遺産相続の手続きにかかる費用。税務申告や名義変更など項目ごとに解説

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遺産相続の手続きにはどのような費用がかかるのでしょうか?相続税が発生するケースや、税務申告・不動産を相続するときの手続きなどと、それらに伴う費用を項目ごとに見ていきましょう。相続放棄にかかる費用についても解説します。

1.相続にはいくらお金が必要?

相続にかかる費用

相続をすると財産を引き継げますが、支払う費用も発生します。具体的にどのくらいのお金が必要なのか把握するために、まずは相続税が発生するケースと税理士費用についてチェックしましょう。

1-1.相続税が発生するケースとは

もし相続する財産が基礎控除以下ならば、相続税はかかりません。申告も必要ないため、税務署での手続きは不要です。基礎控除は『3,000万円+(法定相続人の数×600万円)』で求められます。

例えば配偶者と子2人が法定相続人であれば、基礎控除額は4,800万円です。この金額より相続財産が多い場合には、相続税が発生する可能性があります。しかし実際には『配偶者の税額の軽減』などさまざまな軽減制度があるため、相続税を支払う人は全体の8%程度です。

相続税の税額の目安は、下記の早見表で調べることができます。
相続税の早見表|相続税がいくらか簡単チェック

相続税が発生する場合は相続税額に加え、必要書類の発行にも費用がかかります。例えば各金融機関の残高証明書発行手数料などです。

1-2.税務申告等を代行する税理士への報酬

税務申告などの手続きは自分でもできますが、相続財産が多いとそれだけ書類の作成や手続きに手間がかかります。1人では難しいと感じるなら、税務申告を行っている税理士に手続きの代行を依頼してもよいでしょう。

申告だけでなく、申告から1~2年後に行われる税務調査の対応も任せられます。立ち合いのサポートをしてくれるため、自分で対応するよりもスムーズに調査を終えられるでしょう。

税理士への報酬は『遺産総額×0.5~1%』が目安です。ただし遺産に非上場株式が含まれる、相続人が大勢いる、申告期限の期日が迫っているといったケースでは、報酬に特別加算が発生する場合もあります。また、税務調査への対応も別途報酬が発生します。

例えば『税理士法人チェスター』では、相続税の申告をトータルでサポートしています。基本的な報酬は、遺産総額が7,000万円未満の場合で45万円(税抜き)です。

何から始めたらよいのかわからない、忙しくて時間がないという人こそ、利用するメリットが大きいでしょう。

相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】

1-2-1.費用は誰が負担する?

申告の代行を依頼するときには『配偶者』が費用を負担するケースが多いでしょう。配偶者の相続財産を少しでも減らしておけば、配偶者から子へ相続するときの相続税を減らせるからです。

また相続人が兄弟姉妹といったケースでは、相続分に応じて各相続人が負担すると、トラブルに発展しにくくなります。

2.不動産の相続にかかる費用

不動産の相続

不動産を相続したら速やかに相続登記を実施しましょう。そのために必要な費用について解説します。

2-1.相続登記の必要性

相続した不動産の名義は、その時点では被相続人のものになっています。

不動産を財産として売却・活用するには、相続登記による名義変更が欠かせません。担保にして借入をしたいと考えても、自分の名義になっていなければ担保として認められないでしょう。

そのまま放置していては、せっかくの財産を生かしきれないのです。また、相続登記をしていない不動産は相続人が全員で共有していることになります。さらに下の世代へ相続が発生すると、所有者が増えていくという事態も考えられます。

誰が所有者なのかはっきりしない不動産になることを避けるためにも、相続登記は必要です。

なお、令和6年4月1日から不動産の相続登記が義務付けられ、相続から3年以内に相続登記をしなければいけません。過去に相続してまだ相続登記していない不動産も義務化の対象となり、令和6年4月1日から3年以内に相続登記をする必要があります。

2-2.不動産価格に0.4%をかけた登録免許税

不動産を相続した場合は、相続登記をしなければいけません。ただし登記をするにあたり『登録免許税』という費用が必要です。相続による登記では『不動産の固定資産税評価額×0.4%』を納めます。

固定資産税評価額は『固定資産評価証明書』に記載されているものです。東京23区では都税事務所で、その他の地域では不動産所在地の市区町村役場で取得します。

2-3.必要書類を集める際の費用

不動産の登記にはさまざまな書類が必要です。発行に費用がかかるものもあるため、それぞれどの程度で用意できるのか把握しておきましょう(自治体によって金額は異なります)。

