不動産会社の事業承継はどうすればいい?M&Aの概要や注意点を解説

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不動産会社の事業承継にはどのような方法があるのでしょうか?親族内承継や従業員に引き継いでもらう方法のほか、M&Aについてもチェックしましょう。また税金についても押さえることで、事業承継に関する不安の解消につながるはずです。

1.不動産業は後継者不足に悩みがち

不動産業は後継者不足に悩みがち

中小企業の後継者不足は業種を問わず共通する問題です。中でも不動産業界は、後継者不足で悩みがちといわれています。不動産業界を取り巻く環境から、後継者不足の問題をひも解いていきます。

1-1.従業員数4人以下の会社が最多

街にあるたくさんの不動産会社の中でも、多いのは従業員が1~4名のごく小規模の会社です。人数規模別の事業所数を見ると、下記のようにその差は明らかです。

  • 1~4人:30万4,566
  • 5~9人:3万2,437
  • 10人以上:1万4,157

小規模な不動産会社では事業承継を具体的に考えていないケースも多く、半数以上の会社が後継者不在という調査結果もあります。経営者が高齢になり、体力や気力が衰えると考え始めますが、対策は手遅れになりがちです。

結果的に、後継者を探すことなく事業をやめているケースが多く見られます。また従業員が少ないことも、廃業につながる理由の一つです。

参考:2021不動産業統計集|公益財団法人不動産流通推進センター

1-2.不動産会社が増え、競争は激化

不動産業者の数は、2014年度以降増加し続けています。宅建業者の数を調べた国土交通省の調査を見ても、下記の通り増加傾向であることが分かるはずです。

  • 2019年度:12万5,638
  • 2018年度:12万4,451
  • 2017年度:12万3,782
  • 2016年度:12万3,416
  • 2015年度:12万3,249
  • 2014年度:12万2,631

独立開業・フランチャイズ経営・事務所数を増やしている大手企業など、さまざまなケースにより業者数は増えています。そんな中、顧客の獲得がこれまでのようにできず、廃業する会社が見られます。

顧客の獲得は他社との競争です。競争相手が多くなることで、顧客獲得の難しさが高まっているといえます。

参考:令和元年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について|国土交通省

1-3.営業スタイルの変化で厳しい経営環境

不動産会社の営業手法というと、かつてはチラシのポスティングや新聞への折り込み広告が一般的でした。しかし時代の流れとともに、この傾向に変化が起こっています。

例えば各種SNSや動画配信サイトでの情報発信は、今では一般的なものです。またIoTやVRによるバーチャル内覧・AIによる不動産査定・IT重説(重要事項説明)なども取り入れられつつあります。

営業スタイルの変化に「ついていけない」「環境を整えるのは不可能」と感じた経営者により、廃業を選ぶケースが増加中です

2.不動産会社の事業承継

不動産会社の事業承継

後継者不足に悩む不動産会社が多い中、引き継ぎがうまくいき事業承継できる会社もあります。不動産会社の事業承継で引き継ぐものや、注意すべき点を見ていきましょう。

2-1.不動産や現金、ノウハウなどを引き継ぐ

事業承継では、有形資産も無形資産も全て引き継ぎます。不動産会社の場合、土地や住宅など『不動産』を複数持っている場合も多いものです。

業種によっては売却もできますが、不動産会社では安易に売却もできません。現金化できないにもかかわらず高額な税金がかかるため、大きな負担となる部分です。

『現金』も事業承継で引き継ぐ代表的な資産です。ただし不動産は高額なため、多額の負債を抱えている可能性があります。返済資金が尽きないよう注意が必要です。

目には見えませんが、ノウハウも重要な資産です。顧客サポートの方法や営業手法など、築き上げてきたものを引き継ぐことで、サービスの質をキープできます。

2-2.店舗としている不動産が社長名義の場合は?

