0円で会社を買うことは可能?注意点と会社買収についての基礎知識

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個人や企業が0円で会社を買収するケースが増えています。0円での譲渡が成立する会社には、どのような特徴があるのでしょうか?起業とM&Aの違いや会社買収の手順を分かりやすく解説します。M&A初心者に役立つおすすめ書籍もチェックしましょう。

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1.0円で会社を買うことはできるのか?

1.0円で会社を買うことはできるのか?

M&A(会社の買収と合併)において、取引価格は売り手と買い手の交渉によって決まります。資金に限りがある買い手にとっては、「できるだけ安く買収したい」が本音です。

巷では0円で会社を買収した話も聞かれますが、実際にタダで会社を買うことは可能なのでしょうか?

1-1.0円で買うことは可能

結論としては、0円で会社を買うことは可能です。M&Aのマッチングサイトをチェックしてみると、数百万円の案件に混じって、『0円譲渡』と記載された案件が見受けられます。

売り手の希望取引価格が数百万円であっても、デューデリジェンス(買収前の事前調査)や価格交渉の結果、価格が大幅に下がる可能性も考えられるでしょう。

取引規模が小さなM&Aは、『スモールM&A』と呼ばれています。スモールM&Aの売り手や買い手は、中小企業や小規模事業者、個人が大部分です。

参考:スモールM&Aとは何か?手法や進め方、メリットと注意点を解説

M&Aというと、かつては上場企業や大企業が行うものでした。しかし近年は、成長戦略や事業承継の一手段として、M&Aを選択する中小企業が増えているのが実情です。また、副業・兼業の解禁でM&Aに挑戦する会社員も増加傾向にあるといえるでしょう。

参考:「中小M&A推進計画」の主な取組状況~補足資料~|中小企業庁

2.0円で買える会社の傾向

2.0円で買える会社の傾向

手塩にかけて育ててきた会社や事業ならば、できるだけ高く売りたいと考えるのが普通でしょう。売り手が取引価格を大幅に下げたり、0円譲渡に踏み切ったりする理由には何があるのでしょうか?

2-1.後継者がいないケース

近年は、事業承継を目的にM&Aを行う中小企業が増加しています。身内や社内に後継者がおらず、かつ経営者が引退の年齢を迎えている場合、取引価格を大幅に引き下げてでも、早く誰かに会社を継いでもらいたいと考える人は少なくないようです

経営者が廃業を選択すれば、共に会社を支えてきた従業員は路頭に迷います。長い時間をかけて培ってきた技術やノウハウも自分の代で途絶えてしまうでしょう。

M&Aで会社売却を選択しても、理想の買い手がすぐに見つかるとは限りません。廃業の危機が迫っている場合、取引価格をタダ同然にする会社もあるようです。

参考:後継者のいない会社を買うメリットとは。重大なリスクも存在する?

2-2.赤字・負債額が大きいケース

M&Aの取引対象の大半は黒字会社ですが、他社にはない魅力的な事業資産があり、V字回復が見込めそうな状態であれば、赤字会社でもM&Aの取引対象になります。

とはいえ、負債を抱えた赤字会社を買収するのは、リスクが大きすぎるといわざるを得ません。企業価値評価では、価値が低く見積られる可能性が高いでしょう。

この場合、M&Aの価格交渉は買い手主導で進みます。売り手の経営者が「会社を手放して、早く借金から解放されたい」「従業員の雇用さえ守れたら、価格はいくらでもいい」と考えているケースでは、1円や0円での譲渡が成立する場合もあります

3.0円で会社を買う方法

3.0円で会社を買う方法

会社を買う方法には複数ありますが、取引規模が小さいのであれば、M&Aマッチングサービスを活用するのが賢明です。取引にまつわり発生する手数料が最小限に抑えられるため、個人事業主や会社員でも会社買収を実現できます。

3-1.M&Aマッチングサービスを利用

M&Aマッチングサービスとは、インターネット上でM&Aの取引相手を探せるサービスです。通常は仲介会社を通じてやりとりをしますが、M&Aマッチングサービスの場合は、売り手と買い手の直接交渉が基本です。

0円の案件をはじめ、取引価格が1,000万円以下の小規模案件が多い点に加え、サービス利用料が安価なので、資金に限りのある個人や中小企業の利用が多い傾向があります。

