廃業する会社を買うために知っておきたいこと。手法、注意点など
タグ: #M&A廃業する会社を買うにはどのような方法があるのでしょうか?希望に合う案件の探し方や、取引を進める際の注意点を解説します。代表的な手法とその特徴や、廃業する会社の買収により実現できることについても見ていきましょう。
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1.経営者が廃業を選ぶ理由
会社を廃業するのには理由があります。代表的な理由を確認しましょう。廃業の基本的な意味についても紹介します。
1-1.そもそも廃業とは
廃業とは会社を消滅させる手続きのことです。経営状況が悪くなり事業をたたむ場合をイメージするかもしれませんが、実際は経営状況が悪化していなくても廃業せざるを得ないケースもあります。
例えば、黒字であっても後継者がいなければ会社の存続は難しいでしょう。ほかにも続けられない事情があるかもしれません。
会社そのものがなくなれば、従業員や取引先に大きな影響を与えます。「できれば廃業は避けたい」と考えている経営者は多いものです。
1-2.経営者が高齢になり、事業を続けられず廃業
経営者が廃業を判断する理由の一つに『高齢』になったことが挙げられます。高齢になると健康上の問題も出てきやすくなるでしょう。
目立った病気がなくても、体力や気力が若いころのようには続かないかもしれません。後継者がいれば事業承継も考えられますが、いない場合にはほかの選択肢がないと感じることもあるものです。
もともと自分の代で事業をたたむつもりだったという経営者もいます。「子どもに継がせる気はない」と廃業を視野に入れて事業を続けてきた場合には、引退=廃業と考えているケースもあるでしょう。
1-3.相談先がない、サポートを受けないまま廃業
廃業するしかないという会社がある一方、存続を希望していながらも相談先がなく廃業する経営者もいます。会社の状況についてどこへ相談すればよいのか分からず、友人や知人にしか相談していない経営者もいるのが現状です。
専門家へ相談できなければ、適切なサポートも受けられません。対策を講じれば『廃業せずに済むかもしれない』と考える経営者でも、自分1人での解決は難しいでしょう。
2.廃業する会社を買うことは双方にメリットが
廃業にはやむを得ない事情があると分かりました。その理由を考えると、廃業する会社の買収は、買い手にも売り手にもメリットのある取引だといえます。具体的にどのようなメリットがあるか見ていきましょう。
2-1.買い手「相場よりも価格が安くなる」
買い手にとって最も大きなメリットは『価格が安い』ことです。小さな規模の会社を売買するときには、買取価格を『時価換算した純資産+営業利益数年分』で求めます。
経営者が高齢になるとともに、売上高が減少する会社は増える傾向です。高齢を理由に廃業する会社は、営業利益が小さくなりやすく、相場より安く買える可能性が高まります。
赤字を理由に廃業を計画している場合も、営業利益がマイナスのため、相場より安く買収しやすいでしょう。同じような規模の同業他社と比較し、少ない資金で事業を手に入れられるかもしれません。
参考:2016年版 小規模企業白書「2 経営者の年代別に見た小規模事業者の特徴」|中小企業庁
2-2.売り手「廃業にかかるコストを節約」
メリットがあるのは買い手だけではありません。売り手にも『廃業コストの節約』というメリットがあります。
廃業の手続きには費用が必要です。法務局での登記や印紙代・官報公告など最低限の手続きだけでも、7万~8万円かかります。そのほかに専門家への依頼・事務所や店舗の原状回復・取引先との解約などにより、数百万円かかる場合もあるでしょう。
債務があるなら、会社の資産を現金化して返済に充てる必要もあります。土地を含め資産があったとしても、清算手続きによってほとんどなくなったり、負債が残ったりするケースも珍しくありません。
このようなときには会社を売却すれば、廃業の手続きもコストも不要になります。
