金融業界でM&Aが行われる目的とは?最新のニーズを解説

タグ: ,

金融業界においてM&Aが活発化しています。どのような背景があり、金融業界のM&Aは盛んに行われるようになったのでしょうか?金融業界の現状やITとの関連から、金融業界のM&Aを見ていきましょう。実際に行われたM&Aの事例も紹介します。

1. 金融業界とは

1. 金融業界とは

近年活発に行われている金融業界のM&Aについて理解するために、まずは金融業界について確認しましょう。金融業界のビジネスモデルや、金融業界に属する業種も見ていきます。

1-1. 金銭の融通に関する事業を行う業界

金融とは、金銭を融通することを表す言葉です。つまり、金融業界はお金を扱うことで経済を支える役割を担っているといえます。例えば銀行であれば、以下のような業務を行い、企業や個人の経済活動を支えるのが役割です。

  • 預金業務:預かった金銭の管理
  • 貸付業務:資金の貸出
  • 為替業務:振込・決済・口座振替など金銭の移動

銀行はこれらの業務から『利ざや』や『手数料』を受け取ります。これが金融業界の基本的なビジネスモデルです。

1-2. 金融業界に属する業種と特徴

金融業界に属する業種は、銀行以外にもあります。それぞれどのような特徴があるのか確認しましょう。

  • 銀行:預かった金銭を貸し出すことで利ざやを得る
  • 証券会社:金融商品の購入を仲介し仲介手数料を得る、株式の運用で利益を得る
  • 保険会社:加入者の保険料とその運用で利益を得る
  • クレジットカード会社:利用者・加盟店双方から利益を得る
  • 信販会社:クレジットカードやローンなど信用取引で利益を得る
  • 不動産金融:土地や建物を担保に資金を貸し出し利益を得る、不動産を証券化し運用して利益を得る
  • リース会社:自社で調達した商品を貸し出し利益を得る
  • アセットマネジメント:投資信託と投資顧問の2種類、資産の管理運用で手数料や運用益を得る

2. 金融業界の現状と課題

2. 金融業界の現状と課題

日銀の金融政策によってマイナス金利が続いている影響で、金融業界の中でも特に銀行の収益が悪化しています。そのような状況へ対応するため、業務効率化やコスト削減のためのデジタル化が課題です。

2-1. マイナス金利による収益悪化

銀行から資金を借り入れるときに金利が極めて低いのは、日銀によってマイナス金利政策が実施されていることと関係しています。銀行は企業や個人から預かったお金を日銀へ預金します。

預金をすれば通常は利息が付きますが、マイナス金利政策が実施されている場合には、反対に利息を支払わなければいけません。その結果、銀行の収益は悪化しています

銀行は収益を改善するため、企業や個人への貸付を増やし利息を得ようとします。しかし収益が回復するには至っていません。その影響が、手数料の値上げや通帳発行の有料化といった形で現れています。

2-2. DX活用による業務効率化が急務

収益が悪化している中、注目されているのが『DX活用』です。かつて銀行はいち早く最新のシステムを導入しました。しかしその時期に導入したシステムは既に古くなっており、現在のシステムに対応できません。

古いシステムが現役で稼働しているため、最新システムの導入ができず、広く活用されているクラウドも取り入れられていない銀行ばかりです。

メガバンクを中心にDX活用は進みつつあります。ただし銀行のシステム更改は5~10年という長いスパンで実施されるケースが多く、なかなか見直せない中小規模の銀行も少なくありません

顧客や株主はもちろん、行員からも、デジタル化を求める声が多く上がっており、早急なDX活用が望まれています。

3. ITが金融業界に与える影響

3. ITが金融業界に与える影響

金融業界の中でも特に銀行は、早期のDX化が必要な状況と分かりました。一方、時々刻々と進化するITは、金融と融合し『フィンテック』や『エンベデッドファイナンス』が広まっています。これにより、金融業界はどのような影響を受けるのでしょうか?

