個人事業主の事業承継の流れ。後継者選びや税金対策は早めに

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個人事業主が後継者に事業承継する場合には、どのような手続きが必要なのでしょうか?加えて事業承継を実施するための3種類の手法や、納税義務が生じる税金についても見ていきましょう。個人版事業承継税制で税額を抑える方法も紹介します。

この記事の目次

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1.個人事業主の事業承継とは

企業の事業承継では、後継者に株式を移転し手続きします。個人事業主の事業承継では、後継者に何を引き継ぐのでしょうか?

1-1.経営権・経営資源などを後継者に引き継ぐこと

個人事業主の事業承継で引き継ぐものは、『経営権』『経営資源』『物的資産』の3種類です。

  • 経営権:現経営者の廃業と後継者の新規開業により引き継ぐ
  • 経営資源:信用力やノウハウ・従業員・取引先などを引き継ぐ
  • 物的資産:店舗・機器・備品などの事業に必要な固定資産や、売掛金・借入金などを引き継ぐ

事業承継では、これらのうち一部のみを引き継ぐことも可能です。しかし実際に事業承継した個人事業主の89.4%は、事業のすべてを引き継いでいます。

参考:2019年版 小規模企業白書 第2節 個人事業者の事業承継|中小企業庁

2.個人事業主の事業承継方法は3種類

個人事業主が後継者に事業を引き継ぐ際には、『贈与』『相続』『売買』のいずれかを用います。それぞれどのような特徴のある手法なのでしょうか?

2-1.贈与でバトンタッチする

現在事業を担っている個人事業主の存命中に、無償で事業用資産を後継者へ譲るのが贈与です。後継者が決まっており、確実な事業承継を目指す場合に用いられます。

事業主の子どもや孫といった親族が後継者の場合はもちろん、第三者への事業承継でも用いられる手法です。高額な事業用資産でも無償で引き継げる点はメリットですが、贈与税の負担が大きくなりがちというデメリットもあります

2-2.遺言・相続により引き継ぐ

後継者が個人事業主の法定相続人であれば、死亡によって発生する相続により事業承継するのも一般的です。個人事業主の場合、事業用資産はすべて個人名義のため、ほかの資産と同じように相続財産に含まれます。

相続人が後継者のみであれば、スムーズな引き継ぎが可能です。一方、相続人が複数人いる場合、事業用資産が後継者以外の相続人の手に渡る可能性もあります

事業に必要な資産を後継者が確実に相続できるよう、事業主は遺言書の作成といった方法で事前に対策をしておかなければいけません。

2-3.第三者に売却する

事業用資産の売買によっても、事業承継を実施できます。主に子どもや孫など親族への承継ができない場合に、従業員や第三者へ事業承継するために用いられる手法です。

所有している資産を売却するため、事業主は対価を取得できます。ただし第三者への承継の場合、事業主が自力で買い手を見つけるのは難しいでしょう

比較的小規模な事業の売買を扱っているマッチングサービスを利用すると、買い手を見つけやすくなります。また買い手が見つかった後には、価格などに関する交渉も必要です。

『M&A』について詳しく解説している以下も、ぜひご覧ください。
M&Aの代表的な4つの手法|税理士法人チェスター

3.個人事業主の事業承継の流れ

個人事業主が事業承継する場合、まず後継者を決定します。そして実際に事業承継するときには、現在事業を営んでいる個人事業主は廃業の手続きを行います。その後、後継者が開業手続きを行い引き継ぐ流れです。

3-1.後継者の選定

まずは誰を後継者とするか決定しましょう。個人事業主として事業を運営する中で、どのようなことを大切にしてきたのでしょうか?その価値観や方針を引き継ぐには、どのような資質を持った人を選べばよいか考えます。

例えば、リーダーシップや論理的な思考・コミュニケーション能力の高さなどが代表的です。実際に事業承継を行った個人事業主は、『専門知識』や『実務経験』『血縁関係』などを重視するケースが多いそうです