小規模の不動産会社では、店舗が社長の個人名義というケースもあるでしょう。大切なのは『個人資産と会社資産の分離』です

社長が現役で働いている間は、社長名義であっても問題が起こることはまずありません。ただし社長が引退後、死亡し相続が発生すると、事業承継に支障をきたす可能性があります。

相続人が複数いる場合、中には不動産会社の経営に関わらない人もいるでしょう。すると所有者と経営者が一致しなくなってしまいます。

所有者から店舗を借りることになるため、賃料を増額され減益となるかもしれません。相場を超える価格での買取要求や、第三者へ転売されることによる立ち退き請求の可能性もあるでしょう。

こうした要因により、会社の運営が立ち行かなくなる可能性があります。

3.不動産会社の事業承継は誰に?

不動産会社の事業承継では、後継者を誰にするかも重要なポイントです。一般的に引き継ぐケースが多い人を紹介します。

3-1.親族内で選ぶ

小規模な不動産会社では『親族』内で事業承継するケースが多いでしょう。経営者の子どもが引き継ぐとなると、従業員や取引先・顧客などにも理解してもらいやすいものです。

親族内で事業承継する場合には、株式の『生前贈与』か『譲渡』で行われます。生前贈与なら株式の取得資金は要りません。ただし引き継ぐ親族に贈与税が課される方法です。

譲渡で事業承継する場合には、親族間であっても株式の取得資金を負担しなければいけません。また経営者は株式譲渡によって得た利益に対して課税されます。

事業承継の税金について不明な点は、『税理士法人チェスター』に相談することで解消できるでしょう。

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3-2.優秀な従業員を後継者に選ぶ

後継者として適任の『従業員』に事業承継する方法もあります。必要な教育をするために数年単位で育成しなければいけませんし、その分コストもかかる方法です。

しかし会社で実際に業務を経験しながら学ぶため、社風や方向性・業界のトレンドなどに詳しい人材へ成長していく可能性が高いでしょう。優秀な従業員であれば、後継者という目標へ向けて教育することで、独立心も満たせるはずです。

ただし能力としては十分であっても、株式取得の資金が用意できないケースがあります。また従業員が経営者になることで、社内のパワーバランスが崩れる可能性も考えられるでしょう。

4.親族や従業員に承継するのが難しい場合

親族や従業員に承継するのが難しい場合

親族や従業員への承継が難しいなら『M&A』を検討するのもよい方法です。後継者がいないからといって、廃業をしなくても済むかもしれません。

4-1.不動産会社のM&Aという方法

M&Aは会社や事業を第三者へ売却することです。さまざまな手法がある中でも『株式譲渡』『事業譲渡』『会社分割』で実施されるケースが多いでしょう。不動産会社のM&Aは株式譲渡によるものが大半です

株式を売買することで経営権が移るため、他の手法と比較して手間がかからずスピーディーに実施できます。体制や取引先・物件のオーナー・顧客との契約などを変更する必要もありません。

経営者の高齢化や少子化による後継者不足に悩む不動産会社にとって、事業承継の可能性を見出せる方法です。

4-2.不動産会社を第三者に承継するメリット

事業承継にM&Aを利用し第三者へ引き継ぐと、不動産会社の事業をそのまま『継続』させられます。不動産会社が担う事業は、多くの人々の暮らしに密接に関わるものです。廃業すれば多方面へ影響が及ぶでしょう。

M&Aで事業承継できれば、会社や事業は変わらず存続します。新しい経営者が引き継ぐため、関係する人々に迷惑をかけることもありません。もちろん契約や手法によっては従業員の雇用も守れます。

また『創業者利益』が得られるのもメリットです。会社を廃業するのにも費用がかかります。負債の清算も必要になり、資産が残らない場合もあるでしょう。

M&Aなら負債も含めて承継の可能性があり、資産の価額や営業権も含めた、まとまった金額を受け取れる可能性があります。

5.不動産会社は売れるのか

不動産会社は売れるのか

事業承継の手段としてM&Aに注目が集まっています。実際に不動産会社は売れるのでしょうか?売れにくい要因を知り、売れやすい形に改善していくことも可能です。

5-1.ほかの会社が不動産会社を買う理由

買い手が不動産会社を買う理由には、いろいろなケースがあります。代表的なのは『人材不足の解消』です。既に業務を担っている不動産会社を購入すれば、体制も人材も一気に手に入れられます。

