M&Aの際に行われる税金対策。株式譲渡、事業譲渡、会社分割を解説

タグ:

M&Aを行うと税金の支払いが発生します。スキーム(手法)ごとに異なる税金対策を見ていきましょう。『株式譲渡』『事業譲渡』『会社分割』で行われる対策について解説します。それぞれの特徴を把握し、自社に合う手法でM&Aを実施しましょう。

初回無料面談受付中事業承継・M&Aの無料相談はこちらから0120-418-507【受付時間】平日9時~20時 土曜9時~17時
初回無料面談受付中事業承継・M&Aの無料相談はこちらから0120-418-507【受付時間】平日9時~20時 土曜9時~17時

1.会社や事業を売却する際のポイント

1.会社や事業を売却する際のポイント

保有している資産を売却し利益を得れば、税金が課せられます。この仕組みはM&Aでも同じですが、手法ごとに課税される税金が異なる点に注意しましょう。税金の仕組みを理解することで、M&Aの利益をより多く手元に残せます。

1-1.税金の仕組みを理解しておこう

M&Aの利益は、中小企業であっても大きな金額になる傾向があります。そのため税金の仕組みを意識しないままM&Aの手法を決めると、思いもよらぬ高額の納税が必要になり、せっかくの利益が大きく減少しかねません。

そこで最適な手法を選べるよう、それぞれの特徴や課税される税金について押さえておきましょう。売り手が負担する税金はもちろん、買い手が支払う税金にも関わります。

双方ともに税金の負担を減らせる手法もあるため、確認の上、手法を選びましょう。

2.株式譲渡でかかる税金

2.株式譲渡でかかる税金

会社を丸ごと買い手に承継する株式譲渡では、譲渡利益に対して所得税・住民税・復興特別所得税が課されます。株式譲渡の基本的な知識と合わせ、課される税金の種類や仕組みを見ていきましょう。

2-1.株式譲渡とは

売り手の株式を買い手に譲渡し対価を受け取るM&A手法を『株式譲渡』といいます。株式譲渡は会社を丸ごと買い手に譲り渡す手法です。

不動産・設備・在庫・技術・従業員・取引先・許認可などはもちろん、負債も含め会社の持っているものを全て買い手が引き継ぎます。株主や経営者は交代するケースが一般的ですが、会社そのものは存続する手法です。

譲渡価格は、上場企業であれば市場の株価を参考に計算できます。非上場会社ではそれができないため、類似の上場企業を参考にした計算や、資産から負債を差し引き将来の収益を考慮した計算により、企業価値評価を実施します。

比較的手続きがシンプルなため、中小企業のM&Aでよく実施される手法です。

株式譲渡の手続きについては次の記事を参考にしてください。
株式譲渡にはどんな手続きが必要?契約や税金に関する基礎知識

2-2.株式譲渡所得に対し所得税等が課税される

株式譲渡を実施すると、売り手は買い手から対価を受け取ります。対価から株式取得にかかった費用とM&Aの費用を差し引いた『譲渡所得』に対し、税金が課される仕組みです。

売り手の株主が法人の場合、規模や利益によって異なりますが約30%の法人税がかかります。株主がオーナー社長といった個人であれば、課されるのは所得税・住民税・復興特別所得税を合わせ約20%です

株式譲渡所得は『申告分離課税』で納税します。そのため事業所得・給与所得・不動産所得など、他の所得とは分け、個別に納税額を計算しなければいけません。

3.株式譲渡における節税

3.株式譲渡における節税

オーナー社長といった個人が株主の場合、株式譲渡所得には所得税をはじめとする約20%が課されると分かりました。この場合に税金の負担を軽減するには『役員退職金』を活用します。

3-1.役員退職金を活用することで税負担を軽減

株式譲渡を実施するとき、オーナー社長は株式を買い手に売却しその対価を受け取ります。このとき事前に会社から対価の一部として役員退職金を受け取っておくと、税金の負担額を抑えられます

役員退職金を支払うことで会社の保有する現金が減り、株式価値の低下につながるからです。株式価値が下がれば譲渡価格を抑えられるため、株式譲渡所得の金額も減少し税負担を軽減できます。

3-1-1.役員退職金は所得税が優遇される

役員退職金の所得税に優遇措置があるのもポイントです。退職所得を計算する際には『(収入金額-退職所得控除)×1/2』もしくは、勤続5年以下なら『収入金額-退職所得控除』で計算できるため、課税対象となる金額を減らせます

