レバレッジドバイアウトの仕組みを解説。対象会社のメリットとは

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レバレッジドバイアウトは、買収される会社の資産価値や将来的な収益性を担保にして資金を調達する手法です。テコの原理効果で大きなリターンが手に入る可能性がある一方で、リスクやデメリットも存在します。LBOの仕組みや注意点を解説します。

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1.レバレッジドバイアウトとは

レバレッジドバイアウトとは

『レバレッジドバイアウト(Leveraged Buyout/LBO)』は、M&Aの手法の一つで、譲渡会社の資産やキャッシュフローを担保にして、金融機関などから資金を調達するのが特徴です。『レバレッジ』の指す意味や、バイアウトの種類について理解しましょう。

1-1.企業を買収するときの手法の一つ

M&Aにおいて、譲受会社(買い手)は譲渡会社(売り手)に多額の対価を支払う必要がありますが、自己資金が少ない企業は資金調達が大きな課題となります。

『レバレッジドバイアウト』は、借入金を活用したM&Aの一つです。譲渡会社の『資産価値』や『将来のキャッシュフロー』を担保に金融機関などから買収資金を調達するため、譲受会社は多くの自己資金を必要としません。

少ない自己資金で大きな利益を生み出せることから、テコの原理になぞらえて『レバレッジ』という名前が付けられています。買収後は、譲受企業ではなく、譲渡会社が債務を背負う形です。

1-1-1.バイアウトの種類

『バイアウト』とは、『企業の株式を買い取って経営権を取得すること』です。バイアウトには、レバレッジドバイアウト(LBO)のほかに以下の種類があります。

  • MBO(マネジメント・バイアウト):経営者・経営陣が株主から株式を買い取って経営権を取得する
  • EBO(エンプロイー・バイアウト):従業員が株式を取得して経営権を得る
  • MEBO(マネジメントアンドエンプロイー・バイアウト):経営陣と従業員が一体で会社全体または事業の一部を買収する

MBOは上場企業において、上場を廃止する際に用いられるケースが大半です。経営者は、株主の影響を受けずに長期的な視点で事業計画を立てられます。

EBOは、経営者が従業員に事業承継を行う際に用いる手法で、『会社の乗っ取り』ではありません。従業員が会社を買収する形になるため、従業員側に十分な資金があることが前提です。

MEBOもEBO同様、『事業承継』が主な目的です。資金調達が困難な場合、投資ファンドや金融機関から融資を受けてバイアウトを実行します。

1-2.レバレッジはテコの原理効果のこと

レバレッジドバイアウトの仕組みを知る前に、『レバレッジ(Leverage)』という言葉の意味を理解しておきましょう。レバレッジは『テコの原理効果』のことで、『小さな力で大きな物を動かす仕組み』です

レバレッジの類語には『ギアリング』があります。ギアの比率でリターンの大きさが変わる倍増効果を意味し、レバレッジとほぼ同じような趣旨で用いられています。

『レバレッジを効かせる』という言葉を耳にしたことはないでしょうか? これは、多額の自己資金を用いず、他人資本(借入金など)を活用して利益率を上げることを指します。

レバレッジを効かせると大きなリターンが見込める半面、失敗した際は多額の損失を負うことになります。

1-3.少ない資金で何倍もの価値の会社が買える

レバレッジドバイアウトのメリットは、小さな資金で大きな企業の買収が可能になる点です。

買収資金の大半は、譲渡会社の価値や信用力によって調達できるため、譲受会社は投資額を最小限に抑えられます。レバレッジドバイアウト後に譲渡会社の事業が順調に発展すれば、獲得できるリターンは何倍にも膨らむでしょう。

自己資金が抑えられることで、グループ全体にリソースの余裕が生まれ、ほかの事業に着手しやすくなるというメリットもあります。

2.レバレッジドバイアウトの目的

レバレッジドバイアウトの目的

バイアウトにはさまざまな種類がありますが、中でもレバレッジドバイアウトは『投資』が目的です。M&Aによるシナジー効果が発揮されれば、大きなリターンが見込めるでしょう。

2-1.主に投資が目的となる

レバレッジドバイアウトは『投資』が主な目的で、『PE(プライベート・エクイティ)ファンド』で活用される傾向があります

PEファンドとは、投資家から集めた資金を将来性のある未上場株に投資し、企業価値を高めた後に売却してリターンを得る投資ファンドのことです。

短期間で儲けを出して投資家に利益を還元する必要があるため、投資効率の高いレバレッジドバイアウトが活用されます。

PEファンドは、会社を上場させて株式市場に売り出すか、株式価値を高めてから別の買い手に転売して利益を得る手法を取ります。会社を長期間保有して、配当などで少しずつ利益を分配するという方法ではありません。

