遺産を相続したら相続税はかかる?知っておきたい2つのポイント
タグ: #基礎控除, #相続税の計算相続が発生して、「うちは相続税がかかるんだろうか?」「相続税の額がいくらになるのか心配だ」と思われている人も多いと思います。
相続税は税額が高いというイメージがあるので、どうしても不安になってしまうものです。相続税が納められずに泣く泣く自宅を処分したといった話を聞いたこともあるのではないでしょうか。
しかし、相続税は全ての人が支払う税金ではありません。割合としては10%以下の人しか対象とならない税金です。
相続税が課税されるかどうかを判断するためには、まず次の二つのことを知らなければいけません。
2.故人の遺産総額はおおよそいくらあるのか?
この2つのことが分かれば、
①相続税が課税されるのか?
②相続税の額はおおよそいくらかかるのか?
といった疑問を解決することができます。
私は相続専門の税理士法人を運営している税理士です。これまで5,000件以上の相続税の申告をしてきました。
この記事を確認していただくことで、多くの方が相続税についての理解を深め、おおよその金額まで知っていただけると思います。
初心者の方でもわかるように、遺産にかかる相続税の額を知るためのステップを解説しています。ぜひ参考にしてください。
こちらの国税庁の動画も参考になりますので、ぜひご覧ください。
目次 [閉じる]
1.遺産3,600万円以上から相続税が課税される可能性がある
相続税とは、相続で遺産を受け取った人が支払う税金です。しかし、相続で遺産を受け取った人の全てが相続税を支払うわけではありません。冒頭でお伝えしたように、相続をした人のうち10%以下の人しか課税の対象になりません。
これは、相続税には、遺産が一定額以下であれば課税されないという「基礎控除」があるからです。基礎控除の金額は、次の算式で求めた金額と定められています。
基礎控除額
=3,000万円+600万円×法定相続人の人数
法定相続人が1人の場合は、基礎控除額は3,600万円となり、遺産総額が3,600万円までであれば相続税は課税されません。
したがって、法定相続人の人数がわからないときは、まず、「遺産総額が3,600万円以上あれば相続税が課税される可能性がある」と考えておくとよいでしょう。
相続税が課税されるかどうかの判断については、次の記事も参考にしてください。
2.相続税を計算するためには法定相続人の人数を知る必要がある
相続税が課税されるかどうかを判断するためには、基礎控除額がいくらであるかを知る必要があります。基礎控除額を求めるためには、法定相続人の人数を知る必要があります。
法定相続人とは民法で決められている「遺産を受け取る権利を持つ人」のことです。
法定相続人の範囲は次の表のとおりです。故人に夫や妻がいれば、その人は必ず法定相続人になります。また、子供がいるか、両親が健在であるかなどによって、誰が法定相続人になるかが決まります。
配偶者:必ず法定相続人になります
第一順位:子供・孫(直系卑属)
第二順位:父母(直系尊属)
第三順位:兄弟姉妹(傍系血族)
(上位順位の人が健在の場合は、下位順位の人は法定相続人にはなりません)
法定相続人の人数がわかれば、基礎控除額、つまり、遺産総額がいくらを超えれば相続税が課税されるかがわかります。
基礎控除額の算式をもう一度示します。
基礎控除額
=3,000万円+600万円×法定相続人の人数
たとえば、法定相続人が3人いれば基礎控除額は
3,000万円+600万円×3=4,800万円
となり、遺産総額が4,800万円を超えれば相続税が課税されます。
法定相続人の人数の数えかたや、法定相続人が遺産を相続できる割合など詳しいことについては、次の記事を参考にしてください。養子がいる場合や孫が法定相続人になる場合についても説明しています。
「「法定相続人」と「遺産を相続できる割合」を初心者でも分かるように解説!」
3.早見表で相続税を簡単に計算してみよう
2.故人の遺産総額はおおよそいくらあるのか?
