相続登記が【2024年4月から義務化】土地所有者ができること

タグ:
2024年以降、相続登記が義務化。土地所有者ができること

土地の相続登記が2024年4月1日から義務化されることになりました。

これまで土地の相続登記は義務ではなかったため相続登記をしないケースが多く、長い期間を経て土地の所有者がわからなくなることもありました。所有者がわからない土地は有効に活用することができず、このような土地の増加が社会問題になっています。

所有者がわからない土地がこれ以上増えないように、相続登記が義務化されることになりました。より実効性のあるものにするため、正当な理由なく違反した場合には過料が科されます。

この記事では、相続登記の義務化の詳細と、土地の所有者が取るべき対策をご紹介します。

1.所有者がわからない土地がある

本来、土地を相続した人は、不動産の名義変更つまり相続登記をすることになっています。しかし、次のようなさまざまな事情で相続登記が行われないケースがありました。

  • 相続人全員の同意を求めるなど手続きが煩雑で司法書士費用もかかる
  • 相続人どうしでもめていて誰が土地を相続するかが決められない
  • 相続登記は義務化されていなかったので手続きを忘れていた

先祖代々住んできた土地では、何代にもわたって相続を繰り返す中で一度も相続登記が行われなかったケースもあります。このような場合では登記簿から所有者が判明せず、実際の所有者を探し出すことが困難になります。

国土交通省は平成28年度に地籍調査をした約62万筆(563市区町村1,130地区)の土地について所有者を調べたところ、登記簿から所有者が判明しなかった土地の割合は20.1%にのぼりました。そのうち3分の2は相続登記が行われていないもので、残りの3分の1は所有者の住所変更の未登記などによるものでした。

また、法務省は平成29年に全国10か所の地区約10万筆の土地を対象に、最後の登記からの経過年数を調査しました。その結果、大都市以外の地域では4分の1を超える土地が最後の登記から50年以上経過していることがわかりました。

長期間登記されていない土地は、現に所有者がわからなくなっているか、将来所有者がわからなくなる可能性が高いと考えられます。

(下記に示す割合は累積値)最後の登記から90年以上経過しているもの最後の登記から70年以上経過しているもの最後の登記から50年以上経過しているもの
大都市
(所有権の個数:24,360個)
0.4%1.1%6.6%
中小都市・中山間地域
(同上:93,986個)
7.0%12.0%26.6%

(出典:法務省ウェブサイト「不動産登記簿における相続登記未了土地調査について」)

2.所有者不明の土地は有効活用しづらい

土地を取得したり利用したりするときは、所有者の同意が必要になります。登記簿から所有者が判明しない所有者不明の土地は、主に次の2つの点で土地の有効活用の妨げになっています。

  • 所有者の探索に手間がかかる
  • 所有者の同意を得るのに手間がかかる

大規模災害の被災地では、所有者不明の土地が復興事業の妨げになっているケースもあります。

2-1.所有者の探索に手間がかかる

相続登記が行われないことで所有者不明になっている土地は、亡くなった人が登記簿上の名義人となっています。法律の上では、所有者が死亡した土地は相続人が共同で相続するため、名義人の相続人を探し出す必要があります。

名義人の相続人を探し出すには名義人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要で、もし相続人が死亡していれば、その相続人の出生から死亡までの戸籍謄本も必要になります。

相続人の探索には時間と費用がかかり、これらの負担が土地の有効活用の妨げになっています。

2-2.所有者の同意を得るのに手間がかかる

所有者不明の土地の実質的な所有者(名義人の相続人)を探し出したとしても、次にこれらの相続人の全員と交渉して同意を得る必要があります。

親から子、子から孫、孫からひ孫へと相続を繰り返す中で一度も相続登記が行われなかった場合は、下の図で示すように相続人が十数人に及ぶこともあります。このような場合、すべての相続人の同意を得ることは困難です。