これらの条件を総合し、親族や従業員から後継者を選びましょう。親族や従業員の中で見つからなければ、第三者を後継者とすることも検討します。

参考:会社の跡継ぎは誰が最適?後継者候補の選び方と育成方法|税理士が教える相続税の知識
参考:2019年版小規模企業白書 2 後継者教育|中小企業庁

3-2.後継者への引き継ぎ

後継者が決まったら事業を引き継いでいきましょう。ただし経営権・経営資源・物的資産をすべて一度に引き継ぐと、支障が出る可能性があります。教育期間を兼ねながら、徐々に引き継ぎを進めていくとよいでしょう

事業に対するお互いの思いや理想、後継者が考える今後の事業構想なども共有します。共通認識を持って臨むことで、より効果的に引き継ぎを進められるはずです。

また個人事業主として事業を運営するときには、信頼や人間関係が重要なため、時間をかけて引き継ぎを行います。

3-3.屋号の引き継ぎ

屋号も後継者に引き継げます。開業届を提出するときに屋号を引き継ぐ旨を記載するだけで、手続きは完了です。ただし商号登記されている屋号には注意しましょう。

競業避止義務に違反するため、そのままでは使えない可能性があります。屋号の商号登記をしている場合には、法務局で名義変更の手続きが必要です。

3-4.営業の許認可申請

事業承継するのが飲食店・建設業・理美容業・クリーニング業・酒小売業・旅館業であれば、相続以外で引き継ぐ場合には新たに許認可申請をしなければいけません

例えば飲食店の場合、相続なら『許可営業者の地位承継届』『営業許可書』『戸籍謄本』『相続人全員の同意書』があれば手続きできます。しかしそのほかの方法で引き継ぐときには、以下をそろえ申請が必要です。

  • 営業許可申請書
  • 営業設備の大要(調理場の概要など)
  • 営業設備の配置図
  • 水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合のみ)
  • 許可申請手数料・施設の確認検査など食品衛生責任者の資格を証明するもの

このように許認可申請の手続きが必要な個人事業主の事業承継は、全体の42%にのぼります。

参考:個人事業主の事業承継時の許認可手続の簡素化について|内閣府

3-5.取引先への連絡、従業員への通知

取引先への連絡も欠かせません。これまでずっと付き合いが続いているからといって、後継者に代替わりしても変わらず取引できるとは限らないからです

事業承継を行った個人事業主が苦労したこととして、取引先との関係維持を挙げている調査結果もあります。後継者とともにあいさつに行き、顔を覚えてもらいましょう。

また従業員へも事業承継について知らせ、後継者を紹介します。事業主が変わることに不安を感じる従業員もいるかもしれませんが、きちんと説明すれば理解してもらえるでしょう。

参考:2019年版小規模企業白書 第2節 個人事業者の事業承継|中小企業庁

4.現事業主の廃業手続き

事業の経営権を後継者へ引き継ぐには、まず現事業主が廃業手続きを行わなければいけません。廃業のために必要な三つの手続きをチェックしましょう。

4-1.廃業届などの手続き

個人事業主が廃業する際には、廃業届とも呼ばれる『個人事業の開業・廃業等届出書』という書類を税務署に提出します。書類には『届出の区分』欄の『廃業』にチェックを入れ、後継者の住所と氏名を記載しましょう。

ほかにも以下の必要事項を書き入れ、書類を完成させます。

  • 納税地
  • 納税地以外の住所地・事業所等
  • 氏名
  • 生年月日
  • 個人番号
  • 職業
  • 屋号
  • 所得の種類
  • 開業・廃業日等
  • 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
  • 事業の概要
  • 給与等の支払の状況
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無

書類は事業承継により後継者へ引き継いでから『1カ月以内』に提出しなければいけません

4-2.所得税の青色申告の取りやめ手続き

青色申告をしている場合には、廃業届と同じタイミングで『所得税の青色申告の取りやめ届出書』も提出しましょう。廃業届にも、『所得税の青色申告の取りやめ届出書』の提出の有無にチェックを入れる欄があります。

提出期限は事業を廃止した年の『翌年3月15日』までですが、廃業届と同時に提出しておけば手間がかかりません

4-3.消費税の事業廃止届出書の提出

消費税の課税事業者であれば、『事業廃止届出書』の提出も必要です。こちらも廃業届に提出の有無をチェックする欄があるため、必要であれば一緒に提出すると手間がかかりません。

