ネット銀行の遺産相続事情-通帳が無い銀行の調査方法と口座凍結を解除する方法
タグ: #相続手続き親族などの被相続人が死亡した場合、すぐにメールなどの連絡履歴や、登録時に発行された口座登録情報が紙面で残されていないか確認しましょう。
手数料の安さや金利が比較的高いなどの理由でネット銀行を利用する人が増加するとともに、被相続人から口座残高を相続できない事例が増えています。
ネット銀行は通帳やキャッシュカードが発行されないこともしばしばあり、相続が発生したときに口座を発見できないのです。
実は口座を調査する方法さえ知っていれば、口座発見漏れ防止や、凍結口座解消が可能になります。
目次 [閉じる]
1.ネット銀行の相続漏れリスクを回避する口座調査方法
ネット銀行に口座があるかどうかわからない場合でも、口座を発見し、相続漏れを防ぐ調査方法が3つあります。
口座があることを聞いておらず、遺言書やエンディングノートもなければ、ネット銀行口座があったかどうかわかりません。ネット銀行口座があると聞いていても、銀行名がわからなければ、相続の手続きはできないことになります。そんな場合でも、調査はできます。
ネット銀行口座をきちんと調査し、相続漏れを防ぎましょう。
1-1.ネット銀行から届いていた郵便物や取引明細書がないか探す
ネット銀行から届いていた郵便物や取引明細書が見つかれば、銀行名や口座を特定できます。口座番号が不明でも、銀行名がわかれば、銀行に問い合わせた上で、相続手続きを進めることが可能です。
ネット銀行といえども、口座を開設するときや、重要な通知事項がある場合には、郵便物が届くことがあります。通帳はなくとも、キャッシュカードを発行してもらっている場合も。取引などを書いたメモ書きや口座を開設したネット銀行のパンフレットなどがあるかもしれません。
書類ファイルや金庫のようなものに入っていなくとも、タンスや引き出し、押し入れなどに保管している場合もあります。とにかく、家の中をよく探してみることが重要です。
1-2.故人のメールの受信ボックスやパソコンのフォルダーをチェック
故人のスマホやパソコンのメール受信ボックスをチェックし、ネット銀行からのメールがあるか確かめることが大切です。ネット銀行に口座があれば、取引や連絡事項についてのメールが送られてきます。
パソコンのフォルダーに、ネット銀行との取引をまとめていることもありますから、フォルダーのチェックも忘れずに。
スマホのアプリを確かめることも重要です。ネット銀行を利用している場合は、スマホにその銀行のアプリをインストールしていることがあります。どんなアプリを使っていたか調べれば、銀行名が判明するわけです。
ブラウザの「お気に入り」にネット銀行のサイトを登録していることもあります。スマホやパソコンの「お気に入り」も調べてみましょう。
1-3.ネット銀行以外の通帳の取引履歴から手掛かりとなる情報を得る
ネット銀行とは異なる銀行口座の通帳に、ネット銀行口座との取引履歴が記帳されていることがあります。故人が、自分の口座間で相互に送金している場合があるからです。取引履歴が記帳されていれば、ネット銀行名が判明します。銀行の通帳があれば、すべての通帳を記帳し、取引履歴をチェックしましょう。
故人がしばらく記帳していない場合、銀行によっては、ある期間の取引を合計して一括記帳することがあります。そのときは、銀行に、入出金についての明細書を発行してもらいましょう。明細書があれば、ネット銀行口座との間に振込があったかどうかわかります。少し手間がかかりますが、やってみる価値は十分あります。
2.ネット銀行の具体的な相続手続き方法
▲ネット銀行における相続手続きの一般的な流れ
口座調査でネット銀行口座が判明すれば、ネット銀行に連絡し、手続きを進めます。
例として、ジャパンネット銀行の手続きを取り上げると、図のような流れになります。他のネット銀行でもおおむね同じ手続きです。
相続税申告には期限がありますから、早めにネット銀行に連絡して手続きを進めましょう。
以下では、ジャパンネット銀行の例に沿って相続手続きを説明していきます。
2-1.故人が使っていたネット銀行のカスタマーセンターへ連絡する
まず、故人が使っていたネット銀行のカスタマーセンターに連絡します。キャッシュカードがあれば、手元に用意した上で連絡すると、話がスムーズになります。
連絡事項は、次のとおりです。
カスタマーセンターへ伝える事項
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連絡すると、口座が凍結され、取引が停止されます。その後は、銀行の相続手続きが終わるまで、入出金などができません。
後日、銀行に提出するための「死亡届」用紙が送付されます。受け取ったら、内容を確かめて、必要事項を記載しましょう。
なお、口座番号が不明な場合は、銀行側が調査してくれますから、口座番号が不明でも連絡できます。
2-2.被相続人の死亡と相続人がわかる書類を郵送する
銀行からの「死亡届」用紙が届いたら、必要事項を記入します。
