税務署は見ている!ローン返済の肩代わり・資金援助は贈与税の対象

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税務署は見ている!ローン返済の肩代わり・資金援助は贈与税の対象

住宅ローン返済の肩代わりや資金援助は贈与税の対象となり、資金援助を受けた人(受贈者)が贈与税の申告手続きをしなければなりません。
贈与税は申告漏れが多い税金です。税務署は不動産購入時からローン返済するまでの期間に資金贈与が行われていないかをチェックしています。
そのため、ローン返済の肩代わりをする際には、贈与税の対象になるか否かの判断が必要です。

1.住宅ローンの返済に贈与税の住宅非課税制度を利用することはできない

住宅の購入資金の贈与については、「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度」(通称:住宅非課税制度)を適用することで、最大1,000万円までの贈与が非課税となります。

しかし、住宅非課税制度の対象となる贈与は、住宅を購入する際にもらう金銭に限定されており、金銭の用途も住宅購入資金に充てることが要件となっています。
住宅ローンの返済の資金援助は金銭ですが、住宅を購入するための資金贈与ではありませんので、住宅非課税制度の特例は適用できません。

2.ローン返済を肩代わりする際に注意すべき贈与税の課税の仕組み

子や配偶者のローン返済を肩代わりしたことにより、子や配偶者が税務署から贈与税の指摘を受けるケースがあります。
ローン返済の肩代わりをする際の注意すべきポイントは2点あり、贈与税の課税対象となる金額にも気をつけなければなりません。

ローン返済の肩代わりと贈与税の関係

2-1.住宅の購入金額は所有権割合に応じて負担

住宅の購入では、所有権割合に応じた金額を支払わなければならず、頭金とローンを合計した購入金額の負担割合は所有権割合と一致することが原則です。

そのため、購入金額の負担割合が所有権割合に満たない場合、支払金額が少ない所有者はもう一方の所有者から贈与を受けたことになります。

したがって、負担割合と所有権割合の差にあたる金額は贈与税の対象となります。

2-2.贈与税の対象になるのはローンの返済額ではなくローンの残高

贈与税の課税対象期間は1月1日から12月31日の1年間であり、その期間中に贈与を受けた合計金額に基づき贈与税の計算をします。

贈与財産の種類や用途には制限はありませんので、毎月現金5万円の贈与を受け、そのお金からローン返済に充てても問題ありません。
しかし、ローンを組んだ時点から返済していない場合や、今後のローンの返済はすべて肩代わりしてもらう場合には、その時点でローン返済の全額について贈与を受けたとみなされます。

そのため、贈与税の対象となる金額は、年間のローン返済の金額ではなく肩代わりしてもらった時点のローン残高です。

【例】Q:ローン返済を肩代わりしてもらった場合の贈与税の対象となる金額はいくらになるのか?(ローン残高は2,000万円で月々のローン返済金額は5万円(年間60万円。今後自分でローンを返済する予定はない。))A:ローン残高2,000万円が贈与税の課税対象。(税務署は贈与発生時点の状況でカジノ判定をしますので、返済意思がない場合にはローン残高が贈与税の対象となります。)

3.税務署のローン返済に関連した資金贈与の情報収集手段

税務署は、贈与税の申告書が提出されていない場合でも、購入資金やローン返済資金についての情報を把握しています。
そのため、無申告でもバレないと思い込んでいる人は、税務署の税務調査により指摘を受け、贈与税の本税以外にも加算税・延滞税を支払っているケースが多いです。

税務署が不動産購入資金の贈与税を把握する方法

3-1.不動産を購入した際には税務署からお尋ね文書が送付される

税務署は、不動産を購入した年の年末年始ごろを目途として、お尋ね文書を発送します。

お尋ね文書の内容としては、不動産の購入資金の内訳について尋ねるもので、回答しない場合には催促されることもあります。
また、親からの資金援助を受けた旨を回答した場合で、贈与税の申告をしなければ税務署から指摘を受ける確率は非常に高くなります。

なお、お尋ね文書には法的な回答義務はなく、お尋ね文書の回答を行わなくても罰則等はありません。
ただし、税務署はお尋ねの回答が得られない場合でも、銀行調査などにより贈与の実態を把握できますので、贈与税の申告から逃れることはできません。

