M&Aに関わる税金と計算方法。退職金を対価としたM&Aとは?
タグ: #M&AM&Aを実施した際には税金が発生します。どのような税金が何に対して課税され、誰が納付するのでしょうか?加えて節税につながりやすい対価の受け取り方や、利用できる制度も紹介します。自社のケースに当てはまる有効な方法で、節税に役立てましょう。
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1.M&Aの節税対策は?
M&Aで利益を得たときに気になるのが税金です。ケースによっては多額の税金を納めなければいけないこともあるでしょう。負担が大きくなり過ぎないよう、節税対策を意識すると安心です。
1-1.株式譲渡と事業譲渡、どちらが有利なのか
目的に合わせて、M&Aではさまざまな手法が用いられます。代表的なのは全部もしくは一部の事業を売却する『事業譲渡』と、株の売却により経営権を譲渡する『株式譲渡』です。節税を意識するなら株式譲渡が有利といえます。
事業譲渡の利益には約31%の法人税が課されます。この法人税を抑える方法はありません。加えて経営者へ利益を所得として渡す際に、再び税金が発生してしまいます。
一方、経営者自身が保有する株式の譲渡で得た利益には、約20%の所得税が課税されます。税率が事業譲渡の利益に課される法人税より低いため、節税につながりやすいでしょう。
1-2.退職金を対価としたM&Aも行われている
節税対策を意識するなら、対価を『退職金』として受け取ると有利に働きます。退職金にかかる税金は優遇されており、負担を抑えやすいからです。
退職金にかかる税額の計算には『(退職金総額-退職所得控除)×1/2』を用います。このときの控除額は、勤続年数20年までを年40万円・21年以降の分を年70万円で計算します。
例えば勤続27年であれば、40万円×20年+70万円×7年=1,290万円の控除が可能です。退職金が控除額内なら退職所得は0円のため無税となりますが、金額によっては節税にならないかもしれません。
また法人は退職金の損金算入により節税につなげられます。ただし退職金が過大だと損金にならない可能性がある点に、注意が必要です。
2.株式譲渡で売り手に発生する税金を知ろう
株式譲渡でM&Aを実施したとき、売り手にはどのような税金が発生するのでしょうか?個人株主・法人株主それぞれのケースをチェックしましょう。
2-1.個人株主の場合は譲渡所得税が課税
個人株主が保有している株式を譲渡して利益が発生すると『譲渡所得税』が課されます。譲渡益に対する課税のため、対価から株式の取得価額・取得にかかった費用・株式譲渡の費用を差し引いた金額が対象です。
譲渡所得は譲渡した資産の種類によって、総合課税と分離課税に分類されます。株式は他の税金と分けて計算する分離課税の対象です。
税金は合計で20.315%課税されます。内訳は所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%です。
2-1-1.贈与税が発生するケース
株式譲渡を実施すると、譲り受けた人に『贈与税』がかかるケースもあります。例えば個人株主が時価より安く個人へ株式を譲渡したときです。
譲り受けた個人は時価と譲渡価格の差額分だけ利益を得ていることになるため、その差額に課税されます。贈与税は累進課税で最大55%の税率です。
また個人が法人へ無償もしくは時価より安く株式を譲渡すると、法人税が課されます。加えて売り手である個人には、みなし譲渡所得税が課税されるルールです。
売り手は譲渡価格によって利益が出ていないかもしれません。しかし利益が発生したとみなして課税されるため、個人から法人への譲渡は注意が必要です。どのような形で譲渡するべきか迷った場合は、『税理士法人チェスター』などの税理士に相談しましょう。
2-2.法人株主の場合は法人税が課税
資本金1億円以下の法人株主が非上場株式を譲渡する場合に課税されるのは『法人税』です。課税対象となるのは譲渡益のため、まずは利益を算出します。
『譲渡金額-(取得価額+取得費用+譲渡費用)』で求めるのは、個人株主の場合と同じです。譲渡益に所得に応じた税率を乗じ法人税を計算します。
このとき注意すべきなのは、法人の株式譲渡益に総合課税方式が適用される点です。適用される税率は所得の合計額により決まります。
3.事業譲渡で売り手に発生する税金
事業譲渡においても、利益が発生すれば税金が課されます。法人と個人事業主で、発生する税金が異なる点に注意が必要です。
3-1.法人税が課税される
法人が事業譲渡を実施して譲渡益が発生すると『法人税』の対象となります。法人税は実効税率がおよそ31%で、株式譲渡の利益にかかる所得税率20%より高い税率です。
ただし、必ずしも株式譲渡より税金が高くなるとは限りません。例えば繰越欠損金がある、役員退職慰労金で所得を圧縮可能といった場合には、株式譲渡より節税に有利に働く場合もあります。
3-1-1.法定実効税率は所得にかかる税金の負担率
法律が定めている表面税率に対し、所得にかかる税金の負担率のことを『実効税率』といいます。法人所得税の場合には損金算入の影響を考慮し、法人税・住民税・事業税の税率を合計したものが実効税率です。
『実効税率=(法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率)÷(1+事業税率)』という計算式で表されます。納税額の計算には表面税率が用いられますが、実際の負担率を知り節税に役立てるには実効税率が適切です。
3-2.個人事業の場合は所得税や消費税が課税される
個人事業主が事業譲渡を行うと、利益には『所得税』がかかります。土地・建物・株式などで得た利益は所得税のうち『分離課税』の対象です。その他の資産で得た譲渡益より低めの税率が設定されています。
その他の資産は総合課税に該当するため、累進課税制度の適用対象です。また売却資産に対しては『消費税』も納税しなければいけません。
4.事業譲渡で買い手に発生する税金
事業譲渡では買い手にも税金が課されます。課税される税金のほか、税金が優遇される措置についても見ていきましょう。
4-1.課税資産に対しての消費税
買い手が負担しなければいけないのは、課税資産にかかる『消費税』です。納税の義務を負うのは売り手ですが、税金の支払いは買い手が行います。そのため事業譲渡の対価と同時に請求される税金です。
課税資産として代表的な資産を下記に挙げます。
- 有形固定資産:建物・器具・機械装置など
- 無形固定資産:特許権・商標権・ソフトウエアなど
- 棚卸資産:商品・原材料など
- のれん代(営業権)
一方、消費税が課税されないのは、土地・有価証券・債権です。
4-2.経営力向上計画の税軽減特例措置とは
事業譲渡や株式譲渡などでM&Aを実施するにあたり『経営力向上計画』の認定を受けていると、税金の軽減特例措置を受けられます。例えば下記の軽減措置が代表的です。
- 機械装置の固定資産税の軽減:資本金1億円以下の会社を対象とし3年にわたり半減
- 登録免許税・不動産取得税の軽減措置:事業に必要な不動産を承継したときの移転登記にかかる費用の軽減
- M&Aリスクに対策する積立の損金算入:買収後に発覚するさまざまな問題へ対処するための資金を損金として扱える
このような税の軽減措置を受けるには、あらかじめ経営力向上計画の認定申請書を都道府県へ提出しなければいけません。経営力向上計画申請プラットフォームから電子申請も可能です。
5.状況によりかかる税金は異なる
M&Aを実施すると、売り手・買い手ともに税金が発生します。ただし課税される税金の種類はケースバイケースです。同じ株式譲渡で利益を得た場合でも、個人株主には譲渡所得税が、法人株主には法人税が課されます。
中にはみなし贈与とされ、贈与税が必要なケースもあるでしょう。複雑な税金について相談するなら『税理士法人チェスター』がおすすめです。売り手と買い手の状況に合わせたアドバイスを期待できるでしょう。
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