相続で預金を引き出す手続きを解説(相続関係届出書など)

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相続で預金を引き出す手続きを解説(相続関係届出書など)

遺産相続では故人の預金を引き出す手続きが欠かせません。
手続きそのものはそれほど難しいものではありませんが、故人がどの銀行に預金口座を持っていたかの特定や、手続きに必要な書類の手配に手間がかかります。

さらに、銀行に死亡を届け出た時点で入出金の停止、いわゆる預金の凍結が行われることにも注意が必要です。

これから、遺産相続で故人の預金を引き出す手続きの流れをご紹介します。

1.故人の預金口座を特定する

預金の相続では、まず、故人がどの銀行に預金口座を持っていたかを特定します。

故人が遺言書や財産目録を残していてどの銀行に預金口座があるかがわかればよいのですが、目録がない場合は次のようなものを手がかりにして故人の預金口座を探します。

  • 預金通帳やキャッシュカード
  • ネットバンキングで使うパスワードを生成する端末(トークン、下図参照)
  • 銀行からの郵便物やノベルティ(ポケットティッシュやボールペンなど)

トークン

故人の預金口座を探し出す詳しい方法は、「故人の財産調査が必要な3つの理由と具体的な方法を徹底解説!」を参照してください。

2.銀行に連絡して手続きをする

故人の預金口座が特定できれば、銀行に連絡して相続の手続きをします。

店舗がある銀行では、口座を開設している支店または最寄りの支店で手続きをします。
銀行によっては、相続手続きを専門にしたコールセンターを設けているところもあります。

店舗がなくインターネットで取引を行うネット銀行では、コールセンターに電話して手続きに必要な書類を取り寄せます。

2-1.死亡を届け出た時点で預金は凍結される

遺族が銀行に死亡の届け出をした時点で故人の預金口座は入出金の停止、いわゆる預金の凍結が行われます。これ以降、預金の相続手続きが終わるまで原則として預金の引き出しはできなくなります。

預金の凍結は、故人の預金を誰かが不正に引き出すことを防ぐものですが、公共料金などの自動引落もできなくなってしまいます。引き落としができなかった場合は、別途払込用紙で支払うことになります。

民法の改正で預金の一部が引き出し可能に

相続に関する民法の規定が改正され、2019年7月1日から遺産分割が確定する前でも故人の預金を引き出すことができるようになりました。

預金を引き出すには、家庭裁判所に申し立てる方法と銀行の窓口で申し出る方法の二通りがあります。銀行での引き出しは、金額に制限があるものの比較的簡単に手続きができます。

詳しい内容は、「相続に関する民法改正の施行はいつから? 40年ぶりの改正を徹底解説!」の中の「4.仮払い制度で被相続人の預貯金の引き出しができる」を参照してください。

2-2.残高証明書を取得する

銀行に死亡の届け出をすれば、預金の残高を確認するために名義人が亡くなった日現在の残高証明書を取得できます。通帳に記帳するだけでもよいですが、ネット銀行など通帳のない口座では残高証明書を取得しましょう。

残高証明書の取り方については、「相続が始まってから故人の口座の残高証明書を取得する方法」を参照してください。

3.相続での預金引き出しに必要なもの

遺産相続で故人の預金を引き出す手続きにはさまざまな書類が必要です。
この章では、遺言書や遺産分割協議の有無に応じて、預金の相続手続きに必要な書類をご紹介します。

手続きでは各銀行が定める相続関係届出書に必要事項を記載します。
相続関係届出書は以下の例のように銀行によって名称が異なります。

みずほ銀行相続関係届書
三菱UFJ銀行相続届
三井住友銀行相続に関する依頼書
りそな銀行相続手続依頼書
ゆうちょ銀行相続確認表

3-1.遺言書がある場合

遺言書がある場合は、遺言によって預金を承継する人(受遺者)が手続きをするか、遺言執行者が手続きをするかによって必要なものが異なります。

なお、遺言書があっても次のような場合は遺言書がない場合の取り扱いとなります。

  • 預金について具体的な定めがない場合
  • 遺産を特定しないで分配割合だけを定めた包括遺贈の場合

このような場合は、次の「3-2.遺言書がなく遺産分割協議書がある場合」または「3-3.遺言書も遺産分割協議書もない場合」を参照してください。

3-1-1.受遺者が手続きをする場合

受遺者が手続きをする場合に必要なものは、おおむね次のとおりです。
遺言の内容または故人の取引内容によっては、追加で書類が必要になる場合があります。

銀行所定の相続関係届出書など受遺者の署名と実印の押印が必要です。
(遺言の内容によっては、法定相続人全員の署名と実印の押印が必要になることがあります)
遺言書公正証書遺言以外の遺言書であれば、家庭裁判所で検認を済ませたことを証明する検認済証明書も必要です。
故人の戸籍謄本基本的には故人の死亡が確認できる戸籍謄本で足りますが、銀行によっては出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要になる場合があります。
戸籍謄本のかわりに法務局で認証を受けた法定相続情報一覧図の写しを提出できる場合もあります。各銀行に確認してください。
受遺者の印鑑証明書発行日から6か月以内(融資取引がある場合は3か月以内)のものを提出します。
(相続関係届出書に法定相続人全員の実印を押印したときは、法定相続人全員の印鑑証明書も必要です)
受遺者の実印取引印が必要になる場合があります。
故人の預金通帳・証書、キャッシュカードなど紛失の場合はその旨申し出ます。