案件数が豊富で、日々新たな案件が更新されるため、自分にぴったりの案件が見つかりやすいでしょう。

参考:M&A仲介サイトで小規模な事業の売買も可能。六つのサイトを紹介

3-2.見せかけの金額に引っかからないよう注意

M&Aマッチングサービスは売り手と買い手の直接取引となるため、案件の善し悪しは買い手自身が見極める必要があります。注意したいのは、0円譲渡を強調し、より多くの買い手の気を引こうとするパターンです。

0円譲渡と表示があっても、〇〇手数料などの名目で費用を上乗せし、取引価格を引き上げる売り手も皆無ではありません。取引価格に含まれる事業資産の範囲も、しっかりと確認しておきましょう。

3-3.買収金額以外に必要な費用

取引価格が0円であっても、M&Aに要する総費用は0円では済みません。買い手が負担する可能性が高いのは、以下のような費用です。

  • M&Aマッチングサービスの手数料
  • M&A仲介会社やアドバイザーへの手数料
  • デューデリジェンスの費用
  • 契約書作成のサポート費用(弁護士など)
  • 商業登記や所有権移転登記の費用

M&A仲介会社やアドバイザーにサポートを依頼した場合は、相談料や着手金、中間金などの手数料が発生します。

デューデリジェンスは、売り手に対する買収調査です。必須ではないものの、貸借対照表上に記載されていない『簿外債務』や将来発生しそうな『偶発債務』を洗い出すため、公認会計士や税理士、弁護士などに売り手の調査を依頼するのが一般的です。

参考:簿外債務の種類や見つけ方。買い手と売り手それぞれの対策は?
参考:M&Aにおける偶発債務のリスクとは。売り手、買い手の対策を解説

4.会社を買う際の基本の手順

4.会社を買う際の基本の手順

会社買収は物品の売買と違い、いくつものプロセスを踏まなければなりません。M&A初心者は、念入りな情報収集と事前準備を行いましょう。会社を買収する際の大まかな流れを解説します。

4-1.相談できる専門家を探す

会社買収を成功させるには、M&Aの専門知識と経験が必要です。M&Aに初めて挑戦する人は、相談できる専門家を早い段階で見つけましょう。案件探しからクロージングまでの各段階において、適切な助言・サポートが得られます。

スモールM&Aでは、以下のような支援機関を活用できます。

  • 事業承継・引継ぎ支援センター
  • 商工会議所
  • 日本政策金融公庫(事業承継マッチング支援)
  • M&Aの仲介会社・アドバイザー

チェスターでは、事業承継M&Aを中心としたM&A支援を行っています。資産税専門の税理士事務所が母体のため、資金繰りや税金対策に関する悩みにも対応が可能です。無料面談を行っているため、気軽にお問い合わせください。

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4-2.秘密保持契約の締結

取引候補の選定は、以下のようなプロセスで進みます。

  1. ノンネームシートによる候補の絞り込み
  2. 秘密保持契約書の締結
  3. 企業概要書の開示

『ノンネームシート』とは、売り手の企業情報を簡易的にまとめた匿名の資料です。企業情報の詳細が記載された『企業概要書』を得たい場合には、情報の流出や不正利用のリスクを防ぐ目的で、売り手と『秘密保持契約』を締結するのが原則です。

買い手は売り手の秘密情報を知れる立場にあります。秘密情報の定義や損害賠償義務など、情報の取り扱いに関するルールを取り決めた上で、プロセスを進めます。

参考:ノンネームシートの役割とは。記載内容や作成上の注意点を解説

4-3.基本合意契約の締結

マッチング成立後は、売り手と買い手の代表者による『トップ面談』を実施します。初回の面談では条件の擦り合わせは行わず、お互いの人となりや経営方針、ビジョンなどを共有するのが通例です。

M&Aの意向が固まれば、条件交渉へと進み、合意内容をまとめた『基本合意書』を締結します。内容には、スキームや取引金額のほか、デューデリジェンスへの協力義務や独占交渉権、今後のスケジュールなどが盛り込まれます。

以下の項目には法的拘束力を持たせるのが一般的です。

  • デューデリジェンス
  • 独占交渉権(売り手が第三者と交渉を行うことを禁止する買い手の権利)
  • 秘密保持義務

なお、スモールM&Aでは、基本合意書の締結が省略されるケースがあります。

参考:基本合意書の意味と内容。独占交渉権の付与など重要なポイント

4-4.デューデリジェンスの実施

基本合意書を交わした後、買い手は売り手に対してデューデリジェンス(以下DD)を実施します。公認会計士や税理士、弁護士などの協力の下、以下のような観点から売り手を評価します。

