事業承継・引継ぎ補助金とは?種類や要件、活用方法、注意点など

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事業承継・引継ぎ補助金は、経営革新や専門家活用に使える補助金を交付する国の制度です。ただし利用するには要件を満たす必要があります。自社が対象となるかチェックした上で、制度の利用を検討しましょう。制度の概要や手続きの手順を確認します。

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1.事業承継・引継ぎ補助金の制度を知ろう

1.事業承継・引継ぎ補助金の制度を知ろう

『事業承継・引継ぎ補助金』を詳しく理解するために、まずは制度の概要を見ていきましょう。どのような目的で、何に使える補助金を受け取れるのでしょうか?

1-1.中小企業の存続をサポートする制度

少子高齢化の影響は、中小企業の存続にも影響を与えています。後継者がいないまま経営者が高齢になってしまい、休廃業するケースも増加中です。

このままでは伝統的な技術が失われたり、地域の雇用が守られなくなったりする事態も起こり得ます。そのような状況を回避するために作られたのが事業承継・引継ぎ補助金です。

事業承継や経営資源の引継ぎにかかる費用を補助することで、費用負担を軽減し中小企業の存続をサポートします

令和2年度 第3次補正予算 事業承継・引継ぎ補助金
令和3年度 当初予算 事業承継・引継ぎ補助金

1-2.申請すれば必ず採択されるわけではない

補助金は採択件数や金額が決まっているケースがほとんどです。事業承継・引継ぎ補助金も同様です。申請したからといって、必ず補助金を受け取れるわけではありません

実際に2021年の事業承継・引継ぎ補助金では、申請件数が採択件数を上回っており、下記の通り交付が決定されています。

経営革新 専門家活用
申請件数 採択件数 申請件数 採択件数
一次公募 335 167 412 346
二次公募 375 187 420 330

1-3.補助金の対象となる費用は?

補助金を使える費用は、事業承継・引継ぎ補助金の『経営革新』『専門家活用』で、それぞれ定められています。経営革新では事業に必要と確認できる費用が対象です。

加えて補助事業期間内に契約や発注を行い支払った経費であり、補助期間終了後の実績報告で金額や支払いが確認できなければいけません。具体的には人件費・設備費・委託費などが対象です。

専門家活用では委託費・保険料・旅費などへの使用が可能です。加えてM&Aの契約書に盛り込む『表明保証条項』に関する、損害賠償を保障する保険契約の保険料も補助金でまかなえます。

2.「経営革新」「専門家活用」の2種類がある

2.「経営革新」「専門家活用」の2種類がある

事業承継・引継ぎ補助金には、先述した経営革新と専門家活用の2種類あります。それぞれどのような目的で補助金を使えるのか確認しましょう。

2-1.事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)

経営革新は、事業承継やM&Aをきっかけに『新商品の開発』『顧客の開拓』『新規事業への挑戦』などをしたい中小企業や小規模事業者が対象です。『経営者交代型』『M&A型』に分けられます。

受けられる補助金額は下記の通りです。

  • 補助率:2/3
  • 補助上限:400万~800万円
  • 上乗せ額:200万円

補助金額に定められている『上乗せ額』は、事業転換によって廃業登記費や在庫処分費などが発生したときに認められる補助金です。上乗せ額のみの申請はできません。

2-1-1.対象者は?

補助金の対象は下記の要件を満たしている中小企業です。

  • 日本国内に拠点や居住地があり、日本国内で事業を展開している
  • 雇用維持や特産品など地域経済を支えている
  • 反社会勢力との関わりがない
  • 法令を遵守している
  • 事務局からの質問や追加資料の提出依頼に適切に対応する
  • 事務局が必要と認めるときは承認や結果通知に修正を加えて通知する
  • 補助金返金の事由が発生したとき各種費用は事務局が負担しないことに同意する
  • 経済産業省から補助金指定停止措置・指名停止措置が取られていない
  • 対象事業の情報は統計処理の上公表される場合があることに同意する
  • 事務局が求める補助事業の調査やアンケートに協力できる

また経営者の交代や事業再編などにより、承継者が実施する経営革新の取り組みが対象です。例えば新商品や新サービスの開発・新たな生産方式や販売方式の導入・新規事業への進出が挙げられます。

2-2.事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)

M&Aを利用した事業承継や経営資源の引継ぎをサポートするのが専門家活用です。例えば、M&A業者への手数料やデューデリジェンスにかかる費用などが補助されます。補助金の金額は下記の通りです。

  • 補助率:2/3
  • 補助上限:400万円
  • 上乗せ額:200万円

事業承継をM&Aで実施する場合、買い手と売り手がいます。そのため専門家活用は『買い手支援型』と『売り手支援型』の2種類です。一つの取引の買い手・売り手がともに申し込むこともできます。

M&Aの実施を検討している・M&Aの成約に向けて取り組んでいる、という企業向きです。

2-2-1.対象者は?

