事業譲渡の適正価格を知る方法。資産時価と営業権から算出するには?
タグ: #M&A事業譲渡における適正価格はどのように決まるのでしょうか?代表的な計算方法である、資産時価と営業権評価額から算出する手順について解説します。加えて事業譲渡の基本的な知識や、できるだけ高く売却する方法も見ていきましょう。
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1.事業譲渡の際には適正価格を知ろう
事業譲渡を実施する際には、適正価格を知ることが大切です。そのためにもまずは事業譲渡がどのようなものかという点や、代表的な事業価値の算定方法を解説します。
1-1.事業譲渡の内容と注意点
ある目的のために組織化されたあらゆる財産を事業といいます。代表的な財産は設備・人材・ノウハウ・ブランド・取引先との関係などで、有形・無形を問いません。
この一部もしくは全部を他社へ譲るのが『事業譲渡』です。譲渡する事業を選んだ上での契約もできます。基幹事業のみ残して、その他の部門を譲渡するといった契約も可能です。
比較的自由度の高い事業譲渡ですが、譲渡の対象となる資産や人材を移転するためには、個別に手続きをしなければいけません。そのため手順が複雑になりやすい傾向があります。
また、一定期間は売却した事業と同様の事業に取り組めない『競合避止義務』にも注意が必要です。
1-2.事業価値の主な算定方法
適切な価格で事業売却をするには、目的や事業の種類に応じてふさわしい算定方法を用いなければいけません。絶対的な方法はないため、ケースに応じて適した方法を選びます。下記に紹介するのは代表的な算定方法です。
- インカムアプローチ(DCF法):将来獲得見込みのキャッシュフロー総額を割引現在価値に直して事業価値を算出
- マーケットアプローチ(類似会社比較法):類似している上場企業の事業の売上や株価を参考にする方法
- アセットアプローチ(時価純資産法):事業の持つ資産の時価から負債を差し引いて算出する方法
- 年買法:時価純資産+営業利益〇年分の計算式で算定する方法
2.適正価格を知る必要性と高く売る方法
できるだけ高く事業譲渡をするためにも、まずは自社の適正価格を知ることが大切です。その上で高く売れる事業や売り方のポイントを知っておくと、希望に近い形で譲渡しやすいでしょう。
2-1.売り手は高く見積もる傾向がある
長い期間をかけて成長させてきた事業には思い入れがあるものです。しかし思い入れが強過ぎて、その気持ちを譲渡の希望価格に反映させているかもしれません。
できるだけ高く譲渡したいと過大評価している場合、実際の価値とかけ離れた高額を提示している可能性があります。相場を大きく上回る金額では、そもそも事業譲渡が成立しないでしょう。
愛着がある分、高く見積もりやすいという点をふまえた上で、適正な価格を提示することが大切です。
2-2.高く売れる事業とは
同じ業種や職種でも、高く売れやすい事業があります。例えば優良な顧客リストを持っている事業がそうです。買い手の目的の一つに顧客の獲得がある場合、特に高い価格で買い取ってもらいやすいでしょう。
なかなか取引できない大企業と長年良好な関係を築いているとなると、信用不安のリスクがないといった帳簿外の評価も上乗せされます。
2-3.会社売却も検討する
より高く売却するのが目的なら、事業譲渡ではなく『会社売却』も検討するとよいでしょう。事業単位で売却する事業譲渡と異なり、会社売却では人材も含め会社を丸ごと売却します。
小規模な会社の価値は人材によっても左右されます。経験豊富なベテラン社員やキーマンになる人物が抜けてしまうと機能しない事業もあるほどです。
そのため買い手には、事業譲渡後に重要な人材と雇用契約を結べず事業の価値が低減するリスクがあります。一方、基本的に雇用が継続される会社売却では、そのままの事業価値で引き継げるため、高額で売却しやすいのです。
3.事業価値の一般的な計算方法
事業価値を算出するために、簡易的に計算できる年買法の手順を紹介します。買い手との協議により決まる部分もありますが、自社だけでもおおよその金額を計算可能です。
3-1.まずは資産時価を算出
まず計算するのは会社の『資産時価』です。そのためには決算書の『固定資産減価償却内訳明細書』を確認します。
固定資産はそれぞれ耐用年数が決まっており、購入してから耐用年数に至るまでどんどん価値が目減りしていきます。そのために行う処理が減価償却です。
減価償却をした価格は、現時点における固定資産の価値のため、そのまま資産時価として利用できます。また売り手と買い手で評価の異なる資産については、交渉により価格を決定するケースがほとんどです。
3-2.営業権を算出して評価額を知る
次に求めるのは『営業権(のれん)』の額です。計算する際には事業の正常利益2~3年分と計算されるケースが多いでしょう。ただし何年分の利益を用いるかは、業種によって異なります。
比較的参入しやすい業種であれば2年分以下で、特別な技術や設備が必要な参入が難しい業種は4~5年分で計算される場合もあります。業種の他事業に対する今後のビジョンによっても、何年分かは変化する部分です。
さらに求めた値を役員報酬や保険の掛け金などで調整し、営業権の評価額を求めます。
3-3.総合的な価値が算出され最終価格が決まる
事業譲渡の価格は先に求めた『資産時価+営業権評価額』で計算可能です。ただしこの値が最終価格ではありません。計算による企業価値評価を元に、買い手は買収価格を決定します。
その後、売り手と交渉を行い、合意した金額が最終価格であり、売り手が受け取る金額です。
4.事業の適正価格を知って納得のいく取引を
大切に成長させてきた事業を譲渡する際には、できるだけ高く売りたいと思うのは当然でしょう。そのためにも適正価格を知ることが大切です。
自社の事業がどのくらいの価格で売却できるのか、一般的に利用されている『資産時価+営業権評価額』の計算式を用い計算すると参考になります。適正価格を知った上で交渉をすれば、納得できる取引につながるはずです。
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