瑕疵(かし)担保責任の改正前に売却を!不動産売買における契約のポイントまとめ

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2017年5月に民法の改正が衆議院によって可決され、2020年4月より改正された民法が施行されることになりました。
改正された民法では、「瑕疵(かし)担保責任」が削除されます。
瑕疵担保責任が削除されるということは、売主の責任が軽くなるのではと思ってしまいますが、瑕疵担保責任は新たに「契約不適合責任」に姿を変えます。今回の記事では、現行の民法における「瑕疵担保責任」と民法改正によって、新たに売主に課されることになる「契約不適合責任」について紹介します。

この記事の監修税理士
監修税理士の税理士法人チェスター代表 福留正明
税理士法人チェスター代表
福留 正明
公認会計士・税理士・行政書士。相続税対策に強みを持つ税理士法人チェスターの代表社員。株式会社チェスターでは、年間100億円以上の売却案件を豊富に取り扱っている。 TV/雑誌など各種メディアからの取材歴多数。また、土地や相続についての書籍も多数出版している。
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1.現行の民法における「瑕疵担保責任」

まず、現在適用されている民法での瑕疵担保責任について説明します。
瑕疵担保責任とは、不動産を購入した段階では明らかになっていない「隠れた瑕疵(例えば、雨漏りやシロアリ被害など)」が発見された場合に、売主が買主に対して損害賠償などの責任を負うことを言います。

1-1.隠れた瑕疵とは?

「瑕疵」とは法律用語で「当事者が予想する状態や性質が欠けていること」という意味があります。
不動産の場合には物理的瑕疵・心理的瑕疵・法律的瑕疵の3つの瑕疵が存在します。

【物理的瑕疵】土地や建物に物理的な欠陥がる(物理的な欠陥の例:地盤の歪みや沈下、土壌汚染、境界が不明瞭、雨漏り、シロアリ、ひび割れ、耐震強度が基準以下、アスベストなど)

【心理的瑕疵】過去に自殺や他殺、事件・事故等があった不動産や、周辺に嫌悪施設のあるなど、その事実が売買に影響するもの

【法律的瑕疵】法令違反や法令によって土地や建物に制限がある(法律的瑕疵の例:接道義務違反、建蔽率違反、容積率違反、構造上の安全性が基準以下、建築制限がある、防災設備が古い等)

不動産の瑕疵に対して売主は告知義務があります。
しかし、売主が発見できない瑕疵が売却後に明らかになることがあり、この売主が発見できない瑕疵を「隠れた瑕疵」と言います。

【隠れた瑕疵の具体例】地中に廃棄物が埋まっていた、土壌汚染があった、軟弱な地盤により陥没した、雨漏りが起こる、シロアリによる被害、建物内部の配管が損傷、基礎や柱に傾きがある等

隠れた瑕疵は、契約時にはすでに瑕疵が存在していた、あるいは、瑕疵の原因が存在していたことが原則です。
契約後に買主が行ったリフォームの失敗などで雨漏りが発生した場合は、売主の瑕疵にはあたりません。

1-2.現行の民法での瑕疵担保責任について

民法第570条では、瑕疵担保責任について以下のように定めています。

引用:民法第570条
(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

引用:民法第566条
(地上権等がある場合等における売主の担保責任)

  1. 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
  2. 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
  3. 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

現行の民法では隠れた瑕疵があった場合には、買主は隠れた瑕疵を発見した日から1年以内であれば、契約の解除や損害賠償請求ができるという旨が規定されています。

〇当事者間の合意があれば期間は自由に設定可能
瑕疵担保責任はあくまで原則としての規定です。
売買に際して、当事者間で合意があれば原則を変更することも可能です。
これを任意規定と言います。

民法の内容では売主の負担が大きくなることから、売主が瑕疵担保責任を負う期間を「引き渡し後3カ月間」とすることが一般的です。
また、買主の合意を得られれば瑕疵担保責任を免責にすることもできます。

