M&Aの流れを知ってスムーズに進めよう。契約の種類や必要な手続き

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M&Aの流れを知っておくと、手続きをスムーズに進めやすくなります。手続きや交渉がどのフェーズにあるのか理解できれば、何をするべきかがはっきりしやすいからです。事前準備から最終契約の締結、統合の段階までを流れに沿って解説します。

1.M&A成功の秘訣は準備、計画

M&A成功の秘訣は準備、計画

M&Aの成功率は以前ほど低いわけではありません。ただし準備せずに臨めば、失敗の可能性は高まるでしょう。M&Aを成功に導き、売上や利益上昇に役立てるために必要な事前準備や計画について確認します。

1-1.M&Aの成功率は?

『中小企業白書』の調査結果によると、M&Aを行った中小企業は行っていない企業と比べ、直近3年間の売上高・経常利益が上昇している割合が高いと分かります。手法を問わず、M&Aを行った企業は労働生産性を伸ばしているという結果です。

以前とは異なり、M&Aの成功率は低い状態ではありません。かつてM&Aがなかなか成功しなかったのは、財務状況の悪い企業の再生を目的としていたからでしょう。

一方、最近増えているのはより積極的なM&Aです。事業拡大・海外進出など明確な目的を持ち、達成に向けて実施するため、成功率が高まっていると考えられます。

また専門的な知識について相談できる仲介アドバイザリーの増加も、成功率上昇の要因です。

参考:中小企業白書 2018年版 第6章:M&A を中心とする事業再編・統合を通じた労働生産性の向上|中小企業庁

1-2.流れを知った上で綿密な準備を

成約すればM&Aは成功と考えているかもしれません。しかし実際の成功は、M&Aを実施することで事業の拡大や売上アップなど、何かしらの成長を実現することです。

そのためにはM&Aの流れを知り、入念に準備しなければいけません。例えば経営課題の現状把握や経営の改善を行います。

また、成功には契約後の経営統合も重要なポイントです。M&Aの成立後は大きく状況が変わるため、これまでと同じ方法ではうまくいかないことが多く出てくるでしょう。

臨機応変に対応するために、あらかじめ統合後のシミュレーションをしながら計画を立てておくと、成功に結び付きやすくなるはずです。

2.M&Aの準備段階

M&Aの準備段階

準備段階ではM&Aの目標設定や仲介契約を行います。念入りに準備できるかどうかは、M&Aの成否を左右するポイントです。

2-1.M&Aの目標や資金の準備方法を考える

実際に手続きや交渉を進める前に明確にしておかなければいけないのが『目標』です。例えば新規事業への進出や、事業拡大・不採算事業の切り離し・事業承継といった目標があります。

同じM&Aでも目標が異なれば、ベストな選択は異なるものです。確実に達成するには、できるだけ目標や目的を明確にすることを意識しましょう。

また売り手であれば、交渉時に不利になる部分はないか、自社の状況を見直すことも大切です。財務・法務・税務など多岐にわたるリスクを確認しておくと安心できます。

買い手なら資金の準備方法も考えておかなければいけません。交渉が順調に進んでいても、いざ契約というタイミングで資金を用意できないとなると、破談になってしまいます。

2-2.仲介契約とNDAの締結

明確な目標を定めたら『仲介契約』を結びましょう。民間の『M&Aアドバイザー』を利用してもよいですし、中小企業基盤整備機構が運営する『事業承継・引継ぎ引継ぎ支援センター』を利用するのも一つの方法です。

M&Aを実施する相手とのマッチングや、交渉のアドバイスなどを受けられます。受けられるサポートは会社ごとに異なるため、自社の状況に合うかよく判断して決定するのが大切です。

契約先を決定したら『機密保持契約(NDA)』を結びましょう。M&Aの支援を受けるには、機密事項にあたる情報を伝えなければいけません。またM&Aを検討していること自体も重要な情報です。

M&Aのサポートをする中で知った情報を漏らさないよう、契約書を交わします。

3.M&Aの相談先を決め、交渉に入る

M&Aの相談先を決め、交渉に入る

仲介会社やアドバイザーなどM&Aについての相談先が決まったら、候補企業をリストアップして交渉に入る段階です。会社の売却価額もはっきりさせておかなければいけません。

3-1.候補企業をリストアップ

相談先と契約を交わしたら、候補企業のリストアップが始まります。目的に合致するM&A相手を探す段階です。売り手企業であれば、ここで『ノンネームシート』を作成します。

ノンネームシートは所在地や業種・希望価額などを記載した匿名の資料です。買い手はノンネームシートを見たり、仲介会社のマッチングを参考にしたり、直接紹介を受けたりして候補企業をリストアップします。

売り手も買い手も作成するのは、数十社ほどの候補企業のリストである『ロングリスト』と、ロングリストから数社まで絞り込んだ『ショートリスト』です。このリストをもとに交渉に進みます。

3-2.企業価値評価の概要と注意点

売り手企業は『企業価値評価』も実施します。M&Aで会社や事業を売却したいと考えていても、どのくらいの価額で売却するのか決まっていなければ、買い手は取引を検討できません。

特に非上場企業が売り手の場合、株式の市場価値が不明のため、価格を予想するのは難しいことです。そこで売り手企業は、仲介契約を結んでから目安となる価額を設定します。

企業の規模や事業に合わせた評価方法で価額を設定すれば、買い手から納得してもらいやすいでしょう。このとき注意が必要なのは、中立の立場に見える仲介会社が、リピーターになりやすい買い手の利益を優先している可能性です。