提出し忘れると『課税事業者選択不適用届出書』や『簡易課税制度選択不適用届出書』などの効力が消えない点に注意しましょう。廃業したら速やかに手続きが必要です

参考:個人事業主の事業承継の流れ|税理士が教える相続税の知識

5.後継者による開業手続き

現事業者の廃業手続きが完了したら、後継者が開業手続きを行うことで、経営権の引き継ぎの完了です。後継者が行う5種類の手続きを紹介します。

5-1.個人事業の開業届出の手続き

経営権を引き継ぐ後継者は、個人事業主として開業しなければいけません。開業届とも呼ばれる『個人事業の開業・廃業等届出書』を税務署へ提出します。

現事業者が提出する廃業届と同じ書類ですが、開業時には『届出の区分』の『開業』にチェックし、現事業者の住所・氏名も記入します。

手続きの期限は事業承継をしてから『1カ月以内』です

5-1-1.給与支払事務所等の開設届出書は不要

従業員のいる事業所を引き継ぐ場合には、『給与支払事務所等の開設届出書』も税務署へ提出します。ただし個人事業主は『個人事業の開業・廃業等届出書』を提出するため、個別に書類を作成する必要はありません

『個人事業の開業・廃業等届出書』に『給与等の支払の状況』という欄があるため、記入し提出しましょう。

5-2.青色申告承認申請の提出

確定申告を青色申告で行うなら『所得税の青色申告承認申請書』も、税務署に提出しましょう。『個人事業の開業・廃業等届出書』に提出の有無を記載する欄があるため、チェックの上、同じタイミングで出します。

注意が必要なのは提出期限です。事業承継した年の『3月15日』までが提出期限のため、時期によっては早めに書類を用意し手続きしなければ間に合いません

特に事業主が亡くなり相続で引き継ぐ場合、タイミングによっては提出が3月15日に間に合わない可能性もあります。提出できない場合、その年の確定申告は白色申告で行います。

5-3.青色事業専従者給与に関する届出書の提出

配偶者や親族が事業を手伝っており給与を支払っている場合には、『青色事業専従者給与に関する届出書』の提出も必要です。税務署に届け出ておくと、配偶者や親族に支払った給与を経費として計上できます。

提出期限は経費として計上する年の『3月15日』までです。ただし1月16日以降に開業した人は、開業の日から2カ月以内に手続きをします

5-4.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

雇用している従業員がいる場合、事業主は従業員の所得税を源泉徴収税として給与から差し引き納税しなければいけません。本来であれば源泉徴収税は翌月10日までに納付する決まりです。

ただし給与を支払う従業員が10人未満であれば、特例によって納付を半年に1回にできます。そのために必要なのが『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請』です。

この書類も、『個人事業の開業・廃業等届出書』に届出の有無をチェックする欄があります。必要に応じてチェックし同じタイミングで提出しましょう。

提出期限は、手続対象者となった日の属する年の確定申告期限までです

5-5.所得税の減価償却資産の償却方法の届出書の提出

建物や機械など、一度購入すると長く使い続けるもので価格が高いものを『減価償却資産』といいます。減価償却資産を購入すると、一度に経費にするのではなく、数年かけて少しずつ経費として計上していきます。

少しずつ経費にする方法は『定額法』と『定率法』の2種類です。特に手続きをしなければ、定額法で減価償却を行います。定率法で減価償却を行うなら、『所得税の減価償却資産の償却方法の届出書』を税務署へ提出しなければいけません。

定率法を採用した方が税額や安くなる場合には、提出しておくとよいでしょう。期限は、手続きの対象者となった日の属する年の確定申告期限です。

6.事業承継により発生する税金

先代の事業主から必要な資産を引き継ぎ事業承継を行うと、税金が課されます。納めなければいけない代表的な税金を確認しましょう。

6-1.贈与税

現事業主から後継者に無償で資産を引き継ぎ事業承継を行うと、後継者は『贈与税』を納めなければいけません。課税対象となる資産の価格から基礎控除額『110万円』を差し引いた残りの金額をもとに、税額を計算します

父母や祖父母から18歳以上の子どもや孫への贈与には、『特例税率』が用いられます。税率と控除額は以下の通りです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超~400万円以下 15% 10万円
400万円超~600万円以下 20% 30万円
600万円超~1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超~1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超~3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超~4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

