アーンアウト条項設定の目的とは。M&Aの契約書で注意すること

アーンアウト条項を設定すると、クロージング時に加え、定められた期間内に目標を達成した場合にも報酬を受け取れます。なぜM&Aを実施するときにアーンアウト条項を設定するのでしょうか?設定される場面や設定方法などを確認しましょう。

1.アーンアウト条項が使われる場面

1.アーンアウト条項が使われる場面

価格交渉で合意形成が難しい場合や、ベンチャー企業で買収にリスクがある場合には、アーンアウト条項が役立ちます。最終契約書にアーンアウト条項を設定することで、M&Aが成立しやすくなるかもしれません。

1-1.価格交渉が難航しているときに

M&Aを実施するにあたり、売り手はできるだけ高く売りたいと考え、買い手はできるだけ安く買いたいと考えるのは当然のことです。しかしずっとお互いの希望をぶつけ合うだけでは、交渉がまとまりません。

価格交渉が平行線になったときには『アーンアウト条項』を設定することにより、M&A成立の可能性を高められます。

クロージング時の売却価格が売り手の希望に満たなかったとしても、将来的に目標を達成した際に支払われるインセンティブを受け取れるからです。売り手は売却を決断しやすくなり、買い手はリスクを軽減できます。

1-1-1.そもそもM&A価格はどう決まる?

売却価格を決めるときには、事業内容・事業規模・財務状況などをもとに『企業価値評価』を実施します。中小企業でよく用いられるのは、『時価純資産+営業利益2~5年分』で計算する方法です。

ただしこの計算で求められた価格が、そのまま売却価格になるわけではありません。M&Aの価格は、売り手と買い手の交渉によって決まります。お互いが納得する価格であれば、企業価値評価と異なる金額でも構いません。

1-2.ベンチャー企業を対象としたM&Aで活用

ベンチャー企業の将来性は未知数といえます。成功すれば大きく成長するかもしれない一方で、失敗すれば大きな損失を抱えるかもしれません。

魅力的な事業を行っていても、将来の不確実性からなかなかM&Aの成立に結びつかないケースもあるでしょう。このようなときにはアーンアウト条項を用いると、お互いに納得のいく内容で契約しやすくなります。

現時点における利益ではなく将来的な成長可能性を考慮してもらえる点は、売り手にとってのメリットです。一方、買い手はアーンアウト条項によりリスクを分散できます。

期待する成長を達成すれば追加で報酬を支払うものの、達成できなければ払わなくて構いません。そのため少々リスクが高めの企業でも買収しやすいでしょう。

2.支払いの流れ

2.支払いの流れ

通常のM&Aでは、支払いを受けるのはクロージング時の1回のみです。一方アーンアウト条項を設定すると、支払いはクロージング時と条件達成時の複数回あります。

2-1.クロージング時に売買価格の支払い

さまざまな手続きが完了し、会社の経営権が買い手に移行するタイミングをクロージングといいます。クロージング時に支払われるのは『売買価格』です。

企業価値評価にもとづき、売り手と買い手の交渉で決定した価格を受け取ります。売買価格は確定額で、達成条件によって価格が異なるものではありません

2-2.条件を達成した際に追加で支払い

アーンアウト条項が設定されていると、条件達成時にも支払いが行われます。事業が期待通りに成長したことに対して受け取れる『インセンティブ』のような性質を持つ支払いです。

取り組みが報酬として反映されるため、売り手のモチベーションを維持しやすい方法でもあります。条件達成時の支払いは、一括払い・分割払いどちらでも設定されるケースがあるでしょう。

分割払いの場合、条件を達成すると毎年10%ずつ支払うというように、買い手は時間をかけて支払いを完了させます。

3.アーンアウト条項の設定方法

3.アーンアウト条項の設定方法

最終契約書にアーンアウト条項を設けるときの方法もチェックしましょう。条件や期間を明確に定め、最終契約書へ記載しなければいけません。スムーズにアーンアウト条項を設定するには、信頼関係を構築できているとよいでしょう。

3-1.信頼関係を築きながら交渉を進める

アーンアウト条項を設定する上では『信頼関係』が欠かせません。良好な関係性が構築されないままにアーンアウト条項について交渉を始めると、売り手としては『買いたたかれているのではないか?』と感じるでしょう。

本当に信頼して会社を売却できる相手なのか、不安に感じ始めるかもしれません。スムーズな成約のためにも、まずは信頼関係の形成が重要です。

3-2.最終契約書に記載

交渉の中でアーンアウト条項の設定に合意したら、『最終契約書』へ記載します。最終契約書はM&Aの諸条件を定めるものです。記載される内容は、個々の案件によって異なります。

アーンアウト条項は支払いに関係する内容のため、行き違いや勘違いで後から揉めることのないよう、明確に記載しましょう。記載する具体的な内容は、報酬支払いの『条件』や、支払われる金額の『計算式』などです。

