美容系サロンのM&Aについて解説。高い価値がつくサロンの特徴は?

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美容系サロンのM&Aはどのように進めればよいのでしょうか?必要な準備や注意点を把握することで、スムーズにM&Aを実施しましょう。美容系サロンならではのM&Aの特徴や、メリット・売却価格を左右する要素などについても解説します。

1.美容系サロンの事業承継

美容系サロンの事業承継

美容系サロンの事業承継について、どのようなケースが多いのか見ていきましょう。事業承継を考える際の参考になるはずです。

1-1.美容業は圧倒的に個人経営が多い

厚生労働省による2015年の調査では、美容所の数は全国で23万7,525施設という結果が出ています。業界全体の傾向として押さえておきたいのは『個人経営』が多いという点です。

施設数の割合では、支店のない単独店が75.3%を占め、最も多いようです。加えて単独店の8割以上が個人経営のため、美容業の多くは個人経営の施設と分かります。

参考:美容業 結果の概要|厚生労働省

参考:美容業概要 |厚生労働省

1-2.国家資格が必要、親族内承継は難しい

個人経営の店舗や施設というと、親族内承継を行うイメージがあるかもしれません。しかし美容業を営むためには、国家資格である『美容師免許』が必要です。

また従業員として雇っている美容師がいるなら、『管理美容師』の資格も取得しなければなりません。親族内に有資格者がいなければ親族内承継は難しいでしょう。

仮に親族内に有資格者がいたとしても、近しい関係性だからこその難しさもあります。例えば親子での承継を考えているケースでは、保守的な親とチャレンジ精神旺盛な子どもで対立しがちです。

親子間の関係性によっては、対立が続くことで承継を諦めるケースもあるでしょう。

2.美容系サロンのM&Aの特徴

美容系サロンのM&Aの特徴

親族内承継が難しく後継者もいないという場合、M&Aを選択するケースが増えています。美容系サロンが実施するM&Aには、どのような特徴があるのでしょうか?

2-1.美容系サロンの需要

美容系サロンのM&Aでは、大手が小規模な施設を買収する流れが広まっています。施設数を増やすことで知名度を高め、規模と収益の拡大を目指す動きです。

また異業種の企業が美容系サロンを買収するケースもあります。例えばマーケティング会社やIT系企業が、自社の集客能力を生かすことで、サロンの収益を上げる仕組み作りが可能です。

あわせてサロン経営で集めた顧客データを、マーケティング会社やIT系企業の展開する他の事業に生かす流れも作り出せるでしょう。

2-2.特に立地のよい美容室は売れやすい

中でも買い手が付きやすいのは『立地のよい』美容室です。顧客が利用しやすい場所にある美容室は、ある程度の客数と単価をキープしやすいためです。

継続的に集客できる立地であれば、M&Aによりさらに価値を高められる可能性もあります。特に集客しやすい複合施設内にある店舗は、美容業全体のうち1.8%しかありません。

好立地な上に数が少なければ、M&A市場へ出した場合に注目されやすいはずです。

参考:美容業の実態と経営改善の方策(抄)|厚生労働省

2-3.補助金制度を活用できるケースも

M&Aにかかる費用のサポートを受けられる『事業承継・引継ぎ補助金』を活用できるケースもあります。売り手・買い手双方を対象として、経営資源の承継を促す制度です。

創業支援型・経営者交代型・M&A型の3種類がある『経営革新』では、400万~800万円を上限に、費用の2/3まで補助してもらえます。

また買い手支援型・売り手支援型の2種類に分かれる『専門家活用』では、400万円を上限に、費用の2/3まで補助される仕組みです。それぞれ事業対象者と支給条件が異なる点に注意しましょう。

参考:中小企業庁:令和2年度第3次補正予算「事業承継・引継ぎ補助金」の公募要領を公表します(6月11日申請受付開始予定)

3.美容系サロンのM&Aのメリット

美容系サロンのM&Aのメリット

事業承継をM&Aで実施することにはさまざまなメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのか紹介します。