評価方法をある程度把握しておくと、不利な条件ではないか確認しやすくなります。

3-3.トップ面談で両者が理解を深める

リストアップした候補企業の中から、M&Aを進めたい2~3社に絞り込んだら、それぞれの会社の意思決定者と『トップ面談』を行います。経営ビジョン・運営方針・経営状況などについて話し合い、理解を深める場です。

お互いに納得できるまで、複数回行い次のステップへ進みます。ここでのポイントは、情報を包み隠さず伝えることです。仮にトップ面談でうまく隠し通せたとしても、詳細な調査を行う段階で不利な情報は明らかになるでしょう。

交渉が進んだ先で隠されていた情報が出てくると、積み上げてきた信頼は一気に失われます。場合によっては破談に至ることもある事態です。売り手・買い手ともに、正確な情報を伝えることが大切です。

4.最終契約に進めていく準備

最終契約に進めていく準備

トップ面談でお互いに理解を深められたら、最終契約へ向けて基本合意を締結し、デューデリジェンスも実施します。その結果を踏まえ最終条件の交渉を行い、契約条件を確定する段階です。

4-1.基本合意書は交渉段階で締結

お互いに次の段階へ進むことに決定したら『基本合意書』を締結します。いつ・いくらで・どのようにM&Aを実施するか明記してあり、仮契約のような役割を果たす書類と考えるとよいでしょう。

ここまで複数の候補企業があったとしても、基本合意書を結ぶときには1社に決めます。独占交渉権が生じる段階のため、よほどのことがなければ後戻りはできません。

また基本合意書の締結前に、買い手企業が『意向表明書』を提出する場合もあります。意向表明書は必須の書類ではありませんが、あるとよりスムーズに成約まで進めやすい書類です。

4-2.デューデリジェンスの実施、TSA

最終条件の交渉前に、買い手は売り手に対し『デューデリジェンス』という詳細な調査を実施します。調査範囲は財務・法務・税務など広範囲で、専門的な内容も含む調査です。

この調査を通し、提示された価額は適正なものなのか、隠されたリスクはないかなどを徹底的に洗い出します。例えば把握していなかった債務が見つかれば、それを契約内容へ反映するよう次の段階で交渉します。

M&A後に訪れる移行期間中のサービス提供についての契約である『TSA(Transition Service Agreement)』の準備も、デューデリジェンスと並行して行いましょう。準備を進めることで、最終契約と同時に締結できます。

TSAによってM&A以前のシステムの利用や、顧客に不利益を与えない業務の継続が可能です。

4-3.価格や補償内容などについて最終条件交渉

デューデリジェンスの内容を踏まえ『最終条件交渉』を実施します。買い手は考えられるリスクをもとに、買い取り価額やスキームの見直し・補償の設定などを求めることが一般的です。

それに対し売り手は、どこまで譲歩すべきかを慎重に見極めつつ、従業員の処遇・事業の継続性についてなどを要求します。ここで決まることは、最終決定で覆ることはありません。

希望の条件に少しでも近づくよう、全力を尽くしましょう。

5.M&Aの成立へ進む

M&Aの成立へ進む

最終条件交渉がまとまったら、いよいよM&Aが成立します。ただしここで終わりではありません。M&Aを成功させるには、契約締結後のクロージングや統合プロセスが重要です。

5-1.法的拘束力のある最終契約を締結

決定した条件に基づき『最終契約』を締結することで、M&Aが成立します。このとき交わされる契約書の内容は、株式譲渡や事業譲渡などの手法ごとに必要な内容や、交渉で定めたさまざまな条件が盛り込まれたものです

予期せぬリスクが顕在化したときの紛争回避の条項を盛り込むために、似た案件の裁判例が参考にされることもあります。そのため同じM&Aの最終契約書でも、案件ごとに内容は違います。

どの契約書でもいえるのは、法的な拘束力が発生する点です。締結後の契約破棄は、申し出を受けた側から申し出た側へ損害賠償請求の対象となります。

5-2.クロージングとして各種手続きを行う

最終契約を締結しM&Aが成立した後は『クロージング』に向け各種手続きを実施する期間に入ります。全ての手続きが完了するまでの期間は、一般的には1カ月前後です。長いと1年程度かかる場合もあります

具体的には重要な取引先から契約承継の同意を得たり、許認可を取得したり、役員への借入金を返済したりする期間です。両社が実施する手続きは、最終契約書のクロージング条項で規定されています。

5-3.統合プロセスへ進む

『統合プロセス(PMI)』はM&Aの成功に重要な役割を果たす段階です。経営統合・業務統合・意識統合の3段階で構成されています。統合の進み具合は、M&Aによりもたらされる相乗効果にも影響するでしょう。

PMIは最後に実行されますが、トップ面談の段階から売り手と買い手で話し合い、検討を進めるものです。売り手企業の意見を参考にしたプランを立てることで、より具体的に計画を立てられます。

じっくり練った計画をもとに実行するPMIであれば、統合を進めやすいはずです。

6.M&Aには複雑な手続き、判断が伴う

M&Aには複雑な手続き、判断が伴う

複雑な手続きや専門的な知識が要求されるM&Aは、判断が難しい取引です。初めて実施するときには、どこから手をつければよいか分からないでしょう。まずは明確な目標を定めることから始めるのがポイントです

目標がはっきりしてからM&Aアドバイザーや仲介会社へ相談します。サポートを受けながら手続きや交渉を進めることで、希望条件に合うM&Aを実現可能です。

交渉開始前に、自社の状況を正確に把握したいと考える企業もあるでしょう。税務に関する相談は『税理士法人チェスター』で受け付けています。

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