不動産の相続登記をしないと共有者が増えてしまう

3.所有者不明の土地が増えないように相続登記を義務化

これまで土地の相続登記が義務付けられていなかったことで、長い年月を経て土地の所有者がわからなくなる状態が生じてきました。

そこで、これ以上所有者不明の土地が増えないようにするため、2024年4月1日から相続登記が義務化されることになりました。

相続登記の義務化をより実効性のあるものにするため、次のような事項も検討されています。

制度の内容は次のとおりです。

  • 相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならない
  • 過去に相続して登記が済んでいない不動産も登記の義務化の対象
    (施行日(2024年4月1日)から3年以内に申請する)
  • 3年以内に遺産分割が成立しない場合は、相続人申告登記をすれば上記申請義務を履行したものとする
    (この場合は、遺産分割成立後3年以内に相続登記を行う)
  • 正当な理由なく申請しなかった場合は10万円以下の過料

これらの内容を詳しく解説します。

3-1.相続から3年以内に申請する

相続(特定財産承継遺言を含む)や遺贈により不動産(土地・建物)を取得した相続人は、相続登記の申請が義務付けられます。

期限は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内です。

(特定財産承継遺言とは、特定の財産を特定の相続人に継がせる遺言で、以前は「相続させる旨の遺言」と呼ばれていたものです。)

3-2.過去に相続した不動産も義務化の対象に

相続登記の義務化は令和6年4月1日に施行されますが、この日より前に相続があった場合についても登記申請義務が課されます。

つまり、過去に不動産を相続してこれまで相続登記をしていなかったケースも、相続登記の義務化の対象になります。

この場合は、施行日または所有権を取得したことを知った日のいずれか遅い日から3年以内に申請することになります。

3-3.3年以内に遺産分割が成立しない場合は相続人申告登記を行う

相続人が多い場合や相続で争いがある場合などでは、相続開始から3年以内に遺産分割が成立しないこともあります。そのような場合には、簡易な方法として相続人申告登記をすることができます。

相続人申告登記をすれば、相続登記の申請義務を履行したことになります。登記簿に不動産の名義人の相続人が記載されることで、所有者がわからないという事態はひとまず避けられるからです。

相続人申告登記は、相続人のうち1人が単独で行うことができ、他の相続人の分も代理で申請できます。自身が名義人の相続人であることを証明できればよいので必要書類が少なくて済むほか、相続割合の確定も必要ないので、遺産分割が成立する前でも届出ができます。

しかし、所有権を取得したことにはならないため、遺産分割が成立すれば3年以内に相続登記を行う必要があります。

3-4.違反すれば10万円以下の過料

正当な理由なく登記申請義務に違反した場合は、10万円以下の過料が科されます。

ただし、違反したからといって直ちに過料が科されるのではなく、まずは法務局から相続人に対して相続登記をするよう催告が行われます。催告に応じて相続登記をした場合は、過料は課されません。

なお、ここでいう正当な理由とは、おおむね次のような状態が考えられます。これらに当てはまらない場合でも、個別の事情を確認したうえで判断されます。

  • 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われている場合
  • 重病等である場合
  • DV被害者等である場合
  • 経済的に困窮している場合

3-5.相続登記義務化以外の施策

今回の法改正では、所有者不明の土地を増やさないための施策として、相続登記の義務化のほかに次のようなことも行われます。

  • 土地共有や財産管理の制度の見直し(令和5年4月1日施行)
  • 相続した土地の所有権の放棄を認める相続土地国庫帰属制度の創設(令和5年4月27日施行)
  • 登記名義人の死亡情報を符号によって登記簿に表示する制度の創設(令和8年4月1日施行)

4.期限の前でも早めに相続登記を

相続登記の期限は相続から3年ですが、不動産を相続したときはできるだけ早く相続登記をするようおすすめします。

相続登記は専門家に依頼しなくても自分で手続きをすることができます。相続登記されていないのが一代だけで相続人どうしで話し合いができれば、自分で手続きをしてもよいでしょう。相続登記の方法については、「相続登記の手続きを自分一人で行うことができる完全ガイド」を参照してください。

自分で手続きをすることが難しい場合や時間がない場合は司法書士に依頼することもできます。特に、何代にもわたって相続登記が行われず、相続人の数が多い場合は司法書士に依頼することをおすすめします。司法書士報酬の平均的な金額は10万円程度とされていますが、何代にもわたって相続登記が行われていない場合は高くなります。詳しい内容は、「相続登記の司法書士報酬の相場を徹底解説」も参考にしてください。

相続手続き専門の司法書士法人チェスターでも相続登記を代行しております。相続手続きを全てお任せいただけるプランなどもありますのでお気軽にご相談ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

【面談予約受付時間】
9時~20時(土日祝も対応可)