エンタープライズバリューは事業価値を指す。企業価値との違いは?
タグ: #M&Aエンタープライズバリュー(EV)は『事業価値』を表す言葉です。事業価値は企業価値や株式価値とはどう違うのでしょうか?また大企業と中小企業で異なる事業価値の算出方法もチェックしましょう。会社の価値向上のためにできる施策も解説します。
目次 [閉じる]
1.EV(エンタープライズバリュー)とは
事業価値を表すEVについて十分理解できるよう、まずは基本的な意味を見ていきましょう。EVはM&A実施時に利用される指標『EV/EBITDA倍率』でも用いられています。
事業価値について知ることで、会社の価値向上に役立つ方法についても理解しやすくなるはずです。
1-1.一般的に「事業価値」を指す
EVは事業価値を表す用語です。算出するときには『EV=株式時価総額+ネット有利子負債(有利子負債-非事業用資産)』という計算式を使います。
この先も企業が事業活動を続けていくと、利益やキャッシュフローを得られるでしょう。その利益やキャッシュフローを現在価値に引き直したものがEVです。
1-2.EV/EBITDA倍率とは
事業価値を表すEVを用いる指標に『EV/EBITDA倍率』があります。EVは事業価値を、EBITDAは企業が事業で稼いだ利益を表す指標です。
EV/EBITDA倍率では、EVがEBITDAの何倍あるかが算出されます。つまりM&Aで企業を買収したとき、買収にかかった費用を何年分の事業利益で回収できるか計算することが可能です。
求めた数値が少ないほど、短期間で費用を回収しやすく、割安な価格で購入できる企業といえます。一方、数値が大きければ割高といえるでしょう。
2.混同しやすい用語に注意しよう
事業価値と混同しやすい用語に『企業価値』『株式価値』があります。一見同じことを表している言葉のようにも感じられますが、詳細が異なるものです。それぞれの意味の違いを知り、正しく使い分けましょう。
2-1.「企業価値」との違い
『企業価値』は企業そのものの価値です。企業が保有する全ての資産の価値を合計して計算します。事業も企業が所有する資産の一つのため、事業価値は企業価値に含まれます。
さらに、企業は事業と関係のない資産も保有しているケースがほとんどです。例えば保有している他社の株式や投資信託といった金融商品などの『非事業価値』です。
そのため、企業価値を算定するには『事業価値+非事業価値』の計算式を用います。事業価値と企業価値は厳密には異なるものなのです。
しかし事業価値は企業価値の大半を占めるため、M&Aの実務においては、事業価値=企業価値と考えても差し支えないでしょう。
2-2.「株式価値」との違い
株式の時価総額を意味するのが『株式価値』です。上場企業であれば株価の時価総額を示すため、すぐに分かります。
対して非上場企業は株式を公開していないため、時価総額で確認できません。そこで『企業価値-債権者価値』を計算し、株式価値を求めます。
債権者価値とは、企業が返済しなければいけない債務です。企業全体の価値から債務を差し引くと、株主が自由に処分方法を決められる金額が分かります。この金額が非上場企業の株式価値です。
そのためどれだけ企業価値が大きかったとしても、大きな設備投資をするなどして負債がたくさんあれば、株式価値は低く算出されます。
3.M&Aではバリュエーションで「事業価値」を算出
M&A実施時には『バリュエーション』において、事業価値を算出します。計算の仕方が大企業と中小企業で異なる点に注意し、それぞれどのような方法が用いられるのか見ていきましょう。
3-1.大企業ではDCF法が使われる
非事業用資産や借入金のない企業は、企業価値=事業価値=株主価値といえます。ただし現実の企業は非事業用資産を保有していたり、融資を受けていたりするケースがほとんどです。
そこで、大企業の事業価値を算出するために利用されるのが『DCF法』とされています。将来生み出されるキャッシュフローに着目する手法で、非常に合理的な企業価値評価方法です。DCF法では以下の手順で事業価値を算出します。
- 加重平均資本コスト(WACC)を計算
- 企業が自由に使えるフリーキャッシュフローを予測
- 継続価値を算定
- フリーキャッシュフローと継続価値をもとにWACCで割り引いて事業価値を計算
3-2.中小企業の場合は?
大企業で重視されるDCF法は、中小企業には向いていません。中小企業で用いられるのは『企業評価額=時価純資産+営業権(のれん)』という計算式です。
営業権には、企業のブランド力や人的資源・取引先など、帳簿では評価できない価値が含まれています。企業の現時点での価値に加え、今後の収益力も考慮した価値を算出できる計算式です。
収益力を正しく評価するため、営業権の価値を求めるときには実質利益の評価倍率を調整します。一般的には実質利益の3年分としますが、業種によっては1年分で計算するケースもあるでしょう。
4.会社の価値を高めるには
バリュエーションにより算出される会社の価値を高めるには、事業の収益力と投資効率がポイントです。それぞれどのように扱うと会社の価値を高められるのでしょうか?
4-1.事業の収益力を強化する
まず実施するのは事業の『収益力』アップです。事業の収益が向上すれば会社の成長につながり、価値が高まっていきます。
ただし収益とともにコストも高まれば、単に全体の規模が大きくなるだけです。そこで事業モデルの見直しを実施します。コスト削減と利益アップを意識したビジネスモデルが適切です。
例えば資金や人材などのリソースの配分や、事業に必要なコストの削減、業務フローの効率化などができないか検討しましょう。
4-2.投資効率の見直しと改善
『投資効率』の見直しも欠かせません。例えば保有している資産の中に無駄なものが多い場合、投資効率は下がります。不要な資産を売却すれば、売却によって得た資金の再投資が可能です。
加えて『売上金』の早期回収も、投資効率の改善につながります。モノやサービスを売っただけでは、会社に現金が入ってきません。できるだけ早く代金を回収できれば、投資に回せる資金が増えます。
さらに回転率の悪い在庫を減らせばキャッシュフローの改善につながり、投資効率の向上が実現可能です。
5.会社の価値がどう決まるか知っておこう
会社の価値を示す指標は複数あります。エンタープライズバリューは事業価値を意味する言葉です。事業価値は企業価値とは異なります。
企業価値が企業の持つ価値全てを表すのに対し、事業価値は事業の持つ価値だからです。『企業価値=事業価値+非事業価値』と表せます。
M&Aでは会社の価値を高めることも重要です。事業の収益力を高めるため、ビジネスモデルの改善を目指しましょう。不要な資産の売却や売上金の回収による投資効率アップもポイントです。
またM&A実施時には、税務について分からない点が出てくるかもしれません。税務の疑問点は『税理士法人チェスター』へ相談しましょう。
相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】
事業承継・M&Aを検討の企業オーナー様は
事業承継やM&Aを検討されている場合は事業承継専門のプロの税理士にご相談されることをお勧め致します。
【お勧めな理由①】
公平中立な立場でオーナー様にとって最良な方法をご提案致します。
特定の商品へ誘導するようなことが無いため、安心してご相談頂けます。
【お勧めな理由②】
相続・事業承継専門のコンサルタントがオーナー様専用のフルオーダーメイドで事業対策プランをご提供します。税理士法人チェスターは創業より資産税専門の税理士事務所として活動をしており、資産税の知識や経験値、ノウハウは日本トップクラスと自負しております。
その実力が確かなのかご判断頂くためにも無料の初回面談でぜひ実感してください。
全国対応可能です。どのエリアの企業オーナー様も全力で最良なご提案をさせていただきます。
詳しくは事業承継対策のサービスページをご覧頂き、お気軽にお問い合わせください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。