M&Aとはどんなものか分かりやすく解説。行う目的や成功のポイント

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M&Aとはどのような取引なのでしょうか?概要を分かりやすく解説します。うまく活用すると、後継者や不採算事業など会社が抱えている問題の解決に役立てられるでしょう。売り手・買い手双方のメリット・デメリットや手続きの流れも確認します。

1.M&Aとは

1.M&Aとは

どのような取引のことをM&Aと呼ぶのでしょうか?基本的な知識として、狭義・広義のM&Aの定義や、近年の動向について確認しましょう。

1-1.企業の合併・買収のこと

『Mergers and Acquisitions』の略称であるM&Aは、企業の合併・買収を意味しています。合併とは二つ以上の企業がそれぞれ保有する資産や負債を一つに統合し1社になること、買収は買い手企業が売り手企業を買うことです

ただしM&Aの定義は一つではありません。狭義では、企業に資本移動が生じる合併と買収をM&Aと呼びますが、広義では、資本移動のない販売協力や共同開発研究などの業務提携もM&Aに分類されます。

1-2.近年増加傾向にある

国内でのM&Aの実施件数は、事業承継を目的としたM&Aや企業の成長を目的としたM&Aが増えている影響で、2010年ごろから増加傾向です。近年は以下のように推移しています。

  • 2019年:4,088件
  • 2020年:3,730件
  • 2021年:4,280件

2020年には新型コロナウイルス感染症の影響を受けて減少していますが、2021年には4,280件と、過去最多を記録しました。

参考:中小企業白書2022 第1部令和3年度(2021年度)の中小企業の動向|中小企業庁

2.M&Aを行う目的

2.M&Aを行う目的

企業が実施するM&Aには、どのような目的があるのでしょうか?後継者問題への対策や事業の『選択と集中』を行うために実施するケースに加え、企業が持つノウハウをより広く伝えたい・事業拡大を目指したいといった目的で行われる場合もあります。

2-1.後継者問題の解決

売り手における後継者問題を解決する目的で、M&Aが行われるケースもあります。黒字経営を継続しているにもかかわらず、後継者がいない企業は少なくありません。

少子化や世の中の価値観の変化で、子どもなどの親族への承継が難しく、社内にも跡継ぎ候補にふさわしい人材がいないとなると、廃業は時間の問題です。

また後継者が親族内や社内にいる場合でも、自社株の引き継ぎに必要な資金を用意できず、事業承継が進まないケースもあります。

これらの事情により事業承継できない場合、M&Aが解決策となるかもしれません。加えて、資金力のある買い手に売却できれば、経営基盤がより堅固なものとなり、事業の成長も期待できます。

参考:後継者不足を理由に廃業はもったいない。M&A検討で可能性は広がる

2-2.事業の整理

自社の主軸である利益の出やすいコア事業に資源を集中させられるよう、成果が出ていないノンコア事業をM&Aで売却して切り離す、選択と集中を行うケースもあります

多角的に事業を展開していると、伸びる事業がある一方、期待したほどの成果につながらない事業も出てくるでしょう。採算の取れない事業をそのまま続けていると、企業の成長に支障が生じるおそれがあります。

より多くの利益を獲得し、企業の成長を目指す目的で行われるM&Aです。

参考:ノンコア事業の売却で経営を効率化できる。売却の手法も確認

2-3.人材や技術・ノウハウの継承

後継者が見つからず事業承継できなければ、廃業は時間の問題です。廃業により企業そのものがなくなれば、働いている従業員は仕事を失い、自社が築いてきた技術やノウハウも途絶えてしまいます。

従業員の雇用を守ることや、技術・ノウハウを引き継ぐことも、売り手がM&Aを行う目的の一つです。優秀な人材やほかにないノウハウを引き継げば、買い手は買収の直後から利益を得られる可能性があります。

売り手はもちろん、買い手にとってもプラスに働くM&Aです。

2-4.既存事業の強化や事業の拡大

リスクを抑えつつ新規事業への参入や事業拡大を実施できる方法として、M&Aによる買収を行う買い手もいます。新規事業に参入するためにはコストも時間もかかり、しかも必ずしも利益が出るとは限りません。

事業拡大も、取り組みを始めてから実際に実現するまでには時間がかかります。一方M&Aで会社や事業を買収した場合、すぐに新規事業への取り組みや事業拡大できる人材・設備などを、一から立ち上げるより早く獲得が可能です。

