医療法人の出資持分譲渡とは。譲渡価格と税金に注意

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医療法人がM&Aや事業承継を実施する際には、出資持分譲渡という方法で行われるケースがあります。出資持分とはどのような性質のものなのでしょうか?また出資持分譲渡の特徴や手続きの流れ、利益に課される税金について解説します。

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1. 医療法人の出資持分とは

1. 医療法人の出資持分とは

医療法改正が行われた2007年3月31日以前に設立された医療法人は、『出資持分ありの医療法人』に分類されます。出資持分譲渡について理解するために、まずは出資持分について見ていきましょう。

1-1. 医療法人に対する財産権

出資持分を所有していると、定款に定められているルールに従い、以下を受け取れます。

  • 社員資格喪失時に、出資額に応じた払い戻し
  • 医療法人解散時に、残余財産の分配

また出資持分の所有者は、第三者に出資持分の譲渡が可能です。そのためM&Aや事業承継に用いられるケースもあります。譲渡するときの評価額の計算方法は『出資金額+利益剰余金』です。

1-2. 出資持分のある医療法人は新規設立不可

現在新たに設立できるのは、『出資持分のない医療法人』に限られます。2007年施行の医療法改正によって、出資持分のある医療法人の新設ができなくなったためです。

新設はできませんが、既存の出資持分のある医療法人がなくなるわけではありません。経過措置が取られており当面は存続するため、2007年より前に設立された医療法人では、出資持分譲渡によるM&Aや事業承継が可能です。

2. 出資持分譲渡が行われるタイミング

2. 出資持分譲渡が行われるタイミング

出資持分譲渡は、医療法人のM&Aや事業承継のタイミングで行われます。医療法人の新設は行政への申請が必要ですが、出資持分譲渡であれば行政への届出は原則的に不要です。

2-1. M&Aや事業承継で実施される

株式会社の出資者が株式を保有するように、医療法人の出資者が保有しているのが出資持分です。出資持分は財産であり、相続・贈与・譲渡などの対象となります。

保有している出資持分は、定款等で特別に定められていなければ、その一部もしくは全部の売却が可能です。そのため出資持分譲渡の実施によって、M&Aや事業承継ができます。

出資持分譲渡によるM&Aや事業承継は、株式会社の株式譲渡に該当する取引です。医療法人を丸ごと買い手に引き渡すため、資産や負債はもちろん契約も全て引き継がれます。

2-2. 原則、行政などの許可は不要

出資持分譲渡を実施する際に、行政や医師会などへの届出は必要ありません。医療法による制限もないため、売り手である医療法人の理事長は、自由に出資持分を売却できます。

医療法人は事業譲渡によるM&Aも実施が可能です。ただし出資持分譲渡とは異なり、都道府県に相談の上、地域医療構想調整会議にかける必要があります

また事業譲渡では経営主体が変わるため、買い手は対象の医療法人に雇用されている従業員と雇用契約を結び直す必要もあります。出資持分譲渡の方が手続きの手間が少なく、売り手・買い手にとってベストなタイミングで実施できるのが特徴です。

参考:5.事業譲渡|医療法人のM&Aの特徴。手法の選び方、税負担の注意点など

3. 出資持分譲渡のメリット・デメリット

3. 出資持分譲渡のメリット・デメリット

医療法人の出資持分は株式会社の株式のようなもので、財産として相続や譲渡ができます。この性質を利用すると、出資持分譲渡によってM&Aや事業承継ができると分かりました。出資持分譲渡を実施するときのメリット・デメリットを見ていきましょう。

3-1. 売り手側のメリット・デメリット

出資持分譲渡を行うと、売り手は対価を得られます。出資持分のある医療法人は新設できないため、将来払い戻し金を受け取りたいと考える買い手がつきやすいのが特徴です。

買い手が集まりやすい点や、純資産額を元に時価評価で価格が決まる点から、売り手は高額の対価を得られるでしょう。ただし対価には税金がかかるため、全てを受け取れない点はデメリットです。

譲渡所得に該当するため、約20%の所得税等が課されます。課税対象となる譲渡所得は、対価から出資金額と譲渡にかかった費用を差し引いた金額です。

参考:3-2.出資持分の払戻しとは|医療法人のM&Aの特徴。手法の選び方、税負担の注意点など

3-2. 買い手側のメリット・デメリット

買い手にとって、出資持分ありの医療法人を買収できること自体がメリットといえます。ただし出資持分ありの医療法人の新規設立ができない事情から、譲渡費用が高額になりがちな点はデメリットです。