3-1. フィンテックの普及

フィンテック(Fin Tech)は金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた言葉です。金融と情報技術を結びつけて開発される、あらゆる革新的なサービスや事業領域を意味します。

例えばスマホを使った『キャッシュレス決済』や『送金サービス』、AIで投資や資産運用に役立つ分析を行う『ロボ・アドバイザー』などが、フィンテックに分類されるサービスです。既に多くの人が身近なサービスとして利用しています。

またフィンテックは企業の業務効率化にも有効です。新しい金融システムを低コストで導入でき、生産性向上や人材不足の解消にもつながるでしょう。

3-2. デジタル活用によるリテールの強化

ITが社会に広く普及した結果、金融機関でも個人や中小企業など、小口客を扱うリテールのデジタル化が重要になっています。ただし、単にデジタル化すればよいわけではありません。

デジタル化とともに差別化も重要です。例えば実店舗で個別具体的な相談をした後、スマホアプリや公式サイトなどデジタルチャネルから申し込みできる流れを作れれば、顧客の手間を減らせます

金融機関の中には、地域の店舗網を持っているケースもあるでしょう。つながりを生かせば、金融機関から店舗へ送客する仕組み作りが可能です。アピール次第で地域活性化につながる取り組みになるでしょう。

加えて、使いやすいアプリやサイト作りも重要です。デジタルネイティブ世代(20~30代)はもちろん、高齢者にも利用しやすい設計が求められます。

3-3. エンベデッドファイナンスの拡大

金融業者以外が金融事業へ参入するのが『エンベデッドファイナンス』です。世界を代表する大企業が、自社サービスと金融をつなぎ、より便利に決済できる仕組みを整えています

エンベデッドファイナンスは急速に広がっており、IT関連企業だけでなく小売業を営む企業も続々と参入している状況です。そのため、金融サービスを提供できる企業の買収が頻繁に行われています。

4. 金融業界がM&Aを行う理由

4. 金融業界がM&Aを行う理由

一般に広まっているフィンテックは、金融業界にとって効果的な買収対象です。フィンテック企業の持つ技術を取り込めば、スピーディーな収益改善やサービス創出が実現するでしょう。また海外進出を目的としたM&Aも実施されています。

4-1. 財務基盤を強化し収益を改善するため

日銀のマイナス金利政策によって、銀行は収益が低下しています。経営体力は改善しつつありますが、引き続き改善が必要です。

加えて1990年代後半から2001年に行われた大規模な規制緩和によって、銀行同士の合併・グループ再編・異業種への参入などが実施しやすくなりました。

その結果として活発化しているのが、財務基盤の強化を目的としたM&Aです。規模の拡大やコスト削減のために銀行同士のM&Aが進み、業界再編が行われています

またさらなる利益率向上を目指し、フィンテック企業の技術を取得する目的でのM&Aも増えています。

4-2. 最新技術による新たなサービス創出のため

フィンテックの発展は目覚ましいものがあります。そこで金融業界では、最新技術を取り入れ競争力を高めるために、フィンテック企業の買収を行うケースが増加中です

銀行が何もないところからフィンテック事業を始めるには、膨大な資金と人材を用意しなければいけません。やっと開発できた頃には、既に新しい技術が登場し陳腐化している可能性もあります。

一方、既に技術を持っている企業を買収すれば、今すぐフィンテックを活用したサービスの提供が可能です。事業に必要な技術や人材も既にそろっているため、効率的に利益率向上を目指せる方法として行われています。

4-3. 海外進出を実現するため

銀行によるM&Aは国内にとどまらず、海外企業を買収する事例が増えています。海外に拠点があれば、さまざまな取引を世界規模で実施できるからです。

世界規模の取引が可能となれば、事業のスケールをこれまで以上に大きく拡大できます。また買収によって、海外企業の拠点がある地域の経済発展にも貢献できるでしょう。

5. 金融業界のM&Aの事例

5. 金融業界のM&Aの事例

金融業界ではM&Aが活発に行われていると分かりました。では、具体的にどのような事例があるのでしょうか?三つの具体的なケースを見ていきましょう。

5-1. きらぼし銀行がビー・ブレーブを子会社化

きらぼし銀行を含む子会社を持つ東京きらぼしフィナンシャルグループは、プラットフォーム機能の強化を中期経営計画に掲げています。その実現に向けて行ったのが、ビー・ブレーブの子会社化です。