従来よりも規模の大きな事業に取り組めるため、スケールメリットを生かし、仕入れや輸送にかかるコスト削減にもつながります。

3.M&Aのメリット

3.M&Aのメリット

M&Aは、買い手にも売り手にもメリットのある取引です。買い手はコストと手間を抑えて新規事業の立ち上げや事業拡大が可能で、売り手は後継者や経営状況の悪化などの問題を解決できます。

3-1.買い手側

買い手はM&Aによって、事業に必要なあらゆるものを一度に獲得できます。例えば衣料品店を展開する企業が他地域に進出する場合、新たに店舗を立ち上げるとなると、物件探し・店舗のレイアウトや設備の決定・人材の確保など、多くのタスクが発生します。

新規開店ではその地域に顧客がいないため、ゼロから開拓しなければいけません。M&Aにより対象地域にある衣料品店を買収すれば、物件探しは不要で、接客のスキルを持つ人材の採用が可能です。

ターゲット層が同じ衣料品店を買収すれば、顧客の引き継ぎも期待できるでしょう。新規事業でも規模の拡大でも、スピーディーに始められ最初から利益を得られる可能性がある点が、買い手にとってのメリットです

参考:会社買収の概要と進め方。メリットや失敗しないための対策などを解説

3-2.売り手側

売り手がM&Aを活用すると、さまざまな課題を解消できます。後継者のいない企業でも、M&Aを行えば事業承継が可能です。廃業を回避できるため、従業員の雇用を守れます。

経営状態が悪化している場合には、M&Aによる事業売却で倒産を回避できるかもしれません。従業員の引き継ぎを条件に売却すれば雇用を守れる上、獲得した対価をコア事業に集中的に投入でき、業績アップを目指せます

M&Aで売却後に引退するなら、創業者利益を獲得できるのもメリットです。まとまった金額を得られれば、退職金代わりにもできるでしょう。

4.M&Aのデメリット

4.M&Aのデメリット

M&Aはメリットばかりではありません。実施によるデメリットもある点には注意しましょう。あらかじめどのようなデメリットがあるか知っておけば、実施を検討する際に適切に判断しやすくなります。

4-1.買い手側

買い手にとってのデメリットとして挙げられるのは、思わぬ負債を引き継ぐ可能性です。売り手企業に、帳簿に記載されていない未払い残業代や退職給付引当金などの簿外債務があると、採用したM&A手法によっては買い手が引き継がなければいけません。

簿外債務のリスクを避けるため入念な調査を行ったとしても、売り手すら簿外債務の存在に気付いておらず、見つけられない場合もあります

またM&Aにより経営方針が変わると、取引先に影響を及ぼすおそれもあるでしょう。これまでの関係性を維持できない可能性がある点もデメリットです。

参考:簿外債務の種類や見つけ方。買い手と売り手それぞれの対策は?

4-2.売り手側

時間がかかるケースが多いという点は、売り手にとってのデメリットといえます。M&Aによる売却を決めたとしても、タイミングよく買い手が現れるとは限りません。

買い手が現れスムーズに成約したとしても、異なる企業同士を統合するには時間がかかります。混乱が生じて、現場の仕事に影響を及ぼすかもしれません

また統合後に、従業員の雇用条件や労働条件が変わるケースもあります。これまでより条件が悪化すれば、離職する従業員も現れるでしょう。

5.M&Aの種類と手続きの流れ

5.M&Aの種類と手続きの流れ

複数の種類があるM&Aの手法には、それぞれどのような特徴があるのでしょうか?基本的なM&Aの流れと併せてチェックします。

5-1.M&Aの種類

M&Aには、資本の移動を伴う狭義のM&Aと、資本の移動を伴わない取引も含む広義のM&Aがあります。狭義のM&Aに該当する手法は、以下の通りです。

  • 株式譲渡:買い手に株式を売却し企業を丸ごと引き継ぐ
  • 第三者割当増資:売り手が新たに発行した株式を特定の第三者に割り当て対価を受け取る
  • 株式交換:売り手企業の株式と交換に買い手企業の株式を交付し、売り手企業が買い手企業の100%子会社となる
  • 株式移転:既存の企業の発行済株式を新たに作った会社に引き継がせる
  • 事業譲渡:企業が保有する事業の一部もしくは全部を売却する
  • 合併:2社以上の会社を1社に統合する
  • 分割:売り手の事業を他の会社に引き継がせる