高くなりがちな譲渡費用を抑えるには、役員退職金を活用できます。売り手である理事長への対価の一部を役員退職金とすることで、経費になり法人税の節約につながるからです。

また法人を丸ごと引き継げるため、都道府県知事や保健所・法務局・税務署への届出のみで済むのもメリットといえます。ただし帳簿に計上されない簿外債務がある場合、それも丸ごと引き継がなければいけません。

リスク回避のためには入念な調査が必要です。併せて、調査結果が真実であると示し保証する表明保証条項を、最終契約書に設けるとよいでしょう。

4. 出資持分譲渡による事業承継の流れ

4. 出資持分譲渡による事業承継の流れ

出資持分譲渡によって事業承継を行うに当たり、契約書を締結したら出資者名簿を書き換えましょう。その後、社員の入れ替えを実施します。役員が変わるため、行政への届出も必要です。

4-1. 契約書締結と出資者名簿の書き換え

医療法人の事業承継を出資持分譲渡で実施するには、契約書を取り交わします。必要な手続きは出資持分の譲渡と、経営陣である社員の交代の2種類であるため、契約書も2種類作成しなければいけません

また出資持分には実体がないため、引き渡しは出資者名簿の書き換えにより行われます。譲渡対価の決済が終わると、名簿に記載される出資者が買い手に書き換えられ、引き渡しの完了です。

4-2. 社員の入れ替えと行政への届出

必要に応じて社員の入れ替えも実施しましょう。ただし社員の入れ替えは必ずしなければいけないものではありません。買い手の方針にのっとって議決行使できる体制であれば、従前のままでもよいでしょう。

また買い手が新たに理事長に就任すると、都道府県知事への届出が必要です。医療法によって定められている義務のため、必ず実施しなければいけません。

5. 出資持分譲渡により発生する税金

5. 出資持分譲渡により発生する税金

医療法人の売り手は出資持分譲渡によって対価を得られます。対価は理事長の利益となるため、税金が課されます。負担する税金の種類や、対価の一部を退職金とした場合の扱いも確認しましょう。

5-1. 利益には所得税がかかる

出資持分譲渡で売り手である理事長が利益を得ると、その利益には約20%の所得税等が課されます。このとき課税対象となる譲渡所得は『売却額−(出資額+売却費用)』で計算が可能です。例えば以下のケースを計算してみましょう。

  • 売却額:1億円
  • 出資額:1,500万円
  • 売却費用:1,000万円

『1億円−(1,500万円+1,000万円)=7,500万円』のため、譲渡所得は7,500万円です。譲渡所得に課税されるため、負担する税金は『7,500万円×約20%=約1,500万円』と分かります。

また出資持分を評価額より低い金額で買い手に譲渡すると、評価額と売却額の差額を贈与したとみなされ、買い手に贈与税が課される可能性があります。

5-2. 譲渡価額総額に退職金が含まれる場合

売り手が受け取る対価の一部もしくは全部を退職金とすると、『退職所得控除』の対象となり、税金を低く抑えやすくなるかもしれません。ただし手元に残る金額は、ケースによって異なります

これまでの勤務状況も所得税の計算に影響するため、一概にどちらの税額が低いと断定はできません。そのため『税理士法人チェスター』をはじめ、M&Aに詳しい税理士に依頼し税額を試算してもらうとよいでしょう。

また対価を退職金にすると、医療法人名義で資金調達ができます。退職金は損金算入が可能なため、法人税の節約にもつながります。売り手に一括で支払う金額が減ることで、買い手がつきやすくなる可能性も考慮し決めるとよいでしょう。

事業承継コンサルティングなら税理士法人チェスター

参考:M&Aに関わる税金と計算方法。退職金を対価としたM&Aとは?

6. 医療法人の事業承継は出資持分の理解が重要

6. 医療法人の事業承継は出資持分の理解が重要

医療法人のM&Aや事業承継では、出資持分譲渡が用いられるケースが多いでしょう。株式会社における株式譲渡にあたるもので、手続きが比較的シンプルに済むのが特徴です。

売り手は対価として利益を得られるメリットがありますが、利益には税金が課されます。譲渡対価として受け取ると、約20%の所得税等を納税しなければいけません

また対価の一部もしくは全部を退職金として受け取ると、退職所得控除の対象となります。どちらが税の負担を減らせるかはケースバイケースのため、税理士に試算を依頼するとよいでしょう。

税理士法人チェスターでは、相続事業承継コンサルティング部の実務経験豊富な専任税理士が、お客様にとって最適な方法をご提案いたします。

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医療法人を相続によって引き継ぐ場合の出資持分については、以下もご覧ください。

「医療法人の出資持分」の相続税評価

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