退職所得控除は以下に当てはめて計算しましょう。

  • 勤続年数20年以下:40万円×勤続年数 (※80万円に満たない場合は80万円)
  • 勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば勤続年数15年・退職金3,000万円であれば、課税される退職所得は『(3,000万円-600万円)×1/2=1,200万円』です。課税対象の金額が減る分、税金を抑えられます。

3-1-2.役員退職金の額は適正範囲内で

税金の負担を減らせるなら、対価を全て役員退職金で受け取りたいと考える人もいるでしょう。加えて『損金算入』の対象にもなっているため、買い手としてもできる限り多く設定したいと考えるはずです。

しかしそれでは、役員退職金の金額として適正範囲に収まらない可能性が出てきます。適正範囲を超えた金額の場合、損金不算入とされるケースもあるため、役員退職金の金額を上げ過ぎると税金対策の効果が薄れるかもしれません

適切な金額を設定し確実に損金とするには、専門家への相談がおすすめです。

3-2.買い手は準備金や役員退職金を損金にできる

役員退職金は損金算入の対象のため、買い手にとっても税金対策につながると分かりました。ほかに買い手が損金算入できる費用として『準備金』があります。

準備金を損金算入するには、中小企業等経営強化法の『経営力向上計画』の認定を受けるのが条件です。認定を受ければ、買収価格の70%までの準備金を損金算入できます。

ただし初年度に損金とした準備金は、5年経過後に5年間かけて取り崩し、益金へ算入しなければならず、最終的な税負担は変わりません。M&A後のさまざまなリスクに備えられるよう、初期の負担を減らせる制度です。

4.事業譲渡で課される税金

4.事業譲渡で課される税金

会社が保有する事業の一部もしくは全部を譲渡する事業譲渡では、売り手の会社に『法人税』が課されます。また買い手も『消費税』や『登録免許税』を負担しなければいけません。

4-1.事業譲渡とは

会社を全て譲渡する株式譲渡に対し、事業譲渡は事業の一部もしくは全部の中から、特定の事業のみを買い手が引き継ぐ手法です。買い手は必要な資産だけを選び引き継げます。

そのため買い手にとって魅力的な設備・技術・販路などの資産のほかに、不要な債務といった負の資産がある場合に採用されやすい手法です。個別に買収するかどうか決定し手続きを行うため、株式譲渡と比べ手間がかかります。

事業譲渡を実施するとき、売り手は会社そのものです。そのため事業譲渡の対価は、オーナーではなく会社へ支払われます。

事業譲渡につきましては次の記事を参考にしてください。
事業譲渡の目的、主な特徴とは。専門家の知識が欠かせない理由

4-2.法人税

事業譲渡を実施すると、売り手の会社は対価を受け取ります。対価から資産と負債の差額を差し引いた部分が課税対象となる売却益です。この売却益に対し、売り手は約30%の『法人税』を納めなければいけません

このとき納税義務があるのは、会社そのものです。株式を100%保有するオーナー社長であっても、譲渡益を受け取っていないため税金の負担は発生しません。

4-3.消費税、登録免許税等

買い手が負担する税金は『消費税』と『登録免許税』の2種類です。事業譲渡により、買い手は設備や在庫・営業権など有形・無形の資産の譲渡を受けます。資産の売買が行われるため、消費税の対象です。

消費税を納税するのは売り手の会社ですが、負担するのは買い手のため、事業譲渡では資産の価格に消費税を上乗せして請求しましょう。

また事業譲渡で引き継ぐ資産に土地や建物があるなら、法務局で名義変更をしなければいけません。その手続きに必要なのが『登録免許税』です。加えて不動産を取得したなら『不動産取得税』も課されます。

5.事業譲渡における節税

5.事業譲渡における節税

事業の一部や全部を売却する事業譲渡では、どのような税金対策ができるのでしょうか?売り手は『繰越欠損金』を、買い手は『試算調整勘定』を活用できるため、それぞれ解説します。

5-1.繰越欠損金などにより法人税の負担が軽減

会社に『繰越欠損金』がある場合、事業譲渡で利益を得たとしても、法人税の負担を減らせます。課税対象の所得がマイナスになり欠損金が生じると、繰越期限内であれば課税所得から差し引けるからです。

事業譲渡によって大きな利益を得たとしても、繰越欠損金を差し引くことで課税対象となる所得を減らし、結果的に法人税額を抑えられます。

5-2.買い手は資産調整勘定を損金にできる

買い手が実施できる税金対策に『資産調整勘定』の活用があります。資産調整勘定を計上できるのは、事業譲渡により買い手が引き継いだ時価純資産を事業譲渡の対価が上回ったときです

