特別目的会社(SPC)はどう使う?スキームやLBOの手順を紹介

特別目的会社(SPC)とは、どのような特徴を持つ会社なのでしょうか?SPCを用いたスキームについても確認します。併せてM&AでSPCを利用する際に実施するLBO(レバレッジド・バイアウト)についても把握しましょう。

1.特別目的会社(SPC)とは何か

1.特別目的会社(SPC)とは何か

特別目的会社は、事業を展開して利益を得るための会社ではありません。設立は特定の目的を達成するために行われます。名称の似ている特定目的会社との違いもチェックしましょう。

1-1.特定の目的のために設立される会社

会社から切り離した資産の受け皿となるのが特別目的会社です。不動産などの特定の資産を保有させて証券化し、資産の流動化を行う活用方法が代表的です。

ほかにも、資金調達やM&Aを目的として設立されるケースもあります。資産の保有や運用といった特定の目的のために設立される会社のため、事業会社のように利益の追求は行いません。事業を担うのは設立した親会社です。

1998年に成立したSPC法(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律)により、設立できるようになりました。

1-2.会社法に基づき設立されるのが一般的

特別目的会社は、一般的に会社法に基づいて設立されるのが一般的です。SPC法にのっとった設立もできますが、その場合は『資産流動化計画』と『業務開始届』が必要です。その分、設立に手間がかかるため、あまり利用されません。

また会社法に基づき設立する場合には、株式会社より手間とコストを抑えられる『合同会社』を特別目的会社とするケースが多いでしょう。

設立費用で比べても、株式会社が最低25万円ほど必要なのに対し、合同会社は登録免許税が安く、定款認証の手数料が不要なため最低10万円ほどです。

1-3.特定目的会社との違い

似た名称の会社に『特定目的会社(TMK)』があります。特定目的会社は特別目的会社の一種で、SPC法に基づき設立された会社のことです。

会社法により設立された場合、扱う資産はさまざまですが、特定目的会社で扱う資産は主に不動産に限定され、流動化を目的に保有されています。扱う資産の違いによって区別されている会社です。

2.特別目的会社(SPC)の特徴

2.特別目的会社(SPC)の特徴

資産の保有や証券化による流動化を目的に設立される特別目的会社のメリットとして、代表的なのは資金調達のしやすさです。このほかに倒産隔離ができる点や、事業会社が負債の影響を受けない点も役立つ点といえるでしょう。

ただし手法が複雑なため、簡単には採用できない方法でもあります。

2-1.資金調達しやすい

資金調達しやすくなるのは、代表的なメリットです。特別目的会社に移転した資産を証券化することで、投資家からの出資を受けられます。

例えば所有している不動産で資金調達をしたいと考えたとき、売却や賃貸に出す方法が考えられるでしょう。このとき特別目的会社を利用すると、不動産投資信託を発行することで、投資家からの出資を広く募れます

土地やビルは、小さくして切り売りするのが難しい資産で、流動性は低くなりがちです。また売却すれば資金は手に入りますが、不動産を手放さなければいけません。証券化すれば、不動産を保有したまま資金調達をしやすくなります。

2-2.企業が倒産しても資産に影響が及ばない

特別目的会社へ保有させた資産は、事業会社の資産から切り離されます。そのため万が一事業会社の経営が傾き倒産したとしても、その影響は切り離した資産へは及びません。

事業会社が所有している資産は、債権を回収するため債権者による差し押さえの対象となります。しかし特別目的会社が保有・運用している資産は、差し押さえの対象外です。

もし差し押さえが及んだ場合、投資家の利益を損なう事態に陥ることが懸念されます。そこで投資家の利益を守るため、保有・運用している資産は『倒産隔離』により法的に保護されます。

2-3.負債を計上する必要がない

高額な資産を購入するには資金調達が必要なケースもあるでしょう。資金調達をすれば負債を計上しなければならず、財務状況が悪化します。

不動産を取得するために特別目的会社を設立すれば、融資を受けてもその負債は特別目的会社に計上され、事業会社の財務状況には影響を及ぼしません

負債の増加による財務状況の悪化を避けつつ、資産を取得できる方法です。

2-4.スキームが複雑な点はデメリット

特別目的会社は、スキームが複雑になりがちな点がデメリットです。正しく活用するには専門家のサポートが欠かせません。

また自社のみで完結させられず、弁護士・税理士・債権回収会社・信託銀行など関係者が多岐にわたります。扱う資産が不動産であれば、査定を行うために建築事務所や不動産鑑定会社へも依頼しなければいけません。

資産の売買で資金調達する場合と比べ、手間とコストのかかる方法です。

3.特別目的会社(SPC)の手法

3.特別目的会社(SPC)の手法

資産の流動化を目指し特別目的会社を活用する手法(スキーム)には、いくつか種類があります。代表的な『REITスキーム』『GK-TKスキーム』『TMKスキーム』を確認しましょう。

3-1.不動産運用に用いられるREITスキーム

REITスキームでは、投資法人を設立し不動産投資信託を運用します。投資家からの不動産投資信託への出資や金融機関からの借入を受け、その資金を元手に不動産を購入し運用する仕組みです。