上記の書類は原本を提出します。
原本を返してもらいたい場合は、手続きのときに申し出るようにしましょう。

3-1-2.遺言執行者が手続きをする場合

遺言執行者が手続きをする場合に必要なものは、おおむね次のとおりです。
遺言の内容または故人の取引内容によっては、追加で書類が必要になる場合があります。

銀行所定の相続関係届出書など遺言執行者の署名と実印の押印が必要です。
(遺言の内容によっては、受遺者、法定相続人全員の署名と実印の押印が必要になることがあります)
遺言書公正証書遺言以外の遺言書であれば、家庭裁判所で検認を済ませたことを証明する検認済証明書も必要です。
家庭裁判所で遺言執行者を選任した場合は、遺言執行者選任審判書謄本も必要です。
故人の戸籍謄本基本的には故人の死亡が確認できる戸籍謄本で足りますが、銀行によっては出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要になる場合があります。
戸籍謄本のかわりに法務局で認証を受けた法定相続情報一覧図の写しを提出できる場合もあります。各銀行に確認してください。
遺言執行者の印鑑証明書発行日から6か月以内(融資取引がある場合は3か月以内)のものを提出します。
(相続関係届出書に受遺者、法定相続人全員の実印を押印したときは、受遺者、法定相続人全員の印鑑証明書も必要です)
遺言執行者の実印取引印が必要になる場合があります。
故人の預金通帳・証書、キャッシュカードなど紛失の場合はその旨申し出ます。

上記の書類は原本を提出します。
原本を返してもらいたい場合は、手続きのときに申し出るようにしましょう。

3-2.遺言書がなく遺産分割協議書がある場合

遺言書がなく、相続人どうしで遺産分割協議を行って遺産分割協議書がある場合に必要なものは、おおむね次のとおりです。遺産分割協議書の内容または故人の取引内容によっては、追加で書類が必要になる場合があります。

なお、遺産分割協議書があっても預金について具体的な定めがない場合は、次の「3-3.遺言書も遺産分割協議書もない場合」を参照してください。

銀行所定の相続関係届出書など預金を受ける相続人の署名と実印の押印が必要です。
(遺産分割協議書の内容によっては、法定相続人全員の署名と実印の押印が必要になることがあります)
遺産分割協議書預金について承継人が明確になっていることが必要です。
法定相続人全員の署名と実印の押印が必要です。
故人の戸籍謄本原則として出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要です。
戸籍謄本のかわりに法務局で認証を受けた法定相続情報一覧図の写しを提出できる場合もあります。各銀行に確認してください。
法定相続人全員の戸籍謄本故人の戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写しで確認できる場合は不要です。
(故人の兄弟姉妹が法定相続人の場合は、故人の両親の出生から死亡まで連続した戸籍謄本も必要です)
法定相続人全員の印鑑証明書発行日から6か月以内(融資取引がある場合は3か月以内)のものを提出します。
預金を受ける相続人の実印取引印が必要になる場合があります。
故人の預金通帳・証書、キャッシュカードなど紛失の場合はその旨申し出ます。

上記の書類は原本を提出します。
原本を返してもらいたい場合は、手続きのときに申し出るようにしましょう。

3-3.遺言書も遺産分割協議書もない場合

遺言書も遺産分割協議書もない場合は、相続人の全員が共同で届け出をします。
手続きに必要なものはおおむね次のとおりです。
故人の取引内容によっては、追加で書類が必要になる場合があります。

銀行所定の相続関係届出書など法定相続人全員の署名と実印の押印が必要です。
故人の戸籍謄本原則として出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要です。
戸籍謄本のかわりに法務局で認証を受けた法定相続情報一覧図の写しを提出できる場合もあります。各銀行に確認してください。
法定相続人全員の戸籍謄本故人の戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写しで確認できる場合は不要です。
(故人の兄弟姉妹が法定相続人の場合は、故人の両親の出生から死亡まで連続した戸籍謄本も必要です)
法定相続人全員の印鑑証明書発行日から6か月以内(融資取引がある場合は3か月以内)のものを提出します。
預金を受ける相続人の実印取引印が必要になる場合があります。
故人の預金通帳・証書、キャッシュカードなど紛失の場合はその旨申し出ます。

上記の書類は原本を提出します。
原本を返してもらいたい場合は、手続きのときに申し出るようにしましょう。

4.預金の相続手続きは専門家に依頼できる

ここまでお伝えしてきたように、故人の預金を引き出す手続きそのものはそれほど難しいものではありません。

ただし、金融機関によってルールや様式が異なる場合があるので故人が複数の銀行に口座を持っていた場合は時間や手間がかかる可能性があります。

また、故人がどこの銀行に口座を持っていたかの特定や、故人・相続人の戸籍謄本など必要書類の手配の方は更に難しく手間がかかります。後になって預金が見つかることや、必要な書類がいつまでもそろわないケースもあります。

これらの手続きは、相続問題に詳しい弁護士、司法書士、行政書士に依頼することができます。専門家に依頼すると少なくとも数万円の報酬が必要ですが、故人の大切な財産を早く確実に受け継ぐことができます。

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