換価の猶予は相続税が払えない場合に申請できる
タグ: #延納・未納相続税が払えない場合の対処法には、延納や物納があります。しかし、延納の担保や物納に使える財産は限られていて、誰でも延納や物納ができるわけではありません。
換金が難しい財産を相続して相続税が払えない場合は、換価の猶予を申請して相続税を分割払いできる場合があります。
この記事では、相続税の納税で換価の猶予が認められる要件と申請の手続き方法をご紹介します。
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1.換価の猶予とは
換価の猶予とは、税務署に差し押さえられた財産の換金を猶予してもらえる制度です。生活の維持や事業の継続に必要な財産については、差し押さえ自体を猶予してもらえる場合があります。
期日までに国税を納めることができないときは、税務署に換価の猶予を申請することができます。換価の猶予が認められれば、税金を毎月分割払いで納めていきます。分割払いをしている間は延滞税がかかりますが、本来の税率より減額されます。
猶予の期間は最長で1年です。やむをえない理由で猶予の期間内に納税できない場合は、期間の延長が認められます。ただし、すでに猶予された期間とあわせて2年を超えることはできません。
2.換価の猶予が認められる要件
換価の猶予は、次のすべての要件にあてはまる場合に認められます。
- 国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
- 納税について誠実な意思を有すると認められること
- 換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
- 納付すべき国税の納期限から6か月以内に「換価の猶予申請書」が所轄の税務署に提出されていること
- 原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること
(引用:国税庁ホームページ 猶予の申請の手引)
2-1.「事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある」とは
換価の猶予が認められる要件のうち、「事業の継続を困難にするおそれがある」とは、次のような場合をさします。
- 不要不急の資産を処分するなど経営を合理化してもなお、国税を一時に納付することで事業を休止・廃止させるおそれがある場合
「生活の維持を困難にするおそれがある」とは、次のような場合をさします。
- 国税を一時に納付することで、必要最低限の生活費を賄う程度の収入が確保できなくなる場合
2-2.「納税について誠実な意思を有する」とは
「納税について誠実な意思を有する」とは、納税者に国税を優先して納付する姿勢がみられることをさします。
納税できない事情や資産の状況、収入の見込みなど、必要事項が提出書類に適切に記載されている必要があります。
2-3.要件を満たせば担保は不要
換価の猶予では担保の提供が求められますが、次のいずれかにあてはまる場合は、担保の提供は不要です。
- 猶予される税額が100万円以下の場合(未確定の延滞税を含む)
- 猶予の期間が3か月以内である場合
- 担保を提供できない特別の事情がある場合(担保として提供できる財産がない場合など)
3.換価の猶予の申請手続き
換価の猶予の申請は、対象となる国税の納期限から6か月以内に所轄の税務署に申請します。
相続税の場合、所轄の税務署は亡くなった被相続人の住所を管轄する税務署です。申告する本人の住所を管轄する税務署ではありません。
3-1.換価の猶予の申請に必要な書類
換価の猶予を申請するときは、以下の書類を税務署に提出します。
- 換価の猶予申請書
- 財産収支状況書(猶予税額が100万円以下の場合)
- 財産目録(猶予税額が100万円を超える場合)
- 収支の明細書(猶予税額が100万円を超える場合)
(猶予税額には未確定の延滞税は含まない)
このほか、担保を提供する場合は「担保提供書」なども必要です。
各書類の記載例は、国税庁ホームページの「猶予の申請の手引」を参照してください。
国税庁ホームページ 猶予の申請の手引
3-2.申請後の手続きの流れ
換価の猶予を申請すると、税務署では換価の猶予を認めるかどうかの審査が行われます。
書類に提出漏れや記載不備があれば、税務署から電話などで連絡があります。税務署から「補正通知書」が送られてきた場合は、受け取った日の翌日から起算して20日以内に補正をしなければなりません。期限内に補正しなければ、猶予の申請を取り下げたことになるので注意が必要です。
その他、事業の継続や生活の維持が困難になる事情の詳細、財産の状況や収入の見込みなどについて質問される場合があります。
換価の猶予が認められれば、税務署から「換価の猶予許可通知書」が送られてきます。通知書には分割納付の期限と金額が記載されているので、そのとおりに税金を納めます。
4.相続税の延納との比較
相続税が払えない場合は延納や物納をすることができます。しかし、次のような事情で担保や物納に適した財産がない場合は、延納や物納は認められません。
- 遺産が未分割である
- 非上場株式を相続した
- 相続した不動産に抵当権がついている
担保として提供できる財産がない場合でも、換価の猶予であれば認められる場合があります。
換価の猶予と相続税の延納は、納税を先延ばしできるという点では共通していますが、期間や要件などさまざまな違いがあります。相違点を表にまとめているので参考にしてください。
項目 | 換価の猶予 | 相続税の延納 |
---|---|---|
申請期限 | 納期限から6か月以内に申請 | 申告期限までに申請 |
猶予・延納の期間 | 1年以内(延長しても2年まで) 延滞税が課される | 5~20年(財産の種類によって異なる) 利子税が課される |
期間中の納税 | 毎月納付 | 年1回納付 |
最低金額 | なし | 税額が10万円を超えること |
担保 | 必要 猶予税額が100万円以下、または猶予期間が3か月以内、または担保を提供できない特別の事情がある場合は不要。 | 必要 猶予税額が100万円以下、または猶予期間が3年以内の場合は不要。 |
相続税の延納については、「相続税の延納制度を使うための4つの手順」を参照してください。
5.税理士に依頼することで税額が圧縮できるケースも
ここまでは相続税が払えないときの換価の猶予の申請についてご紹介しましたが、ご自身で税額を計算されて換価の猶予を検討されているという場合は、相続税に強い税理士に計算を依頼することで税額が圧縮できるかもしれません。
相続税には、税額を軽減することができる様々な特例が存在します。それらの中には要件が複雑で判断が難しいものや、一般の方にはあまり知られていないものもあり、それらを専門家の判断で過不足なく適用することで税額が半分以下になるケースもあるのです。
換価の猶予を利用すると、通常の税率より引き下げられるとはいえ延滞税がかかってしまうので、一括で納付できるのであればそれに越したことはありません。
換価の猶予を検討する前に、まずは相続税に強い税理士に相談してみると良いでしょう。
相続税専門の税理士法人チェスターにも、ご依頼頂くことでお客様の当初の計算より税額を大幅に圧縮させることができた事例が多数あります。
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