出版社はM&Aで活路を見出せる?可能性と企業価値の上げ方を解説

タグ:

出版社のM&Aは、事業承継を目的に行うケースはもちろん、業界での生き残り戦略としても有効です。積極的にM&Aに取り組むことで得られるメリットや、広がる可能性を見ていきましょう。買い手の目的や、実際に行われた出版社のM&A事例も紹介します。

初回無料面談受付中事業承継・M&Aの無料相談はこちらから0120-418-507【受付時間】平日9時~20時 土曜9時~17時
初回無料面談受付中事業承継・M&Aの無料相談はこちらから0120-418-507【受付時間】平日9時~20時 土曜9時~17時

1.出版業界の動向

1.出版業界の動向

書籍や雑誌などの紙媒体は、年を追うごとに売上が減り続けています。児童書の売上に限定するとプラスではありますが、市場全体を牽引するほどの規模ではありません。全体としては縮小傾向が目立ちます。

1-1.紙媒体の市場は縮小傾向

紙媒体の売上は減少を続けています。書籍も減っていますが、特に厳しい状況に置かれているのが雑誌です。雑誌の休刊・廃刊のニュースを聞いたことがある人も少なくないでしょう。

仕入れた書籍や雑誌が売れないときには、書店は取次会社へ返品が可能です。この返品率も高い状態で推移しており、紙媒体の市場規模が縮小している様子がうかがえます

1-2.児童書の売上はプラス成長

唯一、紙媒体の中で成長しているのは『児童書』です。子どもが読書をする習慣を育む教育政策や、コロナ禍の影響を受けた巣ごもり需要の高まりなどが、成長の要因といわれています。

ただし、市場全体から見ると割合はごくわずかのため、現時点では業界全体の業績回復に結び付くほどの存在にはなっていません。しかし将来性は十分にあり、今後に期待できるジャンルです。

2.新たな戦略が欠かせない

2.新たな戦略が欠かせない

出版社が今後も経営を続けるには、これまでとは異なる戦略が必要です。新しい戦略として『デジタル化』『SNSの活用』『コミックへの注力』の3種類を解説します。

2-1.デジタル化の推進

紙媒体の市場は縮小を続けていますが、その一方で電子書籍事業やWebメディア事業は大きく成長しており、この傾向は今後も続くでしょう。デジタル化の推進は、出版社経営の鍵を握るポイントです。

ただし、単に書籍をデジタルに移行するだけでは不十分です。時代に合ったサービスになるよう、月額定額制のサブスクサービスを提供するといった工夫が必要でしょう。

加えて紙媒体とデジタルの連携も、苦境を脱するために必要なポイントです。

2-2.SNSの有効活用

近年売れている本は、SNSで紹介されているものや、著者がインフルエンサーのものがほとんどです。SNSを活用する場合、ファンやコミュニティ作りがポイントといえます。

既にファンが大勢いるインフルエンサーの著書を出版できれば、大勢のファンが購入するでしょう。また雑誌のコミュニティとしてSNSを運用すれば、ファンの獲得や囲い込みができます。

書籍や雑誌が受け入れられる市場作りの場として活用が可能です。

2-3.コミックへの注力

拡大している電子書籍の中でも、特に好調なのがコミックです。電子書籍市場全体の9割がコミックともいわれています。

大手の中でも特にコミックに強い出版社は、電子書籍で大きな利益を上げているのが現状です。そこでこれまでコミックを扱っていなかった出版社も、専門の部門を作り参入を始めています。

コミックへの注力は、発展し続ける出版社の経営戦略として、重要なポイントといえるでしょう。

3.中小出版社は苦境に立たされている

3.中小出版社は苦境に立たされている

出版社の多くは中小規模で、売上高もそれほど高くありません。そのため今後の戦略としてデジタル化やコミックへの参入を望んでいても、資金不足から思うように身動きが取れない状況です。

3-1.出版社の多くが零細中小企業

『平成29年特定サービス産業実態調査報告書』によると、出版社は3,184社あります。そのうち従業員4人以下が1,498社、5~9人が870社と、全体の約74%が小規模な会社です。

知名度の高さの割に、規模の小さな会社が多いといえるでしょう。大手出版社が1,000億円規模の売上なのに対し、業界全体の平均売上高は約5億円です。この数字からも、中小出版社の苦しい状況が読み取れます。

参考:平成29年 特定サービス産業実態調査報告書 新聞業、出版業編

3-2.投資資金や技術がネック

大手出版社がデジタル化やコミックで新しいビジネスモデルに対応できているのは、十分な資金があるからです。資金があればデジタル化に必要な技術力のある人材を集め、使いやすいプラットフォームを開発できます。