補助金の対象となる中小企業は10の要件を満たしていなければいけません。10の要件のうち9番目までは経営革新の要件と同じです。

内容が異なる10番目は、FAやM&A仲介費用を補助対象経費とする際の決まりです。費用を補助対象経費にするには、『M&A支援機関登録制度』に登録された業者を利用しなければいけません

加えて業者によりM&A支援機関登録制度事務局へ実績報告が行われることへの同意も必要です。中小企業者の定義も確認しておきましょう。この定義は経営革新と同じです。

業種 資本金または出資の総額 常勤従業員数
製造業その他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下

3.事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)の種類

3.事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)の種類

経営革新と専門家活用は、それぞれさらに二つに分けられます。経営革新に関しては『経営者交代型』『M&A型』の2種類です。それぞれの特徴を見ていきましょう。

3-1.経営者交代型

事業承継を行う中小企業で以下の三つの要件を満たしていると、経営者交代型の対象です。

  • 事業承継を活用し経営革新に取り組む
  • 地域経済全般を先導する事業の創業をきっかけに、引継いだ資源を生かし経営革新に取り組む
  • 産業競争力強化法に基づく認定市区町村もしくは認定連携創業支援事業者により、特定創業支援事業を受け一定の知識を持っている

特定創業支援事業を受けると『特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明書』が交付されます。証明書交付の条件は自治体によって異なります。

例えば、産業振興課主催のセミナーへの参加・アドバイザーの支援などにより創業計画書を作成すると、交付されるケースが多いようです。

3-2.M&A型

M&A型は事業再編や事業統合などを実施する中小企業が対象で、三つの要件を満たす必要があります。経営者交代型と異なるのは、一つ目の事業再編・事業統合の実施をきっかけに経営革新に取り組む、という点のみです。

事業承継がM&A型の対象になるかは、引継ぎ実施の時期と関係します。『補助対象事業期間完了日』か『2021年12月31日』のどちらか早い日までに行われる事業承継でなければいけません。

期間内に引継ぎが行われないケースは対象外です。また親族内承継に該当すると事務局が判断する取引に対しても、補助金はおりません。

株式譲渡で事業承継を実施するときには、買い手が株式の過半数を取得することも補助対象となる要件です。

4.事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の種類

4.事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の種類

専門家活用も『買い手支援型』と『売り手支援型』の二つに分かれます。事業承継で企業を譲る側も譲られる側も利用できる補助金です。

4-1.買い手支援型

買い手支援型を利用できるのは、事業再編や事業統合などで経営資源を引継ぐ中小企業です。承継後に、地域経済をリードする事業やシナジー効果を生かした経営革新を実施する見込みのときに利用できます。

M&Aによって事業再編や事業統合を行い、それぞれの企業が別個に取り組むよりも大きな価値を生み出すのがシナジー効果です。

例えば製造業を営む企業が小売業を営む企業と合併すれば、自社製品の販売経路を確保できます。ユーザーの声が近くなることで、より多くの人が求める商品開発も期待できます。

4-2.売り手支援型

売り手支援型でサポートするのは、事業再編や事業統合で経営資源を譲り渡す企業です。経営資源を他社へ承継してもらうことで、これまで担っていた地域経済を牽引する事業の継続が見込まれる場合に対象となります。

中小企業の後継者不足は、社会情勢の変化により大きな課題になっているのが現状です。これまでのような親族内承継や従業員への承継では、対応しきれない企業もあるでしょう。

補助金を活用しM&Aを行い、事業の継続を実施する中小企業が増えています。

5.事業承継・引継ぎ補助金を受け取るには

5.事業承継・引継ぎ補助金を受け取るには

補助金を受け取り事業承継を実施するなら、早めの準備が欠かせません。スムーズに手続きを進め補助金を受け取れるよう、手順を確認しましょう。

5-1.対象の支援機関を探す

経営革新やM&Aを実施するときには、仲介業者といった支援機関のサポートを受けます。ただしどの業者でも補助金の対象になるわけではありません。そこでまずは対象の支援機関を探しましょう。

中小企業庁が公表している一覧を確認すれば、経営革新の対象となる『認定経営革新等支援機関』を調べられます。支援機関を選んだら、事業計画について相談しましょう。相談後に支援機関から『確認書』を受け取ります。