2-2.シナジー効果を発揮してリターンを得る

レバレッジドバイアウトのもう一つの目的は『シナジー効果によるリターンの獲得』です。

M&Aにおけるシナジー効果(相乗効果)とは、『各社の単純合算よりも売上高が増加した』『管理部門の統廃合でコスト削減につながった』といったように、譲渡会社と譲受会社の両方にプラスの影響がもたらされることを指します。

シナジー効果でキャッシュフローが安定し、事業が順調に発展すると『株式価値』がアップします。別の買い手に高値で転売すれば、多額の利益が手に入るでしょう。

3.買収される会社の信用力が重要

買収される会社の信用力が重要

レバレッジドバイアウトでは、主に『譲渡会社』の信用力や資産価値を担保に借入を行います。どの程度の資金が調達できるかは、譲渡会社次第と考えましょう。

3-1.買収される会社の資産価値が担保に

PEファンドや経営陣の信用力ではなく、譲渡会社の資産価値や将来のキャッシュフローを基にして資金調達を行うのがレバレッジドバイアウトの大きな特徴です

譲渡会社の価値や信用力が高ければ、金融機関に『債権の未回収リスクが低い』と判断され、より多くの融資が受けられるのが実情です。

レバレッジドバイアウトでは、買収資金における借入金の割合が高ければ高いほど、大きなレバレッジ効果が期待できると考えられています。

3-2.買い手は返済義務を負わない

M&Aの買収費用は譲受会社が負担するのが通常ですが、レバレッジドバイアウトの場合、借入金の返済義務は『譲渡会社』が負います

経営不振などで譲渡会社が借入金の返済ができない状態となっても、譲受会社に借金の返済義務は発生しません。譲受会社自身が金融機関から借入をした場合にのみ返済義務が生じます。

譲受会社が返済義務を問われず、譲渡会社の返済能力のみに依拠した借入形態は『ノンリコースローン(Non Recourse Loan)』と呼ばれます。

4.買収される会社のメリットは?

買収される会社のメリットは?

レバレッジドバイアウトはどちらかというと譲受会社や投資家にメリットが大きい手法です。しかし、買収される側に恩恵がまったくないわけではありません。代表的な二つのメリットについて解説します。

4-1.株を高く買ってもらえる可能性がある

レバレッジドバイアウトを遂行するにあたり、譲受会社は対象企業の『株主全員』から株式を取得する必要があります。持ち株比率100%を実現するため、適正価格に『割増金(プレミアム)』を上乗せした金額を株主に提示するのが一般的です。

譲渡会社の株主は、市場で株式を売却する際よりも株を高く買ってもらえる可能性があるでしょう。ただし、高値づかみをしてしまった株主は十分な恩恵が受けられない可能性があります。

4-2.状況によっては節税ができる

譲渡会社にとってのもう一つのメリットが『節税効果』です。金融機関から借入を行うと、元金の返済のほかに『利息』の返済も行わなければなりません。

税務上、『利息』は『損金』として処理することが認められています。『損金』とは、収益(益金)から差し引ける費用のことで、『所得=益金-損金』です。

法人税は所得に税率を乗じて求めるため、利息を損金に算入すれば、法人税の節約につながります。

5.レバレッジドバイアウトの流れ

レバレッジドバイアウトの流れ

レバレッジドバイアウトでは、特別目的会社(SPC)を通して金融機関などから資金の借入を行った後、SPCが譲受会社に買収金額を支払い、譲渡会社の株式を取得します。具体的な流れを見ていきましょう。

5-1.特別目的会社(SPC)を設立

譲渡会社の受け皿になる『特別目的会社(SPC)』を設立するのが最初のステップです

M&Aにおける『特定の目的』とは『買収資金を調達して、買収を行うこと』です。SPCはいわゆるペーパーカンパニーのようなもので、資金の流動化のために設立されます。

全体のスキームとしては、『SPCを通して資金の借入を行う』→『SPCが譲受会社に買収金額を支払う』→『譲渡会社の株式を取得する』→『会社を合併する』です。

SPCは『SPC法(資産の流動化に関する法律の略称)』に基づいて設立する場合と、『会社法』に基づいて設立する場合の2パターンがあります。

5-2.SPCが資金を調達する

譲渡会社の資産価値を担保にして『資金調達』を行うのが次のステップです。SPCは資金調達を行うための受け皿に過ぎません。金融機関は『譲渡会社』の返済能力や財産状態を審査し、SPCへの融資額を決定します。

