会社を売るタイミングの見極め方を解説。事前の備えが重要
タグ: #M&A会社を売るタイミングを逃すと、M&Aの成立は難しいでしょう。希望条件を大幅に譲歩せざるを得なくなり、場合によっては売却できない可能性もあります。希望をかなえるM&Aのために、売り時の判断の仕方を確認しましょう。
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1. 会社売却はタイミングが重要
会社売却を検討しているなら、タイミングをよく考えた上で実行しましょう。自社の業績はもちろん、社会全体の景況感や業界の動向にも売却額は影響を受けます。場合によっては売却できない可能性もあるため、注意が必要です。
1-1. 売却条件は景気や業界の動向に左右される
より好条件で会社を売りたいなら、景気や業界の状況をよく見て判断しなければいけません。会社の業績に変化がない場合でも、会社を取り巻く状況次第で、売却価格は変わります。
企業が投資に積極的になりやすい好景気のタイミングの方が、投資に慎重になりやすい停滞期より、売却価格は高くなりやすいでしょう。
また業界の動向にも目を向けなければいけません。景気が好調なタイミングでも、業界再編が進み十分に成熟していると、小規模な事業は売却しにくい可能性があります。
1-2. 状況が悪化し売却できなくなる可能性も
景気や業界の状況次第では、売却できない可能性も出てきます。買い手企業が十分な資金を用意できないケースもあれば、資金があっても買収による利益がそれほど出ない場合もあり得るからです。
また環境の悪化だけでなく、自社の業績悪化が原因で売却できないというケースもあるでしょう。売り手が積極的に「売りたい」と考え出すのは、多くの場合、業績が悪化してからです。
しかしこのタイミングでは「買いたい」という企業はまれです。見込みがない会社はどれだけ売却価格が安くても買い手が見つかりません。状況によっては廃業せざるを得ないでしょう。
2. 売り時を判断する二つの指標
会社の売り時を判断する上で基準になるのは、会社の『業績』と社長の『意欲』です。二つの指標によって、どのように売り時を判断すればよいのでしょうか?
2-1. 会社の業績の良し悪し
売却しやすいのは、会社の業績が上がっているか安定しているタイミングです。買収によって利益アップが狙える会社であれば、買い手はつきやすいでしょう。
加えて、安定した経営基盤があるかについても買い手はチェックしています。需要の高さが大きく変動することなく、長く関係の続く顧客がいる会社は、買い手がつきやすい傾向です。
またその会社ならではの強みも重要です。他の会社が真似できない技術やノウハウを欲しがる買い手が現れる可能性があります。
2-2. オーナー社長の意欲の高さ
社長の意欲も売り時の判断に関係する要素です。展開している事業に対する意欲が低下しているなら、売り時と判断した方がよいでしょう。
年齢や健康状態によっては、以前ほど頑張れなくなってきたと感じているケースもあるかもしれません。そのような場合も売却のタイミングと考え、準備を始めるのがおすすめです。
売却までには時間も手間もかかります。さまざまな交渉や決定ができる体力的・精神的な余裕があるうちに、決断するのがよいでしょう。
3. 売却を検討すべきか状況別に整理
自社の業績と社長の意欲は、現時点でどのような状況でしょうか?組み合わせごとに、売却を検討すべきタイミングかどうか解説します。自社の状況に合う項目をチェックし、今考えるべき項目の参考にしましょう。
3-1. 業績が順調で社長の意欲が高い
業績が好調で社長の意欲も高いなら、売却を積極的に考えなくてもよいタイミングです。これから伸びていく事業に社長が意欲的に臨んでいるなら、まずは目標達成を目指し取り組むとよいでしょう。
ただし社会情勢の変化といった不測の事態によって、経営が厳しい環境に置かれる可能性は常にあります。そこで万が一の事態への備えを意識するのがポイントです。
例えば事業買収を行い企業価値向上を目指すのも、不測の事態への備えといえます。相乗効果を期待できる事業を買収すれば、事業領域の拡大も可能です。
3-2. 業績は順調だが社長の意欲が低い
売却に適しているのは、業績は好調で社長の意欲が下がっているタイミングです。事業の成長に反して、社長の興味ややる気がほかに向いているケースは珍しくありません。
業績が好調であれば、比較的高い価格で会社を売却しやすいでしょう。社長の意欲が低い状態が続けば、いずれ事業は低迷を始めます。手遅れになる前に、事業に興味がありチャレンジしたいと考えている買い手を探しましょう。
十分な対価を得られれば、社長はそれを元手に新たな事業を始めることも可能です。
3-3. 業績は不調だが社長は意欲が高い
業績が不調であっても、社長に意欲があるなら、売却するタイミングではありません。ただし何かしらの打開策を模索する必要があります。そのためさまざまな選択肢を検討しましょう。
自力で事業を続ける方法を考えるほか、大手企業と事業資本提携する方法もあります。また社長が経営陣に残ることを条件に、資本力のあるグループ企業の傘下に入るという選択肢も有効です。
グループ企業の傘下となる場合、事業を伸ばせる環境が整っているか、よく見極めた上で売却する必要があります。
3-4. 業績が不調で社長の意欲も下がっている
早めに売却すべきなのは、業績も社長の意欲も低下している場合です。特に産業自体が衰退しており、今後の回復が見込めないなら、できるだけ早いタイミングで売却しましょう。
