M&Aで調剤薬局の事業承継は可能?今後の動向や価格の相場を確認
タグ: #M&A, #M&A×業種調剤薬局の事業承継は、M&Aで実施が可能です。スケールメリットを生かした経営やかかりつけ薬局の体制を整えるため、大手チェーンの傘下に入るケースもあります。調剤薬局のM&Aには、どのようなスキームを用いるのでしょうか?注意点も解説します。
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1.M&Aで調剤薬局の売却は可能
M&Aにより調剤薬局は売却できます。全体的に増加傾向にある調剤薬局の業界動向と、今後の見通しを確認しましょう。
1-1.調剤薬局の業界動向
調剤薬局の数自体は全体的に増加しており、2020年は約6万店舗です。ただし事業規模によって増え方は異なります。例えば個人事業主の運営する調剤薬局は減少傾向です。
一方、20店舗以上運営している大きめの法人や大手チェーンは増加しています。また1店舗のみを運営している法人も増加中です。規模が二極化しつつある様子がうかがえます。
1-2.M&Aの今後の見通し
調剤薬局のM&Aでは今後、規模の小さな法人が大手チェーンの傘下へ入るケースが増える見通しです。小規模な法人は資金力のある大手の下で余裕のある店舗運営を実現でき、大手チェーンは優秀な人材を獲得できるメリットがあります。
また異業種からの新規参入の動きも見られます。例えばコンビニや家電量販店が調剤薬局を買収し、既存店舗に薬局の機能をプラスするといった事業形態です。
2.調剤薬局のM&Aが行われる理由
調剤薬局でM&Aの動きが見て取れるのは、薬価・調剤報酬やかかりつけ薬局といった制度の変更と関係しています。また売り手の後継者問題もM&Aが行われる一因です。
2-1.薬価報酬や調剤報酬のマイナス改定
国は医療費を削減する方針です。医療費には、調剤薬局への報酬である『薬価報酬』や『調剤報酬』が含まれており、どちらもマイナス改定の傾向があります。
中でも大手チェーンは、相対的に低い報酬が設定される仕組みへと変更され、収益が減っていく見込みです。スケールメリットにより報酬の減少に対応できるよう、M&Aを活用する法人もあります。
2-2.かかりつけ薬局の実現のため
厚生労働省の定めた『患者のための薬局ビジョン』では、地域包括ケアを実現するため、かかりつけ薬局の実現を目指しています。患者がどの病院を受診しても、かかりつけ薬局に処方箋を持っていき薬を受け取る仕組みです。
かかりつけ薬局ではITを活用して患者の履歴を管理し、アドバイスやサポートに役立てていく必要があります。十分な体制を整えるには、人員増強やIT化が必要な調剤薬局もあるでしょう。不足している人材を補う目的でM&Aを実施するケースも出てきています。
参考:患者のための薬局ビジョン~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~|厚生労働省
2-3.後継者の不在
売り手の調剤薬局に後継者がいない場合、M&Aで売却すれば第三者への引き継ぎが可能です。調剤薬局の事業承継には、資格の有無が関係します。
例えば薬剤師であるオーナーが、1人もしくは少人数で運営している調剤薬局を後継者である子どもへ引き継ぐ場合、現在の体制を維持するには後継者も薬剤師でなければいけません。
後継者が薬剤師でない場合は、薬剤師を雇う必要があります。その分コストがかかる上、薬剤師を採用できなければ調剤薬局を継続できません。
また後継者候補となる親族やスタッフがいないケースでも、M&Aによる事業承継を希望する場合があるでしょう。
参考:後継者不足を理由に廃業はもったいない。M&A検討で可能性は広がる
3.調剤薬局のM&Aスキーム
M&Aを行う際には、複数の手法の中から案件に合うスキーム(手法)を選びます。よく用いられる手法として知られているのは、『株式譲渡』と『事業譲渡』です。
3-1.手続きが比較的シンプルな「株式譲渡」