自社で展開したプラットフォームによって、過去の作品を含めた大量のコミックを配信している出版社は、業績が堅調に推移しています。

一方、小規模な出版社では、投資資金を思うように確保できません。そのため技術力のある人材を集められず、デジタル化に対応するのが難しい状況です。

ネット上の記事は無料という風潮が強いため、自社メディアで有料記事を配信するとアクセスが極端に減ります。メディアの認知度が低下し、広告収入も途絶える可能性が出てくるでしょう。

4.出版社の事業承継の必要性

4.出版社の事業承継の必要性

後継者不在や業界での生き残りが難しいという悩みを解消するには、事業承継が向いています。出版社の経営に携わりたいと考える後継者や、十分な資金力のある買い手に事業承継することで、今ある悩みが解決するはずです。

4-1.後継者不在に悩む経営者が多い

国内の中小企業の約6割には後継者がいません。経営者が高齢で引退間際であっても、会社を引き継ぐ相手がいないケースは多々あります。

後継者不在は、中小企業の出版社にも同じように起こっている問題です。子どもなどの親族を後継者とする親族内承継や、社内の人材へ引き継ぐ社内承継が難しいなら、M&Aによる第三者承継を検討しましょう

M&Aを活用した事業承継には、国がさまざまなサポートや税制優遇の制度を整えています。M&Aの実施件数が増え、制度が充実してきていることもあり、出版社の後継者不在を解消する方法としても注目されています。

参考:中小企業に注目される第三者承継。会社売却で得られるものとは

4-2.生き残りが難しい業界構造

書籍の売上が減っているため、出版社では出版点数を増やし、売上を確保するケースが多いでしょう。出版点数が増えれば、1タイトルずつの売上が下がっていても、総額では売上を維持できる可能性があります。

ただし業界全体の傾向として、紙媒体の市場規模は縮小を続けており、書店数も減少中です。加えて気軽に不要品を販売できるフリマアプリの登場により、安価な中古本がたくさん流通している点も、売上に影響しているでしょう。

読書をする層が高齢者に多い傾向からも、将来的な需要の減少につながっていくと予想されます。このような業界構造により生き残りが難しいと判断したなら、事業承継を検討した方がよいでしょう。

5.早期に事業承継に取り組むメリット

5.早期に事業承継に取り組むメリット

事業承継は、タイミングを逃すとうまくいかない可能性があります。そのため実施を検討しているなら、できるだけ早い時期に取り組むのがよいでしょう。

5-1.倒産、廃業を回避できる

出版不況により、出版社の倒産が増えています。倒産すると、それまでに培ってきた事業は全てなくなってしまいます。書籍が出るのを待っている顧客を、がっかりさせてしまう結果にもつながるでしょう。

また倒産の影響が取引先にも及び、迷惑をかけるかもしれません。場合によっては連鎖倒産も起こり得ます。

事業承継に向けて早めに準備していれば、倒産や廃業を回避できるでしょう。顧客や取引先へも迷惑をかけずに済むはずです

また早めに準備しておけば、業界動向や自社の業績が好調なタイミングで、スムーズに事業承継できるでしょう。

参考:事業承継に必要な準備や引き継ぎ内容は?親族内承継、M&Aの違い

5-2.新たな形で事業を成長させられる

シナジー効果を生かすと、事業承継により新たな形態で事業を成長させられるかもしれません。書籍全体の売上は落ちていますが、情報収集の方法としてビジネス書や実用書が求められるシーンもいまだにあります。

そこで有効なのが、自社の事業と組み合わせることで、相乗効果を得られる企業への事業承継です。例えば書籍の販売や電子書籍の配信ができるプラットフォームを持つ企業に承継すれば、自社のコンテンツをより多くの人へ届けられるかもしれません。

参考:3-2.シナジー効果が得られる

6.M&Aで広がる可能性

6.M&Aで広がる可能性

出版社を買収したいと考えているのは、出版業界の企業だけではありません。自社のブランディングを考える企業や、海外にコンテンツを輸出する企業にとっても、出版社は魅力的な買収対象です。

6-1.企業のブランディングへの活用

ブランディングを目的として、書籍を出版したいと考えている企業は数多くあります。自費出版であれば簡単ですが、料金を払って出版した書籍はブランディング向きではありません。

そこで商業出版をスムーズに実施するために、出版社を買収したいという企業もあるのです。このような企業とのM&Aでは、買収後に買い手企業の事業をアピールする書籍を出版し、営業支援に役立てます

