投資信託の相続について相続手続きの専門家が解説

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投資信託の相続について相続手続きの専門家が解説

1.投資信託は相続の対象となるのか?

バブル崩壊後の低金利にあって日本でも資産を預金口座に眠らせるのではなく、運用に回す方が増えています。その中でも人気なのは、少額ではじめられて、投資知識がなくても資産運用ができる投資信託です。では、投資信託は相続の対象となるのでしょうか。

結論から申しますと、投資信託も相続の対象となり、正確には投資信託の「受益権」を相続することになります。

この記事では投資信託の相続方法や注意点などについて詳しく解説していきます。

1-1.遺言書に沿った相続

遺言書に投資信託の相続について明記されている場合は、その遺言書に沿って相続を行います。

相続人ごとに分配の割合が決まっていればその通りに分配されますし、割合を決定する人を遺言書で指名している場合はその指名者の決定通りに分配されます。

死去後に相続人同士が揉めないためにも、投資信託を行っている方は、上記のことを加味して遺言書を作成しておくとよいでしょう。

1-2.遺産の分割協議・調停による相続

投資信託の受益権は遺産分割の対象となります。

そのため、遺言書がない場合や遺言書に投資信託の分配に対する明記がない場合は、相続人同士で遺産の分割協議を行わなければなりません。

協議が決着すれば良いですが、決裂した場合は家庭裁判所で手続きを行い、調停となります。

2.相続とみなされる投資信託は相続税の課税対象

相続対象である投資信託の受益権は相続税の課税対象となります。
投資信託を相続する際は、相続税分も加味しておかなければなりません。

2-1.相続税の評価方法が銘柄によって違う

さて、投資信託には下記2種類があります。

  • 中期国債ファンド・MMF
  • 上記以外の証券投資信託の受益証券

気を付けなければならないのは、種類ごとに相続税の評価方法が異なるという点です。

それぞれの評価方法の違いについて見ていくことにしましょう。

2-1-1. 中期国債ファンド・MMF

【計算式】
1口当たりの基準額×口数×再投資されていない未収分配金(A)ーAにつき源泉徴収されるべき所得税額に相当する金額ー信託財産留保額および解約手数料

引用:国税庁公式サイト|No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価

中期国債ファンドやMMF(マネー・マネージメント・ファンド)といった日々決済されるタイプの銘柄は上記の計算式で評価額を算出することが可能です。

2-1-2.上記以外の証券投資信託の受益証券

【計算式】
1口当たりの基準額×口数×(※)課税時期において解約請求等した場合に源泉徴収されるべき所得税額に相当する金額ー信託財産留保額および解約手数料

引用:国税庁公式サイト|No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価

中期国債ファンド・MMF以外の銘柄は上記の計算式で評価額を産出します。

証券会社の公式サイトなどで基準額を確認した際に、基準額が1万口で表示されている場合は、

1万口の基準額/1万=1口の基準額

上記のように、1口当たりの基準額を算出し、評価額の計算を行って下さい。

また課税時期の基準額がない場合は、課税時期に1番近い基準額で計算を行います。

(※)「課税時期において解約請求等した場合に源泉徴収されるべき所得税額に相当する金額」については、投資信託のうち、私募投資信託(販売先の投資家が限定されたもの)のみが対象となります。
一般的に広く購入者を募る公募投資信託については、相続税評価において源泉徴収額相当額の控除は行いません。
証券会社から購入した場合、公募投資信託である場合がほとんどだと思いますが、その場合控除は不要です。
信託財産留保額、解約手数料については、投資目論見書等から確認をします。

3.相続税だけじゃない!投資信託を相続する際の注意点

投資信託を相続する際の注意点は相続税だけではありません。

  • 価値が変動する
  • 所得税・贈与税の課税対象になる可能性がある
  • 解約違約金が発生する可能性がある

上記3点も注意しながら、相続を行う必要があります。

3-1.価値が変動する

投資信託の遺産分割協議が決着し、いざ分配分を受け取ってみると当初予定していた価値と違い、新たなトラブルに発展する可能性があります。なぜそういったトラブルに発展する可能性があるのでしょうか。それは、普通口座に預けている資金とは違い、投資信託の資金は常に変動し価値も変動するからです。

