M&Aで完全成功報酬の業者を選ぶメリットは?契約書の確認は必須
タグ: #M&AM&Aの仲介会社や専門家の報酬体系の一つに、完全成功報酬があります。どのようなメリットのある報酬体系なのでしょうか?注意点や契約時のポイントなどを確認しましょう。また完全成功報酬でない場合に支払う可能性のある費用も紹介します。
目次 [閉じる]
1.M&A仲介会社や専門家への成功報酬とは
仲介会社や専門家へ支払う報酬には、さまざまな種類があります。その中で成功報酬とは、どのような性質の報酬なのかを理解しましょう。その上で完全成功報酬の意味についても解説します。
1-1.M&Aが成立した場合に支払う報酬
成功報酬はM&Aが成立したタイミングで支払う報酬です。M&A仲介会社のほか、専門家に依頼したのであれば弁護士や税理士などへも支払います。負担するのは売り手・買い手のうち、依頼した側です。
報酬体系は、取引額が大きくなるほど料率が下がる『レーマン方式』を採用しているケースが多いでしょう。加えて最低報酬金額が設定されている場合も多いため、事前に確認しておくと安心です。
最低報酬金額を確認し、自社の規模に合う金額を設定している仲介会社や専門家を選ぶとよいでしょう。
参考:M&A会社への報酬はレーマン方式で計算が一般的。メリットは?
1-2.完全成功報酬の意味とは
M&Aにまつわる仲介や調査・書類の作成などを依頼したとき、支払う報酬が成功報酬のみのケースを『完全成功報酬』といいます。そのため他の報酬は一切かかりません。
依頼する仲介会社や専門家によっては、成功報酬以外にも『着手金』や『中間金』などを設定しているケースがあります。報酬体系は各社・各事務所が自由に決められるため、かかる費用が分かりにくいと感じるかもしれません。
一方、完全成功報酬は必要な費用が成功報酬のみのため、報酬体系がシンプルで分かりやすい上、コストを低く抑えやすい点が特徴です。
参考:M&Aにかかる仲介手数料の目安。費用項目や計算方法、節約法も
2.完全成功報酬のメリット
報酬体系が完全成功報酬の仲介会社や専門家を活用すると、M&Aのコストを抑えやすいでしょう。買い手との契約が成立しなければ報酬が発生しないため、費用が無駄になるリスクを最小限にできる点もメリットです。
2-1.費用をかけず多くの案件に出会える
完全成功報酬であれば着手金がかかりません。売り手と買い手がマッチングする時点での支払いはゼロです。
そのため、買い手はさまざまな売り手の情報を取り寄せ検討でき、売り手はより多くの買い手から売却先を検討できる可能性が高まります。希望条件に合った相手を見つけやすくなるかもしれません。
ただし多くの買い手と出会えるメリットは、複数の買い手に自社の情報を渡すことになる点では不安材料でもあります。
2-2.手数料が無駄になるリスクを回避できる
着手金や中間金などM&Aの成立前に支払う報酬は、最終的にM&Aが成立してもしなくても支払わなければいけません。取引の結果、不成立となった場合にも返金されないため、その分の費用が無駄になってしまいます。
一方で完全成功報酬であれば、M&Aが成立するまでは一切費用が発生しません。M&Aが成立しなければ、かかる費用はゼロです。
無駄な報酬を支払うリスクを最小限に抑えられるため、初めてのM&Aでも依頼しやすいでしょう。
3.成功報酬の目安
成功報酬を計算するに当たり、多くの仲介会社や専門家がレーマン方式を採用しています。レーマン方式ではどのように報酬を計算するのでしょうか?計算のベースになる取引金額に何を用いるかという点もポイントです。
3-1.計算にはレーマン方式が使われるのが一般的
一般的に用いられている計算の仕方は、取引金額が大きくなるほど料率が下がるレーマン方式です。例えば以下のように料率が設定されています。
取引額 | 料率 |
---|---|
5億円以下の部分 | 5% |
5億円超10億円以下の部分 | 4% |
10億円超50億円以下の部分 | 3% |
50億円超100億円以下の部分 | 2% |
100億円超の部分 | 1% |
取引金額と料率が分かれば成功報酬を計算できるため、あらかじめ用意すべき金額を把握できます。例えば取引金額が7億円であれば、計算の仕方は以下の通りです。