6-2.コンテンツの海外輸出

大手出版社は海外向けの売上が上昇しているようです。小規模の出版社であっても、コンテンツを海外に輸出するためのプラットフォームを持つ企業とのM&Aが成立すれば、自社コンテンツを世界へ発信することで事業の成長を目指せます

新興国の所得が上昇してきている昨今、海外向けのコンテンツ販売事業は、ますますの成長が期待できる分野です。

7.出版社を引き継ぐ後継者・買い手の目的

7.出版社を引き継ぐ後継者・買い手の目的

このタイミングで出版社を引き継ぎたいと考えている後継者や、買収を検討している買い手は、何を目的にしているのでしょうか?M&Aを検討するにあたり、買い手の望むものを理解しておきましょう。

7-1.流通ルートの確保

出版業界へ参入する上で、流通ルートの確保は欠かせません。出版流通は出版社と書店を少数の取次会社が結ぶ『ひょうたん型』の構造をしています。そのため取次会社との取引がなければ、スムーズな出版は難しいでしょう。

そこで後継者や買い手は、流通ルートを確保するねらいで、既に取次会社と取引のある出版社を引き継ぐケースがあります

7-2.ノウハウ、優良コンテンツ等の獲得

自ら立ち上げた出版社で独自のコンテンツを作り、自社の強みに成長させるには、長い年月と多くの手間がかかります。努力を続けたとしても、新規参入では十分なノウハウがなく、うまくいかない可能性もあるでしょう。

一方M&Aによって出版社を引き継いだ場合、対象の出版社の持つノウハウやコンテンツを獲得できます。ほかにも必要な設備や技術はひと通りそろっている状態です。

出版社の状態によっては、後継者や買い手は出版社とのM&A直後から売上を得られるかもしれません。そのため後継者や買い手は、出版社の買収によって、どのようなノウハウやコンテンツを得られるのかを確認します。

7-3.紙媒体への根強い信頼感

出版社が制作する紙媒体の書籍は、編集者や校正者などたくさんのプロが携わり完成します。掲載されている情報が信頼できると十分に確認されているため、情報源として確かなものです。

Web媒体と違い、一度刊行すると簡単には修正できない点も、紙媒体への信頼感につながっています。「Webより書籍の方が信頼できる」というのは、社会全体の共通認識ともいえるでしょう。

そのため信頼感のある紙媒体の出版により、自社のPRに活用したいと考える買い手もいます

8.出版社が有する重要な権利も魅力に映る

8.出版社が有する重要な権利も魅力に映る

後継者や買い手にとっては、出版社が持つさまざまな権利も魅力の一つです。知的財産権や出版権を得る目的で、出版社のM&Aを実施するケースもあるでしょう。

8-1.特許権、商標権などの知的財産権

出版社が『特許権』や『商標権』などを持っている場合、後継者や買い手はその『知的財産権』を取得したいと考えているかもしれません。出版業界に新規参入したり、事業を拡大したりする上で、知的財産権は魅力的だからです。

知的財産の価値は事業とセットで計算されますが、移転は株式譲渡によって自動的に行われるわけではありません。知的財産権の移転には、買い手による『移転登録』が必要です。

また自社を含む複数社で知的財産権を共有している場合、他の会社の同意を事前に得ておかなければ、持ち分を譲渡できません。

8-2.著作物の出版権

出版社が所有している『出版権』も、後継者や買い手が魅力に感じる部分です。出版権を引き継げれば、コンテンツを紙媒体やWebなどで独占的に販売できます。

株式譲渡により出版社の所有権が後継者や買い手に移っても、出版権は自動的に移るわけではありません。出版権を付与できるのは『複製権者』のみのため、複製権者の承諾が必要です

出版権の付与や譲渡については法律で定められています。誤った判断をしないためには、専門家のアドバイスを受けると確実です。

9.事業承継の準備

9.事業承継の準備

スムーズな事業承継に向け、売り手は事前に準備をしておく必要があります。まずはどのような資産があるか把握し、企業価値を高めるための磨き上げを実施しましょう。税務についても把握しておくと、安心して進められます。

9-1.自社の資産を把握

事業承継を行うにあたり、まずは自社の状況を把握しましょう。何より確認するのは資産です。設備や不動産といった有形資産のほか、ノウハウや技術・ブランド・販路・取引先との関係性などの無形資産も含め、明らかにします

