効率よく生前贈与する方法とは?税負担がかえって増えてしまうケースも解説

2021.05.18

生前贈与」とは、生きている間に子供や孫などに財産を贈与する行為です。子供や孫などに財産を生前贈与することで、相続する財産が減るため相続税の軽減効果が期待できます。

しかし生前贈与の方法を誤ると、高額な贈与税が課税される恐れがあります。贈与税とは、1月1日〜12月31日の間に他人から贈与された財産が、基礎控除額である110万円を超えた場合に課税される税金です。

贈与税の最高税率は55%であり、決して低くありません。相続税を節税できても、高額な贈与税が課税されてしまっては本末転倒でしょう。

そこで今回は、相続税の軽減を考えている富裕層の方が、効率的に生前贈与をする方法について解説していきます。

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生活費や教育費の都度贈与

子供や孫などに対して、生活費や教育費などを必要なタイミングで財産を贈与しても、贈与税の課税対象とはなりません。

例えば、孫が小学校へ進学するタイミングで、ランドセルや制服などを買ってあげたり、高校や大学などの入学金・授業料をその都度負担したりしても、贈与税は課せられません。

他にも、親元を離れて生活をする子供に対する仕送りも非課税です。ただし、1年分の生活費を年始に一括で振り込むと、必要なタイミングで贈与していないため、贈与税の課税対象となってしまいます。

ご祝儀や香典、花輪代など、冠婚葬祭に関する贈与についても、社会通念上相当と認められる金額であれば非課税です。そのため、子供に結婚のお祝い金として、1億円や2億円など、あまりにも高額な資金を贈与すると、贈与税が課せられる恐れがあります。

加えて、贈与されたお金を使い切っていない場合や、生活費や教育費など以外の支出に充てた場合も贈与税の課税対象です。例えば、子供が親から生活費として贈与されたお金で、投資信託を買ったり不動産の頭金に充てたりした場合、贈与税が課せられます。

 

暦年贈与

暦年贈与とは、暦年(1月1日~12月31日)のあいだに、贈与税の基礎控除額である110万円以内の贈与をすることです。

基礎控除額は、贈与を受ける者1名につき年間110万円です。例えば、贈与を受ける人が3名であれば、年間で最大330万円、10年間で合計3,300万円の財産を移転できます。

一方で、複数の人から贈与を受ける場合でも、基礎控除額は110万円に変わりはありません。例えば、贈与を受ける人が子供で、父親から60万円、母親から60万円、合計で120万円の贈与を受けた場合、10万円が贈与税の課税対象となります。

なお、相続が開始される前3年以内の贈与された財産については、相続税の課税対象となる点に注意が必要です。例えば、父親が子供に対して、亡くなる前年に100万円、前々年に80万円を贈与していた場合、合計180万円が相続税の課税対象となります。

相続税対策として暦年贈与をする場合、計画的かつ早めに開始することが大切です。

不動産小口化商品を暦年贈与する

金融商品の1種である「不動産小口化商品」を用いると、現金よりも多くの資産を、生前贈与できる可能性があります。

不動産小口化商品とは、特定の不動産の所有権を複数の持分権に分けて、1口あたり数万〜1,000万円程度で販売されている金融商品です。中でも、賃貸マンションの組合持分権を購入する「任意組合型」は、現物の不動産と同じ方法で評価されるため、相続税対策として人気があります。

現物の不動産を贈与する場合、土地と建物を分けて価値が評価されます。土地部分は、実勢価格の8割程度である「路線価」、建物部分は建築費の6割程度である「固定資産税評価額」に基づいて評価されるのが一般的です。

加えて、マンションやアパートなど、他人に貸して家賃収入を得られる賃貸不動産の場合、自らが居住する物件と比較して、評価額はさらに低くなります。

贈与税や相続税は、贈与や相続によって取得した財産の価値(評価額)に税率をかけて算出されます。贈与税や相続税を計算するとき、現金は額面通りで評価される一方、不動産は実際の価格よりも低く評価されるため、税負担を軽減する効果が期待できるのです。

贈与を受ける人が1人しかいない場合、暦年贈与で1,000万円の財産を贈与するのに、10年かかります。そこで現金よりも評価が低い不動産小口化商品を利用すると、1,000万円の財産を3年程度で贈与できる可能性があります。

資産の一部を、現金から任意組合型の不動産小口化商品へシフトして、子供や孫に生前贈与し、相続財産を減らすのも選択肢の1つです。

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暦年贈与をしても贈与税や相続税がかかるケース

暦年贈与の仕方を間違えると、贈与税や相続税の課税を逃れるために暦年贈与をしたとみなされる恐れがあります。

例えば、親と子供の間で10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与する契約を取り交わしたとしましょう。子供は10年間で合計1,000万円がもらえる権利を贈与されたとみなされて、1,000万円全額が贈与税の課税対象となってしまいます。

また、100万円を10年間にわたって自動送金するサービスを利用して子供や孫に贈与した場合も、1,000万円すべてが贈与税の課税対象となる恐れがあります。暦年贈与をする際は、財産をわたす人と贈与契約を毎年取り交わして記録を残しておきましょう。

財産を贈与する人が、子供や孫の名義を借りて預金通帳を作り、そこに財産を移転して「あげたことにする」場合は、そもそも贈与契約があったとみなされません。贈与契約は、財産をあげる人の意思を、もらう側が受諾しなければ成立しないためです。

子供や孫の名義で通帳を作ってお金を貯めていっても、口座にあるのは贈与をする人の財産であるとみなされて、相続発生時に相続財産として相続税の課税対象となってしまいます。

 