M&Aに対する融資は『レバレッジド・ファイナンス(買収ファイナンス)』と呼ばれます。金融機関が背負うリスクが高くなることから、一般的なコーポレート・ローンよりも高金利です。

銀行からの融資のほかに、『投資ファンド』や『社債の発行』といった資金調達方法もあります。

5-3.SPCが対象会社を買収

資金調達が無事に完了すると、SPCは譲渡会社の株式を買収します。完全に経営権を握るため、100%の株式を取得するのが基本です。買収が完了すると、譲渡会社は『SPCの子会社』となり、実質的な経営権や発言権を失います。

株式の売却に応じない株主がいる場合には、大株主が少数株主の個別の承諾を得ずに株式を取得する『スクイーズアウト』が実施されるケースがあります。株式を失った少数株主には『適正な対価』が支払われるのが一般的なルールです。

5-4.SPCと対象会社を合併

買収後は、SPCと譲渡会社の『合併』によって返済原資を確保します。合併とは、複数の法人格を一つの法人格に統合することです。

買収した段階では、借入の返済義務はSPCにありますが、合併後は返済義務や債務を含めた全ての資産が譲渡会社側に移行します。譲受会社は実質的には借金を背負わずに、株主として経営のかじ取りを行っていくことになるのです。

合併は、融資を行っている『金融機関』の要請によるものです。合併を行わない場合、二つの法人格が存続され『構造的劣後』という問題が生じます。

6.レバレッジドバイアウトのデメリット

レバレッジドバイアウトのデメリット

レバレッジドバイアウトの難点は、想定したリターンが必ずしも得られるとは限らない点です。買収された企業の経営がうまくいかなかった場合、倒産するリスクもあります。コベナンツ条項によって経営に制限が生じるのも一種のデメリットでしょう。

6-1.想定したリターンが得られない可能性もある

会社全体の価値である『企業価値』から『有利子負債』を差し引いたものは『株式価値』と呼ばれます。レバレッジドバイアウト後、譲渡会社が順調に業績を伸ばせば企業価値が上がり、返済分だけ株式価値も上がります。

自己資金の出資が少ない譲受会社は、転売した際に多額のリターンを手にできるでしょう。

しかし、譲渡会社の経営が改善しない場合は企業価値が下がり、株式価値もグンと落ち込みます。想定したリターンが必ずしも得られるとは限らないのです。

6-2.コベナンツ条項により経営に制限が発生

コナベンツ条項によってさまざまな制限が生じ、自己資金で行う事業よりも『経営の自由度』が下がってしまうのもデメリットです。

『コベナンツ条項』とは、融資や社債発行で資金調達を行う際に、契約書に記載される特約条項のことです。貸し倒れなどのさまざまなリスクを最小限にするため、銀行などの貸し手が借り手に課すルールと考えましょう

コナベンツは大きく『義務(アファーマティブ・コベナンツ)』と『制限・禁止(ネガティブ・コベナンツ)』に分けられます。義務には、『定期的な財務情報の開示』や『重要事項の事前申請・事後報告』『純資産や格付の維持』などがあります。

6-3.買収した会社の経営が傾き、倒産するリスク

レバレッジドバイアウトでは、譲渡企業の資産価値が高ければ高いほど高額の融資が受けられます

経営状態が良好であればキャッシュフローが増え、順調に借金を返済できますが、経営が傾けば利子の返済で資金繰りが厳しくなり、『借金まみれ』の状態になってしまいます。リターンが得られるどころか、倒産のリスクも浮上するでしょう。

買収時は『倒産とは無縁』と思われても、予期せぬ資金の流出で急激に経営が悪化することは珍しくありません。

7.経営が安定した会社を買収することが基本

経営が安定した会社を買収することが基本

レバレッジドバイアウトでは、対象企業の資産や期待キャッシュフローを担保として資金を調達します。将来的な収益力が高く、シナジー効果が見込める会社を買収すれば、転売時に巨額の資産が手に入るかもしれません

テコの原理効果が期待できる一方で、経営不振は許されず、利益を必ず生み出さなければならないというプレッシャーものしかかります。

M&Aの専門家に相談し、不安点や疑問点を解消した上で進めていきましょう。税理士法人チェスターにもM&Aのプロが在籍しています。

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