知的財産を所有しているなら、権利者が誰なのかを明確にし、事業承継時にスムーズに引き継げそうかという点についても確認します。

また自社の強みや弱みを知り、業界内におけるポジションや将来性なども整理しておくとよいでしょう。併せて、従業員の人数や平均年齢、株主の状況なども具体的に資料にまとめます。

9-2.磨き上げ

売り手である出版社が売却による事業承継を希望していたとしても、買い手が魅力を感じなければ事業承継はできません。そこで買い手が魅力を感じ、「高額でも買収したい」と考える企業になるよう、『磨き上げ』を実施します

まず財務状況が分かりやすいよう、会計帳簿や決算書が正しく作成され、見やすく保管されていることを確認しましょう。税金の支払いが滞りなく行われているかもチェックします。

また引き継ぎ後の業務をスムーズに進めやすくするために、組織図やマニュアルを作成しておくのも、買い手にとって魅力的です。

併せて顧客との取引件数や金額も資料にしておくと、先の見通しを立てやすくなり、買い手のリスク低減につながります。

9-3.税務に関する相談

M&Aを実施し事業承継を行うと、元々の経営者は売却の対価を得られます。受け取る金額は、どの手法を用いるかによって変わるでしょう。株式譲渡で会社を丸ごと売却すると、会社の状況によっては数千万円を超える利益を得られるかもしれません。

ただし資産が増えると、将来的に相続税の負担が従来より増える可能性があります。また用いる手法によって、負担すべき税金の種類が変わります

参考:M&Aの代表的な4つの手法

複雑な税金については、事業承継の実績が豊富な『税理士法人チェスター』へ相談するとよいでしょう。

事業承継コンサルティングなら税理士法人チェスター

10.出版社のM&Aの事例

10.出版社のM&Aの事例

M&Aを活用すると、苦境に立たされている小規模な出版社でも、倒産や廃業を回避できる可能性があると分かりました。具体的にどのような出版社でM&Aが成立しているのでしょうか?三つの事例を確認しましょう。

10-1.負債を抱えた2社を完全子会社化

国土社と理論社は、ともに児童書や教育図書を出版していました。しかし出版不況や少子化の影響から売上が減少し大きな負債を抱え、民事再生法の適用を申請したのです。

この2社を買収し完全子会社化したのは、BSデジタル放送の衛星基幹放送事業で収益を伸ばしている日本BS放送です。オリジナルコンテンツも制作している日本BS放送にとって、国土社と理論社の持つ児童向け図書は魅力的に映りました。

そこでグループの出版事業を担う会社になることを期待し、事業基盤の拡大と多角化経営を目指しM&Aを実施しました。

10-2.デジタル作品の紙版の出版を可能に

創業70年以上の歴史を持つ高陵社を買収したのは、スピーディグループです。スピーディはデジタル限定の出版事業で、優良なコンテンツを制作していました。

またスピーディグループのコミディアは、膨大なデジタルコミックのコンテンツを保有しています。グループは質の高いコンテンツを持っていますが、読めるのはデジタルのみでした。

高陵社の買収により、紙媒体の流通ノウハウを取得することで、人気のデジタルコンテンツを紙版でも出版できるようになった事例です。

10-3.専門コンテンツ力を高く評価

航空関連を軸にした専門性の高いコンテンツが評価されたイカロス出版は、13億6,950万円という高額でインプレスHDに買収されました。インプレスHD自身も、パソコン解説書や登山に特化した雑誌を展開している専門性の高い出版社です。

そのため、今後の事業展開に、イカロス出版のコンテンツが役立つと判断した結果の買収です。インプレスHDのリソースとイカロス出版の企画編集力の相乗効果で、デジタル化やファンコミュニティの構築を目指します。

また法人向け事業の開発も実施する計画とのことです。

11.M&Aは出版業界に光を灯す可能性がある

11.M&Aは出版業界に光を灯す可能性がある

書籍や雑誌など紙媒体の市場が縮小し、小規模の出版社は厳しい状況に置かれています。今後はデジタル化やコミックへの注力が欠かせませんが、資金力に乏しい会社では実現が難しいでしょう。

そこで期待されているのがM&Aです。M&Aによって資金力のある出版社に事業を引き継げば、小規模な出版社の倒産や廃業を避けられます。

ただしM&Aを実施する際には、手法によって納税義務の発生する税金の種類や金額に違いがある点に注意しましょう。税理士法人チェスターでは相続事業承継コンサルティング部の実務経験豊富な専任税理士が、お客様にとって最適な方法をご提案いたします。

事業承継コンサルティングなら税理士法人チェスター

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。