3-1.売却益がある場合は現金を受け取れる

M&Aを利用してサロンを売却する場合、店舗や備品だけを売るわけではありません。売却の対象となるのは、無形資産を含むサロンの全てです

例えば地域での知名度・質の高い従業員・顧客なども売却する資産に含まれます。そのためビジネスモデルによっては、まとまった現金を受け取れるでしょう。

十分な現金を受け取って引退できる点は、サロンがM&Aを利用する大きなメリットです。

3-1-1.運営委託や居抜き物件売買との違い

経営を誰かに引き継いでもらう場合、M&Aのほかにも選択肢があります。店舗の所有と経営を分離する『運営委託』もその一つです。経営と管理を第三者に委託し、美容師は業務委託契約を結び個人事業主として働きます。

また『居抜き物件』は、内装や設備などが完成している店舗施設のみを売買する取引です。有形資産だけを扱う点がM&Aと異なります。

運営委託や居抜き物件売買と比較しても、M&Aは売却する資産が多く、その分高額で売れるでしょう。ケースによっては負債を引き継いでもらえる可能性もあります。

譲渡金額が0円であったとしても、物件の原状回復などにかかる費用負担がなくなる分メリットは大きいでしょう。

3-2.シナジー効果が得られる

異業種がサロンを買収することで、買い手には『シナジー効果』を得られるメリットがあります。例えば化粧品メーカーがサロンを買収し、自社商品の販路を作るケースが考えられるでしょう。

ほかに福祉法人がサロンを承継し、福祉施設へ美容師を派遣するサービスも見られます。サロンを単にサロンとして運営するだけでなく、異業種との組み合わせで、これまでにないサービスの提供を可能にする方法です。

既存のサービスにプラスαされることで、既存顧客の囲い込みや新規顧客の獲得にもつながると期待できます。

4.美容系サロンの価格を左右する要素

美容系サロンの価格を左右する要素

有形資産とともに無形資産も売却するM&Aでは、ほかの方法より高額でサロンを売却しやすいと分かりました。ただしどのサロンでも同じ価格で売れるわけではありません。サロンの価格はどのような要素により決まるのでしょうか?

4-1.お店独自の強み

これまでお店が続いてきたということは、何らかの『独自の強み』があるはずです。例えば地域1番の技術力や、独自のマッサージサービス、頻繁に通いやすい料金設定などが挙げられます。

また組織として機能する体制が構築されているのも強みです。属人的な仕組みで運営されているサロンでは、特定のスタッフがいなくなると売上が急落する可能性があります。

しかし役割分担が明確で組織として運営されていれば、誰がその店舗に入っても再現性があるでしょう。そのため高く売れやすくなります。

これらの強みは表面上は見えにくいため、あらかじめ整理しまとめておくとよいでしょう。M&Aを進める際のアピールポイントになります。

4-2.美容師と固定客が重要な資源

サロンでは美容師と固定客が1対1で接します。固定客はお店ではなく、美容師に付いている状態と考えるとよいでしょう。固定客をたくさん抱えている美容師が多く在籍しているサロンは、高額で売れる可能性があります

ここでのポイントは美容師の継続雇用です。人気美容師が在籍していれば重要な資源といえます。しかし他店へ転職すると固定客も失われ、サロンの価値は減少してしまうのです。

M&Aを機に経営者が引退する個人店の場合、それほど高い価格では売れないかもしれません。

5.美容系サロンのM&Aの方法

美容系サロンのM&Aの方法

M&Aにはさまざまな手法があります。美容系サロンがM&Aを利用する際には、どの方法を用いるのか解説します。

5-1.個人経営の場合は事業譲渡で売買

個人経営のサロンは個人事業主のため『事業譲渡』の形で売買します。まずは売り手であるサロンの経営者が廃業し、買い手が開業に必要な手続きを行う流れです。

従業員がいるサロンの場合、売り手の廃業により、サロンと従業員の雇用関係は一度途切れます。あらかじめ相談しておくことで、M&Aの一連の手続きが終わった後に、買い手が再度雇い入れることも可能です。

ただし退職を希望する従業員も出てくるかもしれません。従業員の希望を考慮し、手続きを進めるとよいでしょう。

5-2.株式譲渡との違い

代表的なM&Aの手法に株式譲渡があります。事業譲渡が事業単位で個別に引き継ぐ資産を決定できるのに対し、株式譲渡は全てまとめて承継する方法です

丸ごと引き継げるため、事業譲渡と比較してシンプルな手続きで実施できるのがメリットといえます。ただし株式譲渡は株式を発行している法人しかできません。

個人事業主としてサロンを経営している場合、株式を発行していないため、事業譲渡を用いるのが一般的です。

6.美容系サロンのM&Aの準備

美容系サロンのM&Aの準備

スムーズにM&Aを実施するには、事前準備が欠かせません。美容系サロンではどのような準備をしておくとよいのでしょうか?

