遺産相続における「時効・期限切れ」について分かりやすく解説

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遺産相続_7つの時効

遺産相続には、実は7つの時効があります。これらの時効や期限を知らなかった場合、本来もらえるはずの財産がもらえなかったり、本来払う必要のない債務を払うことになったりと、重大な不利益を被る可能性があります。
こうしたリスクに備えるために、ぜひ概要だけでも知っておいてほしいのです。これは、いろいろな現場を見てきた専門家としてのアドバイスです。

例えば、遺留分侵害額請求権という権利があります。これは、遺言などで特定の人が多く遺産を相続した場合に、本来もらえる最低限の遺留分を請求できる権利です。この時効は1年とされているので、1年以内に請求しなければ時効が成立してしまい本来もらえるはずの遺留分がもらえないことになってしまいます。

このように、時効の期日を把握して遺産相続で思わぬ落とし穴にハマらないようにしなければなりません。
ここでは、遺産相続に関する7つの時効について全て解説していきます。
ぜひ参考にしてください。

1.具体的な7つの「時効」とは

遺産分割に関する「時効」は、下記の7つの手続きに関するものです。これらを意識するだけでも、遺産相続の手続きを進める上で必要なスケジュールを把握することができます。遺産相続という重要な意思決定をする場合において、時間がなくて焦ってしまうということがないようにゆとりあるスケジュールで手続きを進めていきましょう。

  • 遺産分割をする権利(遺産分割請求権)の行使
  • 遺留分侵害額請求権の行使
  • 相続回復請求権の行使
  • 相続税の申告
  • 相続放棄の手続き
  • 不動産の名義変更の手続き
  • 生前贈与の贈与税の申告

2.各「時効」についての解説

ここからは各手続きの「時効」について解説していきます。
しかし相続回復請求権(「相続財産を返せ」という権利)、相続税、借金、相続登記、生前贈与といった遺産相続に関わる時効については、あまり関係のない方もいると思いますのでご自身の関係のある部分のみをご覧頂ければと思います。

2-1.遺産分割をする権利(遺産分割請求権)の「時効」について(民法第907条)

被相続人(亡くなった方)が、遺言書を書いていなかった場合には、相続人間で遺産をどのように分けるのかを話し合いで決めなければいけません。この話し合いを、「遺産分割協議」と言います。そして、1人の相続人が他の相続人に対して「遺産分割をしましょう」と言う権利のことを、「遺産分割請求権」と言います。

この「遺産分割請求権」には、時効はありません。つまり、生きている限り永遠に請求することができます。しかも、仮に遺産分割をしていない状態で亡くなってしまったとしても、この「遺産分割請求権」は相続され次の世代の者が権利行使することができますので文字通り、永遠に存続します。

2-2.遺留分侵害額請求権の「時効」について(民法第1048条)

遺留分侵害額請求権の時効は、1年です。相続の開始(被相続人の死亡)と遺留分の侵害を知った時から1年間です。
なお、相続の開始を知っていない状態ですと、この時効は相続の開始から10年となります。

なお、「遺留分侵害額請求権」とは、遺言書によって財産を多くもらう人に対して、財産をあまりもらえない人が追加で財産をもらえるように請求できる権利のことを言います。

例えば、相続人が長男及び長女の子供2人の状態で、被相続人である父は生前に長男を可愛がりすべての財産を長男に渡す旨の遺言書を書いていたとします。この遺言書自体の内容は無効ではありませんが、このようにあまりにも遺産の取得に偏りができてしまうと残された相続人の生活もありますので、法律で、「最低限の遺産をもらえる権利」が長女に保証されています。この「最低限の遺産をもらえる権利」のことを「遺留分」と言い、それを請求する権利のことを「遺留分侵害額請求権」と言います(民法第1046条)。

遺留分侵害額請求をする立場側から考えると、相続の開始と遺留分の侵害を知ってから1年以内に遺留分侵害額請求をしなければ、今後一生その請求はできなくなってしまいます。本来自分がもらえるはずの相続財産がもらえなくなってしまいますので、注意が必要です。

また、遺留分侵害額請求をされる側の立場ですと、遺留分を侵害して自分が多く財産を受け取っている場合、この時効である1年(10年)を経過しないと、他の相続人から遺留分侵害額の請求を受ける可能性があります。例えば、遺産を相続して使ってしまっていれば、自分の財産を削って遺留分侵害額を他の相続人に渡す必要さえでてきますので、注意が必要です。

