特別買収目的会社(SPAC)の活用方法。スポンサーの役割も解説
タグ: #M&A特別買収目的会社(SPAC)は企業買収を実施するために設立する会社で、未上場の対象企業を早い段階で上場させるために用いられます。SPACを用いた上場について詳しく見ていきましょう。投資家にとってのSPACのメリット・デメリットも解説します。
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1.SPACによる上場方法を知ろう
SPACによる上場は主にアメリカで活用されている方法です。設立されるSPACは、買収を実施するときの受け皿としての機能しか持っていない点が、SPCとは異なります。実際にSPACを用いて上場した会社の事例も確認しましょう。
1-1.主にアメリカで活用されるSPACとは
『Special Purpose Acquisition Company』の略である『SPAC』は、自社では事業を行いません。主に非公開会社を買収し、上場させることを目的に設立されます。
アメリカ・韓国・カナダ・イギリス・イタリアなどで活用されており、中でもアメリカはSPACの上場件数が多く、活用事例が豊富にあります。
1-1-1.SPCとの違い
SPACと似た役割をする『SPC(特別目的会社)』は、買収対象会社の信用力を担保にした資金調達方法であるLBOファイナンスの受け皿です。加えてSPCでは、不動産を始めとする資産の保有・管理を行うケースもあります。
また、共同事業を実施するときに利用されるケースもあるでしょう。単に買収の受け皿になるだけでなく、複数の目的で用いられるのがSPACとの違いです。
1-2.日本では現在SPACは認められていない
アメリカを中心に活用されているSPACによる上場の手法は、日本国内ではまだ利用できません。2008年にSPACによる上場解禁が検討されたこともありましたが、見送られています。
その後も議論は続けられていますが、通常の新規株式公開の手続きより簡単に上場できることから、情報開示や投資家保護などに課題があると考えられており、現時点では認められていません。
1-3.SPACの事例
実際にSPACによる上場を実施した事例として、ソフトバンク・グループのSPACによる上場のケースを2件紹介します。
1件目はアメリカのベンチャー『WeWork』の事例です。一度は上場が見送られましたが、『ボウX・アクイジション』による買収が行われ上場しました。
2件目はウォルマート傘下で物流施設の効率化を手掛ける『シンボティック』の買収です。『SVFインベストメント・コープ3』との合併による上場が発表されています。
また電気自動車の新興メーカーである『ファラデー・フューチャー』は、製品開発の遅れにより一度破綻しました。しかしSPACの『プロパティー・ソリューションズ・アクイジション』と合併し、販売実績がないにもかかわらず上場しています。
2.SPACが注目される理由
未上場の対象企業を上場させる手段としてSPACが注目されているのは、早いタイミングで上場できるからです。一般的な新規公開株(IPO)との違いも確認しながら、SPACが注目される理由を見ていきます。
2-1.早期上場が可能
上場したSPACによる買収で非公開会社が上場する場合、株式公開時に通常であれば必要な以下のプロセスを実施せずに上場できます。
- 証券会社審査
- 監査法人審査
- 証券取引所の申請・審査・承認
また、SPACの上場にはこれらの審査が必要ですが、事業を実施していないため審査対象が少なく、ごく短期間で上場可能です。そのため通常なら数年間かかるケースも多い上場までの期間を、早ければ数カ月に短縮できます。
通常のIPOより簡単に上場できる『ダイレクトリスティング』も、注目されている手法です。新株を発行しないため上場時の資金調達はできませんが、引受手数料のコスト削減や知名度アップなどのメリットがあります。
2-1-1.一般的なIPO
非公開会社が株式を証券会社で取引できるよう上場し、投資家へ利益を配分するのがIPOです。上場のタイミングで新株が発行される場合もありますし、上場前に発行され株主が保有している株式が売り出される場合もあります。
上場した会社の株式は市場で取引できるようになるため、より広く資金調達が可能な方法です。ただしIPOを実施するには、事業実態や財務状況など、さまざまな情報を開示しなければいけません。
情報に不備があれば審査に落ち上場できないため、十分な時間をかけた準備が必要で、株式の公開やその維持のためのコストも必要です。このようなハードルの高さにより、上場は企業の社会的な信頼を高められる方法としても認識されています。
3.スポンサーの役割
SPACのスポンサーとは会社を設立する代表者のことで、著名な経営者やヘッジファンドのマネージャーなどが担うケースが多いでしょう。会社を設立し資金調達をするスポンサーの役割について見ていきます。
3-1.スポンサーとは
