株式譲渡にはどんな手続きが必要?契約や税金に関する基礎知識

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株式譲渡とは、株主の持つ株式を第三者に譲渡し会社の経営権を移転するM&A手法の一つです。売買・贈与・相続の3パターンがあり、売買では譲渡益が獲得できます。事業譲渡との相違点や、株式譲渡益に課せられる税金について解説します。

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1.株式譲渡とは

1.株式譲渡とは

株式会社は、会社の規模にかかわらず『株式』を発行しており、株式を保有する人は『株主』と呼ばれます。『株式譲渡』とは株式を譲渡することで、経営権を移転することです。企業の経営の根幹にかかわる重要な決定であることはいうまでもありません。

1-1.所有する株式を譲渡する手続き

『株式譲渡』とは、譲渡企業の株主が所有する株式を個人もしくは法人に譲り渡す手続きのことです。会社法127条には『株主は、その有する株式を譲渡することができる』と記載があり、株式の自由な譲渡が認められています。

株式譲渡では『過半数の株式』を譲り渡すと『会社の経営権』が譲り受けた側に移転します。所有者は変わりますが、会社の事業そのものは承継されます。

株式譲渡は事業譲渡よりも手続きが簡便で、従業員や取引先などから個別に承諾を得る必要がないのが特徴です。権利義務をすべて引き継ぐ『包括承継』のため、各種契約や許認可もそのまま引き継がれます。

参考:会社法|e-Gov法令検索

1-1-1.事業譲渡との違い

事業譲渡とは、会社の事業の一部または全部を譲渡する方法です。中核事業への集中や不採算部門の切り離し、技術やノウハウの承継などを目的に選択されます。

株式譲渡との大きな違いは、譲渡企業の経営権が移行するか否かという点です。株式譲渡では経営権が買い手に移りますが、事業譲渡では売り手の経営権はそのまま保持されます。

また、包括承継の株式譲渡と異なり、事業譲渡は譲渡する範囲を契約で定めることが可能で、特定承継といわれます。許認可や雇用契約などは移転されないため、個別に手続きを行う必要があります。

参考:事業譲渡の目的、主な特徴とは。専門家の知識が欠かせない理由

1-2.株式譲渡契約と株主名簿の名義書き換えを行う

株式譲渡の手続きは『株式譲渡契約』を締結し、『株主名簿の名義書き換え』を行うことで完了します。手続きの一連の流れは以下の通りです。

  1. 株式譲渡承認請求
  2. 臨時株主総会を招集し、株主に通知
  3. 臨時株主総会で株式譲渡の承認決議を行う
  4. 譲受人との間で株式譲渡契約を締結する
  5. 株主名簿の名義書き換えを行う

会社が発行する株式について、『譲渡制限』を設けている会社を『非公開会社』、設けていない会社を『公開会社』と呼びます。非公開会社の場合は『株式譲渡承認請求』の手続きを行い、株主や取締役会の承認をもらう必要があります。

2.株式譲渡の方法

2.株式譲渡の方法

株式譲渡の方法には『売買』『贈与』『相続』の三つのパターンがあります。譲渡方法によっては多額の税金がかかるため、譲受側(買い手)との話し合いをしっかり進めておきましょう。

2-1.株式の売買を行う

株式の売買は、対象会社が『上場企業』か『非上場企業』かによって、取引の方法が変わります。

  • 相対取引:取引所を通さない1対1の取引を行う
  • 市場取引:公開取引市場を通して不特定多数と取引を行う

譲渡企業が非上場企業である場合は、譲渡人と譲受人の間で譲渡契約書を締結して直接取引を行う『相対取引(あいたいとりひき)』の一択です

一方、譲渡企業が上場企業の場合は『市場取引』が選択できます。当事者の合意で価格が決まる相対取引と異なり、一定の相場が生まれるのが特徴です。

相対取引や市場取引のほかに、買付けについて公告し、市場外で不特定多数の株主と株式の取引をする『公開買付け(TOB)』という方法もあります。

2-1-1.譲渡先はどう見つける?