  • 被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本):戸籍謄本1通450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本1通750円
  • 被相続人の住民票の除票:1通300円
  • 被相続人の戸籍の附票:1通300円
  • 相続人全員の戸籍謄本:1通450円
  • 相続人の住民票の写し:1通300円
  • 相続人全員の印鑑証明書:1通300円
  • 固定資産評価証明書:1通300円

これらの書類は原本の提出が必要ですが、戸籍謄本など一定のものは「原本還付」の手続きをすれば原本を返してもらうことができます。

2-4.登記を代行する司法書士への報酬

複数の書類を誤りなくそろえ、適切な手続きをしなければいけない相続登記は、難しいと感じることもあるでしょう。そのような際には司法書士へ依頼します。

個人の住宅を相続する一般的な手続きであれば『6~10万円』ほどが相場です。依頼内容や地域によっても金額は異なるため、事前に連絡しておおよそいくらで依頼できるか確認しておきます。

特に事情がある場合には、司法書士に任せた方が円滑に進められるでしょう。例えば甥姪が相続人、相続関係が複雑、被相続人の住民票の除票が発行されないといったケースです。

2-5.不動産取得税が発生するケース

相続による不動産の取得は、相続人の意思で時期を決めることができません。受動的に起こる不動産取得に課税するのは酷だろうという配慮から、相続による不動産取得は不動産取得税の対象外とされます。

ただしケースによっては、不動産取得税を納めなければいけないこともあるのです。例えば生前贈与により不動産を引き継いでいる場合や、法定相続人以外が特定遺贈(財産を指定して行う遺贈)を受けた場合が該当します。

ほかに「私が死んだら家と土地をあげるよ」といった生前の約束による死因贈与も、不動産取得税が課されるケースです。

3.自動車の相続による名義変更でかかる費用

自動車の相続

被相続人が保有していた自動車を引き継ぐときには、名義変更の手続きが必要です。その際にかかる費用や、手続きを代行してもらう場合の費用相場はいくらくらいなのでしょうか?

3-1.車庫証明やナンバープレート代など

自動車の名義変更に必要な書類は下記の通りです。費用がかかるものはいくらくらいなのかも、合わせて紹介します。

  • 移転登録申請書
  • 車検証
  • 手数料納付書(検査登録印紙を貼付):500円
  • 新しい所有者の印鑑証明書:300円
  • 車庫証明書(使用の本拠が変わる場合に必要、証明の日から40日以内):2,500~3,000円
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 被相続人の死亡の事実と相続人全員がわかる戸籍謄本等:金額は戸籍謄本等の数により異なる

このほかに県外に移るなど新しい所有者の住所によっては、ナンバープレートも変更しなければいけない場合があります。変更にかかるのは1,500~7,000円ほどです。

車庫証明の取得には、平日の日中に警察署へ行かなければいけませんし、書類がそろったら運輸支局等での手続きがあります。土日しか仕事を休めない場合には、手続き代行を利用するとよいでしょう。

3-2.手続き代行を依頼すると手数料がかかる

手続き代行には費用がかかります。ディーラー・自動車販売店・整備工場などで請け負っているため、いつも利用しているところへ相談するとよいでしょう。行政書士の中にも、手続きを請け負っているケースがあります。

費用の相場はどこへ依頼するかで異なるため、比較すると価格の差が大きいことも珍しくありません。安ければ1万円ほど、高ければ5万円を超すこともあります。

4.預貯金の相続にかかる費用

預貯金の相続

預貯金の相続をする際にも費用が必要です。自分でも手続きは可能ですが、代行してもらうことで無用なトラブルを避けることにもつながります。

4-1.自分で手続きしない場合は代行手数料

預貯金の相続手続きを行政書士・弁護士・司法書士などへ依頼すると、1件あたり『2~10万円』程度の費用が必要です。このほかに必要書類の発行手数料や作成費用もかかります。

預貯金の相続手続きは自分でもできますが、取引銀行が複数あるとそれぞれで手続きが必要ですし、銀行へ複数回行かなければいけません。相続人全員の署名・実印の捺印をもらう必要がある点も、手続きが複雑に感じられる理由です。

また被相続人が死亡した時点で、預貯金は相続人の共有財産となります。銀行が死亡の事実を知った段階で口座は凍結されますが、それまでに出金していると、必要な費用でもトラブルに発展するかもしれません。手続きを依頼することでトラブル回避にも役立つでしょう。

5.遺産分割協議書にかかる費用

遺産分割協議書

場合によっては遺産分割協議書を作成しなければいけないこともあるでしょう。どこへ依頼するか、遺産がどのくらいあるか、協議はスムーズに進んでいるか、といった点により費用が異なります。

