休眠会社の買取で許認可や節税メリットは享受できる?注意点も確認

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休眠会社には買収の需要はあるのでしょうか?信頼の獲得や許認可の引き継ぎなど、休眠会社の買収にはメリットがあります。ただし買い手にはリスクもあるため、負担となる部分の解消も必要でしょう。休眠会社の売買について、基礎知識や手続きを解説します。

1.休眠会社の特徴

会社が休眠会社になるのは、一定の条件を満たしたときです。どのような条件を満たすと休眠状態になるのか解説します。また休眠会社だからといって、何もせずに放置していいわけではありません。休眠中に必要な手続きも確認しましょう。

1-1.休眠会社やみなし解散となる条件

登記簿上の記録はそのままに、法人が事業活動や営業活動を停止することを『休業』といいます。休業状態で最後の登記から12年以上経過するか、税務署などへ手続きをすると『休眠会社』になります

休眠会社はそのままの状態をずっと維持できるわけではありません。法務局が休眠会社の整理作業を実施し通知が届くと、2カ月以内に届出を出さなければ『みなし解散』の状態とされます。

みなし解散の状態であれば、まだ会社を継続する手続きは可能です。しかしそのまま3年以上経過すると完全に『解散』となるため、再開する可能性や売却の予定があるなら注意しましょう。

1-2.休眠中も税務申告や役員変更登記は行う

業務が完全にストップしている休眠中の会社でも『税務申告』と『役員変更登記』は行います。事業がストップしている状態なら法人税は非課税ですから、無申告でも課税には影響しません。

仮に申告しなくても、ペナルティーを科されることはないでしょう。しかし2年連続で期限内に申告しないと青色申告の承認が取り消され、欠損金の繰越も適用されなくなります。

事業の再開や売却を検討中なら、非課税でも毎年申告しましょう。また『法人市民税』のうち国税の申告は不要ですが、地方税は自治体ごとに確認が必要です。加えて取締役などの役員には任期があり、休眠中も改選や変更登記が求められます。

2.休眠会社売買の手続き

休眠会社売買の手続き

休眠会社は通常の会社と同じように売買できます。現時点で休眠状態だとしても、正しく手続きをすればすぐに復活できるからです。売買をするときには、どのような手続きが必要なのでしょうか?

2-1.相談や売買はどこで、どのように?

会社の売買というと、株式譲渡や事業譲渡などの手法で行われるM&Aが代表的です。休眠会社も通常の会社と同じように売買できます。

仲介会社を利用して買い手を紹介してもらい、情報をもとに売却を検討する流れです。財務や税務に関する詳細な調査であるデューデリジェンスを受け、さらに交渉をへて最終合意に至ると、契約を結びます。

休眠会社の売買は会計事務所や法律事務所で扱っているケースもあります。まずは付き合いのある専門家へ相談するのもよいでしょう。

2-2.事業の再開はすぐにできる?

事業を完全に止めている状態の休眠会社は、手続きさえすれば『再開』可能です。まずは『異動届出書』を納税地の所轄税務署へ提出します。

法務局で行う『会社継続登記』も必要です。資本金1億円以下の会社であれば、4万円の費用と必要書類を用意して手続きしましょう。

売買が成立した後にこれらの手続きを行えば、すぐに事業を始められます。

3.買い手にはどんな場合にメリットがあるのか

買い手にはどんな場合にメリットがあるのか

M&Aで休眠会社を売却できるのは、買い手にメリットがあるからです。代表的なメリットである、信用や大きな資本金の獲得について見ていきましょう。

3-1.運営歴の長い会社の買収

自分で起業する場合、事業を始めた年が1年目です。社歴が短いために、『事業の継続性に問題があるかもしれない』とされ、取り引きを敬遠される場合もあります。

休眠会社を引き継いで事業を開始すると、休眠会社の社歴も引き継ぎ可能です。例えば設立から50年経過している休眠会社を買収すれば、自ら起業した設立1年目の会社より、社会的な信用の高い状態で事業を展開できるでしょう。

これから事業を始めたい買い手にとって、信用を手に入れられるのは大きなメリットです。

3-2.資本金が多い会社の買収

休眠会社を買収すると、買い手は資本金も引き継げます。資本金は会社の運転資金のため、多いほど資金繰りに余裕を持たせられるものです。場合によっては借入がなくても経営できるかもしれません。

そのため資本金の多さは、安定した経営の指標として参考にされています。会社によっては、資本金の金額で取り引きするかしないかを決定するケースもあるでしょう。多額の資本金を保有する休眠会社を買収すれば、買い手は資本金による信用も得られます。

4.事業に役立つものを引き継げる

事業に役立つものを引き継げる

会社はさまざまな資産を持っています。休眠会社の買い手は、当座預金口座や許認可を引き継ぎ可能です。これらは新しい会社では獲得が難しいかもしれず、買い手にとって大きな魅力といえます。

4-1.当座預金口座

『当座預金口座』を法人が開設するには、今後も長く安定した経営を続けられる会社だという印象を持ってもらわなければいけません。そのためには、ある程度の資本金や固定電話・顧客との契約書などが必要です。