『事業譲渡の対価-引き継いだ時価純資産』で算出できる差額を、5年間かけて月割で均等に損金算入します。差額が1,800万円なら月30万円の試算調整勘定を5年間計上し続けます。

6.オーナー社長が事業譲渡で利益を得る場合

6.オーナー社長が事業譲渡で利益を得る場合

事業譲渡で得た利益をオーナー社長が受け取る方法は、『役員報酬』か『配当』の2種類です。役員報酬なら経費にできますが、配当は経費にならない点に注意しましょう。

6-1.オーナー社長への役員報酬は経費にできる

買い手から受け取る事業譲渡の対価は会社に支払われるものです。オーナー社長が受け取るには、役員報酬とするとよいでしょう。以下3種類のいずれかに該当する役員報酬なら、条件を満たすことで経費として扱えます。

  • 定期同額給与:毎月固定額で支払われる役員報酬
  • 事前確定届出給与:税務署へ届け出ている決められた時期に支払われる役員報酬
  • 業績連動給与:会社の業績に連動させて支払う役員報酬

ただし役員報酬が『過大』と判断されると、経費への算入はできません

6-2.配当は経費にならない

利益を配当として受け取ることもできます。しかし配当は経費にならない点に注意しましょう

加えて、配当から差し引かれる税金は、役員報酬として受け取った場合と変わりません。約20%の源泉徴収が行われ、地方税も課されます。

同じ金額をオーナー社長へ支払うなら、経費になる役員報酬の方が節税に役立ちます。

7.会社分割でかかる税金と節税

7.会社分割でかかる税金と節税

M&Aを実施するときには、事前に会社分割をした方が税金対策に有利になるかもしれません。具体的にどのようなケースに向いているのか確認しましょう。

7-1.会社分割とは

会社分割は、別の会社に自社の所有する権利や義務を承継させる手続きです。この手法はM&A実施前の磨き上げに役立ちます。

会社が持っているものの中には、買い手が欲しがらないものや、自社で引き続き保有したいものがあるでしょう。例えば社長の社宅や自動車、家賃収入を得ている不動産などです。

これらを選び会社分割で社外に出せば、後から買い戻す手間や費用を省けます。もとの会社には売却したいものだけを残せるため、株式譲渡によるM&Aも実施が可能です。

ただし不自然な会社分割は不合理と判断され否認される可能性があるため、専門家へ相談しましょう。

会社分割については次の記事を参考にしてください。
会社分割とは何かわかりやすく解説。メリット、デメリットは?

7-2.約20%の税負担で売却できる等のメリット

磨き上げを実施してから会社分割をする場合、株式譲渡で自社の売却ができます。採用する手法が株式譲渡であれば、利益に課される税金は約20%です。事業譲渡で得られる利益にかかる法人税は約30%のため、大幅に税額を抑えられます。

また会社分割を実施するにあたり、事業や従業員の引き継ぎなど一定の条件を満たし『適格分割型分割』とすれば、資産や負債を簿価で引き継ぎ、譲渡損益に対する課税は繰り延べられます。

そのため税金を負担することなく、買い手に不要な資産の移動が可能です。加えて資産を引き継いだ法人は対価として新株を発行すればよいため、資金を用意しなくても実行できます。

8.M&Aスキームの選択が税金対策では重要

8.M&Aスキームの選択が税金対策では重要

M&Aを実施するにあたり、選択肢として複数のスキームがあります。税金対策を意識するなら、スキーム選びが重要です。売り手と買い手の状況次第で適切な手法は異なるため、状況に合わせて選びましょう

手法ごとに必要な税金対策が異なる点にも要注意です。株式譲渡なら役員報酬の活用が役立ち、事業譲渡では繰越欠損金や試算調整勘定を用います。

また買い手にとって不要な事業や資産がある場合には、適格分割型分割で不要なものを社外へ出した上で株式譲渡を行う方法も検討しましょう。

大きな利益を得ても、税額が大きければその分、利益が減ってしまいます。ただし税金対策の判断は専門家でなければ難しい部分もあるでしょう。専門知識に関しては、実績豊富な『税理士法人チェスター』への相談がおすすめです。

相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】

M&Aにより会社を承継するときの流れを詳しく知るには、以下もご覧ください。

事業・会社をM&Aで売却する基本的な流れ

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。