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、贈与時点で課税せず、相続時の対象とするものです。対象者は60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子供や孫で、この制度を利用すると対象者に対して行われた贈与が、最大で2,500万円まで非課税となり、相続税の課税対象となります。2,500万円を超える贈与については、一律で20%の贈与税が課せられ、その贈与税額は相続税額から控除されます。

相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は、相続税の課税対象となります。そのため相続人になる予定の子供に、相続時精算課税制度で現金を贈与しても、相続税対策にはなりません。

また、相続時精算課税制度を選択すると、通常の贈与税の計算方法に戻れなくなり、全て相続時精算課税の対象となるので注意が必要です。

相続時精算課税制度を利用して不動産を贈与する

不動産や株式などを相続時精算課税制度で贈与すると、相続税を節税できる可能性があります。相続時精算課税制度で贈与された財産は、相続税を計算するときに、贈与されたときの価値で評価されるためです。

例えば、相続時精算課税制度を利用して、子供に評価額2,500万円のアパートを贈与したとしましょう。相続時にアパートの価値が3,500万円に上がっていたとしても、相続税を計算するときは、2,500万円と評価されるのです。

また、相続時精算課税制度を利用してアパートやマンションなどの収益物件を、子供や孫に生前贈与するのも節税効果が期待できます。相続の発生時に相続税の課税対象となるのは、物件本体のみであり、物件から得られる家賃収入は贈与された人の財産となるためです。

また収益物件を生前贈与することで、家賃収入によって相続財産が増えてしまうのを防げます。財産の一部でアパートやマンションなどを購入し、相続時精算課税制度を利用して子供や孫に贈与するのも方法の一つです。

相続時精算課税制度で不動産を贈与する際の注意点

相続時精算課税制度で相続税の節税効果が期待できるのは、贈与した不動産の価値が相続時に上がっていた場合です。不動産の資産価値が下がってしまうと、かえって損をするおそれがあるため、購入する際は価値の上昇が見込める物件を慎重に選ばなければなりません。

また、相続時精算課税制度をはじめとした方法で不動産を生前贈与する場合「小規模宅地等の特例」を利用できません。

小規模宅地等の特例」とは、財産を残す人(被相続人)が住んでいた土地や事業をしていた土地が、一定の要件を満たす場合に土地の評価額が50%または80%減額される特例です。

不動産を贈与しても、小規模宅地等の特例は適用されません。一方で、相続時精算課税制度で贈与した財産は相続税の課税対象です。相続時精算課税制度で不動産を贈与すると、相続した場合よりも評価額が高くなり、相続税の負担がかえって重くなる恐れがあります。

相続時精算課税制度を選択したあとは、途中で取り消したり暦年贈与に変更したりできないため、ご自身や家族にとってメリットがあるのかを考えて慎重に判断しましょう。

 

住宅資金贈与の特例

住宅資金贈与の特例とは、子供や孫が自ら住むための物件を新築したり購入したりする場合に、一定金額までの財産を非課税で贈与できる制度です。非課税となる金額は、購入する住宅に適用される消費税率や、住宅の種類によって以下の通りに定められています。

 

家屋に対する消費税率が10%の場合
省エネ等住宅:1,500万円
一般住宅:1,000万円
上記以外(消費税のかからない個人同士の売買、土地の購入など)
省エネ等住宅:1,000万円
一般住宅:500万円

 

省エネ等住宅とは、省エネ性能や耐震性能、バリアフリー性能などが一定の基準値を満たす環境性能が高い住宅です。省エネ等住宅は、一般住宅よりも非課税枠が高く設定されています。

住宅資金贈与の特例の非課税枠は、基礎控除との併用が可能です。例えば、特例の非課税枠が1,500万円である場合、贈与税の基礎控除と合わせて1,610万円までの贈与が非課税となります。

なお住宅資金贈与の特例は、2021年12月末までに行われた資金提供が対象です。また資金提供を受けた子供や孫は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに「贈与税の申告書」や「契約書の写し」など、所定の書類を税務署に提出する必要があります。

 

「贈与税の配偶者控除」は相続税対策になりにくい

贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住するための不動産を贈与した場合に、基礎控除の110万円とは別に2,000万円まで贈与税が非課税となる制度です。居住用不動産を購入するための資金が、夫婦間で贈与された場合も利用できます。

贈与税の配偶者控除を利用しても、相続税の節税効果が期待できない可能性がある理由は、配偶者が財産を相続するときに「配偶者の税額軽減」が適用されるためです。

配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続した遺産の額が「配偶者の法定相続分相当額」または「1億6,000万円」のどちらか多い金額まで、相続税がかからない制度です。

例えば、夫が50億円の財産を残して亡くなり、妻と子供2人の計3人が相続するとしましょう。妻の法定相続分は、相続財産の1/2である25億円です。よって妻が自宅を相続しても、相続財産の合計が25億円以下であれば、相続税はかかりません。

また、贈与税を計算するときは「小規模宅地等の特例」が適用されないため、相続したときよりも税負担が重くなる恐れがあります。加えて、贈与によって不動産を取得した配偶者は「不動産取得税」や「印紙税」などの税金を支払わなければなりません。

このように贈与税の配偶者控除を利用して、配偶者に居住用の不動産を贈与すると、相続税の節税効果があまり期待できないどころか、損をすることもあります。贈与税の配偶者控除を利用する前に、節税メリットを得られるかを確認することが大切です。

 

まとめ

財産を生前贈与する際は、「暦年贈与」だけでなく「生活費や教育費の都度贈与」や「住宅資金贈与の特例」などを幅広く活用すると良いでしょう。

また、現金を不動産小口化商品に変えて暦年贈与をしたり、相続時精算課税制度を利用して、価値の上昇が見込める不動産を贈与したりするのも選択肢です。複数の方法を組み合わせたうえで不動産も活用すると、効率的に相続財産を減らせます。

 

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