新しく会社を作ったとしても、資本金が1円・スマートフォンでの登録・レンタルオフィスでの登記・公式サイトがない・事業内容があいまいなどの要素が重なると、口座の開設は難しいでしょう。

一方、休眠会社であれば、既に当座預金口座を持っている可能性があります。買収すれば口座も引き継ぎの対象のため、新たに作らなくても利用可能です。

4-2.許認可を承継できる可能性がある

ケースによっては休眠会社が取得している『許認可』の承継もできるかもしれません。休眠会社を買収すると、許認可の取り直しが必要です。

しかし『経営力向上計画』の特例を利用し『第二会社方式』を採用すれば、許認可の再取得をしなくても事業を始められます。第二会社方式は財務状況が悪い中小企業の再生手法です。

収益性のある事業を他の事業者へ引き継ぎますが、営業に許認可が必要なときには、承継事業者が許認可を引き継げます。できるだけスピーディーに営業開始するための特例です。

ただし適用されるのは、旅館営業・一般建設業・一般旅客自動車運送事業・一般貨物自動車運送事業・火薬類の製造販売・一般ガス事業・熱供給事業に限定されます。

4-2-1.宅建業免許番号なども引き継げる?

『宅建業免許番号』の引き継ぎができるケースは限定的です。個人取得している免許は、経営者が死亡した時点で無効となります。法人が取得していても、合併で法人が消滅すれば免許も無効です。

また事業譲渡で不動産部門のみ売却するケースでも、免許の引き継ぎはできません。引き継ぎできるのは『株式譲渡』によって会社を丸ごと売却する場合に限られます。

ただし不正に免許を取得する方法として悪用されていた事例があるため、厳しくチェックされる方法です。

5.買い手にはデメリットも多い

買い手にはデメリットも多い

信用獲得に役立つ社歴や資本金など、さまざまな資産を引き継げる休眠会社の買収には、デメリットもあります。例えば節税につなげにくい点や、会社によってはリスクを抱えている可能性がある点が代表的です。

5-1.繰越欠損金による節税は難しい

休眠会社の中には繰越欠損金を抱えているケースもあります。買収して引き継げば繰越欠損金も引き継げそうですが、実際にはできません。

繰越欠損金の引き継ぎが認められるのは、合併の中でも一定の要件を満たした『適格合併』に限定されています。節税目的の買収が横行しないよう、厳しく要件が定められているため、そう簡単には利用できないのです。

また繰越欠損金を利用するために、買収後の休眠会社へ事業を移転する方法が考えられます。この方法は明らかに節税目的の買収と考えられるため、規制の対象です。

5-2.休眠会社買取はリスクが大きい場合も

事業を完全にストップしている間、休眠会社の管理が行き届いていない場合、登記事項が変更されておらず追加で費用が発生する可能性があります。残存債務・簿外債務・未納の税金・過料などを抱えているかもしれません。

ほかにも、よく調べると倒産歴があり金融機関で融資を受けられない会社だったというケースもあります。買い手は気付かないうちに大きなリスクを抱えるデメリットもあるのです。

6.買い手が恐れるリスクを解消しておく

買い手が恐れるリスクを解消しておく

スムーズに売却を進めるには、買い手にとってリスクとなる要素を解消しておくとよいでしょう。財務状況を詳細まで明確にし情報提供することや、休眠中にもしっかり管理することが重要です。

6-1.透明性の高い財務情報を提供

買収により会社を引き継ぐと、買収以前に負った債務であっても買い手に返済の義務が生じます。そこで簿外債務や税金の納付状況を、買い手に分かりやすく開示することが大切です

後から発覚する債務がないと分かれば、買い手は安心して買収できます。仮に債務があるとしても、どこにいくらあるかが明確になっていれば、それを加味した条件で交渉を進められるでしょう。

6-2.休眠中も必要な手続き、納税を行う

事業がストップしていても、必要な手続きや納税は発生します。例えば『法人住民税の均等割』は、会社があれば利益が出ていなくても課税される税金です。毎年決められた金額を納めなければいけません。

ただし休眠中の手続きによって、減額・免除される可能性があります。未納のまま放置するのではなく、正しく手続きすることが大切です。

また会社の事業活動には、あらゆる経済活動が該当します。固定資産の売却や借入金の免除によって事業活動があったとみなされると、休眠中ではなくなり課税の可能性があるため注意しましょう。

休眠中の活動は専門家へ相談した上で実施することが重要です。

7.休眠会社の買取は慎重な判断が求められる

休眠会社の買取は慎重な判断が求められる

休眠会社は事業を完全にストップしている状態の会社です。社歴・資本金・銀行口座など有用な資産を持っている一方で、見えないリスクを抱えている可能性もあるため、買い手にとってデメリットになることもあります

スムーズに売買を進めるには、売り手から正確な情報を開示することが重要です。会社の財務・税務などについて正しく把握するには、専門家へ依頼するとよいでしょう。

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