社長交代はいつ・誰に・どうやって?必要な手続きを紹介
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社長交代をするには、引退年齢から逆算し、後継者の育成から始めなければいけません。後継者には、具体的にどのような内容を伝える必要があるのでしょうか?また必要な手続きや、税金の負担を抑える上で重要な自社株対策についても解説します。
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1.社長交代のタイミング
日本の社会全体で高齢化が進行しているのに伴い、社長の高齢化も進んでいます。社長交代をするには事前準備が必要なため、準備期間を考慮した適切なタイミングで始めましょう。タイミングの遅れは、従業員や取引先に悪影響を及ぼしかねません。
1-1.日本の社長の高齢化が進行中
『2018年版中小企業白書』によると、経営者の年齢分布におけるピークは1995年に47歳であったのに対し、2015年には66歳となっており、高齢化が進んでいると分かります。2021年の経営者の平均年齢は60.3歳とする調査もあります。
高齢化が進んでいるにもかかわらず、後継者が見つかっていない会社も少なくありません。加えて、社長が高齢になるとともに、赤字の割合が高くなっていく傾向を示すデータもあります。
後継者不在の会社の中には、赤字に陥らないうちに黒字廃業しようという会社もあり、その件数は増えていく見込みです。
1-2.引退年齢から逆算して準備が必要
社長交代はすぐにできるものではありません。後継者へ社長としての仕事を伝え、引退に向けた準備を整えるために、一般的には『5~10年』かかるといわれています。
そのため引退を考えている年齢から逆算し、準備を始める時期を確認しましょう。例えば70歳で引退する予定で、準備に10年間が必要なら、遅くとも60歳には準備に取り掛かっている必要があります。
参考:事業承継に必須のスケジュール作成。いつ、どんなことを実施するのか
1-3.タイミングが遅れるとどうなる?
準備を始めるタイミングが遅れると、万が一の際に役員や従業員にかかる負担が大きくなってしまうでしょう。高齢になるほど急病や急逝のリスクは高まります。
あらかじめ事業承継の準備が進んでいない場合、社長の持つ知識やノウハウを誰も知らないまま、社長交代をしなければいけない事態も起こり得るでしょう。突然の訃報で取引先に不安が広がる可能性もあります。
また中小企業では、事業用に使用している資産を、社長が個人名義で所有しているケースも珍しくありません。事業承継に向けた準備をまったくしていない場合、事業用資産であるにもかかわらず、法定相続人が相続する事態も考えられます。
相続にまつわるトラブルが発生すれば、事業の継続自体が難しくなる場合もあるでしょう。
参考:買収された会社の末路。考えられる社員や買い手企業とのトラブルは?
2.会社の経営を託す相手を決め、育てる
社長交代の準備でまず行うのは、後継者の決定と育成です。後継者に誰を選ぶかは、関係者の納得を得られるかどうかも考慮し決定しましょう。また育成には十分な期間を設け、社内の業務を経験するのはもちろん、社外との関わり方についても伝えます。
2-1.後継者選定の方法
後継者を選ぶ上で、従業員・取引先・金融機関など、会社の関係者から納得を得られるかという点は無視できない基準です。社長の子どもや親族を後継者とする『親族内承継』は、周囲の納得を得やすいでしょう。
ただし価値観の変化もあり、親族内承継の割合は減少傾向です。親族内承継を希望している場合には、早い段階で後継者候補の親族に打診し、本人がどのように考えているか聞いておきましょう。
ほかに、会社の事業や風土に精通している役員や従業員を後継者とする『社内承継』や、社外の法人や個人に事業承継する『第三者承継』を行うケースもあります。
参考:事業承継に必要な準備や引き継ぎ内容は?親族内承継、M&Aの違い
2-2.後継者の育成方法
後継者を決定したとしても、その時点では会社の事業や風土を十分理解していない場合もあるでしょう。そのため、まずは社内の各部門の業務を一通り経験するところから始めます。
実務経験を通し、事業についての理解を深められ、従業員との信頼関係の構築にもつながります。その後、経営についても伝えていけば、スムーズに事業承継しやすいでしょう。
また社内の業務を経験しただけでは分からない仕事についても、教育していかなければいけません。例えば銀行との付き合い方です。
必要なタイミングで好条件を提示してもらえるよう、日頃のコミュニケーションや頼まれた融資を受けることによる、信頼関係を構築する大切さを伝えます。
3.後継者に何を引き継ぐのか
後継者を決定したら、事業の継続に必要なあらゆる資産を引き継がなければいけません。有形資産はもちろん、無形資産も全てです。同時に会社の核ともいえる、経営理念の引き継ぎも重要なポイントといえます。
3-1.ノウハウやブランド力を含めた経営資源
事業承継は単に社長が交代することではありません。会社の安定経営とさらなる発展を目指し行われるため、今ある『人』『資産』『知的資産』といった経営資源を全て引き継ぎます。
社長が交代したあとのスムーズな運営を実現するには、全ての経営資源の円満な承継が欠かせません。例えば従業員が安心して働き続けられるよう、社長は後継者について十分説明しておく必要があります。
また、設備や不動産など目に見える資産のほかに、ノウハウやブランド力など目に見えない資産も引き継ぎが必要です。どのような資産があるか洗い出し、必要なものを全て伝える準備を行います。
参考:事業承継に必要な準備や引き継ぎ内容は?親族内承継、M&Aの違い
3-2.後継者に経営理念を伝える重要性
資産に加え『経営理念』も後継者に伝えるべき重要なものです。何のためにどのような企業として活動を続けていくのか、核となる指針がぶれなければ、社長交代後も安定した経営とさらなる発展を実現しやすいでしょう。
経営理念を具体的な言葉にしていないようであれば、まずは書き出し、後継者へ共有します。ただし経営理念を理解し、それに基づいて行動できるようになるまでには、時間が必要です。
朝礼時に触れたり、研修で実践できているか振り返ったり、定期的に確認することで浸透させていきます。
4.社長交代で必要な具体的な手続き
正式に後継者に社長交代する際には、『登記』を変更しなければいけません。また取引先などの関係者への『挨拶状』送付も行いましょう。
4-1.登記の変更
後継者が新たに社長に就任したら、就任した日から『2週間以内』に氏名の登記が必要です。新しい社長の氏名が登記された登記事項証明書は、その後の手続きに欠かせません。できるだけ早く登記を済ませましょう。
以下を参考に必要な書類を用意し、手続きを行います。ただし必要な書類は会社ごとに異なるため、詳細は確認が必要です。
- 変更登記申請書
- 代表取締役を選定した会議の議事録
- 辞任届
- 就任承諾書
- 印鑑(改印)届書
- 印鑑証明書
加えて『登録免許税』を資本金の金額に応じて納めます。資本金1億円以下は1万円、1億円を超える場合は3万円です。
4-2.関係者への挨拶状送付
挨拶状の送付も忘れずに行いましょう。社長交代は会社にとって大きな節目です。節目となるタイミングの挨拶によって、関係者へ好印象を与えられます。
ただし送付が遅いと、挨拶状より先に他者から社長交代について知る関係者も出てくるでしょう。それでは反対に悪印象を与えかねません。そのため後継者の社長就任から『1週間以内』を目安に送付します。
送り先をあらかじめリストにし確認しておくと、スムーズな送付が可能です。
5.社長交代は何から始めればよい?