  • 簿外債務や訴訟リスクなどの問題は存在しないか
  • 基本合意書に記載された取引価格は妥当か
  • どれだけのシナジーが見込めるか

DDの内容は多方面にわたりますが、中小企業では、財務面・税務面・法務面・ビジネス面が中心となるでしょう。企業の存続に関する重大なリスクが発覚した場合、スキームの変更やM&Aの中止が検討されます。

参考:M&Aにおけるデューデリジェンスの役割。調査項目や進め方を知る

4-5.事業譲渡・買収契約の締結

DDの結果を踏まえて最終交渉を行った後、最終契約書を締結します。最終契約書の種類は、株式譲渡であれば『株式譲渡契約書』、事業譲渡であれば『事業譲渡契約書』です。

基本合意書と違って、すべての内容に法的効力があるため、弁護士にリーガルチェックを依頼するのが望ましいでしょう。

最終契約書には、『クロージングの前提条件』を盛り込むのが一般的です。すべての条件が充足されない限り、取引は完了となりません。最終契約の締結がM&Aの成立ではない点に留意しましょう

4-6.クロージングを実行

M&Aにおけるクロージングとは、株式・事業の引き渡し手続きや対価の支払いなどを指します

株式譲渡の場合、資産の引き渡しは『株式名簿の書き換え』によって完了します。譲渡対象が株式譲渡制限会社の場合は、取締役会もしくは株主総会の承認がなければ、株式の譲渡ができない点に注意しましょう。

事業譲渡では、引き渡す資産ごとに移転手続きをします。包括承継である株式譲渡に比べると手続きが煩雑です。

クロージング完了後は、新たな経営体制の構築に向け、買い手主導で『統合作業(PMI)』を実施します。

参考:M&Aのクロージングで行う手続きや、取引が中止になる条件を解説

5.起業ではなく会社を買うメリット

5.起業ではなく会社を買うメリット

個人が経営者になる方法としては、会社買収と起業の2パターンがあります。会社を一から立ち上げるのではなく、M&Aで既存の会社を買収した場合、どのようなメリットが期待できるのでしょうか

5-1.初期費用を抑えられる

一つ目のメリットは、起業にかかる初期費用を抑えられることです。会社や店舗を一から立ち上げる場合、設備購入や人材の確保、広告・宣伝などに多大な費用がかかります。

経営が軌道に乗るまでに数カ月~数年の期間を要するケースもまれではないため、資金難に陥る恐れもあるでしょう。

他方、M&Aで会社を買収すれば、売り手の経営資源をそのまま利用できます。低コストでビジネスをスタートできる上、会社買収の直後から利益が見込める可能性もあるでしょう

5-2.技術・人材を育てる手間を省ける

会社を買収すれば、売り手が保有する物的資産だけでなく、以下のような目に見えない無形資産も引き継ぐことができます。

  • 技術・ノウハウ
  • 商標・特許
  • 優秀な従業員
  • 取引先との人脈

技術開発や人材の育成には長い時間が必要です。M&Aを実行すれば、企業の利益の源泉となる無形資産を一挙に獲得できるため、スピーディな市場参入が実現するでしょう。

事業の成長に要する時間を大幅に短縮できることから、M&Aは『時間をお金で買う戦略』とも呼ばれます

5-3.成長させた企業を売却することも可能

廃業間近の会社を安く買収し、業績を上げてから第三者に売却すれば、売却益が得られます。経営者は、売却益を老後の生活や新たな会社買収の資金に充当できるでしょう。

M&Aというと、新規事業への参入やシナジー効果の創出が注目されがちですが、売却益の獲得やイグジット(投資した資金の回収)を目的としたM&Aも数多く行われています

ただし、会社を安く買って高く売るには、将来性のある会社を見極める目と経営センスが必要でしょう。

参考:M&Aによるイグジットとは。IPOやバイアウトとの違い、注意点も

6.知っておきたい会社を買うデメリット

6.知っておきたい会社を買うデメリット

M&Aには起業にはないメリットが多々あります。ここ数年は、個人や中小企業の間でもスモールM&Aが普及し、会社買収がより身近なものとなりました。一方で、知識・経験の不足による失敗事例も少なくありません。