このようなトラブルを防ぐためには、どの時点で価値を算出したのか遺産分割協議書に記載しておくと良いです。

例えば、1月26日に投資信託の契約者が亡くなって、2日後の時点の価値で遺産分割協議を行ったとしましょう。その場合は、遺産分割協議書に「1月28日時点の基準で価値を算出」というような記載を加えるということです。基準は相続人が自由に決めることができます。

トラブルを避けるためにも記載することを忘れないようにしましょう。

3-2.所得税・贈与税の課税対象になる可能性がある

投資信託の損益額や方法によっては、所得税や贈与税の課税対象になる場合があります。
どういった状況で課税対象になるのか確認していきます。

3-2-1.所得税について

所得税の課税対象か確認する計算方法は下記の通りです。

【算出方法】
売却額(処分(解約時)額)-取得額(故人購入額)

課税対象かどうかは故人の購入価格を基準に行います。

例えば、投資信託を売却した時の価格が30万円で、故人の購入額が10万円だとしましょう。
この状態ですと、30万円-10万円となり20万円の利益が発生していることになりますので、所得税の課税対象になります。

反対に、投資信託を売却した時の価格が10万円で、故人の購入額が30万円だとします。
10万円-30万円となり-20万円の損失が発生していることになりますので、所得税の課税対象にはなりません。

3-2-2.贈与税について

相続人が2人いる状態で、240万円の利益が発生している投資信託を相続したとします。
相続人の1人が代表者として手続きを行い、投資信託を解約・現金化した場合、課税義務が発生するのは所得税だけです。

しかし、この240万円を2分割してもう1人の相続人に120万円を渡してしまうと贈与行為と判断され、贈与税の課税義務まで発生することになります。

このように、分配方法次第で課税額も増えてしまうので注意が必要です。
ただ贈与額が1人当たり110万円以下であれば、基礎控除内に収まるために贈与税はかかりません。

3-3. 解約違約金が発生する可能性がある

投資信託の銘柄によっては、解約時に違約金が発生する場合があります。

額によっては予定の受取額よりも減る可能性があるので、解約を検討している場合は解約違約金が発生するかどうか証券会社に確認しておくとよいでしょう。

4.投資信託を相続する一般的な流れ

投資信託を相続した際の主な流れは下記の通りです。

  1. 投資信託を行っている証券会社へ死亡連絡
  2. 必要書類の準備・提出
  3. 口座の閉鎖・移管

1つずつ見ていきましょう。

4-1.投資信託を行っている証券会社へ死亡連絡

投資信託の契約者が亡くなったら、該当の証券会社にその旨を連絡します。
遺産分割が決まっていない場合でも、速やかに届けないといけません。

4-2.必要書類の準備・提出

遺産の分割がまとまったら、相続の手続きに必要な書類を準備し、証券会社に提出します。

主な提出物としては、

  • 遺言書or遺産分割協議書
  • 戸籍謄本などの公的書類

などが挙げられます。

しかし、必要書類は証券会社や銀行によって異なりますので、必要書類の内容をしっかりと確認することが大切です。

4-3.口座の閉鎖・移管

必要書類を提出後、証券会社による審査が行われます。

審査が完了すれば、資産が自身の口座に移管され、投資信託を相続するとともに、故人の口座は閉鎖され、一連の手続きは終了です。

資産の移管ですが自身の口座を所持していない場合、資産を移管することはできません。
移管を希望する場合は自分の口座を新規に開設する必要があるので覚えておきましょう。

5.投資信託の相続手続きは専門家に任せるとスムーズでおすすめ!

投資信託の相続について紹介させて頂きました。

投資信託の相続は証券会社ごとに手続き方法や必要書類も変わるので、非常に厄介です。

また一般の遺産相続と違い、遺産分割協議中の価値の変動など素人だとややこしくて、トラブルになりやすいといった特徴があります。

未然にトラブルを防ぎたい、円満な相続を行いたいということであれば、相続手続き専門の司法書士法人として高い評価を得ている司法書士法人チェスターがおすすめです。

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投資信託の相続でお悩みの方は、ぜひ1度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

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