業譲渡の契約を締結する前に、売り手は賃借権の移転について賃貸人に同意を得ておく必要があります。同意を得られなければ事業譲渡による売却を進められません。

参考:事業譲渡の目的、主な特徴とは。専門家の知識が欠かせない理由

8.居酒屋M&Aの成功のポイント

8.居酒屋M&Aの成功のポイント

居酒屋のM&Aを成功させるには、ポイントがあります。買い手探し・引き継ぎ・スタッフへの説明の仕方を押さえておくと、スムーズに進めやすいでしょう。

8-1.買い手の探し方

M&Aは買い手がいなければ成立しません。買い手を探すときには『M&A仲介会社』『M&Aマッチングサイト』『金融機関』などを利用するのが一般的です。

このとき、売却しようと考えている事実が漏れないよう注意しましょう。例えばM&Aマッチングサイトを利用するときには自社や居酒屋の情報を掲載しますが、店名が特定されないよう掲載する内容に注意します。

参考:M&A仲介サイトで小規模な事業の売買も可能。六つのサイトを紹介

売却までの基本的な流れを解説している以下もご覧ください。

事業・会社をM&Aで売却する基本的な流れ【税理士法人チェスター】

8-1-1.設備・客層・口コミなど強みをアピール

売却する居酒屋の魅力をアピールするのも、買い手探しにおけるポイントです。例えば設備や内装が新しくきれいな状態であれば、買い手はそれほど手を加える必要がなく、余計な出費を抑えられます

また客層が明確に分かれば、買い手の展開しているブランドとの親和性を判断しやすいでしょう。営業を始めたときにどのくらいの収益を上げられそうかについても、予測を立てやすくなります。

新規顧客の獲得に役立つインターネットの口コミも重要です。評価が高過ぎる・低過ぎるという場合には、原因を特定しておくとよいでしょう。

8-2.後継者への引き継ぎの時間を確保する

引き継ぎもポイントです。店をどのように切り盛りしていくのか、メニューはどのように作っているのか、味付けのコツなどを伝えます。M&A後にどのように店を運営していきたいかも含め、話し合う時間も確保するとよいでしょう。

全てを伝えるには、ある程度の時間がかかります。早めにM&Aを実施し、余裕を持って進めるのがおすすめです。

8-3.スタッフへ説明するタイミングを見極める

居酒屋M&Aでは、スタッフの獲得も買い手の買収理由の一つです。特に店にとって欠かせないスキルやノウハウを持っている、キーマンとなるスタッフが退職することがないよう、慎重に進めましょう。

売却の検討を始めたタイミングでは、スタッフに情報が漏えいしないよう注意が必要です。ただし最後まで情報を隠し通すのは、不信感につながります。

売却することは適切なタイミングでスタッフへ伝えましょう。キーマンにのみ早めに伝えておくのも有効です。経営者から売却することやその後の待遇、店の運営方針の変化などについて説明します

説明により不安を取り除くことで、居酒屋が買い手へ移った後にスタッフが退職する事態を防ぎやすくなるでしょう。

参考:ロックアップ条項の例と注意点。キーマン以外の従業員にも配慮を

9.居酒屋をスムーズに引き継ごう

9.居酒屋をスムーズに引き継ごう

M&Aによって居酒屋を売却すると、居抜き譲渡と異なり、ノウハウ・取引先・人材などの無形資産にも価値が付き、高額で売却しやすいのが特徴です。

売却しやすくするには、買い手がM&Aを実施する目的や、気にしているリスクをチェックしておくと役立ちます。手法ごとの違いも把握しておきましょう。

会社ごと買い手の傘下に入る株式譲渡なら、営業許可も引き継げます。居酒屋の事業のみを売却する場合や個人事業主のM&Aであれば、事業譲渡が適切です。

また手法が違えば対価にかかる税金の種類や税額が異なります。

税理士法人チェスターでは、相続事業承継コンサルティング部の実務経験豊富な専任税理士が、お客様にとって最適な方法をご提案いたします。

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