#21 資産管理会社は相続対策に必要?メリットとデメリットを解説

2020.11.20

相続対策では昔から資産管理会社を作って対策に役立てている方が多いです。
これから相続対策をする方は、資産管理会社の有用性について知りたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

資産管理会社には相続対策に一定のメリットもありますが、デメリットもあります。
この記事では、「資産管理会社のメリットとデメリット」について解説します。

相続税と不動産活用の基礎知識はこちら>>>

相続税のプロ】【不動産投資のプロ】に相談したい方はこちらよりお問合せください>>>

資産管理会社の3つの活用方法

資産管理会社は活用方法によっても相続対策効果が異なります。資産管理会社には、「管理料徴収方式」「サブリース方式」「建物所有方式」の3つの使い方があり、それぞれの特徴について解説します。

管理料徴収方式

管理料徴収方式とは、その名の通り資産管理会社を管理会社として利用する方式です。個人が保有している収益物件の管理を資産管理会社に委託します。所有者である個人から、管理料を資産管理会社に支払うという形式です。

管理料は不動産所得の必要経費となるため、収益物件所有者の個人の所得税を節税することができます。資産管理会社も管理だけ行えば良いので、気軽にできる点も特徴です。

ただし、資産管理会社へ支払う管理料の額は妥当な範囲で留める必要があります。管理料は家賃の5~8%が妥当な範囲と考えられていますが、明確なルールがないため、管理料率の設定は税理士に相談しながら決めておくことをおすすめします。

サブリース方式

サブリース方式とは、管理会社が収益物件を一括借り上げし、資産管理会社と借主が転貸借契約を締結する活用方式です。いわゆるアパートや賃貸マンションにおける一括借り上げ方式のサブリース会社に相当する役割を資産管理会社が担います。

サブリース会社の保証料の相場は、満室時の家賃収入の20%程度となるため、資産管理会社の収入は管理料徴収方式よりも増やすことができます。ただし、資産管理会社が空室リスクを背負おう立場となるため、管理料徴収方式ほど気楽にできないという点が特徴です。

建物所有方式

建物所有方式とは、資産管理会社が建物所有者になる活用方法です。収入の帰属を全て資産管理会社に移すことができ、親族への所得分散を大きくすることができます。

ただし、土地所有者が個人、建物所有者が資産管理会社となり、借地関係が発生します。借地関係が発生することから、無償返還の届出を提出し、権利金の認定課税を避けるための対応が必要となってきます。

権利金の認定課税とは、簡単にいうと権利金をもらっていないにもかかわらず、権利金をもらっているものとして課税される税金のことです。土地の賃貸借契約書に「賃借人は将来土地の返還をする際に借地権の買取請求をしない」旨の特約を入れ、その写しとともに「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出することで認定課税を避けることができます。

建物所有方式は、相続税対策以外にも所得税の対策を目的として利用されることも多いです。所得が一定額を超えると、個人よりも法人の方が税率は低くなるため、収益物件の所有権を資産管理会社に移してしまった方が全体の税金を下げることができます。

また、経費として認められる範囲も個人よりも法人の方が広い傾向があり、経費計上の観点からも法人の方が節税しやすい点もメリットです。個人では、不動産管理に直接要したものと家事消費(個人的な支出のこと)とを分けなければならず、経費を計上しにくいという特徴があります。

尚、資産管理会社の活用方法として、土地まで所有させる土地建物所有方式というものもありますが、あまり利用されていません。理由としては、土地建物所有方式では、資産管理会社が土地まで購入する必要があり、資金の融資を受けにくいからです。

資産管理会社のメリット

相続税の節税ができる

資産管理会社を作ることで、相続税の節税ができるというメリットがあります。賃貸収入の一部を資産管理会社に移すことで、所有者個人に現金資産が増える速度を抑えることができます。

現金は、相続時に保有している額がそのまま相続税評価額となります。現金には収益物件のように時価と相続税評価額との間にギャップがなく、相続税を節税する効果はありません。資産管理会社は現金の増加を緩やかにしてくれる効果があり、一定の節税効果を生み出します。

また、資産管理会社は生前中の不動産所得も抑えることができるため、本人の生前中の所得税の節税効果もあります。

資産管理会社は誰が設立するかで資産管理会社が相続対象となるかどうかが変わってくるという点もポイントです。最初から推定相続人(子供のような相続人となる可能性が高い人)が出資して設立すれば相続対象にはなりませんが、土地所有者本人が出資して設立すると株式が相続対象となります。

相続財産を減らすという意味では、最初から推定相続人が法人を設立した方が無駄は少ないです。誰が法人を設立するかは、税理士や親族とよく話し合って決めるようにしましょう。

所得を分散して納税の準備ができる

資産管理会社を作ることで、所得を分散して納税の準備ができるという点がメリットです。相続税は現金納付が原則であるため、相続をする人たちに現金がないと相続税を納税することが難しくなります。

せっかく収益物件を持つことで相続税を圧縮したとしても、相続人に相続税を支払う現金がない場合、収益物件を売却して納税用の現金を作り出さなければならないようなことが多いです。将来相続人が物件を売らなくて済むようにするには、生前中に子供たちに現金を移していき、納税用の資金を貯めさせることが相続の効果的な対策となります。

例えば、生前中に現金を移していく方法として贈与がありますが、贈与だと年間110万円を超すと贈与税が生じてしまうというデメリットがあります。

そこで有効となるのが資産管理会社を使った所得の分散です。親族を資産管理会社の役員にしておくことで、役員報酬という形で親族に現金を移転することができます。役員報酬は贈与ではないため、金額も110万円に縛られる必要もありません。

所得分散の効果は、特に建物所有方式を選択した場合に大きくなります。建物所有方式とすれば、収益物件の収入の100%が資産管理会社に帰属しますので、親族への役員報酬の金額を高くすることができ、短い期間で納税用の現金を推定相続人に蓄積させることが可能です。

資産管理会社のデメリット

小額物件ではメリットが出にくい

資産管理会社は小額物件ではメリットが出にくいという点もあります。法人は設立するだけでも、登録免許税や司法書士への手数料等で最低でも30万円程度は必要です。

また、法人の場合、赤字でも法人住民税が発生しますし、決算書類作成のための税理士費用も生じます。そのため、少額の物件でわざわざ資産管理会社を作っても、設立コストや維持コストに見合わなくなってしまいます。

管理料徴収方式やサブリース方式は効果が薄い

資産管理会社のデメリットとしては、管理料徴収方式やサブリース方式だと所得分散の効果が薄いという点です。資産管理会社の収入は、管理料徴収方式だと家賃収入の高々8%程度、サブリース方式だと高々20%程度となります。

管理料徴収方式やサブリース方式では、役員報酬を大きくすることができないことから、現金を移転する速度が遅いという特徴があります。相続税の納税準備を主な目的とするのであれば、建物所有方式がおすすめです。

まとめ

以上、資産管理会社のメリットとデメリットについて解説してきました。資産管理会社の活用方法には、「管理料徴収方式」「サブリース方式」「建物所有方式」の3つがあります。

資産管理会社を作ることで、「相続税の節税ができる」「所得を分散して納税の準備ができる」といった準備ができる点がメリットです。一方で、「小額物件ではメリットが出にくい」「管理料徴収方式やサブリース方式は効果が薄い」という点がデメリットになります。

納税の準備対策としては、法人に100%収入を帰属させることのできる建物所有方式が最もおすすめとなります。それぞれの方式のメリットとデメリットを踏まえ、資産管理会社を上手に活用しましょう。

 

合わせて読みたい記事