例えば引き継ぐ資産の合計額が3,500万円の場合には、『{(3,500万円−110万円)×50%}−415万円=1,280万円』と分かります。

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
参考:贈与税に関する全知識|税率・計算方法から6つの非課税制度まで徹底解説|税理士が教える相続税の知識

6-2.相続税

資産を引き継いだ後継者が『相続税』を納めるケースもあります。現事業主が亡くなり、相続で事業用資産を引き継ぐ場合です。

相続税は遺産の価格をもとに計算しますが、『3,000万円+600万円×法定相続人の数』で算出する基礎控除額を下回る価格であれば、相続税は課税されません

例えば遺産が4,000万円、法定相続人が3人なら、基礎控除額は4,800万円で相続税は非課税です。基礎控除額を超えた部分は、以下の税率と控除額を用い相続税を算出します。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

遺産が5,000万円、法定相続人3人の場合、基礎控除額は4,800万円で遺産が200万円上回ります。200万円に税率10%をかけた20万円が相続税額です。

参考:No.4155 相続税の税率|国税庁
参考:相続税の計算方法を解説!【申告が必要か誰でも簡単に分かるソフト付き】|税理士法人チェスター

6-3.所得税・消費税・固定資産税など

後継者が事業を引き継いだ年には、先代事業者も後継者も確定申告が必要です。例えば事業承継を行ったのが9月1日なら、先代は8月末までの、後継者は9月1日からの収入について、『所得税』を申告します

先代事業者が亡くなった場合は、死亡を知った日の翌日から4カ月以内に準確定申告が必要です。また『消費税』の課税対象でないかという点も確認しましょう。2年前の課税対象となる売上が1,000万円を超えると、納税が必要です。

また土地や家屋など不動産を引き継ぐと『固定資産税』や『都市計画税』もかかります。

7.税負担の軽減・納税資金の準備を考えよう

7.税負担の軽減・納税資金の準備を考えよう

贈与税や相続税は、現金による一括納付が原則です。そのため何も対策していなければ、多額の納税資金でその後の事業が立ち行かなくなる可能性があります。制度や保険を活用し、負担の軽減や納税資金の準備が必要です。

7-1.相続時精算課税制度の活用

『相続時精算課税制度』を使うと、2,500万円までは贈与時点の税額が非課税になります。ただし事業主が亡くなったときには、相続時精算課税制度で贈与した資産は相続財産に持ち戻され、相続税がかかる仕組みです。

また2,500万円を超える部分には贈与税がかかりますが、一律20%と税額を抑えやすいのも特徴といえます。また対象は、贈与が発生した年に60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子どもや孫への贈与です。

一度相続時精算課税制度を利用すると、その後は暦年贈与を選べなくなる点に注意しましょう。相続時精算課税制度を利用する場合には、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日に『相続時精算課税選択届出書』の提出が必要です。

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁
参考:相続時精算課税制度とは?必要書類・手続きなどをわかりやすく解説!|税理士が教える相続税の知識

7-2.生命保険の活用

相続税を軽減できる可能性のある方法として、『生命保険』の活用も検討しましょう。保険金は『500万円×法定相続人の数』で算出できる非課税限度額までは、相続税がかかりません。相続税が課されるのは、非課税限度額を超えた部分です。

また先代事業主に生命保険をかけ、受取人を後継者に指定すれば、受け取った保険金で相続税を納められます。ただし生命保険の加入に費用がかかる点はデメリットです。

参考:保険を活用した相続対策|生命保険が相続対策となる理由|税理士が教える相続税の知識

7-3.個人版事業承継税制の活用

贈与や相続により事業承継を行うと、後継者は贈与税や相続税を負担しなければいけません。税率が高く大きな負担になりやすい税金のため、納税できたとしても、その後の事業運営に資金面で悪影響を及ぼす可能性があります。

そこで役立つのが個人版事業承継税制です。青色申告を行っている事業者が、経営承継円滑化法の認定を受けた後継者に贈与か相続で事業用資産を譲る場合、要件を満たしていれば納税が猶予されます