3.廃業する会社を買う意味
事業を一から起こす選択肢もありますが、最近では廃業する会社を買うことの意味も知られてきています。代表的な意味を知ることで、買収を検討する際の参考になるはずです。
3-1.事業を発展させる
既に持っている事業をより大きく成長させるために、買収は役立ちます。例えば展開する地区の異なる同業種の会社を買えば、商圏を拡大可能です。
製造業を営む会社が小売業の会社を買えば、自らの手で販売できるようになります。今ある事業を、より収益性の高いものへ発展させられるでしょう。
また異業種へ進出し、会社の収益源を複数確保したいという場合にも、廃業する会社の買収が役立ちます。新規事業の立ち上げにはコストがかかりリスクが大きいものです。既にノウハウや顧客のいる事業を買収すれば、収益化までの期間を最小限にできます。
3-2.技術、取引先などを引き継ぐ
会社を買収すれば、資機材といった有形資産はもちろん、技術や取引先などの無形資産も引き継げます。有形資産は購入すれば手に入りますが、無形資産を築くのには時間が必要です。
長い年月をかけて磨き上げられた技術や独自の流通網を手に入れられる方法は、なかなかありません。ただし取引先との関係性には注意が必要です。
あらかじめ売り手の会社からよく説明してもらうことで、買収後も引き続き取引を続けられる可能性を高められます。
3-3.従業員を獲得
経験豊富な従業員を獲得できるのも、会社を買う意味の一つです。小規模な会社では、熟練した従業員も会社の価値の一部といえます。このような優秀な従業員を、教育の手間をかけることなく雇い入れることができるのも魅力でしょう。
ただしケースによっては、買収とともに従業員の退職が決まっている会社もあります。会社のキーマンやほぼ全従業員の退職が決まっている場合には、従業員を獲得できる利点がなくなってしまうため要注意です。
3-4.節税できる可能性がある
赤字会社を買収した場合には『節税』につながるかもしれません。売り手が繰越欠損金を抱えていた場合、買い手がそのまま引き継げるからです。
繰越欠損金は黒字と相殺できる仕組みがあるため、買い手は黒字額を抑えられ、その分課税額が減少します。ただし結果的に節税につながることはあっても、節税のためだけに会社を買収するのは現実的ではないでしょう。
検討している会社買収が節税につながるかはケースバイケースです。『税理士法人チェスター』へ相談すると役立つアドバイスを受けられます。
4.廃業する会社を買う主な方法二つ
会社を買うにはどのような方法があるのでしょうか?代表的な取得方法2種類を紹介します。どちらにもメリット・デメリットがあるため、状況に合わせた方法を検討しましょう。
4-1.株式譲渡
『株式譲渡』は売り手が所有する株式を取得することで、経営権を得る手法です。廃業する会社を買収する際、一般的に使われています。
この手法は会社の全てを引き継ぐのが特徴です。有形・無形の資産はもちろん、各種契約も全て承継します。従業員との雇用契約や取引先との契約など、個別に取り交わし直す必要がなく手間を省略可能です。
ただし、不要な資産も全て引き継がなければいけない点には注意しましょう。負債も引き継ぐため、内容の精査が欠かせません。
4-2.事業譲渡
会社の全てを引き継ぐ株式譲渡に対し、事業のみを引き継ぐのが『事業譲渡』です。買収する事業に関連した資産のみを選択的に買収できます。
例えば独自の販路・技術・ノウハウなど、自社に役立つ部分のみを選択可能です。負債がある会社の買取でも、この手法であれば余計な負担はかかりません。
ただし買収後に全ての契約を結び直さなければならず、事業規模が大きいと手続きが煩雑になりやすい手法です。比較的小規模の事業に向いています。
5.廃業する会社はどのように見つけるのか
自社で展開する事業や今後始めたい事業に関する会社を買えば、スピーディーに軌道に乗せやすいでしょう。では買収する会社はどこで探せばよいのでしょうか?