この2つのことがわかれば、相続税がおおよそいくらかかるかが計算できます。
相続税の税率は遺産の額が多くなるにつれて段階的に増えていきます。また、遺産総額が同じであっても、配偶者の有無や法定相続人の人数によって、税額の計算結果は変わります。
相続税のおおよその金額を知るには、次のような早見表を参照することができます。
早見表は、配偶者と子が相続人の場合と、子だけが相続人の場合に分けられています。これは、配偶者の税額軽減といって、配偶者が相続した遺産は少なくとも1億6,000万円まで非課税になる特例があるからです。
また、下記シュミレーションソフトを使用すれば遺産にいくら相続税がかかってくるのかさらに詳細にわかります。是非参考にしてみてください。
4.相続税の計算には不動産評価の計算が重要
相続税が課税されるかどうかを判断するときに、法定相続人の人数と並んで重要なのが、故人の遺産総額がいくらあるかです。
現金や預金であれば金額がはっきりわかるので、それぞれ加算していけば遺産総額がわかります。
しかし、土地、建物、株式は、金額が示されているわけではないので、一定のルールに従って価値を計算しなければなりません。
特に不動産は、実際に売買されている価格よりも低い場合や高い場合があるため注意が必要です。
土地については形状や立地条件などによって価値が修正されるので、相続税に詳しい税理士の助言を受けて計算する方が確実です。
ただし、あなたが自分で土地の相続税評価額を求めたい場合には、概算であれば税理士に相談しなくても計算することが可能です。
詳しくは、「初心者でも分かる!税理士が教える相続税の土地評価の方法」の記事を参考にしてみてください。
そのほか建物や有価証券の計算の方法については次の記事でわかりやすく説明していますので参考にしてみてください。
相続税評価額の基礎知識と計算方法を税理士がやさしく解説
相続税の計算については、次の記事でも詳しく説明しています。
相続税はいくらからかかる?「相続人の数」と「遺産総額」から簡単判定!
5.Q&A
Q.父が亡くなりました。遺産の整理をしていたところどうやら基礎控除額を超えそうです。どうすればいいでしょうか?
A.お近くの税理士又はインターネットなどで税理士を探して相談することをおすすめいたします。遺産の内容をメモしたものなどを持参していくと話がスムーズに伝わると思います。
Q.父が亡くなった後に葬儀代の支払いや今後の生活費の為に1,000万円ほどまとめて引き出しました。
父の遺産は1,000万円を差し引いた後の金額で計算をすればいいのでしょうか?
A.1,000万円を差し引く前の金額になります。
相続税の計算をする際には亡くなった日を基準として計算を行うことになります。従って、お父様がお亡くなりになった後に引き出したお金は相続税の計算ではお父様の遺産として計算を行うことになります。
Q.主人が亡くなってその後の手続きなどでばたばたしており半年を過ぎたころに遺産を計算してみたら基礎控除額を超えていることがわかりました。半年経ってしまっても相続税の申告は間に合うのでしょうか?
A.間に合います。
相続税の申告期限は亡くなった日から10ヵ月以内です。これは法律で決まっており、期限に遅れた場合には延滞税という罰則の税金を追加で支払う必要があります(「相続税の申告期限はいつ? 期限に間に合わない時の対処法も解説」)。
相続税の申告を行う為には亡くなった方の遺産の総額をしっかりと計算する必要があります。2,3日で出来上がるものではありませんのでなるべく早く税理士へご相談することをおすすめいたします。
Q.父が亡くなって遺産の整理をしようとしていますが、どのような遺産があるのか見当がつきません。
どうすればいいでしょうか?
A.ご家族であったとしても遺産の全てを完全に把握されている方は少ないと思います。
まずはご自宅を探していただき把握していない銀行の古い通帳などが出てきたらその銀行に問合せを行ってみてください。相続人の方であれば残高があるかどうかなど情報を提供してくれます。
また、不動産であれば毎年6月頃に市区町村より固定資産税の通知書が送られてきていると思います。そちらで不動産についてはご確認いただけます。
有価証券(株式や投資信託)については証券会社をご利用されている場合にはその証券会社へ問い合わせをするといいでしょう。
どうしても分からない場合には一度専門家にご相談すると遺産の調査をしてもらうことができます。
6.遺産にかかる相続税の計算は税理士に相談を
ここまで、遺産にかかる相続税について最低限知っておきたいことを簡単にお伝えしてきました。
相続税が課税されるかどうかを判断するポイントは、「法定相続人の人数は何人か」と、「故人の遺産総額はおおよそいくらあるのか」の2点です。これら二つのことが最低限わかれば、相続税が課税されるのか、相続税の額はおおよそいくらかかるのか、といったことがわかります。
しかし、この記事でご紹介した計算方法は、あくまでも相続税のおおよその金額を求めるにすぎません。
例えば遺産の総額が基礎控除額を超えていたとしても相続税の計算には土地の評価について特例があります。また配偶者の税額軽減の特例もあり、他にも様々な規定が存在します。
その結果、相続税の申告は税務署に対して行う必要はあるが、相続税は0円というケースも多くあります。
相続税の申告を税務署に行う場合には故人が亡くなった日から10カ月以内に申告を行わなければなりません。
この記事を参考にしていただき、遺産の総額が基礎控除額を超えた場合には一度専門家である税理士に相談することをおすすめします。
【関連記事】
相続税申告の要否を判断する基準は遺産総額3,600万円
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。