事業承継計画は後継者への引継ぎに必須。策定のコツや手順を解説

事業承継計画とは、どのような目的で策定するものなのでしょうか?策定のポイントや盛り込むべき内容、策定の流れなどを確認しましょう。事業承継計画をもとに作成する『事業承継計画書』や『事業承継計画表』の内容についても紹介します。

1.事業承継計画とは何か

1.事業承継計画とは何か

スムーズに事業承継を実施するには、全体の流れを把握しておくとよいでしょう。そこで役立つのが事業承継計画です。早めに策定し書面にすることで、希望をかなえる事業承継を実施しやすくなります。

1-1.スムーズな事業承継に必要

事業承継計画は、中長期の経営計画をベースに、事業承継のタイミングや課題、課題への対策などを盛り込んだものです。自社の現状と今後の計画を明確にすると、事業承継を実施する上での課題が見えてくるでしょう。

課題がはっきりすれば、必要な対策を立てやすいはずです。事業承継のハードルを取り除けるため、マッチングや交渉などがスムーズに進みます。

また事業承継計画を策定しておけば、親族間や社内で行われる事業承継についての話し合いも進めやすくなります。取引先や金融機関など関係者の理解も得やすいでしょう。

1-2.策定した内容は書面に落とし込む

策定した内容は、書面にしておけばすぐに提示できます。後継者をはじめ社内外の関係者に、今後の方針や流れについて分かりやすく示せるでしょう。書面は以下の2種類を作成するのが一般的です。

  • 事業承継計画書:事業承継の課題と対策を記載する
  • 事業承継計画表:事業承継の工程を記載する

どちらの書類も書き方に決まりはありません。無料で使えるフォーマットを利用すると、何を書けばよいか分かりやすく、作成しやすいでしょう。

2.事業承継計画を策定するコツ

2.事業承継計画を策定するコツ

後継者に会社を引き継ぐ事業承継には時間がかかります。そのため事業承継計画の策定は、早めに行うのがポイントです。同時に後継者が「継ぎたい」と思えるような魅力的な会社になるよう、磨き上げの計画も立てましょう。

2-1.早めに作り始める

事業承継には時間がかかります。後継者が決まり事業用資産を引き継いだからといって、その後すぐに、後継者が経営者としての仕事を円滑に遂行できるわけではありません。

後継者がリーダーシップを発揮し、適切な経営判断ができるようになるまでには、5~10年は必要とされています。事業承継が完了するまでに、経営者の急病や急死で会社の経営が立ち行かなくなる可能性もあるでしょう。

万が一の事態に備え、できるだけ早いタイミングで事業承継計策を策定し、引き継ぎに向けた準備を始めると安心です。例えば70歳での引退を計画しているなら、60歳ぐらいには事業承継計画を作っておきましょう。

参考:事業承継に必須のスケジュール作成。いつ、どんなことを実施するのか

2-2.後継者が継ぎたい会社に体制を整える

会社の磨き上げも重要です。内部統制が整備されておらず運営しにくい組織や、資金繰りに余裕がなく自転車操業になっている会社では、後継者が継ぎたくないと感じるかもしれません。

後継者が継ぎたいと思えるような魅力ある会社になるよう、経営体制の見直しや借入の圧縮などを行いましょう。本業の競争力を高めるよう、商品やサービス・売り込み方などの改善も必要です。

3.事業承継計画書の役割や内容

3.事業承継計画書の役割や内容

事業承継計画を策定したら、2種類の書面を作成します。そのうちの一つが事業承継計画書です。スムーズな引き継ぎのために必要な書類には、どのような内容を記載するのでしょうか?

3-1.事業承継の課題を記載する書類

会社が事業承継を行う際には、まず自社の現状を把握しなければいけません。その上で後継者に何を引き継ぐのか、どのような引き継ぎ方が向いているのか、必要な準備は何なのかといった点を洗い出します。

事業承継における課題を明確にし、スムーズな事業承継を行うために必要な対策を含めて記載する書類です。

3-2.事業承継計画書の内容

事業承継計画書に記載する内容についても、具体的に確認しましょう。主に以下のような項目をまとめましょう。

  • 経営理念:会社のビジョン
  • 企業概要:業種・事業内容・沿革・資本金・従業員など
  • 経営課題:強み・弱み・自社の状況・競合他社の状況など
  • 事業承継の概要:経営者の情報・後継者の情報・承継の方法・課題と対策など