5-1.廃業の兆候がある会社を身近なところで探す
関連する事業を展開する会社を買収したいなら、まずは知り合いや取引先など、身近なところで探してみましょう。知り合いの知り合いなど、比較的近い範囲で見つかるかもしれません。
身近なところで発生した買収は、相乗効果が生まれやすいのが特徴です。お互いの事業をよく理解している間柄である場合も多く、どのように生かせるか分かった上で話を進められます。
また費用を最小限に抑えやすいのも特徴です。マッチングサイトやアドバイザーを利用するときの仲介料を節約できます。
ただし知り合いだからといって、財務や労務・法務関連の内情を精査せずに進めるのは危険です。弁護士や税理士など専門家による調査を行ってから契約へ進みましょう。
5-2.M&Aの仲介サービスを行う会社に相談する
身近で廃業する予定の会社が見つからない場合には『M&Aの仲介サービス』を利用するとよいでしょう。会社の売買について豊富な専門知識を持つアドバイザーが、マッチングをサポートしてくれます。
仲介サービスにはさまざまな業種の案件が集まっているため、希望に合う会社を見つけやすいでしょう。全国の案件を取り扱っている仲介サービスであれば、遠方の会社ともマッチング可能です。
またマッチング後の交渉もサポートしてもらえます。会社を買うときには、法務や税務の専門知識が欠かせません。自力では対応できないケースでも、サポートがあれば安心です。ただし買収にかかる費用のほかにも仲介サービスへの支払いが発生することもあるため、別に資金を用意しておく必要があります。
6.会社の特徴を分析して失敗を防ぐ
会社を買収したとしても、その後の経営がうまくいかない可能性があります。買収後に事業を成功へ導くには、契約前に実施する売り手企業の分析が欠かせません。
6-1.財務諸表で経営状況の確認を
まずチェックするのは『財務諸表』です。経営成績を示す『貸借対照表』、資産と負債を示す『損益計算書』、現金の流れを見る『キャッシュフロー計算書』の三つをまとめて財務諸表といいます。
財務諸表をもとに収益性分析・安全性分析・生産性分析・成長性分析という4種類の財務分析を実施しましょう。会社を買収するときには、収益性分析と成長性分析が特に重視されます。
少なくとも3~5年分の経営状況をチェックすることで、これまでどのような経営をしてきた会社か判断できるでしょう。財務諸表の分析は専門知識が必要なため『税理士法人チェスター』への相談がおすすめです。
6-2.簿外債務や保証債務を引き継ぐ可能性
帳簿をチェックして問題がないとしても、まだ安心はできません。帳簿に記載されない『簿外債務』を抱えている可能性があります。例えば未払い賃金があるケースが代表的です。
簿外債務は会社について詳細な調査をしなければ分かりません。一見問題がないとしても、トラブルを防止するために必ず調査を実施しましょう。
特に株式譲渡の手法で会社を丸ごと引き継ぐ場合には、入念な調査が欠かせません。株式譲渡では連帯保証といった保証債務も引き継ぎます。知らないうちに引き継いでいたということのないよう、事前の調査を徹底しましょう。
あらかじめ保証債務があると分かっていれば、手法を事業譲渡へ変更してリスク回避できます。
6-3.人材の流出は避けられるか
会社の資産には人材も含まれます。契約自体はスムーズに進行したとしても、現場で働く従業員を無視した形態では、資産である人材が流出する可能性があるでしょう。
人材の流出を避けるには、買収後の評価や報酬などの制度について、経営陣からの説明が必要です。一度説明して終わりではなく、繰り返し説明し続けます。
また二つの会社が一つになることで、従業員同士が反発し合うかもしれません。相乗効果が現れるどころか、生産性の低下も考えられる事態です。そのような事態に陥ることがないよう、現場の仕組みや風土の統合を早めに実施することが求められます。
7.メリットは多数あるがリスクも潜むので注意
廃業する会社を買うと、比較的低リスクで既存事業の拡大や新規事業へのチャレンジができます。ノウハウや販路などさまざまな資産がある状態で取り組めるため、軌道に乗るのが早いのも特徴です。
ただし買収する会社を精査しないと、資産だけでなく簿外債務や保証債務まで引き継いでしまうかもしれません。そのようなリスクを避けるため、契約前には財務諸表や会社の内情について調査が必須です。
ただし調査には専門的な知識が求められます。調査内容に応じて、弁護士や税理士などへ依頼しましょう。
税務に関する調査であれば『税理士法人チェスター』への相談がおすすめです。豊富な実績をもとにサポートを受けられるため、安心して取引に臨めます。
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