広告業を営んでいるビー・ブレーブの、広告企画制作やブランディング構築などのノウハウを取り込み、内製化を実現しています。このM&Aにより、きらぼし銀行は広告宣伝やプロモーションの分野でも、顧客の課題を解決できるようになりました

5-2. コインチェックがメタップスアルファを子会社化

暗号資産とは、データの改ざんが困難なブロックチェーンの技術を用い、インターネット上でやり取りされるデジタル資産です。コインチェックはこの暗号資産の交換業を営んでいます。

一方メタップスアルファは、NFTマーケットプレイス『miime』を展開する会社です。偽造できないデジタルデータであるNFTを扱うマーケットプレイスは、コインチェックでも開発しています。

しかしコインチェックが開発しているのはオフチェーンといい、ブロックチェーンに記録されない仕組みです。オフチェーンは処理遅延が指摘されています。

そのためコインチェックは、ブロックチェーン上に記録されるオンチェーンのマーケットプレイスを提供したいと考え、メタップスアルファを子会社化しました

5-3. 三菱UFJ 銀行がBusinessTechを子会社化

三菱UFJは金融とDXでビジネスを支援することを目指し、BusinessTechはDXを推進する企業の問題解決を行うプラットフォーム『ビジクル』を運営しています。両社のビジョンやミッションに共通点が多いことから、M&Aを実施しました。

ビジョンやミッションの達成に向け協力し合うことで、大規模な課題解決型プラットフォームを構築し、より大きな規模でDX支援や地域創生などの課題の解決を目指しています

6. 金融業界のM&Aニーズは高い

6. 金融業界のM&Aニーズは高い

財務基盤の強化を目指す金融業界では、M&Aが活発に行われています。金融機関同士のM&Aはもちろん、フィンテック企業を買収するケースも多いでしょう。

技術を素早く取得し、新しいサービスを提供する目的があります。そのため買収対象となる領域の技術を持っている企業にとっては、売り時といってもよいでしょう。

計画的に売却を進めるなら、まずは自社の財務や税務の状況をはっきりさせた上で、売却時にどのくらいの税負担が発生するか把握しておくのがおすすめです。

税理士法人チェスターでは相続事業承継コンサルティング部の実務経験豊富な専任税理士が、お客様にとって最適な方法をご提案いたします。

事業承継コンサルティングなら税理士法人チェスター

その他の業界別×M&Aについては下記記事もご覧ください。

▼ホテル業界におけるM&Aのメリットは?近…

▼キャンプ場の経営を跡継ぎに任せたい!跡継ぎを探す三…

▼介護業界のM&Aの動向と特徴。売却の方法…

▼居酒屋・飲食業界の動向とM&Aのメリット…

▼建設業がM&Aを行うメリットは?成功のポ…

▼出版社はM&Aで活路を見出せる?可能性と…

▼保育園のM&Aは可能?用いるスキームや手…

▼クリニックの後継者不足は事業承継で解決。使用できる…

▼製造業のM&Aを成功させるポイントは?事…

▼医療法人のM&Aの特徴。手法の選び方、税…

▼飲食店がM&Aで事業承継する方法。閉店コ…

▼M&Aで調剤薬局の事業承継は可能?今後の…


事業承継・M&Aを検討の企業オーナー様は

事業承継やM&Aを検討されている場合は事業承継専門のプロの税理士にご相談されることをお勧め致します。

【お勧めな理由①】
公平中立な立場でオーナー様にとって最良な方法をご提案致します。
特定の商品へ誘導するようなことが無いため、安心してご相談頂けます。

【お勧めな理由②】
相続・事業承継専門のコンサルタントがオーナー様専用のフルオーダーメイドで事業対策プランをご提供します。税理士法人チェスターは創業より資産税専門の税理士事務所として活動をしており、資産税の知識や経験値、ノウハウは日本トップクラスと自負しております。

その実力が確かなのかご判断頂くためにも無料の初回面談でぜひ実感してください。
全国対応可能です。どのエリアの企業オーナー様も全力で最良なご提案をさせていただきます。

詳しくは事業承継対策のサービスページをご覧頂き、お気軽にお問い合わせください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

【面談予約受付時間】
9時~20時(土日祝も対応可)