相続税申告の相談を税務署にしても大丈夫? 自分で申告するときに役立つ税務署の活用法

タグ:
相続税申告の相談を税務署にしても大丈夫? 自分で申告するときに役立つ税務署の活用法

税理士に依頼しないで自分で相続税を申告したい場合は、税務署での相談が役に立ちます。税務署での相談は無料ででき、自分で調べたうえで質問したいことがある場合に効果的です。

相続税の申告をする人の9割は税理士に依頼しているといわれていますが、税理士に依頼するには報酬が必要です。遺産の額がそれほど多くない場合や、特例を使って税額を0にするために申告する場合では、相続税の額よりも税理士報酬の方が高くなることもあります。そのような場合では、税理士に依頼しないで何とか自分だけで申告できないだろうかといったニーズも少なくありません。

この記事では、自分で相続税を申告するときに役立つ税務署の活用法をご紹介します。あわせて、相続税の申告を税理士に依頼するメリットもご紹介します。税務署に相談して自分で申告するか税理士に依頼するか、比較検討するときの参考にしてください。

そもそも「相続税」についてよく分からないという方は「【相続税のキホン】基礎控除・計算方法・税率・非課税枠を徹底解説」も参考にしてみて下さい。

1.相続税申告は税務署でも相談できる

税務署では、正しく申告・納税してもらうために納税者からの相談に応じています。電話相談のほか、税務署で職員と面談することもできます。申告書の作成を税理士に依頼する場合とは異なり、税務署では無料で相談ができます。ただし、対応は平日の日中に限られ、相談するにはある程度の予備知識も必要です。

1-1.税務署に相談するための準備

相続税の申告について税務署に相談する場合は、相続の事実関係を整理して相続税の仕組みを理解するなど、事前に準備をしておきましょう。

事実関係を整理しておく

税務署に相談する前に相続の事実関係を整理しておきましょう。税務署の職員は相談者の家庭の事情を知っているわけではありません。初対面の職員でも事実関係がすぐわかるように、次のような点についてまとめておくとよいでしょう。

  • 誰が亡くなったか
  • 相続人の人数と続柄
  • どのような遺産がどれぐらいあるか

相続税の仕組みを理解しておく

相続税の仕組みを理解しておくことも大切です。知識が全くない状態で相談すると、相続税の仕組みの説明を受けるだけで時間を費やすことになってしまいます。

例を一つあげると、相続税には基礎控除額があって、遺産総額が3,600万円以下(相続人が1人の場合)であれば申告の必要はありません。このことを知っているだけで、たとえば遺産総額が2,000万円の人なら申告の必要はなく、わざわざ税務署に相談しなくてもよいことがわかります。

このほか、次のようなことについても知っておくとよいでしょう。

  • 相続税はどのような遺産に課税されるか
  • 遺産の価値はどのように評価するか
  • 税額はどのように計算するか

相続税の仕組みを理解するためには、当サイトの「相続税申告書の書き方・必要書類・期限や流れ【初心者必見】」を参考にしてください。より詳しい説明は、「【相続税のキホン】基礎控除・計算方法・税率・非課税枠を徹底解説」をご覧ください。

1-2.電話による相談

相続税の仕組みや申告手続きについての質問など電話でのやり取りで済む簡単な内容であれば、税務署に電話して相談することができます。最寄りの税務署の電話番号は、国税庁ホームページの「税についての相談窓口」で確認できます。

税務署に電話すると自動音声が流れます。下の図で示すとおり、用件に応じて番号を選択します。

税についての電話相談_国税庁

(出典:国税庁ホームページ

相続税について相談したい場合は、次の手順で番号を選択します。

  1. はじめに「税金に関する一般的なご質問やご相談」として「1」を選択します。
  2. 次に「譲渡所得、相続税、贈与税、財産評価」として「3」を選択します。

電話は国税局の「電話相談センター」に転送され、相続税に詳しい専門の職員が対応にあたります。

「電話相談センター」では相続税についての一般的な質問には答えてもらえますが、個別の事例に沿った相談については明確な回答がもらえない場合が大半です。個別の事例に沿った相談は電話だけでは解決しづらいため、税務署に出向いて相談することをおすすめします。

1-3.税務署に出向いて相談

個別の事例に沿った相談をしたい場合や、申告書や根拠資料などの提出書類を職員に見てもらいたい場合は、税務署に出向いて相談することができます。

税務署での相談には電話予約が必要です。最寄りの税務署に電話すると自動音声が流れます。「税務署にご用の方」として「2」を選択すれば、職員を呼び出すことができます。予約の段階で、相談したい内容を簡潔に伝えておくとよいでしょう。

なお、所得税の確定申告の時期(1月~3月ごろ)はどこの税務署も混雑して、相談の予約が取りにくくなります。申告期限が翌年であっても、混雑を避けて年内に相談することをおすすめします。

1-4.税務署で相談することのデメリット

税務署での相談は無料で手軽にできる反面、デメリットもあります。ここでは、税務署で相談することのデメリットを2つご紹介します。

節税アドバイスは望めない

税務署での相談では、相続税の節税に関するアドバイスは期待できません。税務署が納税者の相談に応じるのは、あくまでも納税者に正しく税金を納めてもらうことを目的にしているからです。