既に後継者が決まっているなら、後継者とともに内容を確認しながら作成します。現時点で後継者が定まっていない場合には、どのような後継者に引き継ぐかを想定しながら作成しましょう

4.事業承継計画表の役割や内容

4.事業承継計画表の役割や内容

課題とその対策を記載する事業承継計画書に対し、事業承継計画表には何を記載するのでしょうか?事業承継計画表を作成する目的や、具体的な内容を確認します。

4-1.事業承継の工程表

事業承継が完了するまでに行う項目は、多岐にわたります。事業承継計画書のみでは、何をどのタイミングで行うのかが分かりません。計画を具体的なプランに落とし込み、時系列で分かりやすく整理した書類が事業承継計画表です。

作成すると、会社・経営者・後継者が、事業承継の完了までにどのように変わっていくのかが一目瞭然になります。10年間の計画を立てる表を作成するのが一般的です

4-2.事業承継計画表の内容

後継者への引き継ぎに向けて実施する内容に関する工程表である事業承継計画表には、以下を盛り込みます。

  • 事業計画:売上高・経常利益など
  • 会社:定款・株式など
  • 経営者:年齢・役職・株式や財産の分配・持株など
  • 後継者:年齢・役職・後継者教育・持株など

1年ごとに実施すべき項目を具体的に記入すれば、事業承継までの行動計画が完成します

5.事業承継計画策定の流れ

5.事業承継計画策定の流れ

スムーズに事業承継を行うには、事業承継計画が必要と分かりました。事業承継計画はどのような流れで策定していけばよいのか確認しましょう。

5-1.現状を把握する

まず必要なのは現状把握です。会社について把握するには、会社概要に加え、現在の売上や利益と、将来の見込みも分かるようにしましょう。

株主構成も明確にしておきます。親族で経営している会社なら、関係性の把握も欠かせません。

また経営者についても、現状が分かるようにしておきましょう。株式をどのくらい保有しているのか、個人で所有している事業用資産には何があるのか、個人保証を負っているのかなどを明らかにします

5-2.後継者や承継方法を選ぶ

次に後継者を選びましょう。親族内で選ぶのか、従業員から選ぶのか、第三者へも探す範囲を広げるのか、選び方の方向性を定め自社に合う人材を探します。後継者の能力や経験はもちろん、意思ややる気も重要です。

併せて、どのような方法で引き継ぐのかという点も検討しましょう。誰が後継者になるかによって、選べる引き継ぎ方の種類が異なります。

親族であれば、贈与や相続で引き継ぐのが一般的です。従業員や第三者が後継者なら、株式や事業の売却で事業承継を実施するケースが多いでしょう。

引き継ぎ方によって、負担する税額が大きく変わる可能性もあるため、メリット・デメリットをよく比較して選びましょう

参考:会社の跡継ぎは誰が最適?後継者候補の選び方と育成方法

5-3.事業承継計画書と事業承継計画表の作成

現状把握や決定した後継者・引き継ぎ方法は、書面に落とし込みます。事業計画書を作成する際には、現状把握により洗い出した内容に加え、周囲の反発や資金面で考えられる問題なども記載しておきましょう。

すべき項目がはっきりしたら、事業承継の完了に向け、事業承継計画表を作成します。時系列で具体的に計画を記載することで、計画を実行に移しやすくなるでしょう

6.事業承継計画は後継者に引き継ぐ上での指針

6.事業承継計画は後継者に引き継ぐ上での指針

会社を後継者に引き継ぐには、株式や事業用資産に加え、経営理念やノウハウなどの後継者教育も必要です。加えて、スムーズな引き継ぎのハードルになる課題を取り除く必要もあります。

さまざまな分野において対策すべき項目が多々あり、すべてを解決するには数年単位の時間がかかるでしょう。

効率的に実施するには、事業承継計画の策定や、事業承継計画書・事業承継計画表の作成が有効です。事業承継に必要な準備を漏れなく実施できます。

また後継者に株式や資産を移転する際には、贈与税や相続税・法人税などの税金が関わります。事業承継に詳しい税理士に相談すれば、承継方法ごとの税額の目安も盛り込んだ計画を立てられるでしょう

税理士法人チェスターでは、相続事業承継コンサルティング部の実務経験豊富な専任税理士が、お客様にとって最適な方法をご提案いたします。

事業承継コンサルティングなら税理士法人チェスター

事業承継に関する基礎知識を解説している以下も、ぜひご覧ください。
事業承継とは|経営者が知っておきたい事業承継の基礎知識 |税理士法人チェスター

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