名義株で起きる問題とは。株主名簿を書き換える際は確認書の作成を

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名義株とは、どのような状態の株式を指すのでしょうか?あると知っている状態でそのままにしておくと、相続や事業承継の際にスムーズに進められない可能性があります。名義株があると分かった場合の対処法をチェックしましょう。

1.名義株とは

1.名義株とは

どのような株式が、名義株と判断されるのでしょうか?名義株の特徴や調べ方をチェックし、自社に名義株がないか確認しましょう。

1-1.名義上の株主と実際の所有者が不一致の株式

実際の所有者と、株主名簿に記載されている氏名が異なる株式が『名義株』です。例えば、実際に株式を所有しているのは会社の経営者であるにもかかわらず、妻や親族の名前を借りて株主名簿に記載しているというケースがあります。

名義株である場合、株主名簿に氏名が記載されているだけの株主は、株式の取得(出資)も株主の権利行使もしていません。会社の意思決定を行うにあたり株主総会で決議をする際も、実際の所有者である経営者のみで行うという状態です。

1-2.名義株の存在を調べる方法

自社に名義株があるか調べるには、まず『株主名簿』や法人税申告書の別表2『同族会社の判定に関する明細書』をチェックしましょう。加えて、以下の方法で探すのも有効です。

  • 創業者や経営に関係している親族・社員などに名義株がないか確認する
  • 名義貸与承諾書の有無を確認する
  • 会社設立時の出資金の振込人を確認する
  • 配当金の支払先を確認する
  • 株主総会の通知先を確認する
  • 株主総会の出席簿や議事録を確認する

1-2-1.関係者が存命のうちに確認を

名義株の有無の確認は、関係者が存命のうちに行うのがおすすめです。発生当時の状況を知る創業者が存命であれば、だれがお金を出していて、だれが名義のみを貸しているのか、はっきりするケースが多いでしょう。

創業者と名義を貸している親族や友人などが直接話し合いできる状況であれば、大きなトラブルに発展することなく、スムーズに解決できます。

1-3.名義株と判断される基準

名義株と判断されやすいのは、名義人に株式を取得するだけの資力がないと判断された場合です。資金がなければ株式を購入できないため、株主名簿に氏名が記載されていても、名義株である可能性が高いでしょう。

株式の贈与を受けていれば、名義人に資力がなくても株式を取得できます。この場合は贈与税の申告の有無や、そもそも名義人に贈与を受けた認識があるかがポイントです。贈与の認識がなく贈与税の申告もしていなければ、名義株と判断されます。

名義人が議決権を行使しているか、配当金を受け取っているかという点もポイントです。議決権の行使や配当金の受け取りを行っているのが実際の所有者であれば、名義株と考えられます。

2.名義株を放置するリスク

2.名義株を放置するリスク

名義株をそのままにしていると、思わぬリスクにさらされる可能性があります。あらかじめリスクを把握しておけば、トラブルに直面しても対処しやすいでしょう。起こり得るリスクについて確認します。

2-1.税務調査で指摘され相続税の追徴課税が発生

相続財産に名義株が含まれているにもかかわらず、相続税の計算に含めずに申告した場合、追徴課税が発生する可能性があります。遺産に含まれるのは、亡くなった人が実際に所有していた財産のためです。

名義株は名義こそ株主名簿に記載されている人になっていますが、実際に所有しているのは名義人ではありません。例えば実際の所有者である経営者が死亡し、相続が発生した場合、名義株も含めた相続の手続きが必要です。

税務調査で名義株があると発覚すると、相続税の追徴課税を受けてしまいます。さらに名義株があると知りながら申告時に含めていなかった場合は、重加算税が課される可能性があるでしょう。

重加算税は、本来納めるべきであった税額と納めた税額との差額に課されます。過小に申告していた場合は、原則35%の重加算税をプラスして納税しなければいけません。

2-2.事業承継がスムーズに進められない

名義株の存在によって、事業承継がスムーズに進まない可能性もあります。M&Aによる第三者承継を行う場合、買い手にとって重要なのは対象会社の支配権を確実に得ることです。

そのため、名義人とのトラブルに発展する可能性のある名義株に対しては、表明保証条項が設けられ、存在が発覚すると補償を求められる可能性があるでしょう。場合によっては破談になりかねません。

また事業承継税制の使用を検討している場合、先代経営者が一定以上の株式を実質的に所有している必要があります。このときすでに後継者が株式を保有していると、事業承継税制の要件を満たせません。

先代経営者が株式を保有しているように見せようと名義のみを変更したとしても、名義株であるとして認められず、制度を利用できないでしょう。

事業承継税制と名義株について詳しく解説している、以下もぜひご覧ください。

事業承継税制の適用には「名義株」の早めの整理が必要|税理士法人チェスター

2-3.株主の権利を主張され紛争につながる

実質的な所有者は経営者にあるからといって、名義株を放置していると、所有権は名義人に移ってしまいます。民法163条において、名義株は10年間もしくは20年間放置すると、時効により他者に取得される可能性があるためです。

また名義人が死亡して相続が発生すると、株主名簿に氏名が記載されていることを受け、相続人が株式を相続する手続きを行う可能性もあります。

単に名義を借りていただけであっても、そのことを実際の所有者が証明できなければ、名義人の相続人が所有者として認められてしまうでしょう。

配当金を増額するよう求められたり、高額な価格で株式を買収するよう持ちかけられたりする可能性があります。トラブルに発展する可能性も考えられる事態です。

3.なぜ名義株が発生するのか?