将来性のあるベンチャー企業や現在利益が出ている企業は譲渡先を見つけやすいですが、資金繰りの悪い企業は買い手がなかなか付かないケースもあります。

売り手としては、自分たちの企業価値や事業内容をよく理解している相手に譲渡したいというのも本音でしょう。

譲渡先を見つける前にすべきことは、M&Aに精通している仲介会社を見つけることです。M&Aとは『Mergers and Acquisitions』の略称で、企業の『合併』と『買収』を指します。

手続きや交渉ではさまざまなトラブルが生じる可能性があるため、経験や知識が豊富な専門家のアドバイスが欠かせません。

参考:M&A仲介サポートの内容とは?特徴や選び方、相談先の違いも紹介

2-2.贈与する

親から子へ事業を承継する際は『株式の贈与』という選択肢もあります。贈与の最大のメリットは、後継者が対価を支払わずに経営権を獲得できる点です。

ただし、暦年(1月1日~12月31日)の贈与額が110万円を超える部分には『贈与税』が課せられます。税率は基礎控除後の課税価格によって異なりますが、最高税率は55%です。

税負担を軽減する方法としては『相続時精算課税』の利用が挙げられます。この制度には2,500万円までの特別控除があり、贈与額が2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税が課せられます。

贈与財産は贈与者の死亡時に相続財産へ持ち戻して相続税の課税対象になりますが、贈与時点で株価が固定されるため、将来的に株価が変動しても税負担は変わりません。株価が下がったタイミングで相続時精算課税制度を利用すれば、大きな節税効果が見込めます。

参考:相続時精算課税制度とは?必要書類・手続きなどをわかりやすく解説!

2023年度税制改正大綱では、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が加わることが発表されました。基礎控除分については贈与税の申告が不要で、相続財産への持ち戻しもありません(2024年1月1日以後に贈与により取得する財産に対する相続税または贈与税について適用)。

なお、贈与から3年以内に贈与者が亡くなると、贈与ではなく『相続』となり、『相続税』が課されてしまう点に注意しましょう。2023年度税制改正大綱では、この『3年以内』という期間について延長されることが発表されました。2024年1月1日以後に贈与により取得する財産については、贈与から7年以内に贈与者が亡くなると相続税の課税対象になります。

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁
参考:令和5年度税制改正の大綱|財務省

2-3.遺言で相続人を指定して譲渡する

無償譲渡には『生前贈与』のほかに、『遺言による相続(遺贈)』があります。経営者の遺言によって身内や親族などに株式が譲渡される方法で、経営者自身の意思を反映させられるのがメリットです。

遺言書の書き方には、法律による厳格な定めがあり、ルールを無視した遺言書には法的効力はありません。相続準備ができずに経営者が亡くなってしまえば、後継者以外の人物に株式が相続される可能性がある点にも注意すべきでしょう。

通常、相続や遺贈で財産を取得した際は、基礎控除を超えた分に10~55%の『相続税』がかかります。株式の相続も例外ではないため、どのくらいの税額になるのかを確認しておいた方がよいでしょう。相続資産が多い場合は、税理士への相談をおすすめします。

3.株式譲渡のメリット

3.株式譲渡のメリット

株式譲渡は、譲渡企業や経営者にどのようなメリットをもたらすのでしょうか?『事業譲渡』や『廃業』を選択したケースとも比較してみましょう。

3-1.売却益を老後資金やビジネスに活用できる

贈与や相続以外の株式譲渡では、譲渡した株式の売却益としてまとまった額のお金が手に入ります。譲渡者は売却資金を老後資金に充てたり、新たなビジネスの資本にしたりできるのがメリットです。

負債を抱えた中小企業の経営者が身を引く際、株式譲渡のほかに『廃業』という選択肢もあります。

後継者に悩まずに済むのはメリットですが、買掛金や借入金などの負債を清算することが条件のため、場合によっては個人資産を売却しなければならないケースもあるでしょう。売却益が得られるかどうかで、老後の生活が大きく変わります

参考:事業承継できず廃業する際の注意点

3-2.会社の成長につなげられる

株式譲渡は二つの会社を一つに統合し、事業のさらなる拡大を目指す手続きともいえます。廃業すれば、会社が培ってきたノウハウや人脈がすべてなくなりますが、株式譲渡を選択すれば、『企業同士の相乗効果』による発展が期待できるのです

株式譲渡で譲渡先の『子会社』になれば、親会社のブランド力や販路を活用した、新たなビジネスモデルも確立できるでしょう。こうした相乗効果を得るためにも、譲渡先はしっかり見極める必要があります。

3-3.事業譲渡と比べて手続きを円滑に進めやすい

経営権を残したまま、事業の一部またはすべてを譲渡する方法を『事業譲渡』と呼びます。事業譲渡と比較し、株式譲渡は手続きを円滑に進めやすい手法です。

事業譲渡の場合、最初に『譲渡範囲の決定』をするところからスタートします。業績の思わしくない事業は承継したくないというのが譲受側の考えなので、両者の意見が食い違えば、手続きはなかなか進まないでしょう。