事業承継を考え始め、後継者候補も決定したけれど、具体的に何をすれば社長交代を進められるか分からないという人もいるでしょう。まずは事業承継の専門家に相談するのは有効な方法です。加えて現状把握も欠かせません。
5-1.事業承継に詳しい相談相手を探す
手続きの複雑な事業承継は、自社内だけではうまく進められないケースも多いでしょう。そこで以下を参考に、事業承継に詳しい相手に相談するのがおすすめです。
- 公的機関
- 仲介業者
- 銀行
- 弁護士
- 税理士
日頃から取引のある銀行は、自社の経営計画をよく知っています。そのため事業承継について気軽に相談できる相手です。
参考:事業承継の相談ができる専門家とは。選ぶときのポイントなどを解説
顧問税理士も同様に相談しやすい相手ですが、事業承継に詳しくない場合もあります。専門的な知識を持つ税理士に相談するには、事業承継の実績が豊富な『税理士法人チェスター』がおすすめです。
5-2.自社の状況を把握する
自社の現状把握も欠かせません。そこで以下を中心に、会社の状況を確認していきます。
- 株式の保有状況
- 自社株の評価額
- 個人保証の有無
- 財務状況
- 簿外債務といったリスクの有無
- 決算手続き
- 会社の強み・弱み
状況によって、適切な事業承継の方法は異なります。スムーズに後継者へ社長交代するために、正しく現状を把握し、事業承継の方針を定める点が重要です。
6.忘れてはならない自社株問題
経営権を後継者へ移す際には、何らかの方法で自社株の所有者を社長から後継者へ変更しなければいけません。このときに発生する税金を抑えるには、あらかじめ自社株対策が必要です。
6-1.事業承継には税金がかかる
誰を後継者にし、どのような手法で事業承継を行ったとしても、以下のように何らかの税金が課されます。
事業承継の手法 | 課される税金 | 納税義務者 |
---|---|---|
生前贈与 | 贈与税 | 後継者 |
相続 | 相続税 | 後継者 |
株式譲渡 | 所得税 | 旧株主 |
事業譲渡 | 法人税等 | 会社 |
また後継者が贈与もしくは相続で株式や事業用資産を引き継ぐ場合は、『事業承継税制』の活用も可能です。贈与税・相続税の納税を猶予もしくは免除されます。
ただし制度の活用には、経営承継円滑化法による都道府県知事の認定を受けなければならず、準備が必要です。
『事業承継税制』については、以下もぜひご覧ください。
自社株式の生前贈与・相続税が無税になる事業承継税制の特例を徹底解説
6-2.自社株対策の必要性
事業承継時には税金が課されると分かりました。多額の税金により財務状況が悪化すれば、その後の経営がうまくいかない可能性があります。
また株式譲渡といった手法で事業承継をする場合には、後継者が多額の買収資金を用意しなければいけません。資金不足で事業承継が立ち行かなくなる事態も起こり得るでしょう。
そこで『自社株対策』の実施が重要です。あらかじめ対策し株式の評価額を下げられれば、課される税金も後継者が用意する買収資金も、低く抑えられます。
事業承継税制により税金の納付が猶予される場合でも、後々支払わなければいけない事態になるかもしれません。できるだけ対策しておけば、負担を抑えられます。
参考:株式譲渡にはどんな手続きが必要?契約や税金に関する基礎知識
7.事業承継は今からできることにすぐに着手
会社のあらゆる資産を後継者へ引き継ぐ事業承継は、5~10年間かかるといわれています。そのため社長交代のタイミングから逆算し、早めに準備を始めなければいけません。
自社内のみで全ての手続きを行うのは難易度が高いため、専門知識を持つ相談先を見つけることも重要です。まずは日頃から付き合いのある銀行に相談してみましょう。
事業承継に関する税務について詳しく知りたい段階になったら、『税理士法人チェスター』へ相談するのもおすすめです。相続事業承継コンサルティング部の実務経験豊富な専任税理士が、お客様の状況に最適な方法をご提案いたします。
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