- 5億円以下の部分:5億円×5%=2,500万円
- 5億円超10億円以下の部分:2億円×4%=800万
以上を合計した『3,300万円』が成功報酬です。
3-2.何をベースとして算出するかがポイント
同じレーマン方式を採用していても、計算の元になる取引金額として何を用いるかによって、支払う成功報酬は異なります。ベースとなる取引金額は、『移動総資産ベース』と『株式譲渡対価ベース』の2種類です。
移動総資産ベースの場合、株式価格や純資産価額に加え、負債額も含めた金額で計算します。そのため株式価格や純資産額はもちろん、負債額が大きくても成功報酬が高くなる仕組みです。
一方、株式譲渡対価ベースで用いられるのは、株式価格に限られます。移動総資産ベースより金額が抑えられるため、成功報酬も低くなるのが特徴です。
3-3.M&A手数料が高額な理由
M&Aに関する業務は、以下の通り専門的なものばかりです。
- 買い手の選定や付随する提案・アドバイス
- 用いる手法についてのアドバイス
- 交渉や手続きの計画
- 交渉時のサポートやアドバイス
- 契約書や合意書など各種文書の作成サポート
そのため担当できるのは、十分な専門知識を備えたプロに限られます。高度な専門知識を持つ人材は人件費が高額なため、M&Aにかかる手数料は高額に設定されています。
4.完全成功報酬ではない場合に支払う費用
完全成功報酬以外の料金体系を採用している仲介会社や専門家へ依頼すると、どのような費用が発生するのでしょうか?『相談料』『着手金』『月額報酬』『中間報酬』について解説します。
4-1.相談料
仲介会社に依頼しようと思ったら、まずは相談するのが一般的です。その際、相談料が発生する可能性があります。設定されている場合、数千~1万円が相場です。
ただし、ほとんどの仲介会社では相談料を設定していません。初回は無料でも2回目からは有料の場合や、あらかじめ決まっている相談時間を超えると1時間につき1万円かかる場合もあります。
相談料の有無と併せ、無料の回数や時間も調べておくと安心です。
4-2.着手金
着手金は仲介会社へ依頼し、契約が成立したタイミングで支払う料金です。売り手から依頼された仲介会社は、買い手へアピールするための資料を作り始めます。そのために必要な費用として、着手金を設定しているのです。
着手金の金額は50万~100万円が相場とされています。この料金は原則返金されないため、取引を中止しても返ってくることはありません。場合によっては無駄になる可能性があります。
4-3.月額報酬
月額報酬は『リテイナーフィー』とも呼ばれる報酬です。人件費や実費として毎月支払う料金で、総額で数百万円かかるケースもあります。
定額の場合もあれば、その月の業務内容によって金額が変動するケースもあります。金額に幅があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
また月額報酬を設定している仲介会社の場合、交渉が長引くほど報酬の支払総額が増加します。中には月額報酬の受け取りを目的としている会社もあります。M&Aの成立が難しい状態であるにもかかわらず、契約を進める会社には要注意です。
参考:リテイナーフィーがないM&A専門会社が多い?手数料の注意点
4-4.中間報酬
M&Aの中間地点で発生する報酬を中間報酬といいます。基本合意書の締結後に支払うケースが多いですが、ほかにもトップ面談後やデューデリジェンスのタイミングで支払う場合もある報酬です。
売り手と買い手が基本合意書を交わすということは、ある程度お互いに納得するまで交渉が進んだことを意味します。そこまで交渉をサポートした仲介会社へのインセンティブとしての意味合いも含んでいます。
5.完全成功報酬の注意点
シンプルで分かりやすく、コストも抑えやすい完全成功報酬ですが、注意点もあります。業務によっては成功報酬以外の費用がかかるかもしれず、税金も考慮する必要があるからです。
5-1.別途費用がかかる業務を確認する
同じように完全成功報酬で報酬体系を設定している仲介会社でも、業務によっては別途費用がかかる可能性があります。例えば契約書といった書類の作成やデューデリジェンスなどの料金です。
また工場や店舗の視察をするため、出張が必要なケースもあります。このように業務上必要な出張費用が発生すると、実費を請求されるかもしれません。