3-2.税務署は法務局から不動産の登記情報を収集している

住宅を購入する場合には、法務局で不動産登記の手続きをしなければなりません。

登記情報は税務署でなくても確認することができる書類ですが、税務署は法務局と連携することで、ほとんどの不動産登記情報を把握できる状態にあります。

不動産登記情報では、住宅の購入時期や抵当権の有無、登記原因などが確認できますので、その情報に基づき税務署はお尋ね文書の送付や税務調査をしています。

3-3.税務署は贈与者の相続が発生した場合に生前贈与の状況も調べる

相続税は、亡くなった人(被相続人)の遺産すべてが対象となります。

相続税は被相続人の亡くなった時点の財産に課税しますが、相続税の税務調査では申告漏れの財産の有無を確認するために、被相続人の生前中の預金の移動状況も調べます。
税務署は過去に遡り銀行口座の履歴を調べることができ、調査可能な期間は10年間です。

なお、生前中に被相続人が贈与していた場合でも、贈与税が非課税になる場合や贈与税をすでに納税している場合は問題にはなりません。
しかし、贈与税の納税漏れがあった場合には、最大7年前の申告年分まで遡り、贈与税が課税されます。

4.贈与税を支払わないでローン返済の肩代わりをする方法

ローンの返済の肩代わりは贈与税の対象となりますが、贈与税を支払わずに資金援助する方法もあります。

贈与税を支払わずにローン返済の資金援助をする方法

4-1.肩代わりしたローン返済分の金額を所有権登記する

ローンの肩代わりが贈与税の対象になるのは、所有権割合とローンの返済割合が一致していないのが原因です。

そのため、ローン返済の肩代わりをした金額分の所有権割合を資金援助する人の名義に変更すれば、所有権割合と返済割合は一致するため、贈与税は発生しません。

4-2.相続時精算課税制度はローン返済資金でも適用可能

ローン返済の資金援助に住宅非課税制度を利用することはできませんが、相続時精算課税制度を利用することで、最大2,500万円まで贈与税がかからなくなります。

相続時精算課税制度は、60歳以上の祖父母(両親)から18歳以上の孫(子)に対して贈与した場合に利用できる特例であり、贈与する財産や用途に制限はありません。
相続時精算課税制度を利用する際には、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日の確定申告期間内に必ず申告手続きが必要です。

なお、相続時精算課税制度を利用して贈与を受けた財産については、贈与者が亡くなった際、贈与者の相続財産と合算して相続税を計算することになります。

4-3.親子間で金銭消費貸借契約を結べば贈与税は発生しない

一時的にローン返済の資金援助を受けた場合であっても、その金額を返済する場合には贈与には該当しません。
そのため、親族間で金銭消費貸借契約を結び、その契約内容に基づき毎月返済すれば贈与税を支払わずに済みます。

親族間で金銭消費貸借契約を結ぶ場合でも、契約書に返済期間や利息等を記載し、契約内容を確実に履行することが重要です。
「出世払い」や「その時払い」は認められず、契約書通りに返済していない場合には、税務署は形式上だけの金銭消費貸借とみなし、贈与税を課税する可能性があります。

なお、親族間の金銭消費貸借契約を結んだ場合には、税務署は定期的に返済状況を確認することもありますので、返済状況が確認できる書類は残しておいてください。

5.親子間の贈与は相続税の申告までを想定して行うべき

生前中に贈与税がかからない範囲内で親から子に贈与をすれば、将来の相続税の節税に繋がります。

しかし、相続税には一定の生前贈与財産を相続財産に加算する決まりがありますし、財産の種類によっては贈与せずに相続税の特例を適用した方が節税になるケースもあります。

そのため、相続税の節税のために贈与を行う場合には、贈与税・相続税双方の特例制度を検討することが必要です。

贈与税・相続税は税金の中でも専門性の高い分野ですので、税理士の中でも知識量に開きがあります。
より節税を意識される場合には、相続税(贈与税)を専門とする税理士事務所に相談することを推奨します。

相続税専門の税理士法人チェスターでは、相続税対策としての贈与や資産活用のご相談にも対応しております。贈与税にも詳しい専門スタッフがご対応しますのでお気軽にご相談ください。

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