人を雇って教育し育て上げるよりも、早く確実に人手不足を解消するために活用されている方法です。『取引先』や『店舗』などを引き継げるのも理由といえます。

不動産会社同士の競争が激化する中、新たな取引先を見つけ利益に結び付く契約までとりつけるのは大変なことです。既に取引先を多数抱えている不動産会社を買えば、契約をそのまま引き継げます。

立地のよい店舗を持っており、客足が途絶えることがないなら、それだけでも大きな魅力です。

5-2.売れにくい不動産会社とは

一方で売れにくい不動産会社もあります。例えば『社長への依存度が高い』会社です。取引先が社長のネットワークのみといった場合や、不動産購入時の目利きは社長の専権事項といった会社は、その社長がいなければ成り立ちません。

購入しても利益につながりにくいスタイルの会社と判断されるため、買い手が付きにくいでしょう。社長に依存しない体制作りをすることで、売れる可能性が高まります。

また『借金』が多い会社もなかなか売れません。目安として年商の半分以上の借入金があると敬遠されやすくなります。

買い手が求めているのは会社の事業です。手持ちの不動産で借入金が膨らんでいるなら、不動産を売却してからM&A市場へ出すのもよいでしょう。

6.M&Aの相手は主にどこで見つける?

M&Aの相手は主にどこで見つける?

M&Aによる事業承継を決めたら、売り手とのマッチングが重要です。小規模な不動産会社でも、売り手を見つけやすいサービスを紹介します。

6-1.M&Aサポート専門の会社やサイト

多くの買い手候補へ自社をアピールする手段として有効なのが『マッチングサイト』です。売り手が情報を掲載し、買い手が連絡を入れる形式が多く採用されています。

マッチングサイトを利用すると、買い手と直接やりとりが可能です。仲介アドバイザーの費用も安価で、売り手は無料というサービスも少なくありません。

ただし、契約締結まで手厚いサポートを受けるのを期待するのは難しいでしょう。法務や税務の専門知識も必要なM&Aでは、M&Aをサポートする会社も利用するとスムーズに進みやすくなります。

ケースによっては、弁護士や税理士など専門家への依頼も必要です。税務に関しては『税理士法人チェスター』でも相談を受け付けています。

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6-2.事業引継ぎ支援センター

『事業引継ぎ支援センター』へ相談するのも有効な方法です。中小企業基盤整備機構が運営する公的な機関のため、安心して相談できます。事業承継の悩みについて相談するのはもちろん、買い手の紹介も無料です。

民間の専門家には断られるような、小規模な案件にも取り組んでいます。そのため小さな不動産会社でも利用しやすいサービスです。

幅広い内容に対応しているため、事業承継を考え始めたら、まずは相談してみるのもよいでしょう。

トップ|事業承継・引継ぎポータルサイト

7.事業承継にかかる税金

事業承継にかかる税金

事業承継をする際には税金が発生します。税金は手法によって異なるため、M&Aを実施するときには、チェックしておきましょう。また、納税が猶予される事業承継税制の対象となるかどうかも確認します。

7-1.株式譲渡の場合

株式譲渡による事業承継を行った場合、買い手に税金はかかりません。会社が所有する不動産も全て譲渡の対象ですが、売買するのはあくまでも株式です。そのため不動産取得税や登録免許税は課税されません。

売り手への課税は、株主が経営者個人か法人かにより異なります。経営者個人であれば、株式譲渡の所得に所得税15%+住民税5%の計20%が課される仕組みです。譲渡所得は『譲渡収入-(取得費+譲渡費用)』で求めます。

法人が株主の場合には、株式譲渡による利益は総合課税方式が適用されます。その他の法人所得と合わせて法人税が課される仕組みです。

7-2.事業譲渡の場合

事業譲渡でM&Aを実施すると、買い手には課税資産に対する『消費税』がかかります。課税資産とは建物や器具・備品などです。ノウハウ・取引先・顧客などの営業権も対象に入ります。

有価証券・債権・土地は課税資産に含まれないため注意しましょう。また不動産会社の事業譲渡では、不動産を引き継ぐケースも多く『不動産取得税』や『登録免許税』も課税されます。

一方、売り手は『法人税等(法人税・地方法人税・法人住民税・事業税)』を支払わなければいけません。買い手から預かる消費税を納めるのも売り手の役割です。

7-3.不動産会社も事業承継税制の対象?