株式譲渡を用いれば、比較的少ない手続きで調剤薬局を売却できます。買い手に株式を売却し経営権を移転することで、調剤薬局を運営している会社を丸ごと譲り渡す手法です。
経営者が買い手へと変わるだけで、会社自体はそのまま存続します。手間は少ない手法ですが、負債といったマイナスの資産も含め、すべて引き継ぐ点には注意しましょう。
売り手にとっては、負債も同時に手放せるメリットがありますが、買い手にとっては不要な資産であるため、契約が成立しにくいかもしれません。
3-2.引き継ぐ資産を選べる「事業譲渡」
事業譲渡でM&Aを実施すれば、売却する資産を選べます。例えば、採算の取れていない店舗のみを売却することも可能です。利益が出ている数店舗のみを残し、ほかを売却すれば、資金や人材を残した数店舗に集中させられます。
買い手にとっても、不要な資産を引き継ぐ必要がない点はメリットです。ただし、資産の引き継ぎに必要な手続きを、個別に実施しなければいけません。契約もすべて締結し直しです。引き継ぎにかかる手間が大きい点は、デメリットといえます。
M&Aの手法はほかにもあります。代表的な4種類の手法を解説している、以下もご覧ください。
M&Aの代表的な4つの手法|税理士法人チェスター
4.調剤薬局M&Aの特徴や注意点
調剤薬局のM&Aでは、許認可に注意が必要です。許認可を引き継ぎできるか否かは、利用するスキームによって異なります。また売却価格の相場が案件の規模によって異なる点も見ていきましょう。
4-1.許認可の引き継ぎ
M&Aを実施するときに採用するスキームが株式譲渡なら、許認可もまとめて買い手へ移転できます。一方、事業譲渡でM&Aを実施する場合には、許認可を引き継げません。買い手は、必要な許認可を取得できるよう手続きが必要です。
まずは、調剤薬局の運営に必ず必要な以下の許認可を申請します。
- 薬局開設許可
- 高度管理医療機器販売業・貸与業許可
- 薬局製剤製造販売承認
- 麻薬小売業者免許
- 毒物劇物販売業登録
- 農薬販売届
あわせて、地方厚生(支)局長への保険薬局指定申請も必要です。さらに、労災保険指定薬局の指定申請や、介護保険法指定(居宅療養管理指導)の指定申請なども行います。事業譲渡の場合、買い手はこれらの手続きをすべて実施しなければいけません。
参考:株式譲渡にはどんな手続きが必要?契約や税金に関する基礎知識
参考:事業譲渡の目的、主な特徴とは。専門家の知識が欠かせない理由
4-2.価格の相場は案件の規模によって異なる
売却するときの価格の相場は、調剤薬局の規模により異なります。多くの店舗を運営する規模の大きな法人を丸ごと売却すると、数億円の対価を獲得できる場合もあるでしょう。
数店舗を運営している小さな法人や店舗ごとの売却では、規模が小さな分、売却する資産が少なく、獲得できる対価は小さくなりがちです。
4-2-1.価格の目安を算出する価値評価の手法
M&Aを実施するときには、適切な価格の目安を提示しなければいけません。客観的な目安を知るには、以下の手法を用いるのが一般的です。
- インカムアプローチ:将来の収益を加味する
- マーケットアプローチ:類似の上場企業の株価を参考にする
- コストアプローチ:純資産をもとに算出する
小規模な調剤薬局のM&Aでは、コストアプローチをもとにした『時価純資産価格+純利益の3~5年分』で計算するケースが多いでしょう。
参考:企業価値の計算方法と注意点。企業の価値を決める要素とは
5.調剤薬局のM&Aは早めに取り掛かろう
調剤薬局では、小規模な薬局を運営する個人や法人が、大手チェーンの傘下に入るM&Aが増えていくと予想されています。制度変更への対応や後継者問題の解消へ向けたM&Aです。
その際、許認可については注意しましょう。株式譲渡であればすべての許認可を引き継げますが、事業譲渡では許認可を引き継げないため、申請が必要です。手続きに時間がかかる場合もあるため、早めに取り掛かるとよいでしょう。
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