ただし、任意規定によって瑕疵担保責任を免責にしていたとしても、売主が瑕疵の存在を事前に知っていながら買主に知らせなかった場合は、売主は瑕疵担保責任を免れられません。
なお、上記のように期間を自由に設定できるケースは、売主が個人の場合のみです。
売主が不動産会社の場合には、宅地建物取引業法の規定により瑕疵担保責任の期間を引き渡し後2年以上とすることとされており、免責など買主に不利になる契約はできません。(なお、一般法人の場合は、引き渡し後1年以上とされています。)

2.民法改正によって瑕疵担保責任がどう変わる?

民法の改正により、現行の瑕疵担保責任が削除されます。瑕疵担保責任が削除されたと言っても、売主の責任が無くなるという訳ではありません。改正される民法では瑕疵担保責任に代わり、「契約不適合責任」が追加され、この契約不適合責任の適用によって、瑕疵担保責任よりも売主の責任が重くなると言えます。

契約不適合責任は不動産売買の契約において、当該物件の性質が契約内容に適合しないことに対する責任です。
つまり、売り主は契約内容とは違う不動産を売ってはならないということです。具体的に瑕疵担保責任と比較し、どのような点が変わったのか説明します。

2-1.「隠れているもの」である必要がなくなる

瑕疵担保責任は「隠れた瑕疵」に対して、売主が責任を負うという内容ですが、契約不適合責任では契約の内容に適合しないことが要件であることから、「隠れているもの」である必要がなくなります。

【瑕疵担保責任の場合】隠れた瑕疵と立証することが困難なため買主から売主へ責任追及ができない。【契約不適合責任の場合】「ひび割れのない建物」という契約内容に適していないため、買主から売主へ責任追及ができる

例えば、売主が不動産の「隠れていないひび割れ」に気が付かないまま、「ひび割れのない建物」として売りに出します。
買主はひび割れに気付きながらも指摘せずに売買が成立した場合、現行の瑕疵担保責任ではそのひび割れを隠れた瑕疵として立証することが困難なため、買主は売主に対して責任を追及できませんでした。
しかし、契約不適合責任では、ひび割れが隠れているかどうかにかかわらず、契約内容と異なる不動産を売却したことにより売主は責任を負うことになります。

2-2.買主が請求できる権利が増える

瑕疵担保責任において、買主が請求できる権利は「損害賠償請求」と「契約解除」の2種類でした。
契約不適合責任では、「追完請求」と「代金減額請求」の2つが新たに認められ、買主が請求できる権利が4種類となります。

(1)追完請求

追完請求は、契約内容と現物にくいちがいがあった場合に、履行が不可能である場合を除きその部分を修復するように売主に請求することです。例えば、ひび割れがないと言って契約した後でひび割れが見つかった場合は、その修復を請求できます。

(2)代金減額請求

代金減額請求は、買主が売主に追完請求する際に、売主が追完請求に応じない、あるいは修復ができない場合に、代わりとして代金を減額請求できる権利です。

(3)損害賠償請求と契約解除の変更点

損害賠償請求と契約解除に関しては、現行の瑕疵担保責任でも定められていますが、契約不適合責任では範囲や目的が変更されています。

〇損害賠償請求について
瑕疵担保責任では、損害賠償請求の範囲は「信頼利益」のみでした。
信頼利益とは、契約が有効であると信じたことによって発生した損害(瑕疵があった場合となかった場合の不動産の価格差)のことを言います。しかし、契約不適合責任では、損害賠償の範囲に「履行利益」も含んだ範囲に拡大されます。
履行利益とは、契約が履行された場合に、利用や転売によって発生した可能性のある利益(瑕疵が無い状態で購入した不動産を売却や賃貸した場合に得られるはずだった利益)のことを言います。つまり、先の利益に対しても損害賠償が請求される可能性があるということです。ただし、現行の瑕疵担保責任では、隠れた瑕疵による損害賠償責任は売主の無過失責任(売主に非がなくても責任を負う)でしたが、契約不適合責任では、売主に過失がない場合には損害賠償請求ができません。