会社買収を進める前に、デメリットやリスクについても把握しておきましょう。

6-1.負債を引き継ぐ可能性

株式譲渡による会社買収では、売り手の権利義務の一切が買い手に移行します。資産だけでなく、負債も引き継いでしまうため、最終契約を交わす前にリスクの洗い出しを徹底しなければなりません。

しかし実際のところ、すべてのリスクを洗い出すのは難しく、取引の成立後に簿外債務や偶発債務が発覚する可能性があります。

想定外の債務を回避する方法としては、事業譲渡へのスキーム変更や表明保証の設定などが有効です。専門家に相談しながら、適切な対応策を講じましょう

6-2.従業員が離れてしまう危険性も

買収後、新たな経営体制になじめない従業員が離職するリスクがあります。無理にルールを押し付けようとすれば、多くの従業員は反感を抱くでしょう。特に、経営者の人柄や魅力によって会社が成り立っていた場合には要注意です。

事業の中核となるキーパーソンや優秀な従業員が離職すると、企業価値は大きく毀損します。場合によっては、会社存続が危ぶまれるかもしれません。

買収された会社の従業員は、将来に大きな不安を抱いています。会社買収後の統合作業を円滑に進めるためにも、従業員への丁寧な説明とフォローが不可欠です。

参考:会社を買う方法と手順を解説。失敗の原因も知って備えよう

7.0円・低価格での買収の参考になる本

7.0円・低価格での買収の参考になる本

スモールM&Aの増加に伴い、書店にはM&Aに関する書籍が数多く並ぶようになりました。0円での会社買収といっても、リスクがないわけではありません。M&Aに初めて挑戦する人は、基礎知識を身に付けるところからスタートしましょう。

7-1.「0円で会社を買って、死ぬまで年収1000万円」奥村聡

『0円で会社を買って、死ぬまで年収1000万円』(光文社新書)は、後継者不在の中小企業を0円で買収し、一国一城の主になるための方法をまとめた書籍です。

磨けば光る会社の見極め方や値段の決め方、交渉のヒントなどが盛り込まれており、会社員から経営者へのシフトを考えている人にとっては大きな助けになるでしょう。

『事業承継デザイナー』の肩書を持つ著者は、存続の危機にある中小企業700社以上を支援してきたプロフェッショナルです。

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7-2.「小さな会社を買って成功するための個人M&A大全:失敗しない「企業買収」と「中小企業経営」の極意」寺嶋直史・原田総介

『小さな会社を買って成功するための個人M&A大全:失敗しない「企業買収」と「中小企業経営」の極意』(スタンダーズ)は、事業再生コンサルタントである著者2人による、サラリーマンのための個人M&Aハウツー本です。

本書ではM&Aの手続きにとどまらず、買収先企業の選び方、個人M&Aにおけるリアルな失敗、実際に経営していく上で重要な事柄を分かりやすく解説しています。

サラリーマンから経営者となり、成功していくために側に置いておきたい一冊となるでしょう。

小さな会社を買って成功するための個人M&A大全:失敗しない「企業買収」と「中小企業経営」の極意|Amazon

7-3.「M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実決定版」藤井一郎

『M&A仲介会社の社長が明かす 中小企業M&Aの真実 決定版』(東洋経済新報社)は、中堅・中小企業のM&Aをテーマにした内容です。会社買収に必要な基礎知識が網羅されているため、スモールM&Aを検討している個人にも役立ちます。

著者は、M&A仲介会社・アドバイザリーグループの経営経験があり、中堅・中小企業をはじめとする多くのM&Aを成約に導いてきました。売り手・買い手の立場だけでなく、仲介者の実態や裏事情も分かる1冊となっています。

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8.注意事項を把握してお得に会社を買収しよう

8.注意事項を把握してお得に会社を買収しよう

後継者のいない中小企業や負債を抱える会社は、0円での譲渡が成立するケースがあります。資金が潤沢でない個人にとって、0円での会社買収はお得で魅力的といえるでしょう。

ただし、M&Aによる会社買収にはデメリットもあります。特に、負債を抱える会社を買収すると、損失が拡大するリスクがあるため、経営スキルに自信がない人は慎重に検討する必要があります

信頼できるM&Aの専門家を早い段階で味方に付けることが、成功の鍵といえるでしょう。

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