3.なぜ名義株が発生するのか?

放置していると追徴課税を受けたり事業承継に影響を与えたりするリスクを含む名義株は、どのような理由で発生するのでしょうか?名義株が発生する代表的な理由を紹介します。

3-1.株式会社設立のため(旧商法)

1990年より以前の旧商法では、株式会社を設立する際に発起人が7人以上必要でした。しかし、これから設立する会社に出資する人を7人集めるのは、簡単ではありません。

そのため実際に出資するのは経営者のみで、他の発起人は名義のみを貸すというケースが多くあったのです。発起人は、出資した金額に従い株式の発行を受け、株主になります。

発起人を集めるために名義のみを借りた場合でも、株式名簿には氏名が記載されました。旧商法の下で設立された株式会社では、設立の要件を満たす目的で名義株が発生していたと考えられます。

3-2.相続税の課税逃れのため

同族のみで経営している会社では、経営者が自社株をすべて保有しているケースが珍しくありません。相続が発生したときに経営者が多くの株式を保有していると、後継者は多額の税負担を負うことになります。

そこで自社株式を家族や親族などへ振り分け、後継者の税負担を減らすよう対策する経営者もいるのです。このとき株主名簿には、株式を振り分けた家族や親族などの氏名が形式的に記載されます。

ただし実際に株主としての権利を行使しているのは経営者のみのため、名義株が発生している状態です。

4.名義株の存在が確認された際の対処法

4.名義株の存在が確認された際の対処法

自社に名義株があると分かった場合、どのように対処するとよいのでしょうか?放置するとトラブルに発展する可能性があるため、できるだけ早いタイミングの対処が求められます。

4-1.実質的な所有者に名義を変更する

名義株の状態を解消するには、株主名簿の書き換えが必要です。そのためには、名義人と実質的な所有者が共同で、会社に対して株主名簿の書き換えを請求します。実質的な所有者の氏名が株式名簿に記載されれば、名義株を解消できます

また株券を発行している会社であれば、名義人の手元に株券がないかも確認しておきましょう。株券があるなら、引き渡しを依頼し受け取ります。

参考:株式名義書換請求書で行う非上場株式の相続手続き

4-2.確認書を作成する

株主名簿に記載されている名義を変更し名義株を解消したら、『確認書』を作成し保管しておきましょう。対象の株式が名義株であったことや、実質的な所有者へ名義変更したことを記し、名義人・実質的な所有者ともに署名押印します。

押印は実印を用い、印鑑証明を添付しておくとよいでしょう。税務調査が入ると、なぜ名義変更したのか理由を問われるケースがあります。このとき確認書があると、証拠としての提示が可能です。

5.名義株の解消が難しい場合は?

5.名義株の解消が難しい場合は?

名義株を解消したいと考えていても、名義人の協力が得られない場合や、連絡を取れない場合には手続きができません。そのようなケースで名義株を解消するには、どのような方法があるのでしょうか?

5-1.株主の協力が得られないケース

名義株を解消するには、名義人と実質的な所有者が共同で名義の書き換えを会社に請求するのが原則です。そのため名義人の協力が得られない場合、名義株の解消は難航します。

発生当時に名義のみを借りる旨を記した覚書や念書などが存在しない場合には、名義人から株式を買収する方法を検討しましょう。また訴訟を起こし、判決によって株主名簿を書き換える方法もあります

5-2.株主と連絡が取れないケース

会社設立当初に発生した名義株については、名義人の所在が分からず、連絡が取れない可能性もあるでしょう。

このような場合には、名義人に対する通知や催告が5年以上継続して届かず、剰余金の配当も受領していないのであれば、裁判所の許可により株式の売却が可能です。

手続きを行うには、まず取締役会の決議を行い、裁判所で許可を得てから対象の株式を買収します。

6.名義株を解消して経営上のリスクを防ごう

6.名義株を解消して経営上のリスクを防ごう

株主名簿に記載される名義人と実際の所有者が異なる名義株は、そのままにしておくとM&Aや事業承継の妨げになりかねません。名義人との間でトラブルに発展する可能性もあるでしょう。

名義株があると分かった時点で名義変更を実施し、名義株を解消するのがおすすめです。ただし名義人が協力的でない場合や連絡が取れない場合は、手続きがスムーズに進まないかもしれません。

その場合には株式の強制的な買収や、裁判所の許可による名義変更を行います。名義株による相続税への影響については『税理士法人チェスター』に相談しましょう。

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