もし事業譲渡で負債が移転する場合、債権者に対して個別に同意を取らなければならないのも厄介な点です。

また一部の事業を第三者に譲渡した場合、商品やサービスが独自にアレンジされて、イメージや価値の低下につながるケースもあるでしょう。

3-4.社員は買い手側企業の傘下で働ける

従業員の雇用が維持されるのも、株式譲渡の大きなメリットです。雇用契約は会社と従業員との間で結ばれているため、経営者が変わっても雇用契約には影響がありません。経営権が移行するという点を除いては、表向きはこれまでと変わらないのです。

一方、事業譲渡契約は従業員の雇用契約にも影響します。譲受企業と雇用契約を改めて結ぶ必要があるため、就業規則・給与・退職金などが変更されます。「今までの方がよかった」と反発する従業員が出る可能性もあるでしょう。

4.株式譲渡のデメリット・注意点

4.株式譲渡のデメリット・注意点

株式譲渡にはメリットだけでなく、デメリットや注意点があります。想定されるリスクや問題点をしっかりと洗い出した上で、最適なスキームを選択しましょう。

4-1.株主の同意が必要

非上場企業の株式譲渡は、買い手と株主による相対取引が基本です。すべての株主が協力的であれば譲渡はスムーズに進みますが、売り手以外にも複数の株主がいるケースでは、買い手が売り手に『株式の取りまとめ』を依頼する可能性があります。

株式譲渡に反対する株主が多かったり、株式があちこちに分散していたりする場合は、株主の説得や株式の集約に多くの時間と労力が費やされます。場合によっては、複数の株主と連絡が取れず、100%の株式取得が困難なケースもあるでしょう。

4-2.経営権を失うケースがある

株式譲渡の売り手側のデメリットは、経営権を失う可能性が高い点です。買い手は、100%の株式取得、または過半数以上の取得を目指します。

買い手の持株比率が1/2超になった場合、株主総会の普通決議を単独で成立させられるため、売り手は経営に対するコントロールをほぼ失います。

持株比率が2/3以上になると、特別決議の単独成立が可能となり、増資や事業譲渡、定款の変更が可能です。売り手が自社の経営権を保持したい場合は、事業譲渡を選択するのが賢明でしょう。

4-3.不採算事業・負債による難航

株式譲渡では、買い手が売り手の資産・負債を包括的に引き継ぎます。多額の負債や不採算事業がある場合、買い手が現れない可能性が高いのがデメリットです。

運よく買い手が見つかったとしても、マイナス要素によって企業価値が大幅に毀損するため、希望価格で譲渡するのは困難でしょう。実際、0円で譲渡した事例も少なくありません

株式譲渡を検討する前に、経営改善や不採算事業の切り離しなどによって企業価値を高める努力をしましょう。

5.株式譲渡の準備

5.株式譲渡の準備

事業譲渡と比べ、株式譲渡の手続きはそれほど煩雑ではありませんが、『株式譲渡承認請求』や『分散株式の取りまとめ』などの、さまざまな『準備』が必要です。スケジュールには余裕を持たせるようにしましょう。

5-1.株券の発行を確認する

最初に、譲渡会社が『株券発行会社』か『株券不発行会社』のどちらであるかを確認しましょう。

会社法の第128条1項では『株券発行会社の株式譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ効力を生じない』と定められています。当事者間で契約を結んだとしても、譲受企業に『株券』を交付しない限りは、株式譲渡は無効なのです

『株券』とは、株主権を示す有価証券を指します。2006年5月1日に施行された会社法において、株式会社は原則として株券を発行せず、発行する場合は定款にその旨を定めるというルールに変更されました。

『株式については、株券を発行する』と定款にある場合は、実際に株券を発行していなくても株券発行会社です。「株券が見当たらない」「株券を発行していない」という場合は、譲渡する会社を『株券不発行会社』に変更する手続きを行います。

参考:会社法|e-Gov法令検索

5-2.譲渡制限株式の場合は承認が必要

譲渡しようとしている株式が『譲渡制限株式』でないかどうかを確認しましょう。

法律では、株式の自由譲渡が認められていますが、会社の定款で株式の譲渡を制限している場合は、会社(株主総会や取締役会)に対して『株式譲渡承認請求』を行う必要があります