5-1.依頼先や遺産額によって異なる

遺産分割協議書の作成は弁護士や司法書士、行政書士へ依頼できます。どこへ依頼するかによって費用は異なりますが、弁護士への依頼は高額な傾向です。司法書士や行政書士は弁護士より少ない予算で依頼できます。

弁護士の費用は、日本弁護士連合会がかつて定めていた報酬規定にのっとって提示されるケースが多いようです。定型で作成するケースでは、遺産額ごとに下記のように定められています。

  • 遺産1,000万円未満:5~10万円
  • 遺産1,000万円~1億円未満:10~30万円
  • 遺産1億円~:30万円~

さらに公正証書とする場合には、プラス3万円が必要です。依頼にかかる費用を抑えるなら、自分で作成すれば基本的に無料で作成できます。

5-2.分割方法でもめている場合

相続人同士が遺産の分割方法でもめている場合には、弁護士へ依頼するとよいでしょう。その際には、書類作成にかかる費用とは別に弁護士費用が必要です。

弁護士費用は着手金・成功報酬・日当で成り立っています。着手金は結果にかかわらず支払いが必要な費用で、成功報酬は希望の結果に結びついたときに支払う費用です。

それぞれ請求金額・経済的利益の金額によって費用が決まります。このほかに遠方の交渉相手や裁判所へ出向くときには日当も請求されます。往復2~4時間なら3~5万円、往復4時間以上なら5~10万円が相場です。

6.相続放棄をするにも費用がかかる

相続放棄

被相続人に借金がある場合や財産が少ないのに相続の費用がかかる場合などでは、相続放棄を検討してもよいでしょう。ただし相続放棄にもいくらか費用がかかります。

6-1.相続放棄の手続き

相続放棄は、被相続人の死亡から3カ月以内に家庭裁判所に申し立てます。相続放棄の手続きには下記の費用がかかります。

  • 収入印紙:800円
  • 連絡用の郵便切手:家庭裁判所により異なる

このほか、被相続人の戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)、相続人の戸籍謄本、被相続人の住民票の除票または戸籍の附票が必要で、これらの書類の取得費用もかかります。

6-2.専門家への報酬

相続放棄では司法書士や弁護士への報酬が発生します。同じ相続放棄の手続きでも、司法書士は3~5万円、弁護士は5~15万円の費用が必要です。依頼する相手は費用も含めて検討しましょう。

また特別な事情があるケースでは、相場より費用がプラスされることもあります。例えば相続放棄の期限である3カ月を過ぎている場合です。事前に相談し、加算される金額をはっきりさせてから依頼するとよいでしょう。

7.手間や費用の削減に役立つ制度

手間や費用の削減

相続手続きに関連する費用や手間をできる限り抑えるには、制度を活用することがおすすめです。相続に役立つ代表的な制度を2種類見ていきましょう。

7-1.法定相続情報証明制度

『法定相続情報証明制度』を利用すると、認証文付き法定相続情報一覧図の写しを無料で発行してもらえます。利用に必要なのは、戸籍謄本など相続関係書類一式1部のみです。

必要書類の発行費用はかかりますが、法定相続情報一覧図の写しは何枚発行しても無料のため、不動産登記と複数銀行の預貯金の相続を同時に進めたいケースでも、余計な費用がかかりません。今までは戸籍謄本や住民票の除票などの申請1通につき300~750円かかっていました。これまでかかっていた費用を節約できる方法です。

目安としては、相続手続きを3カ所以上で行う場合に利用するとメリットが大きいでしょう。

7-2.法テラスの民事法律扶助制度

弁護士に手続きや相続人同士の問題解決を依頼したいときには、法テラスの『民事法律扶助制度』を利用するのも一つの方法です。法務省管轄の法テラスでは、収入や目的などの条件を満たすと、無料相談もできます。

最大で半額になるケースもあるため、弁護士費用の大幅な費用節約につながります。

必要に応じて、弁護士費用を立て替えてもらうこともできます。

8.複雑な手続きは専門家への依頼がおすすめ

複雑な手続きは専門家へ!

相続手続きにはさまざまなものがあります。税の申告はもちろん、不動産の相続登記や預貯金の相続・自動車の名義変更などが必要です。

これらの手続きは自分でもできますが、手間や難易度を考えると、弁護士・司法書士・行政書士・税理士などへ依頼した方がよいケースもあります

『税理士法人チェスター』など豊富な実績のある専門家へ依頼することで、費用はかかるものの円滑で確実な手続きが可能です。

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