遺留分侵害額請求について更に詳しく知りたい方は「遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)とは?備える方法・計算方法・時効・手続きの流れを紹介」をお読みください。

2-3.相続回復請求権の「時効」について(民法第884条)

実際には相続人でないものが、あたかも相続人であるかのように財産を相続してしまうような場合がごく稀にあります。例えば外観上(書類上)は相続人でも、実は相続廃除や相続欠格などで相続人としての地位を失っていたような場合です。
その場合に、本当の相続人がこの偽の相続人に対して「相続財産を返せ」という権利のことを「相続回復請求権」と言います。

この相続回復請求権の「時効」は、5年です。
本当の相続人が自分の権利を侵害されているということを知った時から5年です。
なお、この事実を知らない場合にはこの時効は相続の開始から20年となります。

2-4.相続税に関する「時効」について(国税通則法第70条)

相続税に関する「時効」は原則5年です。
相続税の申告期限(死亡日から10か月後(相続税法第27条))から5年ですので、相続開始(死亡日)からですと5年10か月ということになります。ただ、悪意がある場合には、時効は7年となります。申告が必要であることを知っていてしなかった場合や意図的に財産を隠していた場合等が該当します。

なお、ここでいう「時効」は、税務署が相続税を課税することができる期間です。相続税の申告期限は死亡日から10か月後であり、この期限までに申告・納税をしなければなりません。

2-5.借金の相続に伴う相続放棄の手続きの「時効」について(民法第915条)

相続するものが借金しかない場合等には、相続を「放棄」するという方法があります。
これを「相続放棄」と言いますが、この「相続放棄」の時効(つまり期限)は、相続の開始(死亡)を知ってから3か月となります。

但し、「やむを得ない事情がある場合」には、この3か月を過ぎても、相続放棄が認められる可能性もありますので、3か月を過ぎたからといって機械的にあきらめるのはやめましょう。詳しくは、「相続放棄するのはどんなとき? 手続き・必要書類・期限など徹底解説」をご覧ください。

2-6.不動産の名義変更に関する「時効」について(不動産登記法第76条の2)

不動産を相続した場合には、名義変更(相続登記)をする必要があります。

これまで、不動産の名義変更に時効(つまり期限)はありませんでした。しかし、令和6年4月1日以降は名義変更が義務づけられ、所有権を取得したことを知った日から3年が期限となります。

なお、上記の期限にかかわらず、名義変更をしなければ、第三者に対してこの不動産は自分のものと主張することができませんので、その不動産を使っての売却等の法律行為は一切できないこととなります。

2-7.生前贈与の贈与税に関する「時効」について(相続税法第37条)

年間110万円以上の金額を贈与された場合には、贈与税がかかります。この贈与税の時効は原則6年です。
贈与があった日の属する年の翌年の3月15日(贈与税の申告期限(相続税法第28条))から起算して6年となります。
但し、相続税の場合と同様悪質な場合には、時効は7年となります。

ここでいう「時効」は、税務署が贈与税を課税することができる期間です。贈与税の申告は、上記の申告期限までに行わなければなりません。

なお、ネットには贈与税の時効が5年という情報も一部ありますが、これは平成15年以前の話であり、現在は税制が改正されておりそれ以降は6年が正しい期間です。また、“贈与した日”が起算点になるという情報もありますがこれも誤りで正しくは、前述のとおり、贈与税の申告期限から6年となります。

贈与税の時効について詳しい解説を読みたい方は「贈与税の時効は原則6年、ただし故意に申告しなかった場合は7年に!」をご参照ください。

3.不安な方は早めに専門家に相談を

遺産相続の手続きには、期限や時効が存在するものがあり、その期間を正しく理解していないと知らなかったでは済まされない事態に陥ってしまう可能性があります。本来もらえるはずであった財産がもらえなくなったり、本来払う必要がなかった借金を返済しなくてはならなくなったりすることになってしまいます

そうならないためにも、遺産相続に関わる時効や期限はよく理解しておく必要があります。

慎重な判断が必要となりますので、もし自信がなかったり判断に迷われたりした場合には相続の専門家に早めにご相談されることをお勧めいたします。

税理士法人チェスターは、年間2,373件以上の相続税申告実績がある相続専門の税理士法人です。ご相続が発生しているお客様の初回面談を無料で承っておりますので、相続税申告にお悩みの方は一度お気軽にお問合せください。

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