そのまま買い手が見つからず廃業する結果になれば、清算するための費用が発生します。従業員は職を失い、取引先は連鎖倒産するかもしれません。
希望の条件を満たす買い手を探すタイミングは既に過ぎており、買い手が現れたら売り時といえるでしょう。
4. 売却を検討するなら市場環境もチェック
売却にぴったりのタイミングを知るには、景気や業界の動向も確認が必要です。自社の業績が順調でも、市場の状況によっては売却がスムーズに進まないかもしれません。
4-1. 景気は売却条件を左右する大きな要因
自社をできるだけ高く売るには、好景気になった瞬間の売却も、待ちすぎて停滞期に差し掛かった段階での売却も適していません。好景気が続き、M&A市場全体の価格が高まっているタイミングでの売却がおすすめです。
買い手は買収のために資金を用意しなければいけません。好景気のタイミングでは、多くの企業が積極的に投資を行います。企業の買収も投資の一つです。買収にかけられる資金に余裕がある企業が増える状況であれば、比較的売却しやすいでしょう。
一方、景気が停滞期に入ると企業は投資を控えます。投資に使える予算が少なくなるため、自社の業績が変わらなくても売却価格が下がる可能性があります。
4-2. 業界再編の進行時は高値を期待できる
業界再編が活発に行われる時期は、多くの企業が会社を売ったり買ったりしています。そのため、希望している以上の好条件で売却できるかもしれません。
しかし業界再編の活発な動きは、ある程度すると沈静化します。小規模な会社が統合によってまとまり、買い手企業が減るからです。
そして大手企業がM&Aを実施し始めると、業界再編は一段落します。このタイミングで自社を売却しようとしても、なかなか買い手は見つかりません。
M&Aが活発に行われる業界の成長期を察知したら、早めに売却の準備を始めるのがおすすめです。
5. 会社をベストタイミングで売るコツ
会社の売り時を逃さないためには、事前準備が欠かせません。まずは売却の手順を把握しましょう。自社の企業価値を知っていると、スピーディーな交渉につながります。またスムーズな取引のために、専門家への相談も活用しましょう。
5-1. プロセスを知り早めに準備を進める
会社は売りたいと思ってもすぐに売れるものではありません。M&A仲介会社に依頼してから売却の手続きが全て完了するまでは、『6~12カ月』かかるといわれています。一般的な手順を確認しましょう。
- M&A仲介会社選び
- M&A仲介会社と契約
- 買い手候補に提出する資料等の作成
- 買い手候補への打診
- 買い手候補と秘密保持契約を締結し情報開示
- トップ面談の実施
- 基本合意書の締結
- 買い手による詳細な調査(デューデリジェンス)の実施
- 最終交渉と契約書の締結
- 決済・引き渡し・各種引き継ぎなどクロージングの実施
自社の業績はもちろん景気や業界の動向も把握し、ベストタイミングで売却するには、この手順をスムーズに実行できるよう事前の準備が重要です。
M&Aの手順について解説している以下も、ぜひご覧ください。
5-2. 自社の売却価値を把握しておく
売却を検討しているなら、自社の価値を算出しておきましょう。売却価格は最終的に売り手と買い手の交渉によって決定しますが、交渉のベースとなるのは売り手が提示する価格です。
企業価値の算出方法は、以下の3種類に分類できます。
算出方法 | 特徴 | 主な手法 |
---|---|---|
インカムアプローチ | 将来の収益性で評価 | DCF法・配当還元法など |
マーケットアプローチ | 類似する企業を基準に評価 | 類似会社比較法・市場株価法など |
コストアプローチ | 会社の純資産による評価 | 簿価純資産法・時価純資産法など |
自社の価値を把握していれば、買い手が現れたときに目安となる価格をすぐに提示できます。ただし自社の価値はその時々で変動するものです。そのため定期的に算出するとよいでしょう。
参考:企業価値の計算方法と注意点。企業の価値を決める要素とは
5-3. M&Aの専門家に相談する
売却を成功させるには、専門家への相談が欠かせません。買い手を探す最初の段階でも、自社だけで取り組むのは難しいでしょう。
早いタイミングで、自社の規模や業種に合う仲介会社に依頼すれば、買い手探しや戦略の立案などのサポートを受けられます。専門家を活用することで、売却の手順がスムーズに進むでしょう。
参考:事業承継の相談ができる専門家とは。選ぶときのポイントなどを解説
また自社の税務についてあらかじめ調査しておくと、これまで気付かなかった不備が見つかるかもしれません。見つかった不備は適切に対策することで、売却時のトラブル回避に役立ちます。
税務関連の調査は、実績豊富な『税理士法人チェスター』への依頼がおすすめです。
6. 会社の売却はタイミングの見極めが重要
会社の価格はタイミングによって異なります。できるだけ高く売却するには、タイミングの見極めが欠かせません。自社の業績が上り調子か安定している時期だと、高値で売りやすいでしょう。
また景気や業界の動向によっても価格は変わります。自社の業績は変わらなくても、取り巻く環境次第でも売却価格は変わるでしょう。
そのため、ベストタイミングで売却するには、売却の手順や自社の価値を把握する事前準備が重要です。併せて税務や労務について調査をしておくと、不備があった場合の対策が可能です。
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