〇契約解除について
瑕疵担保責任では、契約目的の達成ができない場合のみ契約解除が認められていますが、契約不適合責任では、契約目的が達成できる場合であっても契約解除が認められます。また、契約解除は追完請求や代金減額請求とあわせて請求することが可能です。

2-3.買主は権利行使がしやすくなる

【瑕疵担保責任】瑕疵を知った時から1年以内に総ぞ外賠償や契約解除を請求(時効は権利行使できるときから10年)【契約不適合責任】不適合を知った時から1年の間に売主に対して不適合があったことを通知(時効は権利甲できることを知った日から5年、もしくは権利行使できるときから10年)

瑕疵担保責任では、買主は瑕疵を知った時から1年以内に損害賠償や契約解除を請求する必要があるというルールでしたが、契約不適合責任は、不適合を知った時から1年の間に売主に対して不適合があったことを通知すれば良いとうルールになりました。
また、権利に関する時効についても、「権利行使できる時から10年」というルールから「買主が権利行使できることを知った日から5年を経過した時、もしくは権利行使できる時から10年経過した時」に変更となりました。

3.民法改正によって不動産売却にどのような注意が必要になるか

契約不適合責任は、現行の瑕疵担保責任よりも売主にとっては責任が重くなる可能性が高いと言えます。
民法改正後に不動産を売却する場合には、売主は以下の点に注意しましょう。

3-1.契約書の内容はできる限り明確にすること

契約不適合責任は契約内容についての論点となることが予想されます。
そのため、契約書はなるべく細かく明確に記載することが大切です。
特に、損害賠償請求に関しては履行利益も範囲に含まれます。
そのため、買主がどのような目的で不動産を購入するかという点も把握し、契約内容にきちんと盛り込む必要があります。

3-2.契約書や引渡し確認票は不動産会社任せにしない

不動産の引き渡し時は、引渡し確認票を買主に渡すことが一般的です。
引渡し確認票や売買契約書は基本的には仲介を依頼した不動産会社が作成してくれますが、ご自身でもその内容についてきちんと確認するようにしましょう。

3-3.瑕疵担保責任同様に任意規定なので調整ができる

瑕疵担保責任では、買主の同意を得れば原則を変更することが可能で、場合によっては瑕疵担保責任を免責とすることも可能でした。
契約不適合責任も任意規定となるため、売主と買主の双方がきちんと納得していれば、内容を調整できます。
もちろん、買主に納得してもらえれば、契約不適合責任を免責としてもらうことも可能でしょう。

4.不動産は民法改正前に売却しよう

瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いや売主が売却時に注意すべき点について紹介しましたが、不動産を売却したいと考えている方は、民法が改正される前の2020年4月以前に売却してしまうことをおすすめします。
民法改正によって売主の責任は今まで以上に大きいものとなり、売却後も予期しない欠陥により金銭の支払いを請求される可能性が高くなります。そのため、売主は今まで以上に不動産売却に際して掛けるべき時間も負担すべきコストも手間が増えてしまいます。
そのような事態を避けるために、売却を検討している不動産は民法改正前に売却を完了しておきましょう。

まとめ

民法改正によって、瑕疵担保責任は契約不適合責任となります。
それに伴い、不動産売買において売主が負うべき責任は隠れた瑕疵から、契約書と相違のある欠陥全般に適用されるようになます。
そして、買主は売主に対して損害賠償請求と契約解除に加えて、追完請求と代金減額請求ができるようになります。
これにより、不動産売買における買手の負担は軽減されるものの、売主の負担は増加します。
そのため、不動産の売却を検討している人は民法の改正される前までに売却しておくことをおすすめします。

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