老人ホーム入居中も小規模宅地等の特例は使える!3つの適用要件を解説
タグ: #小規模宅地等の特例, #相続税評価相続財産に故人の自宅不動産があり、相続税の計算をする際にそこに小規模宅地等の特例を適用したいと考えている。しかし、故人は老人ホームへ入居し、当該自宅は長年空き家の状態になっている。
このような状態で、小規模宅地等の特例の適用は受けられるのかどうかとお悩みではないでしょうか。
この記事では、故人(被相続人)が生前に老人ホームに入所していた場合に、小規模宅地等の特例が適用できるかどうかという論点について解説しています。
小規模宅地等の特例は、相続税の計算に大きく影響を及ぼす節税効果の非常に高い特例です。適用を間違えば、相続税の払い過ぎや、もしくは多額のペナルティが課せられる恐れがありますので間違いのないよう確実に理解しておきましょう。
目次 [閉じる]
1.老人ホームへ入居していても小規模宅地等の特例が適用できる3つの要件
亡くなった故人(被相続人)が生前に老人ホームへ入居し、自宅が空き家の状態になってしまっていたとしても、次の3つの要件を満たしていれば特定居住用宅地として小規模宅地等の特例が適用可能となります。
1-1.相続開始時点で“要介護”の状態であったこと
相続の開始時点(死亡時点)で、被相続人が“要介護認定”又は“要支援認定”を受けている必要があります。つまり、健康な状態で老人ホームへ入居していた場合等は小規模宅地等の特例の適用が受けられないということになります。なお、要介護1・2・3といった程度は問われません。
1-2.入所する老人ホームが“一定の要件”を満たすこと
入所する有料老人ホームはどこで良いというわけではなく、“一定の要件”を満たしている必要があります。具体的には、国税庁のHPから抜粋した以下の要件のいずれかに該当する必要があります。
ただ、実際はほぼすべての有料老人ホームは以下のどれかに該当します。入居していた老人ホームが以下に該当するかどうかの一番簡単な確認方法は老人ホームに直接問い合わせてみるのが良いでしょう。
気を付けなければいけないのは、稀に無許可で営業している老人ホームがあるということです。そういった老人ホームへ入居していた場合には小規模宅地等の特例が適用できませんので注意が必要です。
なお、きちんと届出がされているかどうかを確認する方法は市区町村のHP等で具体的に施設名の一覧がありますのでそちらで確認することも可能です。
(イ) 老人福祉法第5条の2第6項に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、同法第20条の4に規定する養護老人ホーム、同法第20条の5に規定する特別養護老人ホーム、同法第20条の6に規定する軽費老人ホーム又は同法第29条第1項に規定する有料老人ホーム
(ロ) 介護保険法第8条第28項に規定する介護老人保健施設又は同条第29項に規定する介護医療院
(ハ) 高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅((イ)の有料老人ホームを除きます。)ロ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第21条第1項に規定する障害支援区分の認定を受けていた被相続人が同法第5条第11項に規定する障害者支援施設(同条第10項に規定する施設入所支援が行われるものに限ります。)又は同条第17項に規定する共同生活援助を行う住居に入所又は入居をしていたこと。
引用URL:国税庁-No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
1-3.老人ホームへ入所した後の自宅を他人に賃貸したりしないこと
故人が老人ホームへ入所した後の自宅について、“他の用途”に利用されていないことも要件となります。例えば、第三者に賃貸したような場合には特定居住用の小規模宅地等の特例が適用できなくなります。
但し、例外的に生計一の親族が老人ホームへ入所後に引っ越してきた場合で家賃の授受を行っていない場合には特定の適用が可能です。生計が別の親族が引っ越してきたり、事業用にしようしていたような場合には適用が不可となりますので注意が必要です。
2.相続税申告の際に税務署に添付書類として提出する書類一覧
(2)介護保険の被保険者証の写しや障害者福祉サービス受給者証の写しなど
(3)施設への入所時における契約書の写しなど
被相続人が老人ホームへ入所していた場合で小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税申告書を税務署に提出する際に必要となる添付書類があります。それが上記の3つの書類です。以下、順番に詳しく説明していきます。
(1)被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始の日以後に作成されたもの)
“戸籍の附票の写し”とは、その戸籍にいる間の住所の移転履歴を記録した書類となります。本籍地の役所で取得することが可能です。なお、相続開始(死亡)日以降に取得の申請を行う必要があります。
また、老人ホームへ入所した時点からの住所の移転履歴が確認できる必要があるので、老人ホーム入所後に仮に本籍地を転籍している場合には複数の戸籍の附票の写しが必要となります。
(2)介護保険の被保険者証の写しや障害者福祉サービス受給者証の写し等
被相続人が、要介護もしくは要支援の状態であったことを証明するための書類として、介護保険の被保険者証の写しや障害者福祉サービス受給者証の写し等が必要となります。
なお、介護保険の被保険者証や障害者福祉サービス受給者証を紛失してしまっている場合には、市区町村役場に申請して別途要介護もしくは要支援の状態であったことを証明する書面を出してもらうことも可能です。
(3)施設への入所時における契約書の写し
被相続人が相続開始の直前において入居又は入所していた住居又は施設の名称及び所在地並びにその住居又は施設が次のいずれに該当するかを明らかにする書類として、入所時の契約書のコピー等が必要となります。
契約書を紛失してしまったような場合には、施設に対して契約書のコピーの交付をしてもらう等の対応が考えられます。
3.最終的な適用可否の判断は専門家へ
被相続人が老人ホームへ生前に入所していても、一定の要件を満たせば特定居住用宅地として小規模宅地等の特例の適用が受けられるということを解説してきました。
但し、適用を受けるためには添付書類が必要となり、また要件についても様々な検討が必要になります。自分で判断したり相続税に詳しくない税理士に相談すると、本来適用できるはずが適用できないと判断して申告してしまったり、その逆で本来適用できないところに適用してしまい、のちに税務署に指摘されて修正申告をしなければならなくなる可能性があります。いずれの場合においても、小規模宅地等の特例は相続税額へ与える影響が大きいため、過大な申告や多額のペナルティに繋がってしまいます。
素人判断で適用の可否を決定するのは危険ですので、必ず、相続税に強い税理士に相談するようにしましょう。
年間2,373件以上の相続税申告実績がある相続税専門の税理士法人チェスターでは、被相続人が生前老人ホームに入居されていた相続税申告も数多く取り扱っています。当然、小規模宅地等の特例の適用判断も正確に行うことができますので、お困りの場合は相続税申告が必要な方を対象に実施している無料個別相談会へお申込みください。
【参考URL】
国税庁-老人ホームに入居中に自宅を相続した場合の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法第69条の4)の適用について
国税庁-No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
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