3-3.アーンアウトの条件設定

どのような条件を達成すると支払いを受けられるのかを、明確に定めましょう。一般的には、財務状況や業績の好不調を表す財務指標を用いるケースが多いようです。代表的な財務指標を見ていきましょう。

  • 売上
  • 営業利益
  • 純利益
  • EBIT
  • EBITDA

中には財務指標以外の指標を条件とするケースもあります。例えば『ユーザー数』や『契約数』などです。事業の内容によって適した指標を設定しましょう。

条件設定で売り手と買い手がお互いに納得できなければ、交渉が進まない可能性もあります。

3-4.アーンアウト期間

定めた条件を達成する期限として『アーンアウト期間』も定めなければいけません。一般的には『1~3年』で設定されるケースが多いでしょう。

10年といった長すぎる期間が設定されていると、条件を達成したのは売り手の努力とはいえない可能性があります。3年程度までであれば、売り手の影響がまだ大きく、モチベーションアップにも役立てやすい年数です。

4.買い手にとってのアーンアウト条項

4.買い手にとってのアーンアウト条項

M&Aの実施時に買い手がアーンアウト条項を設定したいと考えるのは、リスクを避けやすくなるからです。ロックアップ条項とともに用いることで、メリットを得やすい方法といえます。

4-1.リスク対策になる

売り手を買収することにより将来得られる価値を算出するのは難しい営為です。過去の利益は分かりますが、これからどれだけ稼げる会社なのかは実際にやってみるまで分かりません。

この状態で将来の価値も含めてM&A価格を決定すると、期待通りの利益が出ない場合に買い手は大きな損失を出してしまいます。アーンアウト条項を設定すれば、報酬を2回以上に分けて支払い可能です。

クロージング時に支払う1回目の報酬は必須ですが、条件達成時に支払う2回目の報酬は条件未達であれば支払う必要がありません。期待していたほどの成果が出なくても、損失を1回目の報酬のみに抑えられます。

全ての報酬をクロージング時に支払う方法と比べて損失を抑えやすいため、リスク回避につながる方法です。

4-2.ロックアップとセットで設定

アーンアウト条項は『ロックアップ条項』と組み合わせて用いられるケースが多いでしょう。ロックアップ条項は売り手の経営者やキーマンを、一定期間会社にとどめるための規定です。

売り手会社にとって重要な人物を、限られた期間とはいえ働かせるには、モチベーションにつながる何かが必要です。アーンアウト条項により、条件を達成すると受け取れる報酬がその一つになり得ます。

キーマンにとってはインセンティブを受け取れるため、積極的に頑張ろうという意識が芽生えやすいでしょう。売り手のキーマンが精力的に仕事に取り組めば、組織全体にポジティブな影響が出ることも期待できます。

ロックアップ条項と組み合わせて使えば、買い手はメリットを得やすいはずです。

5.売り手にとってのアーンアウト条項とは

5.売り手にとってのアーンアウト条項とは

アーンアウト条項を設定すると、売り手にとってはスムーズな売却につながりやすいメリットがあります。ただし支払いが2回以上に分かれる点はデメリットです。

5-1.売却がスムーズに進む

会社を売りたいと思っていても、将来性が不確かと感じられてしまうと、なかなか買い手が見つからないでしょう。そもそも交渉に進めなかったり、交渉していても長らく進展しなかったりという事態が考えられます。

アーンアウト条項の設定を売り手が買い手に提案すると、M&Aの成立に結びつくかもしれません。将来性が不確かな会社であっても、アーンアウト条項でリスクを回避できれば『買収したい』と考える買い手もいるからです。

買い手のリスクマネジメントを可能にする手段として、売り手側も利用できます

5-2.売却時に全額を受け取れない

売り手にとって、報酬を一度に全て受け取れない点はデメリットです。特にまとまった資金を期待してM&Aを希望している売り手にとっては、一括で受け取れる金額が減るのは望ましくありません。

ただしトータルで受け取れる報酬額は、一括払いで受け取るより高額になる可能性があります。例えばアーンアウト期間中に大きく業績を伸ばしたケースです。

業績に連動して支払いを受けられる契約になっていれば、インセンティブとして多額の報酬を受け取れます。

6.アーンアウト条項でM&Aが円滑に成立

6.アーンアウト条項でM&Aが円滑に成立

クロージング時と条件達成時に分けて支払いを受けられるのがアーンアウト条項です。買い手にとってはリスク回避、売り手にとってはスムーズな売却というメリットがあります

価格交渉で話が進まなくなっているケースや、将来性が不確実なベンチャーを対象とした取引のケースで、実際に利用されています。

設定する際には、交渉で決定した具体的な条件を、最終契約書へ盛り込みましょう。行き違いや勘違いが発生していると、後から大きなトラブルに発展する可能性もあります。

どのような内容なのか、よく確認した上で契約書を締結しましょう。このとき、すでに信頼関係を築けている間柄であれば、スムーズに進みやすいはずです。

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