6-1.同じ業界のM&Aに関する情報を集める

広まってきているとはいえ、M&Aを実施したことのある企業や経営者はまだそれほど多くありません。ケースによっては、売り手も買い手もM&A未経験という場合もあるでしょう。

そこで役立つのが『事例』の調査です。過去に行われた美容系サロンのM&Aについて、事例を集めることで相場観が養われます

ここで得た相場観をもとに売却価額を決定する方法が『類似会社比準方式』です。実際にあった事例をもとに決定するため、売り手も買い手も納得しやすいのが特徴といえます。

過去の事例は、M&A仲介会社・商工会議所・金融機関・税理士などが把握しているかもしれません。売却を検討し始めたら、まず問い合わせてみるとよいでしょう。

6-2.業界に詳しい担当者を見つける

M&A仲介会社を利用するなら、美容業界に詳しい担当者を見つけることも大切です。仕事内容を把握し、業界の動向についてもよく知っている担当者であれば、安心して任せられます。

相場についてもよく知っているため、本来の価値を正しく反映させた売却ができるでしょう。自力で手続きを進め、不利な条件で交渉してしまうといったケースを避けられます。

担当者にアドバイスをもらいながら進めることで、戦略的な準備が可能です。想定より好条件で売却できるかもしれません。

6-2-1.業界特化型のマッチングサイトも存在

美容系サロン業界に特化したマッチングサイトを利用するのもよいでしょう。業界に特化したマッチングサイトであれば、サロンを買収したいと考えている買い手が集まります。

早い段階でマッチングしやすいですし、条件が合えばスピーディーにM&Aが成立するかもしれません。

7.美容系サロン売却の際の注意点

美容系サロン売却の際の注意点

M&Aを成功させサロンを売却するには、注意点も確認しましょう。気の緩みや放置していた問題が、売却の足かせになる可能性があります。

7-1.情報漏洩は致命傷となる

避けたいのは『情報漏洩』です。買い手の情報が漏れることはもちろんですが、M&Aを検討していること自体を機密情報として扱わなければいけません。

M&Aの計画を知られることで、従業員は今後に不安を感じる可能性があります。「今のうちに転職した方がいいかも…」と考え転職してしまい、固定客が離れサロンの価値が下がるかもしれません。

親しい友人に漏らした内容がうわさとして広まる場合や、出しっぱなしの資料を見られてしまい従業員が気付く場合もあるでしょう。不信感を与えないためにも、情報管理を徹底します。

不十分な情報管理では、買い手との交渉が決裂する危険性もあるでしょう。

7-2.経営に関わるあらゆる問題を解決しておく

買い手にとって魅力的なサロンになるよう、できる限り価値を高めることもポイントです。例えば日々の経理で不透明になっている部分があるなら、透明化できるよう処理します。

また未払い残業代は、買収後に発覚すると買い手に迷惑をかけるものです。事前に支払いを済ませクリアにしておきましょう。社会保険の未加入や未払いも同様です。放置したままでは売却は遠のきます。ほかにも問題がある点は全て解決しておきましょう。

8.従業員や固定客に配慮したM&Aを心がける

従業員や固定客に配慮したM&Aを心がける

美容系サロンのM&Aでは、従業員や固定客が離れないよう配慮が必要です。さまざまあるサロンの資産の中でも、従業員は特に重要といえます。

サロンの固定客は従業員に付いていることが多いため、従業員が転職すると固定客もいなくなってしまう可能性が高いからです。そのためいらぬ不安や不信感を抱かせないよう、慎重に手続きを進めなければいけません。

計画的に準備しておくこともポイントです。過去の事例を集め、業界に詳しい担当者を見つけておくと、より希望に合う条件で売却しやすいでしょう。

M&A実施前には、税務に関する部分をクリアにしておくことも大切です。自力での解決が難しいなら『税理士法人チェスター』への相談を検討しましょう。

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