具体的には、譲渡する譲渡制限株式数や譲受企業の名称などを記した『株式譲渡承認請求書』を会社に提出します。

譲渡制限株式を設ける目的は、自社の株式が勝手に売買されて第三者の手に渡り、不利益を被るのを防ぐことです。

5-3.株主が分散している場合は取りまとめる

株式譲渡は会社の根幹にかかわる重要な決定です。たとえ1株しか保有していない株主でも、『株主としての権利』があります。

社歴の長い会社では、多くの株主が少しずつ株を保有しているケースがあるため、株式名簿などで「誰がいくら保有しているか」を確認し、分散した株式を取りまとめましょう。

実際のところ、株式譲渡では、必ずしも少数株式の取りまとめが必要なわけではなく、2/3以上が所有できれば会社を実質的に支配できます。

しかし、多くの譲受企業は100%の株式取得を望みます。少数株主から株式をすべて買い取れない場合、株式譲渡を断念するケースも少なくありません

6.株式譲渡の実際の手続き

6.株式譲渡の実際の手続き

会社から株式譲渡の承認を得た後は、売り手と買い手の間で交わした『株式譲渡契約書』の内容に従い、株式譲渡の手続きを進めます。株式名簿の名義書き換えを行わなければ、買い手は株主としての利益を享受できない点に注意しましょう。

6-1.株式譲渡の手続きの流れ

株式譲渡の手続きの大まかな流れは以下の通りです。

  1. 株式譲渡契約書の締結
  2. 譲渡代金の支払い
  3. 株主名簿の名義書き換えを請求
  4. 株主名簿の名義書き換えが完了
  5. 株主名簿記載事項証明書の交付を請求

売り手と買い手は会社に対して『株主名簿記載事項書換請求書』を提出し、株主名簿の名義書き換えを請求します。書き換えが行われなかった場合、会社に株式取得者と認められず、株主総会では議決権を行使できません。

『株主名簿記載事項証明書』は、株式の所有を証明できる書類で、株式の保有数や種類などが記載されています。新たに株主になった際は、会社に証明書の交付を請求し、株主名簿の名義の書き換えが間違いなく行われているか確認しましょう。

6-2.企業価値の算定法は?

取引相場のない非上場企業の株式は、どのようにして取引価格を決めるのでしょうか?企業価値評価(バリュエーション)には、以下のように複数の方法があります。

  • 簿価純資産方式:帳簿上の純資産価額を企業価値と見なす(純資産=資産-負債)
  • 時価純資産方式:帳簿上の資産や負債を時価評価して1株当たりの純資産価額を算出
  • 類似業種比準方式:対象企業と類似する上場株式を参考に1株当たりの評価額を算出
  • 配当還元方式:過去2年間の配当金額を10%で還元し、1株当たりの株価を算出
  • DCF方式:企業が将来生み出す価値を現在価値に割り引いて評価

中小企業の企業価値評価でよく用いられるのは、時価純資産方式です。時価純資産価額を算出した後、その企業が将来生み出すであろう超過収益力(1~5年分)を、『営業権』として上乗せして評価するのが一般的です。

参考:企業価値の計算方法と注意点。企業の価値を決める要素とは

7.株式譲渡益にかかる税金

7.株式譲渡益にかかる税金

譲渡価格から必要経費を差し引いたものが『株式譲渡益(譲渡所得)』と呼ばれます。株式譲渡益は『申告分離課税』の対象で、一定の譲渡所得税が課されます。

7-1.所得税と住民税、または法人税が発生

株式を相続や贈与で受け取った場合は相続税や贈与税が生じますが、売買による株式譲渡で利益が生じた場合は、以下の税金が課されます。

  • 個人の場合:所得税(15%)・住民税(5%)・復興特別所得税(0.315%)
  • 法人の場合:法人税・法人住民税・法人事業税・地方法人税

個人の税率は一律20.315%なのに対し、法人の場合は規模や利益額などによって変動します。実質的な所得税負担率は30~33%前後と見ておきましょう。

税額は、譲渡価額から経費や委託手数料などを差し引いて『譲渡所得(株式譲渡益)』を算出し、その金額に各税率を掛け合わせて算出します

参考:M&Aの際に行われる税金対策。株式譲渡、事業譲渡、会社分割を解説

7-2.確定申告を行い納税する

株式譲渡益は『申告分離課税の対象』です。『申告分離課税』とは、他の所得とは分離して税額を出し、確定申告で納税する課税方式を指します。

売却代金を受け取った株主(個人)は、翌年の2月16日〜3月15日に確定申告を行いましょう。この際に納める税金は、所得税(15%)と復興特別所得税(0.315%)のみです。

住民税は確定申告後に各自治体が計算を行い、6月頃に納付書が送付されます。納税資金はあらかじめ確保しておきましょう

8.思わぬトラブルを防ぐために

8.思わぬトラブルを防ぐために

株式譲渡はM&Aの手法としてはメジャーな手法で、事業譲渡よりも手続きが簡単です。ただし、株式譲渡契約書できちんと取り決めをしていなかったばかりに、後々にトラブルが生じるケースも多いのです。