運用の結果として利益が出れば、投資家は配当金を、金融機関は元金と利子を受け取れます。またREITスキームを実施するには、資産運用会社(アセットマネージャー)に資産運用を、資産保管会社に資産の保管を委託します。

3-2.低コストで利用しやすいGK-TKスキーム

特別目的会社を『合同会社(GK)』として設立し、投資家から『匿名組合出資(TK出資)』を受ける手法が『GK-TKスキーム』です。合同会社であれば、設立や運営にかかるコストを低く抑えやすいでしょう。

このスキームを利用する場合、合同会社は不動産を所有するのではなく『不動産信託受益権』を取得します。これにより自由度の高い投資設計の実現が可能です。また受益権は不動産ではないため、不動産取得税が課されず税負担を抑えられます。

3-3.特定目的会社を設立するTMKスキーム

SPC法に基づき設立する特別目的会社を、『特定目的会社(TMK)』といいます。TMKが金融機関から融資を受けたり、投資家から出資を受けたりすることで、不動産や不動産信託受益権を取得するのが『TMKスキーム』です。

税法上の要件を満たすと、配当金を損金算入できるというメリットもあります。特定目的会社の主な目的は資産の保有のため、利益の追求はできません。

4.特別目的会社(SPC)を用いるM&A手法

4.特別目的会社(SPC)を用いるM&A手法

特別目的会社はM&Aにも利用できます。小さな資金で大きな利益を得られる可能性がある『LBO(レバレッジド・バイアウト)』が代表的です。うまく活用することで、大きな投資効果を得られます。

4-1.LBO(レバレッジド・バイアウト)とは

通常のM&Aでは、資金調達時の担保を提供するのは買い手です。買い手が自己資金の不足分を、融資を利用して調達し買収します。

一方LBOを実施する際に融資の担保となるのは、買収対象企業の資産やキャッシュフローです。売り手の信用力に基づき資金調達を行う方法ともいえます。買い手は少ない自己資金で多額の資金を調達し、買収可能です。

LBOでM&Aを実施する場合には、買い手が出資し設立した特別目的会社が買収資金の調達を行います。

4-2.小さな投資額で大きなリターンを得られる

LBOを活用したM&Aの特徴は、少ない自己資金で買収対象会社を獲得できる点です。そもそもLBOでは、買収対象会社の資産やキャッシュフローを元に多額の借入をするため、買収後に収益を期待できない会社では実施できない可能性が高いでしょう。

そのため、買収対象会社の資産やキャッシュフローを念入りに調べる必要があります。資産やキャッシュフローの価値が高い会社であれば、その信用力を生かした借入が可能です

資本の少ない企業が自社より大きな企業を買収する場合にも用いられます。またLBOでは、自己資金をできるだけ低く抑え借入額を増やすのが、将来の利益を大きくするポイントです。

参考:レバレッジドバイアウトの仕組みを解説。対象会社のメリットとは

5.LBOの手順

5.LBOの手順

LBOによりM&Aを実施するには、まず資金調達を行う特別目的会社を設立しなければいけません。設立後はどのような手順で買収を進めるのでしょうか?

5-1.SPCを設立し買収する

買い手の出資により、まずは特別目的会社を設立します。特別目的会社が行うのは買収対象会社の買収です。対価として現金を支払い買収対象会社の株式を取得するため、資金調達を行います。

このとき担保とするのは、買収対象会社の資産や将来のキャッシュフローです。資金調達ができたら、特別目的会社によって買収対象会社の買収を実施します。

ポイントは経営権を完全掌握できるよう、買収対象会社の株式を100%保有する点です。発行済株式を全て取得することで、LBOで得られるリターンを最大化できます。

5-2.SPCと買収対象会社を合併する

買収対象会社の株式の買収が完了したら、特別目的会社と買収対象会社の合併を行いましょう。合併により買収対象会社を非上場企業にし、他の会社が参入できないようにするためです。

合併が完了すると、新会社の経営を買い手が担います。リターンを生み出せるよう経営改善を行いましょう。

買収が終了したら返済が始まります。買収の対価として対象会社が得た現金を返済に充てられるため、買収後に対象会社の経営状況が悪化していなければ、無理なく返済できるはずです。

6.特別目的会社(SPC)を用いる手法は複雑

6.特別目的会社(SPC)を用いる手法は複雑

特別目的会社を利用すると、事業会社から資産を切り離せます。切り離した資産を証券化し、資金調達しやすい仕組み作りが可能です

事業会社が倒産しても資産に影響が及ばないよう隔離ができ、資産を購入するときの負債で事業会社の財務状況が悪化するのも防げます。また特別目的会社を利用すると、小さな資金で大きなリターンを得られる可能性があるLBOの実施が可能です。

ただしLBOの仕組みは複雑なため、自社のみで対応するのは難しいでしょう。必要に応じて専門知識を持つ弁護士・税理士・社会保険労務士などへの相談が必要です。

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