回答が間違っていても責任はとってもらえない

税務署での相談では、相談者が職員の知識や経験を前もって知ることはできません。新人の税務職員が担当することも多く、仮に職員の回答した内容が間違っていたとしても責任はとってもらえません。

2.税理士に依頼することにもメリットがある

ここまでご紹介したように、税理士に依頼しないで何とか自分だけで申告したいときには、税務署での相談が役に立ちます。ただし、節税対策については十分な回答は期待できません。職員の知識や経験もまちまちで、間違った回答をされることもないとはいえません。

税務署での相談では物足りない場合は、報酬を払ってでも税理士に相続税申告を依頼するほうがよいでしょう。

2-1.税理士に相続税申告を依頼するメリット

税理士に相続税申告を依頼すると、指示に従って書類を集めるだけで申告書が作成されます。税理士は依頼者に代わって必要書類を取り寄せることもできるため、書類集めからのサポートも可能です。また、税務署では聞けない節税対策に関するアドバイスを受けることもできます。

2-2.相続税申告を依頼する税理士の選び方

相続税の申告を依頼するのは税理士であれば誰でもよいわけではありません。税理士の多くは所得税や法人税の申告を主な業務としていて、相続税申告には不慣れです。相続税は遺産の価値を自分で計算する点で特殊な税金であり、申告には高い専門性が求められます。

相続税の申告は相続税を専門にしている税理士に依頼することをおすすめします。相続税専門の税理士は豊富な実績をもとに個々の事情に見合った適切な申告ができます。相続税専門の税理士を選ぶには、下記の記事を参考にしてください。

相続税申告を依頼する良い税理士の選び方徹底ガイド
相続税申告の税理士報酬・相場の実態と税理士選びのポイント

なお、年間2,373件以上の相続税申告を行う相続税専門の税理士法人チェスターでは、相続税申告が必要な方を対象とした個別無料相談会を全国14拠点で実施しています。
このような相談会に参加し、実際にご自身の目で信頼できるか確かめることも一つの方法です。

>>税理士法人チェスターの無料相談会に申し込む

3.相続税と税務署についてのQ&A

最後に、相続税と税務署についてよくある質問をご紹介します。相続税の申告の準備を進めているときに、税務署からのお尋ねが届くこともありますが、脱税や不正が疑われているわけではないので落ち着いて対応しましょう。

3-1.相談に行く税務署はどこでもいいですか?

Q:相続税の申告は亡くなった被相続人の住所の税務署で行うとのことですが、申告書の書き方について相談したい場合でも被相続人の住所の税務署に問い合わせなければならないのでしょうか。
亡くなった父は九州に住んでいましたが、私は東京都に住んでいます。できれば都内の税務署で相談したいのですが可能でしょうか。

A:相続税の申告書を提出する税務署は、被相続人の住所を管轄する税務署と定められています。しかし、相続税の申告について相談する場合はどこの税務署でも構いません。自宅や職場の近くの税務署で相談することができます。

ただし、土地の評価について相談したい場合は、土地がある場所の税務署で相談することをおすすめします。管轄の税務署は「管轄税務署を検索」から調べることができます。

税務署検索ページ

3-2.なぜ税務署からのお尋ねが届くのでしょうか?

Q:先日、税務署から「相続税についてのお尋ね」という封筒が届きました。中には「相続税の申告要否検討表」や「相続税の確定申告書」が入っています。
相続があったことは税務署には連絡していないのですが、なぜ税務署からのお尋ねが届くのでしょうか。また、税務署からのお尋ねには回答しなければならないのでしょうか。

A:「相続税についてのお尋ね」の通知が送られてくる時期は、相続があってから6~8か月を過ぎた頃です。突然、税務署からのお尋ねが届くと不安になりますが、過度に心配する必要はありません。

市区町村役場に死亡届を提出すると、相続税法の規定によって税務署に通知されることになっています。通知を受けた税務署は、亡くなった人について財産がどれぐらいあるかを調べます。その結果、一定以上の財産があって相続税を納める義務があると見込まれる場合は、相続人に「相続税についてのお尋ね」が送られます。

税務署からのお尋ねが届いた場合は、できるだけ早く回答することをおすすめします。すでに相続税を計算して相続税が0になった場合でも、相続税がかからないことを証明するために回答しましょう。

ただし、すでに申告の準備をしている場合は回答の義務はありません。そのまま準備を進めて、相続の発生から10か月以内に申告すれば問題はありません。

◆税務署からのお尋ねが届いた場合の対応については、下記の記事を参考にしてください。

「相続税についてのお尋ね」が税務署から届いたときの対応方法を税理士が解説 ››
「相続税の申告要否検討表」が税務署から届いたときの書き方・対応方法を徹底解説 ››

◆以下の記事もよく読まれています。
相続税対策にはならない!「タンス預金」はなぜ税務署にバレるのか?! ››

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

【面談予約受付時間】
9時~20時(土日祝も対応可)