8-1.連帯保証解消の話をまとめておく

会社が銀行から借入を行う場合、株主や代表取締役が『連帯保証人』になるケースがほとんどです。一般的に、株式譲渡を行うと連帯保証人から外れ、連帯保証は譲受側に引き受けてもらう形になります。

ただし、株式譲渡と同時に連帯保証の支払い義務が自動的になくなるわけではありません。譲受側が連帯保証人を引き継ぐことを承諾し、かつ金融機関の承認がなければ、連帯保証は解消されないのです

「株式譲渡で会社の経営権はなくなったが、連帯保証だけは残った」という事態にならないように、契約書には「譲受側は連帯保証の解除を行う」といった一文を入れましょう。

8-2.契約の内容確認は専門家に

最終的な譲渡契約書の確認は、M&Aに精通した弁護士や専門家に依頼しましょう。株式譲渡と一口にいっても、会社ごとにさまざまな事情があり、素人がフォーマットを用いて作成できるほど簡単なものではありません。

契約には『権利義務』がすべて盛り込まれていることが重要です。契約後に権利を主張しても受け入れられないため、内容のチェックは入念に行う必要があります。

『買い手と売り手のリスク分担』や『株式譲渡後に問題が発覚した場合の対応』も、契約書にしっかり盛り込みましょう。『売り手と買い手双方の立場に立った内容であるか』も、忘れてはいけないポイントです。

9.株式譲渡の成功事例

9.株式譲渡の成功事例

株式譲渡は、M&Aや事業承継で最もよく用いられているスキームの一つです。企業が株式譲渡を決断する理由や背景には、何があるのでしょうか?近年の事例をいくつかピックアップして紹介します。

9-1.株式会社そごう・西武

2022年11月、株式会社セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)は、自社が保有する株式会社そごう・西武(以下、そごう・西武)の全株式をFortress Investment Group LLC(以下、フォートレス)に譲渡しました。

フォートレスはソフトバンクグループ傘下の投資運用会社で、ニューヨークに本社を構えています。

セブン&アイは百貨店事業の拡大のため、2006年に株式会社ミレニアムリテイリング(後のそごう・西武)を完全子会社化しました。その後、消費者の店舗離れによって事業環境が厳しさを増したことから、株式譲渡による事業承継へと踏み切ります。

参考:「当社子会社の株式譲渡及びそれに伴う子会社異動のお知らせ」|株式会社セブン&アイ・ホールディングス

9-2.株式会社ビー・エイ・エス

株式会社ビー・エイ・エス(以下、ビー・エイ・エス)は、ITシステムにかかわるヘルプデスクやシステムサポートを行う会社です。2022年6月、株式会社インソース(以下、インソース)は、ビー・エイ・エスの全株式を取得し完全子会社化したことを発表しました。

インソースは、ITサービス事業や講師派遣型研修事業、DX推進支援などを幅広く手掛ける会社です。ビー・エイ・エスが培ってきた技術や経験がDXサービスの拡充に不可欠として、グループの一員に加える決断をしたのです。

参考:「株式会社ビー・エイ・エスの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」|株式会社インソース

9-3.株式会社COMBO

株式会社COMBO(以下、COMBO)は、VR/AR開発をはじめとするシステムの受託開発を行う会社です。事業のさらなる成長を目指し、株式会社テクノデジタル(旧:株式会社テクノモバイル。以下、テクノデジタル)に株式の90%を譲渡しました。

テクノデジタルは、東京都に本社を構える企業で、コンシューマ向けのWebサイト開発やスマートフォン・タブレット向けアプリ開発などが中核事業です。優秀なエンジニアの確保とバリューチェーンの拡大を理由に、COMBOの買収を決断しました。

10.株式譲渡はM&A手法の一つ

10.株式譲渡はM&A手法の一つ

『株式譲渡』は、現在のオーナーが後継者に株式を譲渡することで事業承継を実現するM&A手法の一つです。

事業譲渡に比べると手続きが簡易で、売り手にも買い手にも多くのメリットがありますが、最終的な『譲渡契約書』でミスがあると、思わぬトラブルに見舞われてしまいます。

『株券発行の有無』や『譲渡制限の有無』など、手続き前に確認しなければならない項目も多いため、初めての人は混乱してしまうかもしれません。不安な点があれば、M&Aの専門家に早めに相談しましょう

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