後継者の死亡時や、一定期間経過後に後継者がさらに贈与で事業承継を行うと、猶予されていた税金が免除される仕組みです。

ただし満たすべき要件が複雑で、途中で要件を満たせなくなると、猶予されていた税金と利子税を支払わなければいけません。

事業承継税制については、以下もご覧ください。
事業承継税制とは何か。活用できる人や納税猶予を受けるまでの流れ|税理士が教える相続税の知識

7-3-1.要件、書類提出に注意

個人版事業承継税制を活用するには、期限に注意が必要です。対象となるのは『2028年12月31日』までの贈与もしくは相続ですが、適用を受けるには、2024年3月31日までに、後継者が都道府県に『個人事業承継計画』を提出しなければいけません

また引き継ぐ資産を選べない点にも注意しましょう。事業用資産に不要なものが含まれていたとしても、そのまますべて引き継がなければならず、デメリットが大きいケースもあります。

加えて、要件を満たすと事業用の土地の評価額が80%減額される、『小規模宅地等の特例』とは併用できない点にも注意しましょう。

8.個人事業主の事業承継における注意点

個人事業主が事業承継する場合、事業に関する資産や債務を一つずつ引き継ぐ手続きが必要です。加えて相続による事業承継であれば、相続人間のトラブルに発展する可能性もあるでしょう。

8-1.複雑な手続きが多い

法人の事業承継の場合、事業に関するあらゆるものは、すべて法人が所有しています。そのため必要なのは、代表者が交代するための手続きのみです。

一方、個人事業主が事業承継をする場合には、個別に手続きしなければいけません。現在の事業主の廃業と後継者の開業の手続きはもちろん、納税義務者に関する手続きも必要です。

資産の引き継ぎも個別に行わなければならず、取引先と交わしている契約書の名義変更も行います。また従業員との雇用契約も結び直さなければいけません

手続きは個人でもできますが、提出書類を不備なくそろえるのは大変です。中には専門的な知識が必要な手続きもあるため、必要に応じて税理士をはじめ専門家へ相談しながら進めるとよいでしょう。

事業承継の際の専門家選びについては、以下もご覧ください。
事業承継の相談ができる専門家とは。選ぶときのポイントなどを解説|税理士法人チェスター

8-2.負債や個人保証の引き継ぎ

事業承継によって後継者が引き継ぐのは、プラスの資産だけではありません。『負債』や『個人保証』も後継者が引き継ぐのが一般的です。

ただし負債や個人保証の引き継ぎには、金融機関の同意を得なければならず、手続きが煩雑になりやすいでしょう。スムーズな事業承継を目指すなら、あらかじめ借入金を返済し、個人保証をはずしておくのがおすすめです。

事業資金で返済する方法のほか、事業者の個人資金を貸し付けて返済に充てる方法もあります。

8-3.相続時にトラブルになる場合がある

個人事業主の場合、事業用に使っている資産もすべて個人名義です。そのため相続時には、相続人間で分割する相続財産に含まれます。

後継者がすべての事業用資産を引き継ぐには、遺言書の作成が有効です。しかし後継者が事業用資産を相続することで、他の相続人が最低限引き継ぐ権利のある『遺留分』への侵害が起きた場合、『遺留分侵害額請求』により支払いを求められる可能性があります

また後継者以外の相続人が事業に用いている資産を引き継ぐと、第三者に売却する可能性もあるでしょう。トラブルが発生すれば、スムーズな事業の継続に支障が出るかもしれません。

遺留分侵害額請求については、以下もご覧ください。
遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)とは?計算方法・時効・手続きの流れ|税理士法人チェスター

9.専門家へ相談しスムーズに進めよう

個人事業主の事業承継は手続きが複雑です。資産の引き継ぎを個別に行わなければならず、契約の名義変更も行わなければいけません

廃業や開業の手続きのほか、事業内容によっては許認可の取得も必要です。個人版事業承継税制で節税するには、その手続きも行います。専門知識が必要な手続きもあるため、必要に応じて税理士や司法書士などに相談しましょう。

税理士法人チェスターでは、相続事業承継コンサルティング部の実務経験豊富な専任税理士が、お客様にとって最適な方法をご提案いたします。

事業承継コンサルティングなら税理士法人チェスター

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。