その上で、死亡の事実などを確認してもらうために、次の書類を銀行に送ります。
死亡届と一緒に送る書類
注:「法定相続情報一覧図」の写しを提出すれば、戸籍類はすべて不要。「法定相続情報一覧図」の写しは、法務局に必要な戸籍謄本類と相続関係を一覧にした図を提出すれば、無料で交付されます。 |
銀行は、送られた書類で死亡の事実や相続人代表を確かめます。その後、銀行から相続手続きに必要な「相続に関する依頼書」が送付され、口座残高が通知されます。
補足 相続税申告には、銀行から送付される「相続に関する依頼書」に加え「残高証明書」も必要 |
2-3.相続の手続きに関する依頼書と必要書類を郵送する
「相続の手続きに関する依頼書」が届いたら、記入の上、相続人全員を確認するための必要書類とあわせて銀行に郵送します。送付する書類は次のとおりです。
手続き依頼書と一緒に送る書類
注:「法定相続情報一覧図」の写しが提出可能なら、加えて、相続人全員の印鑑証明書が必要 |
戸籍謄本類や印鑑証明書には、銀行が使用期限(ジャパンネット銀行の場合は6か月以内)を定めている場合が多いですから、期限内のものを提出してください。
送付した書類の内容に問題なければ、故人の口座が解約され、指定した口座に振り込まれます。故人の取引内容などによっては、遺産分割協議書や遺言書などの提出が必要となる場合もあります。
ネット銀行の相続手続きはネット以外の銀行の相続手続きとほぼ同じ
ネット銀行の相続手続きの流れは、カスタマーセンターに連絡し、銀行側と書類のやりとりをするというもの。ネット銀行以外の銀行とほぼ同じです。必要な書類などもほぼ同じ。
窓口を直接訪れて手続きする必要はなく、必要なことは郵便でやりとりできます。むしろ、銀行の窓口に行く時間と労力の節約になるともいえます。パソコンやスマホで手続きするわけでもありませんから、不慣れな操作に戸惑うこともありません。また、手続きを進める中で、わかりにくい点があれば、カスタマーセンターに相談できます。
ネット銀行だからといって、特別に難しい部分はありません。ネット銀行の口座を発見できたなら、安心して手続きを進めましょう。
3.ネット銀行の財産を相続してもらうために生前にしておくべきこと
ネット銀行の財産を相続してもらうために、生前に準備するとよいことがいくつかあります。遺族にネット銀行口座がすぐにわかるよう準備しておけば、口座を調査する労力は必要なし。ネット銀行に預けた財産の相続がスムーズに進みます。
しかし、万一、遺族がネット銀行に口座があることにまったく気づかなければ、貴重な財産が無駄になってしまいます。無駄を避けるためには、きちんとした準備が大切です。準備といっても、難しいものではありません。
3-1.財産目録にネット銀行の口座に関する内容の記載がある遺言書を作成する
わかりやすい準備は、遺言書の財産目録にネット銀行口座を書いておき、遺言書があることを家族に知らせることです。
代表的な遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言は、自分で記載し、署名、押印する遺言書です。財産目録はパソコンで作成してもかまいませんが、財産目録以外の自筆証書遺言の記載部分は肉筆で書く必要があります。手軽に作れますが、記載内容に法的な不備があると無効になり、紛失の危険性もあります。
公証人が本人の口述にもとづいて作成するのが公正証書遺言です。公証人が関与しますから、法的な不備の心配はありません。公証人役場に保管されますから、紛失の危険もありません。ただし、公正証書遺言の作成には一定の費用がかかります。
3-2.遺言書を作成しない場合は、金融資産の一覧を表にして、家族に伝えておく
遺言書を作成しない場合は、金融機関名、支店名、口座番号を明記した金融資産の一覧表を作り、保管場所を家族に伝えておけば安心です。家族に一覧表を渡しておくとより確実です。金額を書く必要はありません。
金融資産一覧表に書かない方がいいこと
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一覧表を作ったのちに新たに口座を設けた場合は、一覧表に追加しましょう。解約した口座がある場合は削除してください。その都度追加や削除しておけば、家族は正しい口座を把握できます。どの金融機関に口座があるのか調査する必要がなくなりますから、相続手続きはスムーズに進みます。ネット銀行に口座があることに気づかないまま、遺産相続漏れが発生する心配もありません。また、財産漏れで追徴課税の心配もなくなります。
口座の調査方法と手続きの流れを抑えておけば、ネット銀行の相続に戸惑う必要はない
ネット銀行に故人の口座があったとしても、口座の調査方法と、ネット銀行の相続手続きを理解していれば、特別な心配はありません。説明してきた方法で口座を調査すれば、口座を発見できます。その後は、一般の銀行と同じような流れで相続手続きを進めることが可能です。
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