代表的な4種類の手法について解説している以下もご覧ください。
M&Aの代表的な4つの手法|税理士法人チェスター

5-1-1.中小企業では株式譲渡がよく用いられる

中小企業がM&Aを行う場合に用いる手法は、株式譲渡が一般的です。売り手が買い手に株式を売却し企業を丸ごと譲り渡す手法は、シンプルで比較的手間がかかりません

思わぬリスクを引き継ぐ可能性はあるものの、手続きの簡便さから、多くの企業が用いています。

売り手が不採算部門の売却を希望している場合や、買い手が引き継ぐ資産を選んで買収したいと考えている場合には、事業譲渡を利用するケースもあるでしょう。

ただし、資産や契約を引き継ぐ手続きが個別に必要で手間がかかるため、株式譲渡ほど多くはありません。

参考:株式譲渡にはどんな手続きが必要?契約や税金に関する基礎知識

5-2.M&Aの大まかな流れ

企業がM&Aを行う際の手順は、準備・交渉・契約の3段階に分類が可能です。まずはM&Aの実施を検討します。M&Aが最適な経営戦略だと判断したら、買い手企業にアプローチするための資料も準備しましょう。

準備が整ったら、以下の手順で交渉を進めます。

  1. 買い手へのアプローチ
  2. 秘密保持契約の締結
  3. 詳細な情報の提示
  4. トップ面談による相性や意向の確認
  5. 基本合意書の締結
  6. 買い手による売り手企業の調査(デューデリジェンス)の実施
  7. 最終条件交渉
  8. 最終契約書の締結

最終契約後は契約内容に従って、株式や資産の移転に必要な手続きを行います。システムや業務手順・制度・企業理念などの統合を実施し、M&Aは完了です。

参考:M&Aの流れを知ってスムーズに進めよう。契約の種類や必要な手続き

5-3.M&A成功のポイント

成約したからといって、必ずしもM&Aの成功とはいえません。統合まで実施して、期待していたシナジー効果を発揮できて初めて成功といえます

M&Aを成功に導くためには、スムーズな統合が期待できるよう、企業風土が合う買い手企業を見つけましょう。併せて、M&Aの検討段階から、成約後の方針や課題とその対策などを明確にし、経営統合に向けた準備を始めるのもポイントです。

参考:M&Aの成功率を上げるには?売り手・買い手それぞれ解説

6.M&Aを検討中なら

6.M&Aを検討中なら

スムーズにM&Aを進めるには、専門知識やスキルが必要です。自社の人材のみでは対応しきれない場合もあるでしょう。仲介会社に相談すれば、専門家のサポートを受けられます。

必要なノウハウがあるなら、スピーディーに成約できるマッチングプラットフォームの利用を検討するのもおすすめです。

6-1.ノウハウがない場合は仲介会社を利用

M&Aを行う上ではさまざまな手続きが必要です。手続きを行うための準備や、契約書のチェックも行わなければいけません。これまでにM&Aの経験がなければ、社内の人材のみで対応するのは難しいでしょう。

必要なノウハウが不足しているなら、専門家のサポートを受けながら交渉や手続きを進められる仲介会社の利用がおすすめです。M&Aアドバイザーや弁護士・税理士など、M&Aの専門家に相談できます。

参考:M&A仲介のビジネスモデルを解説。メリットやデメリットも要確認

税務に関する内容なら、税理士法人チェスターを中心とするチェスターグループへの相談がおすすめです。豊富な実績をもとにしたアドバイスを受けられます。

事業承継・相続対策に特化した売主オーナー様目線のM&A支援サービス|事業承継M&Aならチェスター

6-2.マッチングプラットフォームも

インターネット上で取引の候補企業を探せる、マッチングプラットフォームの利用も検討しましょう。検索で希望条件に合う候補企業を絞り込んだら、その後は直接やり取りする仕組みのため、スピーディーに成約できる可能性があります

仲介会社と比べて利用料が安価に設定されており、手軽に利用しやすいのも特徴です。M&Aについてのノウハウがあるなら、利用を検討してみましょう。

参考:M&A仲介サイトで小規模な事業の売買も可能。六つのサイトを紹介

7.M&Aにはさまざまなメリットがある

M&Aは企業の経営戦略の一つとして有効な方法です。売り手であれば、後継者問題や不採算事業の整理などの解決に生かせます

経営者が引退を考えている場合には、対価を受け取りつつ事業承継できるのもメリットです。創業者利益の獲得により、引退後に豊かな暮らしを送ったり、新たな事業を始めたりという選択もできるでしょう。

M&Aを実施するにあたり、必要な知識やノウハウが不足しているなら、仲介会社や弁護士・税理士などに相談するとよいでしょう。

税務に関する調査であれば、税理士法人チェスターを検討するのがおすすめです。相続事業承継のコンサルティングに特化した専門税理士が、お客様にとって最適な方法をご提案いたします。

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