専門家活用でも基本の流れは変わりません。支援機関の検索には『登録機関データベース』を利用すると便利です。

経営革新等支援機関認定一覧について|中小企業庁
M&A支援機関登録制度 登録機関データベース |中小企業庁

5-2.電子申請の方法

事業承継・引継ぎ補助金を利用するには電子申請を用います。経営革新の申請手順は下記の通りです。

  1. gBizIDプライムアカウントの取得
  2. Webサイトから認定経営革新等支援機関による確認書をダウンロード
  3. 認定経営革新等支援機関から本補助金にかかる確認書を取得する
  4. 申請に必要な書類の準備
  5. オンライン申請フォームに必要事項を記入
  6. 『必要書類チェックリスト』で申請様式や必要書類が正しくそろっているか確認
  7. オンライン申請フォームへ必要書類を添付
  8. 申請処理を行い申請状況を確認

専門家活用の申請手順も確認しましょう。

  1. gBizIDプライムアカウントの取得
  2. 必要書類の準備
  3. オンライン申請フォームに必要事項を記入
  4. 『必要書類チェックリスト』で申請様式や必要書類が正しくそろっているか確認
  5. オンライン申請フォームへ必要書類を添付
  6. 申請処理を行い申請状況を確認

5-3.補助金交付請求には実績報告が必須

申請し採択されたからといって、すぐに補助金を受け取れるわけではありません。事業承継の実施に関する『実績報告』が必要です。

補助対象事業が完了してから速やかに報告するのが原則です。実績報告書はオンライン申請フォームを使い提出します。このとき実績報告類型番号に注意しましょう。申請類型ごとに番号が異なります。

経営革新では補助金の交付後にも『状況報告』をしなければいけません。補助事業完了から5年間は、事業化状況報告と収益状況報告を行います。

6.事業承継・引継ぎ補助金の注意点

6.事業承継・引継ぎ補助金の注意点

事業承継を後押しする補助金を受け取れる事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業の存続に役立つ制度です。しかし利用には手間がかかる部分もあります。あらかじめ注意点を見ておくと、申請時も補助金交付後も安心して手続きが可能です。

6-1.スケジュールに余裕を持とう

事業承継・引継ぎ補助金は、申請できる期間を始めスケジュールが決まっています。手続きを滞りなく実施できるよう、時間に余裕を持って進めておくと安心です。

『認定経営革新等支援機関による確認書』や『必要書類チェックリスト』などの資料を、あらかじめ公式ホームページからダウンロードしておくとスムーズです。

また申請に必要な『gBizIDプライムアカウント』は、発行されるまでに2週間ほどかかります。ぎりぎりに作ると申請期限に間に合わないかもしれません。早めにとりかかっておきましょう。

6-2.細かい要件を確認しよう

紹介した要件のほかにも、細かな要件があります。例えば『相見積』に関するものです。補助金の利用時には、価格が妥当であると明らかになっていなければいけません。そのためには2社以上の相見積が必要です

ただし中には相見積ができないケースもあるでしょう。以下に当てはまるようであれば、相見積はなくても構いません。

  • 選定した支援機関のほか2社以上に見積を依頼したが、作成できないと断られた場合
  • 専門家費用がレーマン方式で計算された金額以下だった場合
  • 成功報酬のみのM&Aマッチングサイトを利用し、成功報酬を申請する場合
  • FAやM&A仲介業者と専任条項のある委任契約を結び、補助事業期間中に締結した基本合意もしくは最終契約に基づく中間報酬・成功報酬を申請する場合

6-3.補助金は法人税の対象となる

受け取った補助金は経理処理が必要です。交付された事業年度の『収益』として計上しましょう。計上するのは、支給決定通知書が届き権利が確定したタイミングです。

法人税法で補助金は特別何も定められていません。ただし資本取引に該当する増資にはあたらないため、収益と考え処理します。収益であれば当然法人税の課税対象です

7.余裕を持って申請し、補助金を役立てよう

7.余裕を持って申請し、補助金を役立てよう

事業承継・引継ぎ補助金は中小企業の存続を助ける制度です。後継者問題によりやむなく廃業せざるを得ない事態でも、補助金を活用し事業承継すれば、事業を継続できるかもしれません

本年度の補助金申請公募期間はすでに終了しています。検討中の場合は、次年度に向けてスケジュールに余裕を持って準備しましょう。ぎりぎりでは申請期限に間に合わない可能性も出てきます。

細かな要件のチェックも欠かせません。加えて事業承継を実施する際には、デューデリジェンスが必要なケースもあるでしょう。自社の税務状況を正しく把握するには『税理士法人チェスター』に相談すると役立ちます。

相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】

事業承継に活用できる『補助金』については、下記もご覧ください。

事業承継M&Aのメリット・デメリットと活用できる補助金を解説|相続大辞典|相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】

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