高額な成功報酬にさらに費用がかかり、負担が重過ぎる場合は、『事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)』の利用を考えるとよいでしょう。要件を満たすと、仲介会社をはじめ専門家へ支払う報酬に対する補助を受けられます。
最新情報を確認した上で申請するとよいでしょう。
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用) | 令和4年度 補正予算 事業承継・引継ぎ補助金
5-2.取引に必要な費用を整理しよう
仲介会社をはじめ専門家へ支払う報酬には『消費税』がかかります。消費税は10%のため、成功報酬が3,000万円なら消費税分だけで300万円必要です。
予算が限られている場合、決して無視できる金額ではありません。そのため事前に税額を含めた報酬額を計算しましょう。
また税金はM&Aによって得た利益にも課されます。例えば経営者が所有する株式を買い手に売却したのであれば、約20%の『所得税等』を支払わなければいけません。会社の持つ事業や資産を売却した場合は、利益に約30%の『法人税等』がかかります。
参考:M&Aに関わる税金と計算方法。退職金を対価としたM&Aとは?
6.業者との契約におけるポイント
仲介会社と適切に契約を結び、スムーズにM&Aを進めるには、知っておくべきポイントがあります。まずは契約書への記載の仕方です。報酬やサポート範囲が明確になるよう記載しなければいけません。また強引な成約にも要注意です。
6-1.契約書に報酬の内容を盛り込む
契約前に完全成功報酬と聞いていたとしても、実際に報酬を支払うタイミングになり、他の費用が発生するケースもあります。そのため、料金体系は必ず契約前に説明を求め確認しましょう。また確認した内容は契約書へ盛り込みます。
具体的には『報酬および支払い方法』という条項を作り、『甲は乙に対し、M&A仲介業務の対価を以下の通り支払う』とし、レーマン方式の料率を記載します。ほかにも報酬が発生する場合には、その点も忘れず記載しましょう。
次に支払い方法や期日についても設定し、契約書に明文化します。
6-1-2.サポートの範囲も記載する
報酬について記載したら、『サポート範囲』も明確にしましょう。契約に含まれるサポートがどこまでなのか把握していない場合、自社に必要なサポートが範囲外だと後から判明するかもしれません。
そこでサポート範囲についても『業務範囲』の条項を設け、『乙は甲のために以下の業務を行う』とし、サポート範囲の業務を明記します。例えば『M&Aに関する情報収集』『一切の助言』『書類の作成』などです。
契約時点で内容を明らかにしておけば、必要なサポートを受けるための追加費用を支払わずに済みます。
参考:M&Aアドバイザリーとは?サポート内容や契約時の確認ポイント
6-2.強引に成約をすすめられるケースに注意
M&Aの成立まで報酬が発生しない完全成功報酬は、依頼する売り手や買い手にとっては好条件といえます。反面、仲介会社からすると、M&Aが成立しなければどれだけ仕事をしても利益に結び付きません。
そのため仲介会社は、不成立で成功報酬を得られない事態を避けたいと考えます。できるだけ早くM&Aを成立させるため、有益とはいえないM&Aでも強引に進めようとするケースもあるでしょう。
全ての仲介会社が強引というわけではありませんが、注意すべきポイントです。
7.M&Aでは優良な業者の見極めが重要
専門的な知識が必要なM&Aを、自社のみで進めるのは難しいでしょう。そこで仲介会社やその他の専門家へ依頼します。依頼するときに確認しておくべき項目が報酬体系です。
報酬が成功報酬のみの完全成功報酬なら、シンプルで費用も抑えやすいでしょう。ただしカバーしているサポート範囲を確認しておかなければいけません。業者によっては、成功報酬のほかに別途費用がかかる場合もあります。
また成功報酬には消費税がかかり、M&Aによって得た利益には所得税や法人税などが課されます。税金を含めた金額を確認しておかなければいけません。
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