スポンサーはSPACの代表者です。ターゲットとなる企業の選定を含む、買収による利益の獲得に対するあらゆる権限を持ち、責任を負います。
実績のある経営者やマネージャーなど、投資家によく知られている人物が代表を務めるのが一般的です。これまでの実績がある人物がスポンサーとなっていれば、有望な成長企業を買収するSPACであることが期待されます。
その結果、投資家の信頼を得やすく、多くの資金を集めやすいからです。スポンサーのネームバリューが大きいほど、規模の大きな会社を買収するための資金を集めやすいでしょう。
3-2.SPACの設立を行う
まずスポンサーはSPACを設立します。会社を設立するときには出資金が必要です。SPACの場合、スポンサーが出資する金額は、2万5,000ドル(約270万円)と決まっています。
また買収した企業が上場した後は、対象企業の株式を保有します。スポンサーが保有する株式数は、持株比率が20%になるよう設定される仕組みです。
4.未公開会社を買収する
SPACを設立したら、買収の対象となる未公開会社を探しましょう。どのような特徴を持つ会社が対象となるのでしょうか?対象企業が定まったら、SPACと合併する段階です。
4-1.ターゲット企業の探索
上場したSPACは、買収のターゲットとなる企業を探します。SPACの上場から2年以内にはターゲット企業を定め、株主総会の承認といった手続きを実施し、買収するのが一般的です。
上場を希望する未公開会社であれば、どのような企業でもターゲットになるわけではありません。相応の時価総額を持つ企業に限られます。
4-2.SPACとの合併
ターゲット企業を絞り込んだら、合併に向けSPACと未公開会社は基本合意を結びます。合併に向けての交渉はその後も続き、基本合意では決めきれていない詳細な部分も決定しながら、本契約に至る流れです。
SPACによる上場をアメリカで実施するなら、『買収・統合の登録届出書(フォームS-4)』も用意しなければいけません。届出書に必要な財務諸表を作成し、監査に向けた準備も行いましょう。
5.投資家にとってのSPAC
企業側から考えると、SPACによる上場を活用すれば、比較的シンプルな手続きで短期間のうちに株式公開できるメリットがあります。ではSPACへ資金を提供する投資家には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
5-1.有望スタートアップに投資できる
成功が期待できるスタートアップに投資したいと考えている投資家は多いはずです。しかし未公開会社の株式は市場に流通しておらず、購入できる機会はなかなかありません。
一方SPACにおいては、未公開会社はSPACとの合併を果たせば、既に上場しています。そのため投資したいと考えた有望なスタートアップの株式を、比較的少ない資金で購入可能です。
事業が成功すれば、購入した株式はどんどん値上がりするかもしれません。また万が一購入した株式が値下がりし売却したい場合も、市場で取引できるため速やかに売却できます。
5-2.投資家を保護する規制がある
SPACには投資家保護の規定が設けられています。そのため以下の局面で株価が下がりそうだと判断したなら、投資資金の返還を求めましょう。
- SPACが非公開会社の買収に失敗したとき
- 株主がターゲットの買収に反対するとき
保護規定により損失が出るリスクを小さく抑えやすいはずです。
5-3.デメリットも存在する
有望なスタートアップに投資でき、投資家保護の規定もあるSPACには、デメリットも存在します。一つ目のデメリットは、株式の長期保有で得られる利益が低下する可能性です。
SPACは非公開会社と合併すると、1年以内に株価が下落するケースが多く見られます。そのため合併後もずっと株式を保有し続けていると、損失が出るリスクもあるでしょう。
また、投資家に不利な条件での合併が行われる可能性がある点もデメリットです。SPACは通常、設立から2年以内に非公開会社と合併します。
そのため、合併までの手続きが長引くことによるプレッシャーと、早く報酬を得たい気持ちから、スポンサーが投資家の利益と反する決定を下すケースがあるでしょう。
6.日本で解禁されるか否か要注目
アメリカを中心に活用されているSPACは、シンプルな手続きで短期間のうちに非公開会社の株式を公開できる手法として注目されています。ただし、まだ日本国内では解禁されていません。
解禁に向けた議論は行われていますが、情報開示や投資家保護に課題があると考えられているからです。SPACが導入されれば、投資家は保護規定の下でスタートアップへの投資をより少ない資金により実施できます。
ただし合併後の株価下落や投資家の利益に反する合併の可能性といったデメリットもある点には注意しましょう。投資行動に影響を及ぼす手法のため、今後の動向に注目です。
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