『中小企業における経営の承継の円滑化に関する法(経営承継円滑化法)』に基づいて適用される『事業承継税制』は、会社や個人事業の後継者が取得した資産について、贈与税や相続税を猶予する制度です。税金の負担を軽減し、事業承継しやすい仕組みを作っています。

法人版事業承継税制の場合、全ての株式を対象として100%納税猶予です。業績悪化によるM&Aで譲渡する場合にも、税額は再計算されかなり抑えられます。加えて長期間の猶予も設けられるのが特徴です。

これにより、事業承継で後継者が負うリスクが大幅に小さくなりました。現時点で後継者がいなくても、事業承継税制が適用できれば後継者が見つかるかもしれません。

7-4.資産管理会社に当てはまる場合

資産管理会社に当てはまると、事業承継税制の『対象外』です。事業実体のない会社のことで『資産保有型会社』と『資産運用型会社』に分類されます。

資産保有型会社は総資産の70%以上が特定資産であること、資産運用型会社は総収入金額の75%以上が特定資産の運用収入であること、という定義です。

不動産賃貸業を行う会社の中には、節税を目的として設立された法人もあります。このような法人は資産管理会社と判断されるため、事業承継税制は適用外です。

7-4-1.資産管理会社でも適用となるケース

ただし資産管理会社が全て適用外というわけではありません。三つの『事業実態要件』を満たせば、資産管理会社と判断された不動産会社も事業承継税制を使えます

  • 相続や贈与の日まで3年以上継続的に事業を行っている
  • 従業員が5人以上おり雇用を作り出している
  • 従業員が働く事業所がある

事業所は賃貸でも所有しているものでも構いません。ただし自宅や親族の家などではなく、専用の事業所が必要です。全ての要件を満たすことで、資産管理会社でも事業実体があると認められ、事業承継税制を使えます。

8.不動産会社を廃業する場合

不動産会社を廃業する場合

親族や従業員内で後継者が見つからず、M&Aによる事業承継もできない場合、不動産会社の廃業を決断するケースもあるでしょう。廃業するときに必要な手続きを紹介します。ただし慎重な判断が必要です。

8-1.契約関係の整理を行う

廃業の手続きが完了するまでには、おおまかに下記のステップを踏みます。

  1. 解散・清算人の登記
  2. 廃業届の提出
  3. 供託金・分担金の取り戻し
  4. 清算完了

不動産会社の場合、物件のオーナーとの契約解除が必要なケースもあり、ほかの業種より契約関係の整理に時間がかかることが見込まれます。最低でも1年前にはスケジュールを立てて実行していきましょう。

もちろん一般的な法人と同様、資産・負債の整理や、廃業届の提出といった手続きも必要です。加えて必要なのは『宅地建物取引業保証協会』や『不動産保証協会』の退会手続きです。

これらの協会に加入していない場合、法務局へ供託している営業保証金1,000万円を取り戻す手続きも実施します。

8-2.廃業の判断は慎重に

入念に準備をしておけば、廃業の手続きは比較的スムーズに進むはずです。ただし廃業の判断は慎重に行いましょう。廃業すれば負債が清算されすっきりするかもしれません。しかし同時に失うものも大きいからです。

事業用資産はもちろん、許認可も全てなくなります。長年かけて築き上げた取引先との関係もなくなってしまうでしょう。また従業員の職を奪うことにもつながります。

9.不動産会社の事業承継は早いうちに対策を

不動産会社の事業承継は早いうちに対策を

不動産会社は近年増加中です。しかし半数以上は後継者がいません。小規模な不動産会社の場合、特別な対策をすることなく、経営者が引退の時期を迎えるケースもあるでしょう。

事業承継を考えるなら、できるだけ早い段階で方向性を決めることが大切です。親族内承継なのか、従業員を後継者にするのか、M&Aで第三者へ承継するのか、方針を固めれば具体的な動きに移れます。

また事業承継には税金も関わり、自社だけで対処できない状況も出てくるものです。不安がある部分は『税理士法人チェスター』へ問い合わせてみましょう。

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